01式軽対戦車誘導弾

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テンプレート:ミサイル テンプレート:Multiple image 01式軽対戦車誘導弾(まるひとしきけいたいせんしゃゆうどうだん)、型式名ATM-5は、防衛庁(現在の防衛省技術研究本部川崎重工業が開発した個人携行式対戦車ミサイル陸上自衛隊において、対戦車兵器としての84mm無反動砲の後継[1]として配備されている。

防衛省は略称を「LMAT」、愛称を「ラット」としているが、配備部隊では「01(マルヒト)」や「軽MAT」とも呼ばれる[2]

開発

1993年(平成5年)から主契約者を川崎重工業として開発が行われ、1997年(平成9年)より試作開始、2001年(平成13年)に制式化された[1][2]

開発における技術的な課題として、非冷却型赤外線画像誘導方式、掩蓋内射撃可能な射出推進方式、特殊装甲に対処可能な小型弾頭、小型軽量化などの確立が挙げられた。同時に低コスト化も主要な課題とされ、これらの課題を解決するために様々な試みがなされた。その中でも、非冷却型赤外線画像センサの対戦車ミサイルへの採用は世界初の試みであり[1]、これにより低コスト化と瞬間交戦性の向上が可能となった[2]。また、使用される電子部品に民生品を積極的に活用したことも低コスト化に寄与している[1][2]

技術研究開発総経費は約105億円[2]。調達価格は一基約2,600万円である。

概要

普通科部隊の小銃小隊に配備され、順次に84mm無反動砲から更新される計画であった。

一人の射手が肩に担いで照準、射撃する個人携行式である。システムは発射筒と重量11.4kgの飛翔体(ミサイル本体)、発射機、夜間照準具から構成されており、総重量は17.5kg。ミサイルを含む発射筒は照準器と一体化した発射機に簡単に着脱でき、毎分4発の発射が可能。弾種は、対戦車弾頭のみであるが[2]、訓練の際には、ミサイルの代わりに演習弾と呼ばれる安価な無誘導ロケットも使用できる。弾薬手が存在しないため予備弾薬を含めれば総重量約35kg分を一人で担ぎ戦闘行動を行わなければならないという状況も存在する[2]

赤外線画像誘導を採用し[2]戦車などの装甲戦闘車両を含む軍用車両の発する赤外線を捉えて誘導するため、命中まで誘導し続ける必要がない撃ち放し能力(Fire&Forget)を持つ[1][3]。発射の際に射距離に応じて戦車の弱点である上面を攻撃するダイブモード(トップアタック)と低伸弾道モード(ダイレクトヒット)を使い分ける事ができ、二重(タンデム)の成形炸薬弾頭を搭載することで爆発反応装甲(ERA)にも対応する[1][2]

発射時の後方爆風が少ないことから掩体や車上からも発射が可能となっている。また、普通科部隊が装備する軽装甲機動車の上面ハッチ上から発射する事も想定している。

射程は公表されていないが、近年の富士総合火力演習において距離1,000mの固定目標への射撃展示が行われている。

諸外国における類似のシステムとしては、アメリカFGM-148ジャベリン(22.3kg)やイスラエルスパイクMR/LR(26kg(3kgの三脚を含む)などがある。

システム起動に熱感知が必要なために目標の確認から迅速な射撃体制ができない点、車両以外の各種陣地への射撃が困難な例など、その用途がきわめて限定的である点などにより、平成24年度からはそれらの補完を目的として、84mm無反動砲(B)の調達が開始された。

配備

当初の計画案では普通科中隊内の対戦車小隊2個射撃分隊のうち、無反動砲分隊に1門を配置[4]して対機甲火力の増強を行う計画だったが、普通科小銃小隊が10名による班編制から7名(現在は8名)の分隊編成へと移行し、対機甲火力と通常火力が低下したため、これを補う目的で普通科小銃小隊に配備が開始された。平成22年度予算までに1,073セットが調達されている。

01式軽対戦車誘導弾の調達数[5][6][7]
予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数
平成13年度(2001年) 170セット 平成19年度(2007年) 36セット
平成14年度(2002年) 242セット 平成20年度(2008年) 49セット
平成15年度(2003年) 170セット 平成21年度(2009年) 43セット
平成16年度(2004年) 240セット 平成22年度(2010年) 39セット
平成17年度(2005年) 36セット 合計 1,073セット
平成18年度(2006年) 48セット

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 技術研究本部50年史 P183-186
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 陸上自衛隊の対戦車兵器(10) 前河原雄太 スピアヘッドNo.10 P83-87 アルゴノート社
  3. ただし、赤外線などの熱反応が生じない建物には射撃できない。熱感知によるロックオン及び安全装置解除を要求されるため周囲より高熱でない目標へはそもそも射撃すらできない
  4. 射撃の統制は分隊長が行い、射手は射撃動作と弾薬手が弾薬の携行を担当する予定であった
  5. JapanDefense.com
  6. 防衛白書の検索
  7. 防衛省 予算などの概要

参考文献

  • 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞社 P29 ISBN 4-7509-1027-9

関連項目

外部リンク

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