飯田蝶子

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テンプレート:ActorActress 飯田 蝶子(いいだ ちょうこ、1897年4月17日 - 1972年12月26日)は、日本の昭和期の女優である。「老け役」女優として有名。

略歴

ファイル:The Only Son-1 1936.jpeg
一人息子』(1936年)のスチル写真。左は葉山正雄

1897年(明治30年)4月17日東京府東京市浅草区堀端(現在の東京都台東区浅草)に生まれ、本所に育つ。父は逓信省の役人だったが、家は貧しかったため、祖母に引き取られて小学校に入学した。上野高等女学校を中退したあと、松坂屋に勤務した。始めは休憩室係だったが、働きものだったため広告部へまわされた。その後フリーのルポライターとなったが、役者を志し、女優を応募していた初代中村又五郎一座に応募、腰元役で採用された。しかし、一座は座長が亡くなったため半年で解散した。

1922年(大正11年)、松竹蒲田撮影所に応募するが不美人という理由で採用されなかった。飯田は「女中などの脇役は美人がやると不自然で、自分のような不美人が脇役に合っている」と野村芳亭監督に説得した。これをきっかけに飯田は給料なしの見習い女優として撮影所に入り、栗島すみ子の付き人をした。ようやくそれを認められて、1923年(大正12年)、野村の『死に行く妻』で端役デビューした。同年、牛原虚彦監督の『人性の愛』に老け役で出演、それが認められ、喜劇映画の女三枚目として活躍した。その後、吉川満子岡村文子らと並ぶ松竹蒲田の名脇役女優として多くの作品に出演。女中、母親、芸妓、小母さんなどの役柄を演じた。

1925年(大正14年)、準幹部になり、1927年(昭和2年)に幹部俳優に昇進した。同年、カメラマン茂原英雄と結婚した。同年、五所平之助監督の『からくり娘』でヒロインの母親役を演じ、以降五所の作品に多く出演した。

五所以外にも島津保次郎衣笠貞之助などの監督に起用されたが、特に小津安二郎監督作品には18本出演し、彼のサイレント期の常連女優となった。『肉体美』が小津映画の初出演作で、1933年(昭和8年)からは坂本武とのコンビで、喜八もの(『出来ごころ』『浮草物語』『東京の宿』『箱入娘』)に助演した。1947年(昭和22年)に公開された喜八ものの延長作『長屋紳士録』では意に反して孤児を引き取っていく長屋のおばちゃんを演じ、自身の代表作とした。

1934年(昭和9年)、賭け麻雀をしていたとして広津和郎福田蘭童らが検挙される事件が発生し、この翌日に松井潤子菊池寛らと共に飯田も検挙されている。

戦後はフリーランスとなり、黒澤明監督の『酔いどれ天使』などに出演した。庶民派の老婆や、祖母を演じ、お婆さん女優として親しまれた。晩年は東宝の『若大将シリーズ』で主人公の祖母を演じて人気を得た。また、『時間ですよ』などのテレビドラマでも活躍した。1967年(昭和42年)、夫の茂原と死別。

1963年(昭和38年)、紫綬褒章を、1967年(昭和42年)、勲四等瑞宝章をそれぞれ受章した。

1972年(昭和47年)12月26日肺癌のため東京都豊島区内の病院で死去した。満75歳没。

出演作品

映画

太字の題名はキネマ旬報ベストテンにランクインした作品
◎印は小津安二郎監督作品

  • 死に行く妻(1923年、松竹)
  • 闇を行く(1923年、松竹) - 女土方
  • 山中小唄(1923年、松竹下加茂)
  • 小唄集 ストトン(1924年、松竹蒲田) - 女房おみの
  • スヰートホーム(1924年、松竹蒲田) - 女工の監督
  • 赤坂心中(1924年、松竹蒲田)
  • 少女の悩み(1924年、松竹蒲田)
  • がまぐち(1924年、松竹蒲田)
  • 異性の力(1925年、松竹蒲田)
  • 或る女の話(1925年、松竹蒲田)
  • 小さき姫君(1925年、松竹蒲田)
  • 祖国(1925年、松竹蒲田)
  • 文化病(1925年、松竹蒲田)
  • 勇敢なる恋(1925年、松竹蒲田)
  • 屋上の恋人(1925年、松竹蒲田)
  • 愛妻の秘密(1925年、松竹蒲田)
  • 御意見御無用(1925年、松竹蒲田) - 夫人
  • 正ちゃんの蒲田訪問(1925年、松竹蒲田)
  • 街の人々(1926年、松竹蒲田)
  • 運動家(1926年、松竹蒲田)
  • お坊ちゃん(1926年、松竹蒲田) - 羽田家女中
  • カラボタン(1926年、松竹蒲田)
  • 広瀬中佐(1926年、松竹蒲田) - 継母きん子
  • 人間愛(1926年、松竹蒲田)
  • 奔流(1926年、松竹蒲田)
  • 五月雨の頃(1926年、松竹蒲田)
  • 愛(1926年、松竹蒲田)
  • 彼女(1926年、松竹蒲田)
  • 地下室(1926年、松竹蒲田) - 女中
  • 恋愛混線(1927年、松竹蒲田) - カフェー女給お玉
  • 九官鳥(1927年、松竹蒲田) - 女房女土方おりき
  • 緋紗子の話(1927年、松竹蒲田)
  • 艶魔(1927年、松竹蒲田) - 古着屋甚兵衛女房
  • 吹雪の後(1927年、松竹蒲田)
  • やきもち(1927年、松竹蒲田)
  • 親孝行(1927年、松竹蒲田)
  • 髑髏の踊り(1927年、松竹蒲田) - 若女の幽霊、老婆の幽霊
  • 孤児(1927年、松竹蒲田)
  • 美女と秘密(1927年、松竹蒲田)
  • 道呂久博士(1928年、松竹蒲田) - おりん
  • 女の一生(1928年、松竹蒲田) - 女中頭お峰
  • 昭和の女(1928年、松竹蒲田) - 高子
  • 妻君廃業(1928年、松竹蒲田)
  • 肉体美(1928年、松竹蒲田) - 妻律子
  • 越後獅子(1929年、松竹蒲田)
  • 恋愛風景(1929年、松竹蒲田) - 先生
  • 宝の山(1929年、松竹蒲田) - 梅廼家の女将
  • 学生ロマンス 若き日(1929年、松竹蒲田) - 千恵子の伯母
  • 大学は出たけれど(1929年、松竹蒲田) - 下宿の主婦
  • 浮世風呂(1929年、松竹蒲田)
  • 現代奥様気質(1930年、松竹蒲田)
  • モダン奥様(1930年、松竹蒲田)
  • 若者よなぜ泣くか(1930年、松竹蒲田) - 立花恵子
  • 留守中発展(1930年、松竹蒲田)
  • 街の浮浪者(1931年、松竹蒲田)
  • 暴風の薔薇(1931年、松竹蒲田)
  • 東京の合唱(1931年、松竹蒲田) - 先生の妻
  • 島の裸体事件(1931年、松竹蒲田)
  • 愛よ人類と共にあれ(1931年、松竹蒲田) - バーのマダム
  • 淑女と髯(1931年、松竹蒲田) - その母
  • 山村の光(1931年、松竹蒲田)
  • 若き日の感激(1931年、松竹蒲田) - 家政婦のお千代
  • 満州行進曲(1932年、松竹蒲田) - 看護婦
  • 上陸第一歩(1932年、松竹蒲田) - 安宿のお神
  • 兄さんの馬鹿(1932年、松竹蒲田)
  • 天国に結ぶ恋(1932年、松竹蒲田) - 体操の教師
  • 青春の夢いまいづこ(1932年、松竹蒲田) - 斎木の母おせん
  • 嵐の中の処女(1932年、松竹蒲田)
  • また逢ふ日まで(1932年、松竹蒲田) - 女中
  • 忠臣蔵(1932年、松竹下加茂) - 不破の妻・縫
  • 花嫁の寝言(1933年、松竹蒲田) - 隣りの内儀
  • 伊豆の踊子(1933年、松竹蒲田) - 芸姑
  • 応援団長の恋(1933年、松竹蒲田) - 下宿の小母さん
  • 孔雀船(1933年、松竹蒲田)
  • 君と別れて(1933年、松竹蒲田) - 芸者屋の女将
  • 夜ごとの夢(1933年、松竹蒲田) - 女将
  • 二つ燈籠(1933年、松竹下加茂) - お仙
  • 嬉しい頃(1933年、松竹蒲田) - 清元師匠おつね
  • 愛撫(ラムール、1933年、松竹蒲田) - 下宿屋の小母さん
  • 出来ごころ(1933年、松竹蒲田) - おとめ
  • 女学生と与太者(1933年、松竹蒲田) - 校長夫人
  • 女と生れたからにゃ(1934年、松竹蒲田)
  • 沓掛時次郎(1934年、松竹下加茂) - 女房おろく
  • 玄関番とお嬢さん(1934年、松竹蒲田) - 下宿の小母さん
  • 東洋の母(1934年、松竹蒲田) - 家政婦倉田夫人
  • 婦系図(1934年、松竹蒲田) - 女中お源
  • 母を恋はずや(1934年、松竹蒲田) - チャブ屋の掃除婦
  • 月形半平太(1934年、松竹下加茂) - お蝶
  • 隣の八重ちゃん(1934年、松竹蒲田) - 母・浜子
  • 一本刀土俵入り(1934年、松竹下加茂) - 立科のおかみさん
  • 新婚旅行(1934年、松竹蒲田)
  • 女の顔役(1934年、松竹蒲田) - おかみさん
  • 浮草物語(1934年、松竹蒲田) - かあやん
  • 春江の結婚(1934年、松竹蒲田) - おしん
  • 箱入娘(1935年、松竹蒲田) - おつね
  • 東京の宿(1935年、松竹蒲田) - おつね
  • 永久の愛(1935年、松竹蒲田) - 女房おきよ
  • 春琴抄 お琴と佐助(1935年、松竹蒲田) - お君
  • 人生のお荷物(1935年、松竹蒲田) - 妻おかね
  • 大学よいとこ(1936年、松竹蒲田) - お内儀
  • 家族会議(1936年、松竹大船) - お雪
  • 男性対女性(1936年、松竹大船) - 母園
  • 少年航空兵(1936年、松竹大船) - 母おたか
  • 一人息子(1936年、松竹大船) - 野々宮つね
  • 婚約三羽烏(1937年、松竹大船) - たばこ屋のおばさん
  • 荒城の月(1937年、松竹大船) - 三浦の母
  • 淑女は何を忘れたか(1937年、松竹大船) - マダム千代子
  • 戸田家の兄妹(1941年、松竹大船) - 女中きよ
  • 歌女おぼえ書(1941年、松竹大船) - 宿のお内儀
  • 十日間の人生(1941年、松竹大船) - 下宿の内儀
  • 高原の月(1942年、松竹大船) - その母
  • 或る女(1942年、松竹大船) - 下宿のお母さん
  • 歓呼の町(1944年、松竹大船) - 風呂屋の女房
  • 水兵さん(1944年、松竹大船)
  • 或る夜の殿様(1946年、東宝) - 妻おくま
  • 四つの恋の物語(1947年、東宝) - 闇屋の小母さん
  • 長屋紳士録(1947年、松竹大船) - おたね
  • 酔いどれ天使(1948年、東宝) - 婆や
  • 野良犬(1949年、東宝) - 光月の女将
  • 森の石松(1949年、松竹京都) - 石松の母
  • 小原庄助さん(1949年、新東宝) - おせき婆さん
  • シミキンの無敵競輪王(1950年、東宝) - 下宿のおばちゃん
  • 女性対男性(1950年、松竹大船) - 婆やまき
  • どっこい生きてる(1951年、前進座) - 秋山婆さん
  • 箱根風雲録(1952年、新星映画) - トラ
  • 慟哭(1952年、東京プロ)
  • (1953年、大映東京) - おさん
  • どぶ(1954年、近代映画協会) - たみ
  • 愛と死の谷間(1954年、日活) - 坂田松代
  • 警察日記(1955年、日活) - タツ
  • 力道山物語 怒濤の男(1955年、日活) - 母たつ
  • たけくらべ(1955年、新芸術プロ) - ばあやおとき
  • 雑居家族(1956年、日活) - おせい
  • 真昼の暗黒(1956年、現代ぷろ) - 植村つな
  • 台風騒動記(1956年、山本プロ) - 老婆
  • 婚約三羽烏(1956年、東宝) - 煙草屋のおばさん
  • ロマンス娘(1956年、東宝) - デパートの老婆
  • 大当り三色娘(1957年、東宝) - お祖母さん
  • 異母兄弟(1957年、独立映画) - マス
  • 黄色いからす(1957年、歌舞伎座) - 東六の祖母
  • どたんば(1957年、東映東京) - 石垣かね
  • 爆音と大地(1957年、東映東京) - おとめ
  • 鰯雲(1958年、東宝) - 姑・ヒデ
  • 裸の太陽(1958年、東映東京) - いね
  • 蟻の街のマリア(1958年、歌舞伎座) - 河津婆
  • 無法松の一生(1958年、東宝) - 宇和島屋おとら
  • 裸の大将(1958年、東宝) - 婆さん
  • 海っ子山っ子(1959年、桜映画社) - 竜宮館の婆さん
  • おヤエの女中と幽霊(1959年、日活) - 御隠居さん
  • 妻として女として(1961年、東宝) - 祖母志野
  • 若大将シリーズ(東宝) - 田沼りき
  • ゲンと不動明王(1961年、東宝) - 峠の茶屋のばあさん
  • 喜劇 にっぽんのお婆あちゃん(1962年、松竹大船) - 風船ばあさん花
  • 放浪記(1962年、宝塚映画) - 下宿屋の婆さん
  • 台所太平記(1963年、東宝) - その母
  • 馬鹿が戦車でやって来る(1964年、松竹大船) - とみ
  • クレージー映画(東宝)
  • 社長行状記(1966年、東宝) - 政子

テレビドラマ

  • どたんば(1956年) - 映像が現存し、再放送されたり、DVDも発売されている。
  • いろはにほへと(1959年) - 映像が現存する
  • 若い季節(1961年 - 1964年)
  • テレビ指定席 ドブネズミ色の街(1963年) - 映像が現存する
  • 時間ですよ(1970年 - 1971年) - 映像が現存する

その他のテレビ番組

ラジオ

外部リンク