電線路

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電線路(でんせんろ)は、電力を運ぶための電線およびその支持物・付帯設備を含む電力設備である。 また、電線路を形成する電線のうち、送電網におけるものは送電線(そうでんせん)、配電網におけるものは配電線(はいでんせん)と呼んで区別されている。

電線路の線路定数

電線路の構成要素

ファイル:Insulators and electricity pylon.JPG
電線はがいしを介して鉄塔と接続され、黄色い線に沿って電流が流れる。

なお送電網において、送電線にはそれぞれ路線名が付けられ、鉄塔には番号が付けられている。一般的には電源側が若い番号となり、負荷側が大きい番号となる。

電線路の設置場所

  • 架空電線路
  • 地中電線路
  • トンネル内電線路
  • 水上電線路
  • 水底電線路

送電線における諸問題など

高圧線下の影響

送電線の多くは、他者の所有地の上を通る。その場合、一般に「線下補償料」と呼ばれる、土地使用料にあたる料金が支払われることになる。その一方で高圧線下の地価は、美観などの理由から、周辺の地価より低くなることもある。

近年では、高圧線が発する低周波電磁波を浴びることによる健康被害が、WHOなどで注目されている。スウェーデン等では2~3mGを目安に、それを超える高圧線の鉄塔を住宅幼稚園などの近辺に建設しないように規制している[1]。他にも、高圧線の出す電磁波により、放送電波に影響がでることがある。

放電現象

送電線の送電電圧が非常に高くなったときに、主に鉄塔接続部分のがいし付近で周囲の空気との間における絶縁状態が部分的に破れて、コロナ放電が発生する場合がある[2][3]。この放電時に発せられるジリジリといったコロナ騒音のほか、コロナ損(電力損)による送電効率の低下、障害電波や高周波の発生なども問題になっている。降雨・降雪時、降雨・降雪後、または霧が発生しているときなど導電性が高まったときに起こりやすい。放電頻度を少なくするため、がいしに溜まったほこり等を除去する清掃作業が管轄会社により定期的に行われている。また、がいしの突起を減らしたり、多導体の使用や外径の大きい鋼心アルミより線等を使用するか束ねるなどして電線径を太くし電位傾度(電位差)を低くすることによって、放電頻度を減少させる効果がある。

送電線の路線図

ファイル:Power Grid of Japan.svg
10電力会社の管轄と主要送電網

日本において送電線(高圧線)の路線図は、電力会社の内部資料としては存在するが、近年はテロ対策などを理由に非公開となっており、部外者が見ることはできないようになっている(ごく一部の幹線のみ、電力会社のパンフレットや資料館で公開されている)。それでも国土地理院地形図には、送電線が記載されているので、地形図を見ることにより、送電線がどこに続いているのか辿ることは可能である。

ただし、インターネットで公開している国土地理院による電子版の地形図(電子国土基本図)では、送電線や鉄塔の位置に関する情報の提供を全国の電力会社が「テロへの悪用懸念」などを根拠に拒否したため、2012年1月時点の最新版で記載をとりやめている。これに対して、登山などで現在地を確認する際の目印になるといった利便性の観点からも記載を求める声が出ており、日本地理学会では同機関に対して記載の継続を求める意見書を提出している[4]。なお、1998年には香川県坂出市で何者かにより送電鉄塔が倒壊させられる器物破損事件が実際に発生している。また、日本国外ではタイで送電鉄塔がテロの標的にされている[5]

地下化された送電線もある。上記の通り、路線図は通常公表されていないので部外者が敷設ルートを辿ることはほとんど不可能である。ただし、一部の電力会社では電柱に工事業者のために地中線の埋設標が設置されている。

電線路を題材した作品

脚注

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関連項目

外部リンク

no:Elektrisk ledning ro:Cablu electric

zh:電纜
  1. 市民科学研究室 電磁波プロジェクト 上田昌文「国立環境研究所の疫学調査の意義」[1] より。
  2. 送電線路のコロナ放電現象と障害及び防止対策(社団法人 日本電気技術者協会)
  3. コロナ放電(電気主任技術者試験の用語集)
  4. 送電線:電子地形図から消える 電力10社情報拒否(毎日新聞 2012年1月30日)
  5. 【タイニュース】アユタヤで送電用鉄塔が爆破(たいすきだ 2010年4月14日)