雲のむこう、約束の場所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Infobox Film雲のむこう、約束の場所』(くものむこう やくそくのばしょ)は、新海誠2004年に制作したアニメーション映画、およびそれを原作としてメディアミックス的展開がなされた小説などの作品群のことをいう。

概要

本作は『彼女と彼女の猫』 『ほしのこえ』 に続く、新海誠の3作目の監督作品。2004年11月20日より渋谷シネマライズで劇場公開を開始し、他の劇場でも数日から数ヶ月後に公開が開始された。

前作以上の作画のクオリティと巧みな演出音楽とのマッチングが大いに評価され、宮崎駿監督の『ハウルの動く城』などを抑え、第59回毎日映画コンクールアニメーション映画賞を受賞した。

また2005年12月26日には、エンターブレインから加納新太による小説版が刊行された。さらに月刊アフタヌーンにて、佐原ミズによるマンガ版が連載。

ストーリー

日本が津軽海峡を挟んで南北に分割占領された、別の戦後の世界が舞台。

1996年北海道は「ユニオン」に占領され、「蝦夷」(えぞ)と名前を変えていた。ユニオンは蝦夷に天高くそびえ立つ、謎の「ユニオンの塔」と呼ばれる塔を建設し、その存在はアメリカとユニオンの間に軍事的緊張をもたらしていた。

青森に住む中学3年生の藤沢浩紀白川拓也は、津軽海峡の向こうにそびえ立つ塔にあこがれ、「ヴェラシーラ(白い翼の意)」と名づけた真っ白な飛行機を自力で組立て、いつかそれに乗って塔まで飛ぶことを夢見ていた。また2人は同級生の沢渡佐由理に恋心を抱いており、飛行機作りに興味を持った彼女にヴェラシーラを見せ、いつの日にか自分たちの作った飛行機で、佐由理を塔まで連れて行くことを約束する。

しかし、突然佐由理は何の連絡も無いまま2人の前から姿を消してしまう。動揺した2人は飛行機作りを止め、浩紀は東京高校へ、拓也は地元の高校へ進学し、彼女が消えた喪失感を埋め合わせるように日々を送る生活が続いた。

3年後の1999年、ユニオンとアメリカの緊張はさらに高まり開戦が現実になりそうな気配の中、塔の秘密が明らかとなっていく。その一方で、佐由理の行方も明らかになる。彼女は中学3年の夏から3年間もの間、原因不明(96年型変ナルコレプシー)のまま眠りつづけており、東京の病院へ入院していた。

やがて塔と佐由理との間に衝撃的な関係があることを知った浩紀と拓也は、彼女を連れてヴェラシーラを塔まで飛ばす決意をする。宣戦布告後の戦闘の最中、ヴェラシーラは津軽海峡を越えて塔へと飛ぶ。あの遠い日に、彼らが約束した場所へ…。

登場キャラクター

藤沢 浩紀(ふじさわ ひろき)
- 吉岡秀隆
本作の主人公。中学時代は弓道部に所属していた。ムキになりやすいなど、少し子供っぽい性格。佐由理が2人の前から消えたショックから、約束の場所であった「ユニオンの塔」が見えなくなるよう、中学卒業後は東京の高校に進学し、学校寮に寄宿している。佐由理の影響を受けたのかヴァイオリンを弾き始め、拓也と再会した時には演奏ができるようになっていた。
白川 拓也(しらかわ たくや)
声 - 萩原聖人
中学時代はスケート部に所属。ヒロキとは対照的に、理知的で大人びた性格。中学卒業後は、地元の高校に進学した。物理学に才があり、岡部の紹介で富澤研究室に外部研究員として参加し、「ユニオンの塔」の研究をしている。
沢渡 佐由理(さわたり さゆり)
声 - 南里侑香
本作のヒロイン。浩紀と拓也が密かに思いを寄せている同級生。性格は非常に明るいが、どこか儚げな少女。ヴァイオリンが弾ける。ヴェラシーラで「ユニオンの塔」まで飛ぶことを楽しみにしていたが、中学3年の夏に原因不明の睡眠障害を発症し、東京の病院(小説版では、国鉄総合病院)に入院する。以後、2人の前から姿を消す。なお、沢渡が冒頭の授業中朗読しているのは、宮沢賢治の詩集「春と修羅」に含まれる「永訣の朝」である。
岡部(おかべ)
声 - 石塚運昇
飛行機の部品代稼ぎのために、浩紀と拓也がアルバイトをする蝦夷製作所の社長。バツイチであり、南北分断により、妻と別れている。工場では米軍の下請けで、ミサイル等を組み立てている。富澤とは旧知の仲。
富澤 常夫(とみさわ つねお)
声 - 井上和彦
青森アーミーカレッジに所属する、戦時下特殊情報処理研究室の室長。「塔」の研究をしている。岡部とは旧知の仲。
笠原 真希(かさはら まき)
声 - 水野理紗
富澤研究室で脳科学を研究する若き研究員。年下の拓也に想いを寄せている。
水野 理佳(みずの りか)
声 - 中川里江
東京の高校で浩紀が知り合った少女。彼氏がおり浩紀を恋愛の対象外だと公言するものの、浩紀には特別な感情を抱いている。映画版では踏み切りで浩紀と共に一度登場したきりだが、小説版では東京へ進学した以降の浩紀の行動に大きく関ってくる。
チョビ
岡部の工場に住みついているNHKのショートアニメ『アニ*クリ15』には「猫の集会」の主人公として、また『秒速5センチメートル』にも登場している。

用語

ユニオン
戦後日本の蝦夷(北海道)を占領している国。
塔の着工が「戦後直後の1974年」となっているが、現実の歴史との異同やどのような経緯・理由で戦後南北分断に至ったかまでは映画中に描写が無い。小説版によると、戦後にドイツと同様の分割統治によりソ連占領下に置かれた北海道が、1956年にユーラシア大陸の全共産国家を統合する「ユニオン圏」に統合され、1975年に南との国交を断絶した、とある。
ユニオンの塔
南北分断後に蝦夷に建設された白い巨大な塔。建設目的は不明。25年、日常の風景に同化した塔はあらゆるものの象徴で、国家や戦争や民族、あるいは絶望や憧れ、その受けとめ方は世代によっても違う。「塔」は誰もが手の届かないもの、変えられないものの象徴として見られている。
その物理的構造に関しては、「内部はナノネットの巨大なリボンで構成」等の富澤の発言がある。設計者は佐由理の祖父である物理学者「エクスン・ツキノエ」で、塔は平行宇宙の情報を受信するためのアンテナ施設、量子塔として建設された。物語では佐由理が原因不明の病気で眠り続けているが、これは塔の捉える平行宇宙の情報が何らかの理由で佐由理の脳に流れ込んでいることが原因であるとされる。
ウィルタ解放戦線
日本、蝦夷で活動するテログループ。南北統一を信念に活動している。名前の由来は、サハリンの先住民族であるウィルタ族から。リーダーは岡部であり、蝦夷製作所の工員もウィルタのメンバーである。後に、拓也も活動に参加する。
ウィルタは裏で米軍と繋がりがあり、「塔」を破壊するための「PL外殻爆弾」を米軍から入手する。この他にユニオンの役人買収、蝦夷への密航などと活動は様々である。

舞台

青森県津軽地方東京が舞台となっている。特に、JR東日本津軽線沿線の駅や地名は複数が描かれている[1][2]

南蓬田駅:架空の学校の最寄り駅。蓬田駅は実在するが、作図の元となったものは蟹田駅であると指摘されている。

青森駅:白川と沢渡が列車を待つ駅

中小国駅:沢渡が降りる駅。ただし、作図の元となったものは今別駅であると指摘されている。

大川平駅:藤沢と白川が飛行機を作っている場所のそばの駅

その他にも周辺にロケ地と考えられる地点が散在する。

また出てくるローカル線車両はキハ40と思われる。

制作スタッフ

  • 原作・脚本・監督・音響監督:新海誠
  • キャラクターデザイン・総作画監督:田澤潮
  • 美術:丹治匠、新海誠
  • 音楽:天門
  • アフレコ演出:三ツ矢雄二
  • 主題歌 「きみのこえ」
    • 作曲・編曲:天門
    • 作詞:新海誠
    • 歌:♥(ハートマーク)(川嶋あい
    • 補編曲:岡澤敏夫
  • 制作・配給:コミックス・ウェーブ

キャスト

関連商品

映像ソフト

  • Blu-ray版 2008年4月18日発売
  • HD DVD版 2008年4月18日発売
  • DVD版 2005年2月17日発売
  • メモリアル特典BOX 2005年11月24日発売
  • DVD サービスプライス版 2009年06月18日発売

サウンドトラック

テンプレート:Infobox 劇中の主題歌を含むBGM全27曲を収録したサウンドトラック。 テンプレート:Tracklist

参考

  1. http://nostalgianostalgie.web.fc2.com/kumo-top.htm
  2. http://purity-standard.com/place/ky/ky01.html

外部リンク

テンプレート:新海誠監督作品