陰山英男

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テンプレート:Ambox-mini 陰山 英男(かげやま ひでお、1958年3月7日 - )は、日本の教育者立命館小学校副校長、立命館大学教育開発推進機構教授安倍内閣の諮問機関「教育再生会議」委員を歴任。小学館の通信添削学習『ドラゼミ』総監修者。大阪府教育委員会委員長。

来歴

兵庫県朝来市(和田山町)出身。岡山大学法文学部法学科卒業。学生時代は放送文化部に所属しアナウンサーを目指すが挫折。佛教大学通信教育部にて教員免許を取得。兵庫県内の小学校で教員生活を始める。教員時代は典型的な“でもしか先生”であったが、同僚教師の過労死を切っ掛けに「命を大切にするなら、まず教師から。自分を犠牲にする教育実践など意味はない」と、授業改革に目覚める。

朝来町立(現在は合併により朝来市立)山口小学校在職当時、同僚、父母なども巻き込んで基礎学力向上のためのメソッドの開発を進め、岸本裕史が提唱した百ます計算やインターネットの活用、科学実験、そして日常の生活を見直すチェックシートの活用など、さまざまな工夫を重ねて、成果を上げる。

また、現場の教員たちの自主的な研究会「学力の基礎を鍛えどの子も伸ばす研究会」に小河勝らと共に所属。広島県尾道市教育委員会による校長の公募に応じて、2003年4月より、尾道市立土堂小学校文部科学省指定研究開発学校)の校長に就任。

2006年4月より、京都市北区に開校の立命館小学校副校長に就任(立命館大学教授を兼務)。同年10月、政府の教育再生会議委員に就任(2008年1月まで)。

2008年10月1日、大阪府教育委員に就任(2012年から委員長)。

特徴

百ます計算」ばかりがメディアでは注目される結果となったが、陰山の教育法の根底にあるのは「基礎的な生活習慣を身につけさせること」と「反復練習」であり、「百ます計算」は後者の一部に過ぎない。

また、一般的に陰山の名を世に知らしめるきっかけになったのが「百ます計算」である。その為、世間では「『百ます計算』は陰山英男が発案した。」との誤解がまだまだ多いが前述の通り、岸本裕史が考案したものである。

陰山メソッドの主な特徴
  • 朝食は必ず摂らせる。米飯食が望ましい(腹持ちが良い為)。朝食を摂らせないことは虐待と同じと言い切る。
  • 遅くとも22時には就寝させ、テレビは出来るだけ見せない。
  • 深夜まで塾などで勉強させることは推奨しない。
  • 勉強には集中力が必要。長く勉強しても効果はない。
  • 勉強に集中するためには睡眠が不可欠。睡眠時間の短い子には正答率が低い傾向が見られるが、逆に長すぎても正答率が低い傾向にある。

批判

後藤和智評論家
後藤は陰山の子供の睡眠時間に関する発言を引用しつつ「正気の沙汰で書いているのだとしたら、陰山氏は本当に教師として相応しいマインドを持っているのか、と疑いたくなってしまう文章である。(中略)それが本当に影響を及ぼしているか、ということに関して陰山氏は具体的なデータを示すべきだろう」と述べている。
また、陰山の「テレビ視聴についてはいろいろ議論があるが、音読なみに脳を活性化させる親子の対話や言語能力の獲得に必要な読書の時間を食ってしまっていることは間違いない。」との断定口調の発言に対しても「そのデータを提示した上で説明する必要があるのではないか。」と主張している[1]
向山洋一TOSS主宰者)
向山は学力低下論争のA級戦犯の一つとして百マス計算を取り上げ、「学力低下をもたらした一つは「百マス計算」である。害の大きい反復練習だった。」と述べる。また、百マス計算の実施により「教室に一割近くいるといわれる「軽度発達障害の子」が悲鳴をあげている。」と主張している[2]

なお、陰山の言う、脳の活性化に関しては複数の脳科学者からの批判がある[3][4][5][6][7][8]。ただし、脳科学者そのものの科学的妥当性に疑義が呈されることがあることに留意されたい(脳科学の項を参照)。

主な著作・共著

  • やっぱり『読み・書き・計算』で学力再生-兵庫県・山口小学校10年の取り組み(小学館2001年
  • 本当の学力をつける本(文藝春秋2002年
  • 学力低下を克服する本 小学生でできること中学生でできること(文藝春秋, 2003年
  • 奇跡の学力 土堂小メソッド(文藝春秋, 2004年
  • 驚異の学力づくり (川島隆太、杉田久信との共著)(フォーラム・A 2004年3月16日)

メディア

参考資料

  1. http://kgotoworks.cocolog-nifty.com/youthjournalism/2005/04/post_5e4b.html
  2. 『日本の論点』2007 論点-66 向山洋一著「反復指導法こそ、算数力低下の真犯人。学力向上は教科書の教え方次第」590-593頁より引用。
  3. 脳活性化ドグマの蔓延 澤口俊之ブログ「脳科学者はかく稽ふ」
  4. 大阪大学大学院 生命機能研究科 生命機能専攻 認知脳科学研究室資料
  5. 理研BSIニュース第33号:「脳」ブームの危うさ 理化学研究所脳科学総合センター
  6. 加藤忠史『「脳を鍛える」ブームの根底にあるもの』
  7. 入來篤史北澤茂佐倉統本田学青野由利金子武嗣兼子将毎川端祐人坂井克之長谷川一松村京子『“神経神話”が問いかけるもの。』科学、77 252-258頁
  8. 榊原洋一『「脳科学」の壁 脳機能イメージングで何が分かったのか』講談社プラスアルファ新書

関連項目

外部リンク