鉄道営業法

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テンプレート:Ambox テンプレート:Infobox 鉄道営業法(てつどうえいぎょうほう、明治33年3月16日法律第65号)は、鉄道の職制、運転、運送等に関する日本法律である。所管官庁は国土交通省。なお2010年現在、2006年3月31日改正が直近の改正となっている。

構成

  • 第1章 鉄道ノ設備及運送(1条 - 18条ノ4)
  • 第2章 鉄道係員(19条 - 28条ノ2)
  • 第3章 旅客及公衆(29条 - 43条)

鉄道ノ設備及運送、鉄道係員、旅客及公衆の3章からなる。鉄道運送の安全の確保と円滑な利用のために事業者と利用者(消費者)が守るべきルールを規定し、罰則もある。下位法令に、国土交通省令として、鉄道の施設と車両の構造を定める鉄道に関する技術上の基準を定める省令、運転保安規範を定める運転の安全の確保に関する省令(軌道法の下位法令でもある)、運賃その他の運送条件を定める鉄道運輸規程などがある。

本法の適用対象は鉄道であり、軌道法上の軌道は対象外である。

主な法解釈

以下、原文はカタカナである[1]

  • 第15条第2項『乗車券を有する者は列車中座席の存在する場合に限り乗車することを得』は、乗車券を持つ乗客には空席に座る権利がある事実を定める条文であり、鉄道事業者に対して空席がなければ客を乗せてはならない義務を課しているわけではないものとされている[2]
  • 第26条『鉄道係員旅客を強いて定員を超え車中に乗込ましめたるときは30円以下の罰金又は科料に処す』は、旅客の意思に反して定員を超えて乗車させることを指しており、旅客が自分の意思で満員の列車に乗り込もうとする場合には当てはまらないものとされている。押し屋が旅客を列車内に押し込む行為も、旅客が自分の意思で乗車しようとしているのであればこの条文に抵触しないものとされている[3]
  • 第34条『制止を肯せすして左の所為を為したる者は十円以下の科料に処す』、同2項『婦人の為に設けたる待合室及車室等に男子妄に立入りたるとき』、第42条『左の場合に於て鉄道係員は旅客及公衆を車外又は鉄道地外に退去せしむることを得』、第2項『(前略)又は第三十四条の罪を犯したるとき』について、国土交通省によると、平成年代ころから導入された通勤列車の女性専用車両に関しては、鉄道会社が利用者にあくまで協力を求めているものであり、適用されない[4]テンプレート:See also

鉄道と軌道での矛盾

軌道法には、本法のような規定がなく、省令である軌道運輸規程及び軌道係員規程が定める。軌道運輸規程には罰則があるが、法律の直接委任がない。そのためされたものではなく、諸説あるが遅くとも、昭和22法律第72号(日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律)第1条の規定により昭和22年12月31日限りで、それらの規定が失効している。それ以外にも、鉄道営業法には規制や罰則があるが、軌道法令では対応しなかったため、軌道では適用されないものがある。

本法に対応するものが失効している軌道法令

営業
罰則
  • 運送品の種類・性質の詐称。(軌道運輸規程第17条・鉄道営業法第30条に相当)
  • 軌道係員の制止に反して客車の乗降口以外からの乗降、旅客の非乗用場所への乗車、喫煙禁止の車内で喫煙。(軌道運輸規程第19条・鉄道営業法第43条に相当)
  • 軌道係員の許諾を受けないで新設軌道内への立入。踏切番人の制止に反し踏切道に立入。(同規程第20条・同法第37条に相当)
  • 軌道係員による前二条の罪を犯し又は車内に於て秩序を紊る者の車外又は軌道地外に退去。 (同規程第21条・同法第42条に相当)
  • 軌道係員の職務の失行。(同規程第22条・同法第24条に相当)

軌道法令で対応しなかった例

営業
罰則
  • 鉄道係員の許諾を受けずに有効な乗車券を所持せず乗車、乗車券に指示したのより優等の車両に乗車、乗車券に指示した停車場で下車しない場合。(第29条)
  • 列車警報機の濫用。(第32条)
  • 列車運転中の乗降。列車運転中の側面扉の開放。(第33条)
  • 権限ある者から制止を受けたのに従わず、婦人のための待合室・車室に男性が妄りに立入。停車場・鉄道地内の吸煙禁止場所で喫煙。(第34条)
  • 鉄道係員の許諾を受けずに車内、停車場その他鉄道地内で、旅客又は公衆に対し寄附を請い、物品の購買を求め、物品を配付しその他演説勧誘等の行為。(第35条)
  • 車両、停車場その他鉄道地内の標識掲示の改竄、毀棄、撤去又は灯火を滅し又はその用を失わせること。信号機の改竄、毀棄、撤去。(第36条)
  • 暴行脅迫をもって鉄道係員の職務の執行を妨害。(第38条)
  • 車内、停車場その他鉄道地内においての発砲。(第39条)
  • 列車への瓦石類の投擲。(第40条)
  • 鉄道係員による旅客と公衆を車外・鉄道地外への退去。 この場合の支払い済み運賃不還付。(第42条)
  • 専用車以外への伝染病患者の乗車、伝染病患者のその病気の隠蔽。この場合の支払い済み運賃不還付。(第40条)

免許・資格

脚注

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関連項目

  • 罰則規定のうち、罰金の多額が2万に満たないもの及び科料に多額が付されているものについては、罰金等臨時措置法第2条が適用される。従って、「○○円以下の罰金」という文言は「(1万円以上)2万円以下の罰金」と、「○○円以下の科料」という文言は「(千円以上1万円未満の)科料」と、それぞれ読み替える。
  • 本当は「満席の場合は電車に乗ってはいけない」 - プレジデントロイター、2010年5月6日
  • 鉄道法規漫筆 9. 定員のはなし、和久田康雄、電気車研究会鉄道ピクトリアル』1963年4月号(通巻143号)
  • 朝日新聞大阪版(2007年1月28日)