重力波天文学

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重力波天文学(じゅうりょくはてんもんがく)は、天文学の一分野である。アインシュタインによる一般相対性理論アインシュタイン方程式から予言される重力波を観測しようと試みているが、2011年現在も直接計測は成功しておらず研究中である。

歴史

1969年に米国のウェーバーが検出に成功したという報告を出したが、今は間違いであったと考えられている。しかし、ウェーバーが開発した重力波測定装置は、その後改良が行われ観測を行っているようである。その後、間接的な観測方法(パルサータイミングの変化を捉える。ただし、パルサーまでの正確な距離が求められないと、正確な観測は難しい)や人工衛星を用いたマイクロ波ドップラー効果による検出などが考案された。現在は、レーザー干渉型検出器(ファブリペロー式マイケルソン型レーザー干渉器)などが開発され、それが観測に用いられている。

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現在の状況

日本では国立天文台三鷹キャンパスに設置されているTAMA300は、局部銀河群内における超新星爆発等の現象が起これば重力波を捉えられると期待されている。また、現在稼動している中では一番精密な重力波望遠鏡のため、他の重力波望遠鏡の較正等でも連携が行われている。米国では、en:LIGOが観測を開始しており、乙女座銀河団内における超新星爆発等の現象が起これば重力波を捉えられると期待されている。欧州では、VIRGO、GEO600が観測を開始し、丁度中間にある領域での重力波観測ができるのではないかと期待されている。

なお、重力波は非常にそのエネルギー密度が低いため、外乱ノイズ等の影響を受けやすい。よって、観測時間が延びることと同様にして、振動を取り除くなどの領域での改良が今も続けられている。

現在、世界的な重力波検出のためのネットワーク観測網の整備に向けた開発研究が続けられている。

将来計画

日本では、神岡鉱山の中に低温技術を駆使した大型干渉計(LCGT)を建設する計画を提案し、技術的な開発を続けている。

JPL及びESA等が進めている、LISA計画では、黄道面に対して20度の傾きをもった人工惑星軌道へ500万キロメートルの基線長3つを持つ宇宙重力波望遠鏡を構築するプロジェクトが進められている。この観測装置では、地上では捉えられない、mHzの重力波を捉えることができる。

日本においては、宇宙重力波望遠鏡としてDECIGO計画が進められている。この観測装置は、地上では地面振動の影響で観測困難とされる0.1Hz〜10Hzの重力波を捉えることを目標としている。

なお、宇宙背景重力波は、その観測波長のドップラー効果によって、重力とその他の力(強い相互作用弱い相互作用電磁力)が分離した時の宇宙の状態を観測できる点では、光学・高エネルギー観測よりも、宇宙誕生時により近い世界を明らかにできるかも知れない。

Einstein@Home

カリフォルニア大学バークレー校が中心となって進めている、BONICプロジェクトの内、ウィスコンシン大学のチームが行っている、Einstein@Homeプロジェクトでは、余ったPC時間を活用して重力波検出のための、公開プロジェクトを実施している。なお、観測データはLIGO及びGEO600等の検出装置から得られたものである。

脚注

  1. 人工衛星を用いたマイクロ波のドップラー効果を利用した検出のためには、地上の精密な時計と同期させた、精密な時計を積んだ人工惑星を打ち上げ、それを活用することになる。現在のところ、このような計画はない。しかし、将来打ち上げられる惑星探査機に精密な時計(原子時計)と精密な発信器(高精度の発信機)を搭載すれば良いだけのことであり、今後の展開に期待が寄せられている。なお、重力場計測のため、2007年に打ち上げられた日本の月探査衛星かぐやでは、4ウェイドップラー計測も含めたドップラー計測が行われている。

関連項目

参考文献

  • 日本物理学会編、宇宙を見る新しい目、日本評論社、2004 pp.83-pp.106
  • 中村卓史、三尾典克、大橋正健(編)、重力波を捉える、京都大学学術出版会、1998
  • J.Weber,Phys Rev Lett.22,1969,1320
  • K.S.Thone, Gravitational Raditation, 300 Years of Gravitation, Cambridge University Press,1987
  • K.Kuroda et al.,Class Quantum Grav.20,2003,S871

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