道路交通情報通信システム

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ファイル:VICSPopup.jpg
走行中ビーコンから情報を受信すると、カーナビ画面に渋滞、工事、主要地点までの所要時間といった道路情報を示した簡易地図や、交通安全喚起メッセージがポップアップする。

道路交通情報通信システム(どうろこうつうじょうほうつうしんシステム、Vehicle Information and Communication System、略称VICSビックス[1])は、日本財団法人道路交通情報通信システムセンター(略称・VICSセンター)が収集、処理、編集した道路交通情報を通信・放送メディアによって送信し、カーナビゲーションなどの車載装置に文字や図形(地図など)として表示させる国内向けのシステムである。高度道路交通システム(ITS)の一翼を担っている。

VICSによって提供される情報としては、渋滞情報、所要時間、事故・故障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置、駐車場・サービスエリアパーキングエリアの満車・空車情報などがある。これらの情報は日本道路交通情報センター(JARTIC)、都道府県警察、道路管理者から収集している。

VICSの種類

ファイル:Vicsbeacon electricwaveunit onhighway.jpg
高速道路脇に設置されている電波ビーコン
ファイル:VICS光ビーコン受信画面.jpg
首都高速道路でのVICS受信画面

情報提供は次の通信・放送メディアが利用される。なおこれらの情報を取得するにはVICS対応のカーナビを使用する必要がある。また、以下に説明する電波ビーコンや光ビーコンから情報を入手するには、カーナビに専用のビーコンユニットを接続する必要がある。

電波ビーコン・ITSスポット

電波ビーコンは高速道路や都市高速を中心に、道路脇に設置されている(準マイクロ波:2499.7MHz、占有周波数帯幅:85kHz)。概ね200km程度前方までの高速道路の情報を提供している。都市部では並行する一般道路の情報も提供する場合もある。ビーコン数は全国で3,005基(2008年4月現在)。 電波法令上は水防道路用特別業務の局である。

2010年後半ごろから電波ビーコンに近接して、ITSスポット用DSRC路側機(マイクロ波:5.8GHz帯、占有周波数帯幅:4.4MHz)が整備され、こちらからも情報提供が行われている。電波ビーコンと比較して情報提供量が非常に多いことから、より広範囲の交通情報が取得できるほか、沿道ライブカメラの映像を転送することもできる。 これは狭域通信基地局である。

電波ビーコンとITSスポットは互換性がなく、前者は主にビーコンユニットの中にセットされているが、後者はDSRC車載器を利用しているため、対応車載器と対応ナビをつなげる必要がある。(DSRC車載器にはETC機能が内蔵されており、ETC車載器としても利用可能だが、セットアップ時にはDSRCのセットアップとETCのセットアップを個別に行わなければならず、1台の車載器に対しセットアップ手数料が二重にかかることになるので注意が必要。)

電波ビーコンは平成34年3月31日までに廃止され、今後はITSスポットが整備される。[2]

光ビーコン

都市部やその周辺の主要な一般道路を中心に、道路上に設置されている(光学式車両感知器赤外線)。前方30km程度先までの一般道の情報を、都市部では加えて周辺の高速道路の情報も提供する。ビーコン数は全国で約54,000基(2011年3月現在)。

一般道に設置されている渋滞センサーには単純に渋滞の有無を検知するだけの逆ラッパ型のもの以外に、個々の車両に搭載されている光ビーコンユニットが持つID番号を受信するものがある。これは受信したID番号をVICSセンターにて集計、あるID番号が一定区間における実際の通過所要時間を計算し、より正確な渋滞情報として活用するものである。 なお、ビーコンユニットが持つIDは、エンジンを掛ける都度、つまり、ビーコンユニットの電源が入る度にランダムでIDが生成されるので、自動車が持つナンバープレートとは違い、IDのみで特定車両を追跡するのは極めて難しい。

FM多重放送

各地のNHK-FM放送の放送波に多重化して、都道府県単位の広域情報を文字多重放送で提供。放送局数は基幹局53局、中継局465局(2008年4月現在)。

  • NHK-FMは月に2回、日曜深夜から月曜未明にかけて、機械の保守・点検のために放送を停止する。
  • NHK-FMのFM文字多重放送は2007年3月に終了したが、VICSに関しては今後も継続する。

FM多重放送(ARIB STD-B3)はDARCを使っており、変調にLMSK(Level-controlled Minimum Shift Keying)、誤り訂正に(272,190) 積符号(短縮化差集合巡回符号)が用いられている。

地上デジタルラジオ

NHK・VICS(関東地区9101チャンネル関西地区9102チャンネル)のデータ放送で実施。2003年10月10日サービス開始、2007年4月2日終了。

VICSの表示形態

VICSによる各種情報は以下の3パターンによって表示される。いずれも上記のどのメディアからも取得することができるが、メディアによって提供範囲が異なる。

LEVEL.1 文字表示型
FM文字多重放送のように文字のみで渋滞・所要時間等の情報を表示する。
LEVEL.2 簡易図形表示型
図形によって渋滞等の情報を地図状に表示する。道路名は一部平仮名になったり、道路名そのものが表示されない場合もある。なおVICSホームページでは、FM多重放送にて地図状で表示する路線・地名・交差点名等を確認することが出来る。
LEVEL.3 地図表示型
カーナビの地図に重ね合わせる形で渋滞等の情報を表示する。渋滞情報の他、一部駐車場の混雑状況も表示できる。

沿革

1980年代

  • 1986年 - 建設省土木研究所・民間25社をメンバーとして、「路車間情報通信システムRACS」の実験開発
  • 1987年 - 財団法人日本交通管理技術協会が主体となり、警察庁の指導のもと、民間15社にて「新自動車交通情報通信システムAMTICS」の実験開発

1990年代

  • 1990年3月 - 警察庁・郵政省・建設省をメンバーとして、「道路交通情報通信システム連絡協議会(VICS連絡協議会)」発足
  • 1991年10月 - 「VICS推進協議会」発足
  • 1994年9月 - 「道路交通情報通信システムセンター設立準備室」をVICS推進協議会内に設置
  • 1995年6月 - 「VICSセンター(仮称)」設立発起人会開催
  • 1995年7月1日 - 「財団法人道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)」設立
  • 1995年11月 - 第2回ITS世界会議(横浜)でVICS搭載車の試乗会を実施、VICSが実用段階にあることを示す
  • 1996年4月23日 - 東京・神奈川・埼玉・千葉4地区で情報提供サービス開始
  • 1996年12月17日 - 大阪地区で情報提供サービス開始
  • 1997年4月24日 - 愛知地区で情報提供サービス開始
  • 1997年11月25日 - 京都地区で情報提供サービス開始
  • 1997年12月 - 第3回地球温暖化防止国際会議(京都)に際し、VICS搭載車の試乗会を実施
  • 1998年1月12日 - 長野地区で情報提供サービス開始
  • 1998年2月 - 長野オリンピック期間中に特別対応
  • 1998年3月31日 - 兵庫地区で情報提供サービス開始
  • 1999年4月 - 福岡地区(6日)、広島地区(22日)で情報提供サービス開始
  • 1999年5月 - 宮城地区(7日)、札幌地区(20日)で情報提供サービス開始
  • 1999年11月30日 - 静岡地区で情報提供サービス開始
  • 1999年12月21日 - 群馬地区で情報提供サービス開始

2000年

  • 3月7日 - 岡山地区で情報提供サービス開始
  • 4月7日 - 福島地区で情報提供サービス開始
  • 5月11日 - 沖縄地区で情報提供サービス開始
  • 6月9日 - 宮崎地区で情報提供サービス開始
  • 7月 - 岐阜地区(14日)、三重地区(22日)で情報提供サービス開始
  • 7月 - 沖縄サミットに際し、VICS情報のパネル展示を実施
  • 8月10日 - 山口地区で情報提供サービス開始
  • 9月22日 - 茨城地区で情報提供サービス開始
  • 12月14日 - 旭川地区で情報提供サービス開始

2001年

  • 1月19日 - 和歌山地区で情報提供サービス開始
  • 2月16日 - 滋賀地区で情報提供サービス開始
  • 3月 - 奈良地区(9日)、栃木地区(22日)で情報提供サービス開始
  • 5月3日 - 山梨地区で情報提供サービス開始
  • 6月18日 - 新潟地区で情報提供サービス開始
  • 7月19日 - 石川地区で情報提供サービス開始
  • 8月6日 - 函館地区で情報提供サービス開始
  • 9月 - 熊本地区(7日)、大分地区(21日)で情報提供サービス開始
  • 10月19日 - 室蘭地区で情報提供サービス開始
  • 11月16日 - 香川地区で情報提供サービス開始
  • 12月7日 - 愛媛地区で情報提供サービス開始

2002年

  • 1月13日 - 佐賀地区で情報提供サービス開始
  • 2月22日 - 長崎地区で情報提供サービス開始
  • 3月1日 - 鹿児島地区で情報提供サービス開始
  • 5月17日 - 徳島地区で情報提供サービス開始
  • 6月27日 - 高知地区で情報提供サービス開始
  • 7月17日 - 福井地区で情報提供サービス開始
  • 8月21日 - 富山地区で情報提供サービス開始
  • 9月19日 - 山形地区で情報提供サービス開始
  • 10月4日 - 秋田地区で情報提供サービス開始
  • 11月22日 - 青森地区で情報提供サービス開始
  • 12月13日 - 島根地区で情報提供サービス開始

2003年

  • 1月24日 - 鳥取地区で情報提供サービス開始
  • 2月 - 岩手地区(14日)、釧路・帯広両地区(26日)で情報提供サービス開始
  • 10月10日 - 東京・大阪地区で地上デジタル音声放送実用化試験放送による情報提供サービス開始

2004年

  • 2月13日 - 北見地区で情報提供サービス開始

2007年

  • 4月2日 - 地上デジタル音声放送実用化試験放送による情報提供サービスを終了

2011年

  • 3月30日 - ITSスポットサービス運用開始。ただし東北地方、新潟県内と関東地方のNEXCO東日本管内は東日本大震災の影響で延期(当初は全国一斉に運用開始する予定だった)。
  • 7月14日 - 新潟県内と関東地方のNEXCO東日本管内でITSスポットサービス運用開始。
  • 8月12日 - 東北地方でITSスポットサービス運用開始。これにより全国で運用開始となる。

VICSの問題点

  • FM多重は都道府県単位の情報となっているため、カーナビゲーションで県境を越えたルートを検索(例:東京→横浜)すると目的地付近の渋滞情報が反映されないことが多い。これを補う仕組みとして、ホンダパイオニアは、携帯電話/PHSとインターネットを利用した渋滞情報を取得するサービス「スマートループ」を独自に始めている。他の車が実際に走行したデータと、VICSによる渋滞情報を複合処理し、よりきめ細かい道路交通情報を提供する。ホンダの純正カーナビ「Honda インターナビ」やパイオニアのカーナビの一部機種で利用できる。
  • FM多重の中には、カーオーディオのFMチューナーを使用しているものがあり、オーディオのスイッチがOFFになっているときや、ラジオ(FM民放とAM局の放送)を聴いているときは、受信できなくなる機種がある。
  • 当たり前だが、渋滞が起こってからの情報となるため、その地点に到達した時には、既に渋滞が解消しているケースもある。逆に、空いているルートを選んだつもりが、その地点に到達したときには渋滞が始まっているケースもある。また、路上駐車駐車場待ちの列、路上工事の車両など、が列になって道路上に停車していることに対し渋滞と判断をするため、実際には渋滞していないケースもあり、さらにはセンサー付近の(季節によってかなり変動する)街路樹を渋滞と判断することもあるので、情報には十分に注意する必要がある。
  • FM多重はNHK-FMの電波を利用して行われているが、あくまでもデジタル波のため、NHK-FMの音声が聴こえていても障害物がある所や山間部ではVICSデータを受信できない場合がある(トンネルでラジオの再送信が行われている道路でも、VICSデータのみ再送信をしていない場所が多い)。その逆に、高台等、送信所が見通せる場所では周波数サーチをかけると隣県のNHK-FMの電波を受信できる場合がある。
  • 渋滞センサーが設置されているのは主要な道路に限られるため、それ以外の道路では情報が得られない。この問題点を解消するため、実際に走行している車両からのデータをもとに交通情報を組み立てるのがプローブ交通情報である。

脚注

  1. VICS(ビックス)とは - VICSについて|VICS Web Site
  2. 電波ビーコン(2.4GHz)の今後の扱いについて

外部リンク