軽トラック

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ファイル:Suzuki Carry KX 4WD.JPG
軽トラックの例:スズキ・キャリイ
(写真は12代目)

軽トラック(けいトラック)は、日本軽自動車規格に該当する小型トラックの一種である。

概要

都道府県別の軽貨物車の
保有台数、保有比率
(2013年3月末)[1]
都道府県 台数
(台)
比率
(%)
北海道 274,649 25.9
青森県 140,286 32.4
岩手県 152,498 35.2
宮城県 172,219 29.9
秋田県 134,434 37.7
山形県 136,519 34.5
福島県 209,976 34.1
茨城県 282,194 34.0
栃木県 170,044 31.5
群馬県 204,118 32.4
埼玉県 318,163 28.1
千葉県 323,971 32.0
東京都 303,616 41.8
神奈川県 275,173 32.5
新潟県 231,542 29.8
富山県 テンプレート:092,413 27.1
石川県 テンプレート:089,801 27.4
福井県 テンプレート:083,802 31.4
山梨県 113,095 36.7
長野県 313,994 38.6
岐阜県 182,217 29.4
静岡県 294,890 27.9
愛知県 373,686 25.6
三重県 193,812 32.3
滋賀県 122,205 29.4
京都府 154,099 32.8
大阪府 360,594 33.9
兵庫県 314,056 31.6
奈良県 テンプレート:092,714 29.1
和歌山県 131,228 35.5
鳥取県 テンプレート:081,540 35.5
島根県 テンプレート:096,912 35.2
岡山県 213,101 31.5
広島県 215,432 28.4
山口県 144,709 30.4
徳島県 テンプレート:099,191 35.3
香川県 109,458 31.5
愛媛県 164,581 34.0
高知県 107,944 37.8
福岡県 342,581 28.0
佐賀県 テンプレート:098,930 31.2
長崎県 147,937 31.3
熊本県 192,603 31.7
大分県 133,717 32.3
宮崎県 161,899 35.7
鹿児島県 243,620 37.1
沖縄県 140,751 26.3

名称のとおり、軽自動車の規格に合わせて作られたトラックで、一般に「軽トラ」と略される。最大積載量は350kg以下である。1960年頃までは三輪車が主流だったが、1960年代前期頃から四輪モデルが発展し、市場の主流となった。

また1960年代まで荷台は低床式の後方一方開きが主流であったが、1960年代後期以降は、特装車両を除けば、より汎用性の高い高床式の三方開きが一般化し、後輪のホイールハウスを荷台から排除して、荷台の実効面積を広く使えるようになった。

荷台のサイズについては、縦6尺(180cm)×横3尺(90cm)に若干の余裕を持たせたサイズとなっている。この寸法は、現在でも日本で多く用いられている1尺(30cm)・1.5尺(45cm)という尺貫法の名残である。このため、建築資材のパネル材やロール紙、農業用コンテナやダンボールの収まりが良い。

現行車種はすべて並列2座キャビンを持つキャブオーバー式(フルキャブ)ないしセミキャブオーバー式(セミキャブ)だが、かつてはポータートラックマイティボーイなどボンネット式(ピックアップ)やミゼットIIのような1人乗り(マニュアル・トランスミッション車のみ)のコミューター的な軽トラックも存在していた。1990年代からは衝突安全基準を満たすためにクラッシャブルゾーンを広く取れるセミキャブを採用する車種が一時増えたものの、ホイールベースが必然的に伸び、車内足先を前輪ホイールハウスが占有して居住性・乗降性に難が生じる欠点も見られた。狭隘な農道などでの小回り性能や荷台長などではフルキャブに利があることから、2014年時点では後述する電気自動車三菱・ミニキャブMiEVトラックを除き、フルキャブへの回帰が進行している。

駆動方式は縦置きエンジンフロントエンジン・リヤドライブ(FR)が一般的で、前述のボンネット式ピックアップを除いては、エンジンの搭載位置はキャビンのシート若しくは荷台の真下に配置されるアンダーフロアエンジン形式である。このようなアンダーフロア形式のFR車はサスペンションは前輪のみがマクファーソンストラットなどの独立懸架、後輪はリーフ式サスペンションによる車軸懸架である場合が多い。

稀に横置きエンジンを採用する場合もあり、ホンダ・アクティミッドシップ(MR)で採用し、2012年までの自社製造されたサンバートラックリヤエンジン・リヤドライブ(RR)であった。このようなエンジンレイアウトは後軸荷重を増加させることで空荷のときでも十分な後輪トラクションを得ることを重視しているが、フロントエンジン・フロントドライブの車両と同様にドライブシャフトの定期メンテナンスの必要性(ゴム製のダストブーツの交換)が生じる欠点が存在する。ただしFF車のドライブシャフト用ダストブーツのように伸縮・曲がりは生じないため10万キロ以上経過しても問題ない場合が多い。

軽トラックは悪路で使用されることが多いため、ほとんどのメーカーで後輪駆動モデルと四輪駆動モデルが併売されており、切り換え方式はパートタイム方式が主流である。当初はレバー式が多かったが現行型はプッシュボタンが主流となっている。また、副変速機を用いて悪路走行に対応した車両も存在し、リアデフロック(またはリミテッド・スリップ・デフ)機能のオプション設定がなされた車種もある。タイヤも悪路向けのマッドテレーンタイヤが農業用軽トラック向けにラインナップされている。

エンジンは低速から粘り強いトルクを発揮するセッティングがされているものが多く、燃費などの経済性を重視した自然吸気のものがほとんどである。乗用軽自動車において燃料噴射装置の装着が一般的となった後も、生産コストを抑えるためにキャブレターを採用していた車種も多く、平成12年排出ガス規制の施行まで燃料噴射装置への完全移行は成されていなかった。半ば低速・重負荷走行に特化した出力特性を持たせられる場合が多い為か、高速道路などでの高速巡航を意識したターボを始めとする過給機の装着は一般的ではなく、アンダーフロア形式による搭載スペースの制約[2]によりインタークーラーが純正装着された例は皆無で、サンバートラックのスーパーチャージャー車を除いては長期間生産ラインナップに過給機付き車が残った例も少ない。

変速機はエンジンと同じく低速・重負荷走行に強いローギアードのマニュアルトランスミッション(MT)が一般的で、かつては用途に応じて変速段数の異なるMTが選択できる場合も多かった。デファレンシャルの最終減速比も特に低めに設定されていることが多い。1998年の660cc新規格の発表まではオートマチックトランスミッション(AT)はあまり普及してはいなかったが、今日では全社の軽トラック[3]にAT車が設定されている。

軽自動車であるため、通常のトラックと比べると車両価格や維持費(年間の自動車税(4,000円)や2年毎の重量税を含む車検費用)、任意保険車両保険などが格段に安く、個人や零細事業者による保有・維持が容易である。全体の寸法とホイールベースが小さい点から、狭い農道や建て込んだ住宅街の道路などの狭隘路でも取り回しが容易、という長所もある。

軽トラの使われ方

特に農家では、農業機械や収穫した作物などの運搬のために必需品となっており、耐候性のある2座席の車室を持つことから、日常の短距離移動の道具としての「下駄代わり」にも重宝されている。その普及ぶりから、軽トラックは日本の農村風景における点景の一つにすらなっている。

また、「赤帽」など、軽トラックを使った小口輸送専門の運送業者もある。オートバイトランスポーターとして用いられることもある他、狭隘な集落向けの特殊車両(消防車ダンプトラックタンクローリー、冷凍車など)のベース車輌に用いられる場合も多い。更に近年では軽自動車ならではの機動性をセールスポイントとした小型キャンピングカーのベースにされることも多い。個人商店や建築業などでも商品・道具の運搬などに広く用いられており、日本の風土や日本人の生活に大きく関わっている自動車ジャンルである。

最近では軽トラックに農作物などを積み、広場や封鎖された公道上でこれらの即席販売を行なう「軽トラック市(軽トラ市)」が全国各地で行なわれている。他にも食品関係では石焼き芋を筆頭に焼きそばなどの焼き物系屋台経営にも用いられる。

またホームセンター家具店など大型の商品を取り扱う店舗の場合、客が大型商品を持ち帰るために軽トラックや小型トラック(マツダ・ボンゴトラックトヨタ・ライトエーストラックなど)を一定時間無料で貸しだしているケースも多い。ほとんどの場合AT仕様が圧倒的であり、冬季に積雪の多い寒冷地(特に北海道東北北陸の各日本海側)の場合だとMTの4WD仕様が圧倒的である。

日本国外における軽トラ

軽自動車規格が日本独自のものであるため、日本国内での利用が大半であるが、日本国外の一部にも輸出されている。

アメリカ

アメリカ合衆国においては、日本から業者によって並行輸入されたものがごくわずかに使われているが、衝突安全基準などを満たさないためテンプレート:要出典、ほとんどのでは公道での走行が認められていない。そのため、牧場作業や狩猟に使うオフロード専用の作業車(ATVの代用品)、公園や大学構内などの管理作業用(ゴルフカートの代用品)として使われている場合がほとんどである。

アジア

キョンチャ(경차/輕車)と呼ばれる日本の軽四に似た小型車の規格が存在する韓国においては、デーヴ・ラボ/ダマス(=キャリィ/エブリィ)、アジア/キア・タウナー(=ハイゼット)など現地生産された軽トラ/軽1BOXが存在する。ただし、日本の軽自動車と韓国の軽自動車との規格の違い(例:韓国の方が排気量上限が大きい)から来る差異やLPG車が存在[4]することなど日本の一般的な軽トラックとは違う面もある。

台湾を始め、東南アジア諸国やオセアニアにて日本の軽トラックがノックダウン生産または輸出されている例もあったが、排気量の制約が存在しない現地事情に則して、エンジンの排気量が700ccから1000cc前後にボアアップされて販売される例がほとんどである。

ヨーロッパ

クワドリシクル(quadricycle)と呼ばれる独自のミニカー規格を持つフランスでは、エグザムリジェなどのメーカーが軽トラックに似た小型トラックを製造している。規格は50cc以下の火花点火機関または4キロワット以下の原動機を有する軽量車(Quadricycle léger à moteur)と、最大出力15キロワット以下の原動機を有する重量車(Quadricycle lourd à moteur)の二区分が存在している。クワドリシクル規格の小型トラックは、日本の軽トラックに比較して排気量や最高速度の面では見劣りするものの、今日の軽量車では50ccの排気量制限の対象外である400cc/4kw以下のディーゼルエンジンや電気モーターが主流であり、最大積載量の面においては引けを取らない車両も存在している。

沿革

ファイル:TOYOTA・PIXIS-TRUCK120417.jpg
トヨタ・ピクシストラック(初代、2011年 - 、
9代目ダイハツ・ハイゼットトラックOEM)
  • 1950年代
  • 1960年代
    • 1960年ヤンマーディーゼル(現:ヤンマー)、「KT型」をベースに更に開発を進め、空冷V型2気筒358ccのOHVディーゼルエンジン「2A2形」を搭載したキャブオーバートラック「ポニーKTY型)」を発売[5]。軽自動車史上初のディーゼルエンジン搭載市販車となるが、エンジンの出力があまりにも低すぎるため短命に終わる。
    • 1960年ダイハツ工業ハイゼット発売。ボンネットトラックで登場。
    • 1961年富士重工業サンバー発売。
      • スズキ、キャリイ発売。主な軽自動車メーカーから軽四輪トラックがほぼ出揃い、先駆となった軽オート三輪に引き続き、農家や個人商店を主とした市場を開拓して行く。
    • 1963年8月:本田技研工業T360発売。軽トラック史上初の4連キャブレターを用いた4気筒DOHCエンジンを搭載。セミ・キャブオーバー。
    • 1966年三菱自動車工業(当時・三菱重工業)、キャブオーバー車のミニキャブ発売。
    • ハイゼット、キャリイ(ただしエンジンはシート下)はボンネットトラックで発売され、のちにフル・キャブオーバーボディへ移行した。ホンダ、三菱も当初はボンネット車やセミキャブオーバー車で参入し、後からフル・キャブオーバー車を投入している。全体寸法の制約が厳しい軽四輪トラックでは荷台面積を広く取れるフル・キャブオーバーへの志向が強かった。
    • 1969年東洋工業(現・マツダ)ポーターキャブ発売。同社初の軽キャブオーバートラックだった。
  • 1970年代
    • この時期の初頭までに、ダイハツを最後として軽オート三輪の製造・販売は終了。軽トラックの市場は4輪キャブオーバー型に収斂。
    • 1976年:規格改定。550ccモデルが登場、360ccボディのまま550ccエンジンを搭載したメーカーや暫定的に500ccエンジン搭載などメーカーにより対応が異なった。
    • 1977年
      • アクティ発売。
      • ポーターキャブ、三菱自工製4サイクル水冷2気筒エンジンを搭載した550ccモデルにモデルチェンジ。
  • 1980年代
    • 1980年:サンバートラックにパートタイム四輪駆動モデルが追加。一般的な軽トラックとしては初めての試みで、以後他社にも普及。四輪駆動軽トラックは駆動力向上の効果が著しいため、悪路や農地を走行する農業関係者を中心に好まれるようになる。
    • 1981年:ハイゼットトラックのうち、生産継続されていた360ccモデルが生産終了し、軽自動車運転免許対応自動車の販売が終了した。
    • 1983年:ハイゼットトラックに大型キャビン・短尺荷台の「ジャンボ」シリーズが追加。
    • 1987年:ハイゼットトラック、ミニキャブトラック、キャリイにスーパーチャージャー追加。軽自動車初のスーパーチャージャー搭載事例となるが、エアコンコンプレッサーとは排他装着となった関係で、短期間のオプション設定で終わった。
    • 1988年
    • 1989年マツダスクラムトラックをスズキから(キャリイ)のOEMで発売。ポーターキャブの後継車種にあたる。
  • 1990年代
    • 1990年
      • 規格改定。660ccモデルが登場。
      • サンバートラックのフルモデルチェンジでECVTを設定。軽トラック初の無段変速機搭載事例となるが、重負荷時における電磁クラッチの耐久性にやや難があり、1995年10月のマイナーチェンジで一般的なトルクコンバーター式ATに置き換えられるかたちで廃止された。
    • 1996年:ハイゼットトラックのAT車全て(ただしMT車は「天晴」および「iS」のみ)にDOHCエンジンが搭載。例外的先例のホンダ・T360以来の事例。この後、メーカー内でエンジンを共用化してコストダウンを図る目的で、軽トラックでも軽乗用車と同型のDOHCエンジンをチューニング変更で共用する事例が生じるようになる。
    • 1997年:キャリイにターボ追加。軽トラック初のターボチャージャー搭載事例。
    • 1998年:規格改定。現行660ccモデルが登場。キャリイ、ミニキャブトラック、アクティトラックがセミキャブ化された。ただしハイゼットトラックおよびサンバートラックはフルキャブを継続。
  • 2000年代
  • 2010年代
    • 2011年トヨタ自動車ピクシストラックをダイハツから(ハイゼットトラック)のOEMで発売[6]
    • 2012年:富士重工業、サンバートラックの自主生産分の販売を終了。自主生産モデルのサンバートラックとしては6代51年の歴史に幕を下ろした。それ以後はダイハツから(ハイゼットトラック)のOEMで発売[7]
    • 2013年
      • 三菱自動車工業、ミニキャブMiEVトラックを発売開始[8]。国産の軽トラックとしては史上初の電気自動車となる。
      • キャリイがフルモデルチェンジに伴い2005年から設定されていたフルキャブ仕様へ統合。フルキャブ仕様の設定がないOEMのスクラムトラックはフルモデルチェンジに伴いフルキャブ化する。
      • 日産自動車、NT100クリッパーのOEM元を三菱自動車工業からスズキに変更。
    • 2014年
      • 三菱自動車工業、MiEVを除くミニキャブトラックの自主生産分の販売を終了。ガソリンエンジン搭載車としての自主生産モデルのミニキャブトラックとしては6代48年の歴史に幕を下ろす事となった。それ以後はスズキから(キャリイ)のOEMで発売となった。


メーカーと製品

過去の製品

注・出典

  1. 2013年3月末現在軽三・四輪車県別保有台数と保有シェア(社団法人全国軽自動車協会連合会)
  2. 軽トラックとシャーシを共用する軽ワンボックスでインタークーラーが採用されている例はあるが、エンジンの直上にエアスクープ付きボンネットと共に横置きするか、エンジン前方にラジエーターと共に前置きするなど短い吸気経路でインタークーラーを配置できる前輪駆動の軽トールワゴンと比較して吸気経路や冷却効率で不利な面が多く、アクセルレスポンスも含めた全ての条件を満足する配置を実現することが難しい[1]
  3. ホンダではエンジンおよびギアボックスを搭載するスペースの都合上、4WD仕様にはATを設定していない。
  4. 日本国内でもハイゼットサンバーにはLPG仕様が存在する
  5. 参考画像
  6. TOYOTA、新型軽商用車「ピクシス バン」「ピクシス トラック」を発売 - トヨタ自動車2011年12月1日閲覧
  7. テンプレート:Cite news
  8. 【CEATEC 12】三菱自、ミニキャブMiEVトラック を初公開 - Response 2012年10月1日閲覧。

関連項目

外部リンク

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