大道芸

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大道芸(だいどうげい)は、路上や街頭、または仮設の掛け小屋などで行われるさまざまな芸能の総称[1]路上パフォーマンス(ろじょうパフォーマンス)、またはストリートパフォーマンスとも呼ばれる。路上ライブ、ストリートライブと呼ぶこともある。一般的には、路上において不特定多数の観客に対して芸を演じ、投げ銭を取ることで生計を立てる芸を指すが、投げ銭システムを取らず、主催者などから出演料をもらい、イベント等で芸を披露する場合もある。

概説

ファイル:Houka SumiyoshiOdori.jpg
人倫訓蒙図彙』(元禄3年(1690年)頃刊行)の挿図より「放下」(右)と「住吉踊り」(左)
放下師は路上で皿回しをしている。

大道芸そのものは日本でも古くからあり、室町時代絵巻にも大道芸人が描かれている。その形態は、古代の宗教表現に、中世唱門師の芸や、中国由来の散楽仏教などが混じり合ったものであった[2]

ファイル:Hayatake Torakichi FujiHatazao by Utagawa Kuniyoshi.jpg
江戸時代の大道芸のスター、早竹虎吉の得意技のひとつ。早竹の一座は欧米でも公演した。

江戸時代には、浅草見世物手品(てづま)、新潟地方の瞽女(ごぜ)、津軽地方ボサマ、その他放浪芸など、日本でも盛んに演じられていた。しかし、多くの場合宗教的なものに結びつけられるか、あるいは乞食芸として蔑まれる傾向にあった。身分としては最下層ではあったが、大道芸そのものは人気のある演芸であった。江戸では、乞胸と呼ばれる大道芸を専門に行なう組織もあり、現代のジャグリングと同様の曲芸や奇術などが独自の発達を見せた。江戸幕府は身分の秩序にはうるさかったが、芸の内容には口出ししなかったため、大道芸は豊かに発展した[2]

開国とともに日本の大道芸は海外でも知られる存在となり、一般人の海外渡航が許されると、早竹虎吉をはじめ、多くの大道芸人が海を渡った[3][4]。独特な芸風は大いに受け、日本の芸が海外のジャグリングやマジック、アクロバットなどに影響を与えることもあれば、海外の芸が日本に紹介されることも増えていった。江戸幕府と対称的に、明治政府は身分制度を解体した代わりに、芸の内容にまで踏み込む統制・管理を行ない、悪風俗として多数の大道芸を禁止した。職を失った大道芸人は生活に困窮するようになり、これによって日本の大道芸は一気に衰退していった[2]

戦後、欧米の大道芸が入ってくるに従いショーの内容も派手に華やかになり、アートとしての側面やエンターテインメント性の高さが再認識されてきた。

1970年代小沢昭一アングラ演劇の関係者らによって、途絶えてしまった日本の放浪芸の再評価が始まり、路上のパフォーマンスや演劇の一要素として再び盛んになっていった。

アメリカではそれ以前にもストリートダンスバスケなどを路上で行うのが日常的であったのでそこからブレイクダンスやミニバスケなども発祥した。

イギリスでは路上、公園など公共の場で、芸をする人をバスカーと呼び、特にロンドン地下鉄駅構内で演奏する人々が有名(大道芸をバスク、芸を行なうこと自体をバスキングと言う)。基本的にバスクは禁止なのであるが、長年の慣習などで、駅員や警察官は見てみぬふりをしていた。しかし演奏場所の取り合いなど細かいトラブルが頻発し、2003年よりバスカーへのライセンス交付を決定。ライセンス未保持者は演奏できなくなり、演奏場所も予約制となった[5]

隆盛

昭和50年代より、愛知県名古屋市大須大道町人祭神奈川県横浜市における「野毛大道芸」など、各地でイベントとしての定着が始まった。当初は、暗黒舞踏を基調とした舞踏や、一見して素人には理解が難しい、いわゆる「アングラ」な傾向が強かった。大須では、これらアングラな系譜を長く守り続けている。

1992年静岡県静岡市大道芸ワールドカップが開催され、欧米型のサーカス芸を大々的に日本に紹介し、定着させる大きな役割を果たした。しかし、フランスやロシアを中心にした、大がかりなセットやクレーンを用いるサーカス芸が招聘される傾向にあり、その大半は大道芸未経験者が占める。一方で、これら大がかりなセットは日本人大道芸人は利用できないばかりか、「国内アーティスト」として一段低い扱いになっている。また、日本で行われる大会でありながら和芸が全く選出されないことなども含めて、同大会が大道芸の認知度を高めたとの評価が定着する一方で、白人崇拝のサーカスフェスティバルであるとの批判も多くある。

他、東京都ヘブンアーティストとして公認制度を始めたり、日本テレビが「日テレアート大道芸」としてライセンスを発行するなど、街の活性化やイベントなど各地で脚光を浴びつつある。若年層に根強いファンも数多く、大須大道町人祭大道芸ワールドカップでの動員客数は数十万人を数える。

ただ、「ヘブンアーティスト」等の公認制度や、各ライセンスは合格基準をオープンにしない場合が多く、芸人の実力、種類は、かなり幅がある。

また、昨今の大道芸は欧米タイプのジャグリングアクロバット、あるいはパントマイム等のサーカス芸一辺倒になる傾向が強く、同時に、観客側の欧米人崇拝精神も根強いと言われ、苦言を呈する者も多い。また、日本伝統の放浪芸が廃れゆくことに対する危惧も少なくない。

現在、日本で行われる大型大道芸イベントとしては、大道芸ワールドカップ(静岡市)、大須大道町人祭(名古屋市)、ヨコハマ大道芸・野毛大道芸(横浜市)などがある。

主要な大道芸

これらのパフォーマンスは、大道芸として演じられることが多いということであって、大道芸そのものという訳ではない。ジャグリングなどは人に見せない趣味としても成立するし、これらの芸がサーカスなど別の場で演じられることもある。

  • ジャグリング:玉や棍棒などをアクロバティックに操る芸。非常に愛好者が多く、また芸人も数多い。
  • クラウン:一般的にはピエロとも呼ばれる。道化に扮し、コミカルなメイクと演技で笑いを取る芸。パントマイムバルーンもこなす芸人が多い。
  • パントマイム:体ひとつで、現実には存在しない器物をその場にあるかのように演技する芸。通常声を出さずに演技する。また、他の動物やロボット・糸操り人形(マリオネット)等になりきる事もある。
  • アクロバット:高度な体の動きを駆使して複雑なポーズや運動を見せる芸。
  • バルーン:細長いチューブ型の風船を使用し、様々なものを作る芸。
  • 舞踏:舞踏家、または舞踏家の集団が独特の舞を舞う。金粉ショウ等で一部大道芸フェスティバルに定着。
  • ウォーキングアクト:特殊な服装や化粧をして無言で歩き回ったり、まったく動かず彫像のように振る舞う。托鉢僧着ぐるみに似ているが大道芸として行われる場合はかなり奇抜な格好が多い。
  • スタチュー:メイクや仮装をして、スタチュー彫像)になりきる大道芸。人のリアクションに合わせて動くことも有る。
  • 香具師芸:芸は人集めの手段。啖呵口上が中心であり、目的は芸を見た(聴いた)人へ何らかの商品を売ることが目的。啖呵売

その他、音楽芸、ワンマンバンドマジック(奇術)猿まわし南京玉すだれ蝦蟇(ガマ)の油売りチンドン屋人間ポンプ手話など、種類は非常に多い。

脚注

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  1. 「大道芸」世界大百科事典
  2. 2.0 2.1 2.2 江戸から東京への意味的世界の変化と都市オープンスペースの形態的変化に関する考察(平成7年度日本造園学会研究発表論文集(13))ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌、1995-03-31
  3. 国際芸人の先駆者、ジンタローの生涯松山光伸、マジックラビリンス
  4. 異国の舞台に立った日本人一座を追って― 南半球に向かった開国直後の人々 松山光伸、マジックラビリンス
  5. ロンドンの地下鉄バスキング-ロンドンナビ

関連項目

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