赤毛のアン (アニメ)

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世界名作劇場
通番 題名 放映期間
第4作 ペリーヌ物語 1978年1月
~1978年12月
第5作 赤毛のアン 1979年1月
~1979年12月
第6作 トム・ソーヤーの冒険 1980年1月
~1980年12月

赤毛のアン』(あかげのアン)は、フジテレビ系列の「世界名作劇場」枠で放送されたテレビアニメ。放映期間は1979年1月7日から同年12月30日で全50話。厚生省児童福祉文化賞受賞(1979年)。

2010年7月17日から、テレビシリーズの第1話~第6話を再編集した映画『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』が公開。

原作

L・M・モンゴメリの『赤毛のアン』を原作としている。翻訳は数多いが、本作の底本は1973年の神山妙子訳(旺文社文庫、新学社文庫)である。制作当時、もっとも原書に忠実な完訳であったことから選ばれた。

  • 旺文社文庫版は現在絶版入手困難(グーテンベルク21のデジタルブック版は入手可。外部リンクを参照)。
  • 新学社文庫版は中学生用図書教材であり、一般書店では流通しておらず、最寄りの新学社教材取扱店が注文を受けてくれれば個人でも現在入手可である。

作品概要

モンゴメリの原作を、忠実に、そのまま映像化した作品として高い評価を受けている。ただし、アニメオリジナルエピソードも存在し、第25話や物語後期辺りで多数追加されている。一方では、原作でアンがダイアナとの家の間に横たわる森に「お化けの森」と名づけるエピソードがあるが、アニメではカットされている(原作小説に忠実な内容であるが故に、唯一カットされたエピソードである。その代わり、アンがグリーン・ゲイブルズに住んでから1周年記念として、マシュウがドライブに出かけるといったアニメオリジナルに変更されている)。

原作に忠実な作りにした理由として高畑勲監督は、会話劇のおもしろさやアンやマリラなどの登場人物それぞれの立場に立つことで二重に楽しめる構造など、原作の良さを活かすためとしている。[1]

高畑勲が演出(監督)、宮崎駿が作画スタッフ、としてクレジットに名を連ねた最後の作品となった。宮崎駿は「アンは嫌いだ。後はよろしく」と述べて『ルパン三世 カリオストロの城』へと去っていった。

時代設定は第1話で「今からおよそ80年ほど前」(1890年代)と説明されている。アンの憧れた大きくふくらんだパフスリーブは1870年代には廃れたが、1890年代に再度流行しており、設定と合致している。ただし、続編は異なっており、設定年代は推定で1870年代頃である(アンの第三子が第一次世界大戦で亡くなっていることから)。

アンと同級生達は物語後期で思春期(あるいは青年期の初期)に差し掛かるため、成長した様子が描かれ大人びた容姿に変化をしている。シリーズでは、後年の『私のあしながおじさん』や『レ・ミゼラブル 少女コゼット』と同様の珍しい事例であった。

主人公アンを演じた山田栄子は、洋画の吹き替え声優として既にデビューしていたが、この作品でアニメの声優を初めて担当した。

第33話での、アンが食べたリンゴを毒入りだと信じて遺書を書くエピソードは、同じモンゴメリーの「エミリー」シリーズ(三部作)第一作である"Emily of New Moon"(新潮文庫『可愛いエミリー村岡花子訳、偕成社文庫『エミリー』神鳥統夫訳)から取られている。エミリーのエピソードをアンに置き換えたものである(後に2007年に放送された同じ原作者のNHKアニメ『風の少女エミリー』の第6話にもこのエピソードが使用された)。

作画が安定している名作シリーズにしては珍しく動画の乱れが存在しており、時々マリラがコマ送りで移動する、マシュウの髪・ヒゲの色が煩雑に変わるなどの事例がある(特に23話が顕著)。理由として、動画の原版は完成していたが撮影の都合で休日に跨ってしまい、彩色を担当するスタジオロビンが休みだったために仮に撮影された映像をそのまま本放送に使用したためである。後に原版を差し替える予定であったが、そのままになってしまった。

登場人物

グリーン・ゲイブルズの人物

アン・シャーリー
声 - 山田栄子
生まれてすぐに両親を病気で失い、トマス家・ハモンド家とたらい回しされ子守同然にこき使われたあと孤児院に送られる。
愛に飢えた寂しい子ども時代を過ごした女の子。髪は赤毛でそばかすだらけ、目は大きくやせっぽち。
自分の容姿にコンプレックスを持っているが、格好のいい鼻を持っていることになぐさめを見いだしている。
アンの綴りは、末尾にeの付く「Anne」であると、彼女自身は拘っている。本当は、コーデリア・フィッツジェラルドという名前にしてもらいたかったが、結局はアンになった。
この名前は父親が名付けてくれた物で、父親自身も女王(恐らくイギリスの『Anne Stuart』)と綴りが同じだという事に拘っていたという事が『こんにちは アン 〜Before Green Gables』で明かされている。
感受性が豊かで、おしゃべり。悲しいことも得意の想像力で喜びにかえていく。
マシュウ・カスバート
声 - 槐柳二
アンを引き取ったおじいさん。
農業とアベイ銀行に預けた蓄えの利子で細々と暮らしている。
内向的で無口で気が小さく、特に女性が苦手という性格のため、60歳を過ぎても独身。
心臓発作をたびたび起こしている。アンと出会ったことで人嫌いの性格を少しずつ改善していく。
アンを大きな愛で見守り、可愛がっている。
「そうさのう」の相槌が口癖。長らく狭心症を患っており発作の間隔も短くなっていて周囲からも心配されていた。
第47話でマーチンに頼んで街から持ってきてもらった新聞にあったアベイ銀行の破綻の新聞記事を読んだその直後、玄関先で発作を起こしたまま帰らぬ人となってしまう。
マリラ・カスバート
声 - 北原文枝
マシュウの妹。独身。共に暮らす兄とは対照的に、てきぱきとした女性。
家事全般が得意で料理上手。男の子を引き取る予定だったのが、手違いでやって来たアンに当初は驚かされてばかりいた。
現実主義者であり、アンには辛らつな小言を言ったりと厳しく養育しているものの、内心では実子と変わらぬ深い愛情を抱いている。
視力が低く、時々頭痛を起こしている。かつてギルバートの父ジョン・ブライスと親しかったらしい。「やれやれ」が口癖。
担当声優の北原は本放送終了の翌年に亡くなっており、後に制作された総集編では本放送時の北原の台詞を再編集するという形で出演している。
レイチェル・リンド夫人
声 - 麻生美代子
グリーン・ゲイブルズの近所に住んでいて、マリラの旧友。
おしゃべりで、単純明快な性格。アヴォンリーの情報通であり、またその面倒見の良い性格のため地域住民から頼りにされる存在であるが、説教が多いのが玉に瑕。
アンに癇癪を起こされ激怒するが、それがきっかけでアンと親しくなる。政治にも興味があり、式典等があると政治家を見にわざわざ遠方まで出向くほど。
担当声優の麻生は1985年公開の実写映画版(ミーガン・フォローズ主演)では、マリラ・カスバート役の日本語吹き替えの声を担当している。
ジェリー・ブート
声 - 田中亮一(一時代役・キートン山田
グリーン・ゲイブルズの農場手伝い。原作では殆ど名前のみの登場で、台詞らしい台詞もない。
食いしん坊でお調子者。食べ方が下品。アンに自分のリンゴを食べられたことに腹を立て、リンゴに猫いらずを塗っておいたなどと言ってアンを慌てさせる。
彼の描写に、カナダにおけるフランス系移民の子孫の置かれた境遇も仄めかされている。
マーチン
声 - 沢りつお
グリーン・ゲイブルズの新しい手伝い。マリラの御者。

スペンサー家関連

アレキサンダー・スペンサー夫人
声 - 坪井章子
偶然に重なった手違いで、男の子を欲するカスバート家へアンを連れてきた張本人。その手違いは結局、アンそしてマシュウとマリラを幸せへと導く事となる。手違いを気がかりにしていたのか、成長したアンに富豪との養子縁組を持ちかけるが丁重に断られる。
リリー・ジョーンズ
声 - 貴家堂子
スペンサー夫人が孤児院から引き取った幼い女の子。
フローラ・ジェーン・スペンサー
声 - 吉田理保子
スペンサー家の娘。リリーとはすぐに打ち解けていた様子。
ロバート・スペンサー
スペンサー夫人の弟。
ナンシー・スペンサー
ロバートの娘。
ブルエット夫人
声 - 京田尚子
マリラが手違いで来たアンを孤児院へ返そうとスペンサー家に行った際に別件でスペンサー家に現れた意地悪そうなおばあさん。アンを子守りとして引き取ると言った。アンの引き取り手が彼女になるかもしれなかった事が、マリラの決意を促す一要因になったとも言える。

オーチャード・スロープ(バリー家)の人物

ダイアナ・バリー
声 - 高島雅羅
読書好きな優しい女の子。
体形がふっくらとして、黒髪で三つ編みを二つして赤いリボンで留めている髪型が特徴。
歌が上手く音楽を習っている。
グリーン・ゲイブルズの隣にある「オーチャード・スロープ」に住んでいる。
アンと出会って意気投合し、「心の友」としての誓いを立てる。大きくなってからもその友情は変わることはなかった。
蝋燭の灯による、一種の「発光信号」で、向かいの丘のアンと互いを呼び出している。
ミニー・メイ・バリー
声 - 小山まみ(現・小山茉美)
ダイアナの妹。喉頭炎で生命の危機に瀕し、子守りの経験豊かで対処法を知っていたアンに救われる。
後にアンの生徒となる。
ジョセフィン・バリー
声 - 川路夏子
ダイアナの大叔母にあたる人。
シャーロットタウンに『ぶなの木屋敷』という豪華な屋敷をもっている。
ダイアナの家に泊まりに来て、客室で就寝中に何も知らないアンとダイアナに上から飛び乗られて立腹する。
気難しい老婦人だがアンのことをとても気に入り、クリスマスプレゼントを与えたりクィーン学院受験時の宿として屋敷に招いたりするなどアンへの愛情を見せる。
できることならアンを手元に置きたいとまで思っている。
バリー夫人
声 - 武藤礼子
ダイアナのお母さん。
アンが誤ってダイアナにぶどう酒を飲ませてしまったことをわざと飲ませたものと思い込み、ダイアナにアンと絶交するよう言い渡す。後にアンがミニー・メイの命を救った事に感謝し、ようやく誤解が解けたことで再びアンとダイアナとの仲を認めるようになる。
バリー氏
声 - 依田英助
ダイアナのお父さん、ジョセフィンの甥。
メアリー・ジョー
声 - 中谷ゆみ
バリー家のメイド。ミニー・メイの病気の日に登場。

アヴォンリー小学校

テディ・フィリップス先生
声 - 清川元夢
アンのクラスの担任。
生徒に人気が全く無い。
プリシー・アンドリュースにぞっこん。
高飛車な物言いはアンの自尊心をたびたび傷つけ、特にアンとギルバートとの関係には火に油を注ぐような結果をまねいた。
生徒の人気は無かったが、退任の際の挨拶にクラスの女生徒全員が号泣した。
ミュウリエル・ステイシー先生
声 - 鈴木弘子
フィリップス先生の後任でアヴォンリー初の女性教師。
アンのあこがれの先生。
アンの才能を認め、いろいろ指導してくれる。
クィーン学院進学希望者のための特別授業クラス「クィーン組」を編成する。
優しいが、物言いのはっきりとしたすてきな女性で、彼女に出会いアンは教師を目指すようになる。
とりわけ大きな「ふくらみ袖」が、ステイシー先生の、進取的で勝気な性格を物語っている。
ギルバート・ブライス
声 - 井上和彦
アンの同級生。
アンの気を引こうとして赤毛を「ニンジン」とからかってしまい、激怒したアンに石板を頭に叩き付けられる。何度も謝罪と親切を繰り返したものの、以来5年もの間アンに無視され続けた。
本来は心優しい紳士で、学業の成績も良く、また活発でリーダーシップを発揮し人望を集めている。
クィーン学院へも進学し、その後アンとはライバル且つ良き友人となる。モンゴメリの原作では後にアンと結婚する。
チャーリー・スローン
声 - 青木和代
アンの同級生。ギルバートの仲間。アンに気がある。クィーン学院に進学。将来の夢は政治家。
ムーディ・スパージョン・マクファーソン
声- 塩屋翼
アンの同級生。ギルバートの仲間。クィーン学院に進学。将来の夢は牧師。
ノーマン・キャンベル
アンの同級生。
トミー・スローン
声 - 門谷美佐
アンの同級生。
エラ・メイ・マクファーソン
アンの下級生。ムーディの妹。
ジェーン・アンドリュース
声 - 高木早苗
アンの同級生。アンとは仲の良い友人。日曜学校のピクニックではボートから落ちかける。
クィーン学院に一緒に進学する。家庭科の優等生。
ルビー・ギリス
声 - 小山まみ(第34話以降:高坂真琴
アンの同級生。アンとは仲の良い友人。
ヒステリーを患っているため、ひとたび発作を起こすと手が付けられない。
クィーン学院に進学する。学院一の美人だという。何かあると一番に泣き出すのが、彼女である。
ジョーシー・パイ
声 - 堀絢子
アンの同級生。
アンとはうまが合わないが、アン達と一緒にいる事は多い。クィーン学院に進学する。
学院一口の悪い女学生で嫉妬深い。容姿も太っており醜い。
少なからずアンに対抗意識は持っているようだが、その毒舌はアンに限らずクラスメイトに無差別に降り注ぐ。
シャーロットタウンで開催された共進博覧会のレース編で1等賞を取るなど意外な一面もある。
ガーティ・パイ
声 - 間嶋里美
アンの同級生。一時期ダイアナの隣に座っていたが、ダイアナからは嫌われていた。
ソフィア・スローン
声 - つるたきみこ
アンの同級生で友達。チャーリーの姉。
ティリー・ポールター
声 - 川島千代子(第24話以降:向殿あさみ
アンの同級生で友達。アンが初登校した日に最初に声を掛ける。
アンの学校騒ぎの件をリンド夫人に話し、心からアンの味方をした。
ミニー・アンドリュース
アンの同級生で優等生。一時期アンが隣に座る。
プリシー・アンドリュース
声 - 江川菜子
アンの上級生。フィリップス先生のお気に入り。初登場からほどなくしてクィーン学院に進学する。
エム・ホワイト
アンの同級生。

シャーロットタウン、クィーン学院

ステラ・メイナード
声 - 松原雅子
アンのクィーン学院での一番の友達。アン曰く「赤い薔薇」のような少女。
プリシラ・グラント
声 - 江川菜子
アンのクィーン学院での一番の友達。アン曰く「夢見る乙女」のような少女。
下宿屋の主人
声 - 辻村真人
下宿屋の女将
声 - 高橋和枝
教師
声 - 緑川稔

アヴォンリーの教会関連

アラン牧師
声 - 曽我部和行
アンの少女時代に年俸750ドルでアヴォンリーに赴任した若き牧師。「アイドルワイルド」で妻とワルツに興じるなど、おおよそ牧師らしくない自由闊達な部分がある反面、熱意と誠意のこもった布教活動はアヴォンリーの人々に好意を持って受け入れられる。
アラン夫人
声 - 江川菜子
アラン牧師の妻。アンの痛み止め薬入りレイヤーケーキを食べて以来、アラン夫人はアンの良き友人となり、いいアドバイスをしてくれる。アンのあこがれの人。
ヴィリアム・ベル
声 - 政宗一成
アヴォンリーでの教会行事や冠婚葬祭の世話を取り仕切る。子供たちにとっては日曜学校校長として認知されている。「アイドルワイルド」は彼の所有地である。

その他重要人物

雑貨店の主人
声 - 島田彰
カーモディーの「ブレアの店」の主人。マシュウはこの店でアンの好きなチョコレートキャンディーを買った。
駅長
声 - 塩見竜介
アヴォンリーの駅長。髭をたくわえた肥満気味のおじさん。
ルシラ・ハリス
声 - 松尾佳子
カーモディーの店「サミュエル・ローソン」の女店員。店主の姪でときどき店番をしている。アンにクリスマスのプレゼントの服を買おうとしたマシュウが、若い女性が店番と知らずに入ってしまい、しどろもどろになって不要な買い物を沢山してしまう。ずっと後にマシュウはアンのための買い物なら平気になり、ミス・ハリスとも馴染みになる。
ミセス・エヴァンス
声 - 平井道子
アンがホワイトサンズホテルで詩の朗読をした際、たまたま来ていたプロの朗読家。アンの詩を褒める。
医者
声 - 大山豊(第18話:加藤正之
ジョン・サドラー
声 - 村松康雄
ラッセル氏
声 - 加藤精三
委員
声 - 木原正二郎
少女
声 - 白川澄子
婦人
声 - 遠藤晴
郵便局長
声 - 加藤正之
ロレッタ・ブラッドリー
声 - 松岡洋子
アンがアラン夫人の家にお茶に呼ばれた日に招待されていたもう一人の少女。
ジョン・ブライス
生徒
声 - 鈴木れい子
生徒
声 - 野崎貴美子
生徒
声 - 杉山絹重
少女
声 - 横沢啓子(現・よこざわけい子)
老人
声 - 池田勝
ナレーション
- 羽佐間道夫

スタッフ

主題歌

オープニングテーマ「きこえるかしら」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲・編曲 - 三善晃 / 唄 - 大和田りつこ
エンディングテーマ「さめない夢」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲・編曲 - 三善晃 / 唄 - 大和田りつこ
挿入歌
「あしたはどんな日」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲・編曲 - 三善晃 / 唄 - 大和田りつこ
「森のとびらをあけて」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲・編曲 - 三善晃 / 唄 - 大和田りつこ
「涙がこぼれても」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲・編曲 - 毛利蔵人 / 唄 - 大和田りつこ
「花と花とは」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲 - 三善晃 / 編曲 - 毛利蔵人 / 唄 - 大和田りつこ
「忘れないで」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲・編曲 - 毛利蔵人 / 唄 - 大和田りつこ
「ちょうちょみたいに」
作詞 - 岸田衿子 / 作曲・編曲 - 毛利蔵人 / 唄 - 石毛恭子

主題歌は現代音楽の作曲家三善晃が担当した。普段は前衛的な作品を書いている三善も、ここではアンに相応しいロマンチックな曲を書いている。しかし子供向けの単純な音楽に終わることはなく、他のアニメソングとは一線を画する卓越した手法が用いられた。フランス近代音楽を思わせる色彩的な和声、実際の編成よりずっと豊かに聴こえ時として歌唱よりも雄弁な管弦楽法、現代曲で扱い慣れているであろう打楽器によるアクセント、豊かな雰囲気を醸し出すピアノとハープ等、枚挙に暇がない。レコーディング時の大和田りつこの回想によると、総譜は新聞紙並の大きさだったという。他に挿入歌2曲の作曲編曲と挿入歌1曲の作曲を担当した。

劇伴は当時若手の現代音楽作曲家だった毛利蔵人が担当した。三善が担当しなかったのは、桐朋学園大学の学長であり多忙で体調を崩しがちだったためである。三善は弟子筋にあたる毛利を制作者に推薦し、毛利の担当が決まった。毛利の生み出した音楽は、低音部がさながらバロック音楽通奏低音の様に目立っており、その一方で近代的な和声が多用され、実に雰囲気のあるものであった。他に挿入歌3曲の作曲編曲と挿入歌1曲の編曲を担当した。

各話リスト

話数 放送日 各話タイトル 脚本 コンテ 演出
第1話 1979年
1月7日
マシュウ・カスバート驚く 千葉茂樹
高畑勲
高畑勲
第2話 1月14日 マリラ・カスバート驚く
第3話 1月21日 グリーン・ゲイブルズの朝 磯村愛子
高畑勲
第4話 1月28日 アン・生立ちを語る 高畑勲
第5話 2月4日 マリラ決心する 神山征二郎 池野文雄 高畑勲
第6話 2月11日 グリーン・ゲイブルズのアン 磯村愛子
高畑勲
第7話 2月18日 レイチェル夫人恐れをなす 神山征二郎 奥田誠治
第8話 2月25日 アン日曜学校へ行く 神山征二郎
高畑勲
とみの喜幸
第9話 3月4日 おごそかな誓い 神山征二郎
第10話 3月11日 アン・心の友と遊ぶ 神山征二郎
高畑勲
楠葉宏三
腰繁男
第11話 3月18日 マリラ・ブローチをなくす 神山征二郎 奥田誠治
第12話 3月25日 アン・告白する 神山征二郎
高畑勲
とみの喜幸
第13話 4月1日 アン・学校へ行く 奥田誠治
第14話 4月8日 教室騒動 神山征二郎
第15話 4月15日 秋の訪れ とみの喜幸
第16話 4月22日 ダイアナをお茶に招く 高野丈邦 奥田誠治
第17話 5月6日 アン、学校にもどる 神山征二郎
高畑勲
とみの喜幸
第18話 5月13日 アン、ミニー・メイを救う 奥田誠治
第19話 5月20日 ダイアナの誕生日 高野丈邦 横田和善
第20話 5月27日 再び春が来て[2] 高野丈邦
高畑勲
腰繁男
第21話 6月3日 新しい牧師夫妻 千葉茂樹 楠葉宏三
第22話 6月10日 香料ちがい 横田和善 高畑勲
横田和善
第23話 6月17日 アン・お茶によばれる 千葉茂樹
高畑勲
腰繁男 高畑勲
第24話 6月24日 面目をかけた大事件 千葉茂樹 楠葉宏三
第25話 7月1日 ダイアナへの手紙 高野丈邦
高畑勲
横田和善 高畑勲
横田和善
第26話 7月8日 コンサートの計画 千葉茂樹
高畑勲
奥田誠治 高畑勲
第27話 7月15日 マシュウとふくらんだ袖 高野丈邦
高畑勲
腰繁男
第28話 7月22日 クリスマスのコンサート 光延博愛
第29話 7月29日 アン・物語クラブを作る 高畑勲
横田和善
第30話 8月5日 虚栄と心痛 高畑勲
高野丈邦
楠葉宏三 高畑勲
第31話 8月12日 不運な白百合姫 荒木芳久
高畑勲
斉藤博
第32話 8月19日 生涯の一大事 千葉茂樹
高畑勲
腰繁男
第33話 8月26日 クィーン組の呼びかけ 横田和善 高畑勲
横田和善
第34話 9月9日 ダイアナとクィーン組の仲間 楠葉宏三 高畑勲
第35話 9月16日 夏休み前の思わく 荒木芳久
高畑勲
腰繁男
第36話 9月23日 物語クラブのゆくえ 高野丈邦
高畑勲
横田和善 高畑勲
横田和善
第37話 9月30日 十五歳の春 高野丈邦
楠葉宏三
楠葉宏三 高畑勲
第38話 10月7日 受験番号は13番 千葉茂樹
高畑勲
馬場健一
第39話 10月14日 合格発表 腰繁男
第40話 10月21日 ホテルのコンサート 荒木芳久
高畑勲
横田和善 高畑勲
横田和善
第41話 10月28日 クィーン学院への旅立ち 楠葉宏三 高畑勲
楠葉宏三
第42話 11月4日 新しい学園生活 馬場健一 高畑勲
馬場健一
第43話 11月11日 週末の休暇 神山征二郎
高畑勲
腰繁男 高畑勲
腰繁男
第44話 11月18日 クィーン学院の冬 横田和善 高畑勲
横田和善
第45話 11月25日 栄光と夢 千葉茂樹
白石なな子
楠葉宏三 高畑勲
楠葉宏三
第46話 12月2日 マシュウの愛 馬場健一 高畑勲
馬場健一
第47話 12月9日 死と呼ばれる刈入れ人 荒木芳久
高畑勲
腰繁男 高畑勲
腰繁男
第48話 12月16日 マシュウ我が家を去る 横田和善 高畑勲
横田和善
第49話 12月23日 曲り角 楠葉宏三 高畑勲
楠葉宏三
第50話 12月30日 神は天にいまし すべて世は事もなし 馬場健一 高畑勲
馬場健一

4月29日、9月2日はともにプロ野球中継 ヤクルト-巨人~神宮球場(19:00-20:54)のため休止

CD,LP

赤毛のアン 想い出音楽館(日本コロムビア COCX-32784→85)
赤毛のアン うたとおはなし(日本コロムビアCS-7119)
赤毛のアン~グリーンゲイブルズのアン~(日本コロムビアCS-7147,COCC-12682)
オリジナルBGMコレクション 赤毛のアン(日本コロムビアCX-7033、COCC-72029)
EVER GREEN SERIES 赤毛のアン(日本コロムビアCOCC-9682)

映像ソフト化

  • 本編のDVDは1999年3月25日 - 6月25日発売。全13巻。

英語吹替え版放送

スカイパーフェクTV 343チャンネルのGLC24時間英会話チャンネルにて2006年4月8日7月16日放送。時刻10時30分、19時00分、翌日4時30分。30分の帯放送で、英語字幕ありと英語字幕なしの放送があった(全50話なので100日間の放送)。画面にはGLCロゴと英語台本販売のテロップが入る状態であった。

再放送は2006年8月から11月に行われた。

エピソード・その他

  • アン役の声優オーディションにおいて最終選考に残ったのは山田栄子の他に島本須美がいた。
  • 同じフジテレビ系で放送されていた『ヤッターマン』では、原作のパロディ「赤毛のランだコロン」(第88話、1978年9月9日放送)が作られた。ラン(←アン)を吉田理保子が演じている。
  • 貯蓄を一つの銀行にまとめて預金していたマシュウは、その銀行の倒産により全預金を失うことになる。この作品の登場した頃のカナダには預金保険制度はまだ存在しなかった。
  • 第47話「死と呼ばれる刈入れ人」では、山田栄子を初めとする声優たちが号泣したため、アフレコが度々中断した。
  • 漫画家柊あおいはこの作品のファンであり、『耳をすませば』の原田夕子はアンをイメージして描いた。なお、『耳をすませば』の映画版の監督は『赤毛のアン』のキャラクターデザインを担当した近藤喜文である。
  • 1980年にイタリアで放送された際のタイトルは、原題Anne of Green Gablesのイタリア語訳ではなく、邦題『赤毛のアン』の直訳Anna dai capelli rossiが使われた。原作本がイタリアで紹介されるよりも先にアニメが放送されたため、イタリアでは現在翻訳刊行されているモンゴメリの原作小説のタイトルも、『赤毛のアン』を意味するAnna dai capelli rossiとなっている。
  • 日本アニメーション25周年記念に制作された総集編・世界名作劇場の新作パートでは木村亜希子が2代目アンを演じている。
  • 2009年4月5日 - 12月27日に、続編として30年ぶりに『こんにちは アン 〜Before Green Gables』がBSフジで放送された。物語の時間軸はアンがマシュウとマリラに出会う前の11年間の生い立ち部分である(但し、アンがトーマス家に引き取られてから6年経ったところからスタートしているため、実質的には5年間である)。原作を忠実にアニメ化された本作とは違い、登場人物の設定など原作とは異なる部分がいくつか存在する。ナレーターは池田昌子が演じている。
  • 4月29日9月2日は、それぞれプロ野球中継ヤクルト×巨人」(明治神宮球場)のため、19:00のアニメ[3]と20:00の『オールスター家族対抗歌合戦』と共に休止になった。それまで『世界名作劇場』はプロ野球中継などで休止になった事は一度も無く、前年(1978年)にヤクルトが球団創立初のセ・リーグ優勝&日本一になった影響とはいえ、プロ野球で休止になったのは10作目にして初の事例であった[4]

劇場版

テンプレート:Infobox Film赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』は、2010年7月17日より公開の第1話から第6話までを再編集版した劇場作品。

1989年に再編集版映画の第1部として編集されたものの当時は劇場では公開できず[5]、20年を経て公開に至った。TVシーンでカットしている箇所は少ないが1本としてまとまりのある作品となっている。

キャッチコピーは「楽しもうと決心すれば、たいてい いつでも楽しくできるものよ。」

借りぐらしのアリエッティ』と同日公開で、シネマアンジェリカで初日単館公開(以降全国5館で順次ロードショー)。ぴあ初日満足度ランキング(ぴあ映画生活調べ)では第2位となっている。

2013年11月18日に、日本テレビでテレビ初放映された。

劇場版キャスト

劇場版スタッフ

参考資料

  • 赤毛のアン資料集(1981年、日本アニメーション編集発行) - 公式資料集。各種設定、名場面、絵コンテ・レイアウト、制作リスト等。
  • 世界名作劇場「赤毛のアン」メモリアル・アルバム(2005年、河出書房新社) - 網羅的な資料集。スタッフ等のインタビューあり。また、宮崎駿によるレイアウトも納められている。ただし、スタッフリストは簡略版。
  • 高畑勲『映画を作りながら考えたこと』(1991年、徳間書店) - アンについて1章が充てられている。

脚注

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外部リンク

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  1. テンプレート:Official 映画『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』(三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー)赤毛のアンを語る:高畑勲監督インタビュー
  2. 第20話は第19話次回予告にて『グリーン・ゲイブルズの春』と放映されていたが、第20話放送時において表内のタイトルに変更された。
  3. 4月29日は『SF西遊記スタージンガー』、9月2日は『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』。
  4. ただし1972年1月2日には、正月恒例特番『新春スターかくし芸大会』(19:00 - 21:56)放送ために放送されなかった前例があったが、前週で第2作『アンデルセン物語』が終了し、翌1月9日より第3作『ムーミン(第2作)』が開始するため、「継続中の休止」「プロ野球中継での休止」は史上初。
  5. VHSやレーザーディスクとしてソフト化されている。