観光業

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観光業(かんこうぎょう)とは、観光に関連する業種の総称をいう。旅行業(旅行代理店等)、宿泊業(観光ホテル等)、飲食業、運輸業(航空会社バス会社等)、製造業(名産品、お土産製造等)など極めて多岐にわたるため、日本標準産業分類では業種として分類されていない。

様々な長所を有するため観光業を主要産業として位置づけている国も多く、またほとんどの国や地域で観光業の成長が図られている。

例えば、フランスには年間7,600万人(2003年)の観光客が訪れ、地元の各業界に莫大な金額を落とす。このため、経済上極めて重要な業種の一つとなっており、政府は観光局を設置し、世界各国の出先事務所を通じて自国の観光や産業のPRを進めている。

日本でも、2002年のサッカー・ワールドカップ開催を契機に、外国人旅行者の増加を目指す「グローバル観光戦略」を策定。国土交通省ビジット・ジャパン・キャンペーンを展開し、2010年までに訪日客を倍増(1,000万人)させる計画を立てている。

特徴

長所

観光業の長所として、一般に以下のようなものが挙げられる。

  • 観光業の発展で多くの観光客が訪れるようになると、宿泊や運輸、飲食、旅行業など様々な分野での経済活動が活発になり、経済への波及効果が高い。
  • 観光開発において、テーマパークの建設などを除けば元々その地域に存在する自然や遺跡などを利用する者がほとんどであり、また小規模でも成立し得るため、資金が少なくともある程度の開発が可能である。
  • 多くの工業とは異なり、基本的に高度な技術水準が求められない。
  • 国外から観光客を集めることが出来れば、外貨を獲得することが出来る。
  • 広範囲、例えば世界各地から観光客を集めることが出来れば、一国の景気に左右されにくい産業となる。
  • 経済の発展や余暇活動の重視に伴い、世界的に見て今後も市場の拡大が期待できる。

短所

一方短所として、一般に以下のようなものが挙げられる。

  • 基本的に娯楽活動に依存する産業であり、消費における優先順位は低く、また一般に競合する観光地も各地に存在する。そのためある地域の観光需要の価格弾力性は高く、その時々の景気や流行の影響も受けやすい面がある。
  • 屋外の活動が多く、また自然を利用したものも多いため、その時々の気候に大きく影響される。
  • 自然を利用するものが多く、また観光客は基本的に休日に訪れるため、季節・時期によって観光客数は大きく異なり、繁閑の差が激しい。
  • 上記のような特徴に対してホテルや遊園地などの施設や人員を簡単に増減させることは出来ず、繁忙期の観光客に対応しようとすると閑散期にはそれらが無駄になり、効率が悪い面がある。
  • 自然や歴史・伝統などによるものが多く、観光開発では立地条件に大きく左右される。それらに恵まれない地域での観光開発は困難であり、また規模の拡大がそれらの条件により制約される場合も多い。例えば海水浴場やスキー場などでは人の密度に限度があり、温泉であれば過剰な取水は枯渇を招く。
  • 観光資源となるものは様々ではあるが、自然や歴史などを利用する場合には他の産業の発展と両立しがたい場合がある。自然環境や街並み、景観などの保存が求められる場合、工業化や近代化、都市化などが抑制される。逆に言えば、それらが進展した際観光業が衰退する可能性がある。

問題

観光業も、他の産業と同様に外部性を持っており、観光業の持つ負の外部性として以下のような問題が挙げられる。

  • 観光客の増加による公害。ホテル・娯楽施設などの建設や観光客によるごみの投棄などでの森林破壊海洋汚染など自然環境の破壊や、悪臭騒音など。
  • 交通量の増加による道路の渋滞、交通機関の混雑。
  • 観光客目当ての犯罪が増加することなどによる治安の悪化。

観光開発に当初さほどの資金が必要とされない場合でも、このような問題の解決には相応の投資が必要となる。

また、地域外から大勢の観光客が訪れることによる文化的な摩擦や、地域の伝統文化の変容などが起こり、地域住民などから反発されることもある。

関連項目

外部リンク