荒巻義雄

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テンプレート:Portal 荒巻 義雄(あらまき よしお、1933年4月12日 - )は、日本小説家SF作家推理作家評論家北海道小樽市出身[1]。本名、荒巻邦夫、後に荒巻義雅と改名[2]。『紺碧の艦隊』の大ヒットで、いわゆる架空戦記小説の世界を代表する小説家として広く知られている。また、札幌時計台ギャラリーのオーナーもつとめている。静修女子大学(現・札幌国際大学)教授も務めた。

略歴・人物

北海道札幌南高等学校を経て、早稲田大学第一文学部心理学科卒業。高校の同期に渡辺淳一

出版社に編集者として勤務するが、1962年に家業を継ぐため札幌に戻る。北海学園大学工学部建築学科を卒業し、二級建築士の資格を取得。

1965年から1967年、SF同人誌「CORE」を主催。1970年には、評論『術(クンスト)の小説論』、短編『大いなる正午』を『SFマガジン』に発表し、作家・評論家としてデビュー。

ニュー・ウェーブSFやシュール・リアリズムの影響をうけた幻想的なSFや、スペースオペラ『ビッグウォーズ』シリーズなどを執筆。ダリの同題の絵画をモチーフとした短編「柔らかい時計」(初出『宇宙塵』1968年4月122号)は英訳され、1989年にイギリスのSF雑誌「インターゾーン」に掲載されて、高い評価を得た。また、処女長編『白き日旅立てば不死』は、第1回泉鏡花文学賞の候補となった。

1986年~1988年に刊行された『ニセコ要塞1986』シリーズを皮切りに、架空戦記を執筆するようになる。『ニセコ要塞』は北海道を舞台にした近未来戦記であり、1990年代以降の架空戦記小説ブームの始祖とも言える作品であった。

1994年には、架空戦記作家宣言とも言える評論『シミュレーション小説の発見』を発表。「世界模擬実験装置としてのシミュレーションにこそ、小説の未来がある」として、以降、架空戦記小説を多数発表する。また、一時は日本SF作家クラブを脱退していた。

2001年の「富嶽要塞Ver.1」の完結以降、架空戦記の新作は発表されずに、経済シミュレーション小説『プラグ』(2002年)や、アトランティスを舞台にしたSFファンタジー・シリーズ『アトランティス大戦』『火星のアトランティス』等を書いていた。

また、2007年8月に行われた世界SF大会 Nippon2007では、「スチームパンク歴史改変」パネルに参加(他の参加者は、高野史緒宇月原晴明永瀬唯新戸雅章)。また、2007年12月に翻訳家の増田まもるが創設したサイト「speculative japan(ニューウェーヴ/スペキュレィティヴ・フィクション・サイト)」には、メンバーの一員として参加し、盛んにSF評論を発表している。また、2008年12月から2011年12月にかけて、日本SF作家クラブ主催で行われている日本SF評論賞の第4回から第7回の選考委員長を務め[3][4]石和義之岡和田晃高槻真樹らを輩出した。

以上のように、近年は「SFへの回帰」が目立っていたが、2010年5月、10年ぶりの架空戦記小説の新刊『ロマノフ帝国の野望』が発売され、話題を呼んでいる。巻末には最新の地政学関係の文献がリストアップされている。

北海道の美術家の作品を多数所持する美術コレクターとしても著名であり、コレクションの多くは札幌芸術の森美術館に寄贈されている。

受賞

作品リスト

  • 帝国の光シリーズ
    • 帝国の光 1-3
  • 猿飛佐助シリーズ
    • 猿飛佐助 誕生編
    • 猿飛佐助 疾風編 1-3
    • 猿飛佐助 遊行編 1-3
    • 猿飛佐助 決戦編 1-2
  • ビッグウォーズシリーズ
    • 「神鳴る永遠の回帰」 ビッグウォーズ 1
    • 「火星戦線異状なし」 ビッグウォーズ 2
    • 「真白き神々の降臨」 ビッグウォーズ 3
    • 「宇宙元年新創世記」 ビッグウォーズ 4
    • 「神撃つ朱い荒野に」 ビッグウォーズ枝篇・火星戦記 青葉の闘い
    • 「精霊荒野に咽きて」 ビッグウォーズ枝篇・火星年代記2200年
    • 「響かん天空の梯子」 ビッグウォーズ枝篇・火星年代記2050年
    • 「帰らざる宇宙の詩」 ビッグウォーズ外篇・スターゲイト FCT発進
    • 「猫戦士超D球計画」 ポスト・ビッグウォーズ・スーパーダイソンボール Part1
      • このシリーズは未完である。本編1~4の第一部「惑星篇」、捷号艦長ハイパー・マクドナルドの話のみ完結。第二部「銀河篇」、第三部「星雲篇」の構想はあるが未発表である(2008年現在)。なお、当初3巻の予定であった「惑星篇」は4巻になり、ずれ込んでいる。
      • 枝篇は火星の物語のみ。なお「神撃つ…」は本編の地球を脱出させるための護衛艦の話に接続。「精霊…」は火星開拓史&アンドロギュノス・シシンジケートの話である。火星のコロニーや月のルナシティーに関しては実際に建築物の設定を設計士に依頼したということである。
      • 外篇は本編に付随する物語。
      • 原本によれば、「枝編」「外編」の「編」は「篇」を使用している。
  • 空白シリーズ
    • 空白の十字架
    • 空白のアトランチス
    • 空白のムー大陸
    • 空白のピラミッド
    • 空白の黙示録
    • 空白の失楽園
    • 空白のメソポタミア
    • 空白の大涅槃
  • キンメリア七つの秘法シリーズ
    • 黄金繭の睡り
    • 黄金の不死鳥
    • 黄金の珊瑚礁
    • 黄金の回帰線
    • 黄金の水平線
  • ムー大陸シリーズ
    • ムー大陸の至宝
    • ムー大陸情死行
    • ムー大陸摩天楼
  • 秘宝シリーズ
    • シルクロードの秘宝
    • 始皇帝の秘宝
    • ソロモンの秘宝

白魔伝シリーズ

  • 神州白魔伝 - 九来印之壷の巻


  • ある晴れた日のウイーンは森の中にたたずむ
  • 白き日旅立てば不死
  • アバンダンデロの快機械
  • 神聖代
  • 時の葦舟
  • 星運紀
  • 石の結社
  • 未来拳銃 南部改
  • 砂の要塞
  • 殺意の明王
  • 天女の密室
  • 黄河遺宝殺人事件
  • 「能登モーゼ伝説」殺人事件
  • 日光霊ライン殺人事件
  • 「新説邪馬台国の謎」殺人事件
  • 義経埋宝伝説の謎を追え!
  • 古代かごめ族の陰謀
  • 幻文明の旅《空想古事記》
  • 日本幻族の謎を追え!
  • 悪魔の議定書
  • 荒巻義雄の逆説から読む世界史
  • 緑の宇宙群島
  • 柔らかい時計
  • 妖怪王子
  • 火星のアトランティス全2巻
  • 詩集 骸骨半島
  • 義経伝説推理行(共著)

ほか多数。

脚注

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外部リンク

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  1. 「現代日本人名録2002」日外アソシエーツ
  2. 東雅夫石堂藍編『日本幻想作家事典』国書刊行会(2009)
  3. 第4回 SF評論賞選考講評
  4. 「第5回SF評論賞」に関する選考委員長私見