航空・鉄道事故調査委員会

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航空・鉄道事故調査委員会(こうくう・てつどうじこちょうさいいんかい、ARAIC, Aircraft and Railway Accidents Investigation Commission)とは、航空事故鉄道事故の原因の究明、及び今後の事故防止のために必要な調査を行っていた、国土交通省審議会等である。略称は事故調事故調委など。

2008年10月1日、国土交通省の外局たる運輸安全委員会に改組された。

沿革

1971年7月30日全日空機雫石衝突事故を教訓に、航空事故調査委員会として1974年1月11日運輸省に設置された。

その後、1991年信楽高原鐵道列車衝突事故、および2000年3月8日営団地下鉄日比谷線脱線衝突事故をきっかけに2001年10月1日、航空・鉄道事故調査委員会に改組された。

業務

必要に応じて、科学的な解析や、現場による検証、関係者からの聴取などを行なうが、あくまで目的は事故の再発防止や、安全性の向上、関係機関などに勧告や建議を行なうことであり、委員会は関係者の責任を問うことはしない。よって、委員会は常に公正・中立の立場を取る。

なお、委員会の調査官(紺の作業服に「ARAIC」の黄色文字入り紺キャップ姿)と委員会委員は全く別の存在である。

調査対象

航空事故等
  • 航空機の墜落、衝突又は火災
  • 航空機による人の死傷又は物件の損壊
  • 航空機内にある者の死亡(自然死等を除く。以前は機内病死も調査対象だった)又は行方不明
  • 航行中の航空機が損傷を受けた事態
  • 重大インシデント(事故が発生するおそれがあると認められる事態)
鉄道事故等
  • 列車車両)衝突事故
  • 列車(車両)脱線事故
  • 列車(車両)火災事故
  • その他の事故(乗客、乗務員等の死亡、5人以上の死傷(死亡者を生じたものに限る)、鉄道係員の取扱い誤り又は車両若しくは鉄道施設の故障、損傷、破壊等に原因があるおそれがあると認められるものであって死亡者を生じたもの、踏切遮断機が設置されていない踏切道において発生したものであって死亡者を生じたもの、特に異例のものに限る)
  • 重大インシデント(事故が発生するおそれがあると認められる事態)

課題

事故調査の中心は、過失墜落罪業務上過失致死傷罪で捜査をする警察検察であり、証拠物件の押収や関係者への取調べで優位な立場にある[1]。事故の再発防止には委員会をアメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)の様に、国土交通省から独立した強い権限を持つ機関に改めることと、過失による刑事責任を問わないことで、事故に関する証言を得やすくすることが必要だとする意見がある。

運輸安全委員会への移行

2007年8月、国土交通省は航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁を統合して運輸安全委員会を新設するよう総務省(行政管理局)に要求、同年12月に国土交通大臣と総務大臣との折衝により設置が合意されたもので、2008年1月29日、通常国会に関連法案を提出、4月25日に可決成立し、10月1日に発足した。

航空・鉄道事故調査委員会は国家行政組織法第8条に基づくいわゆる八条委員会たる審議会等であるのに対し、運輸安全委員会は国家行政組織法第3条に基づく外局であるいわゆる三条委員会となるため、権限等が強化される。なお、現行の海難審判庁の機能のうち、懲戒のための対審方式による審判については、新設される海難審判所が引き継ぐ。海難審判所は当初の構想では、運輸安全委員会に付属することを予定していたが、その後方針を変更し、運輸安全委員会とは別系統の、国土交通省に直属する特別の機関とされた。

歴代委員長

運輸安全委員会#歴代委員長を参照

脚注

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関連項目

外部リンク

テンプレート:国土交通省
  1. 上岡直見「原因解明を妨げる警察の「押収主義」 - 美浜事故に関して」(JANJAN2004年8月21日)。