胡桃沢耕史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

胡桃沢 耕史(くるみざわ こうし、1925年4月26日 - 1994年3月22日)は日本作家。本名は清水 正二郎。海外を舞台にした冒険小説や、ユーモア推理小説で人気を博した。東京府南葛飾郡[1](現在の東京都墨田区)生まれ。東京府立第六中学校(現在の東京都立新宿高等学校)から拓殖大学商学部卒業。趣味はバイクツーリング。

経歴

高校時代から作家を志す。1942年に拓殖大学中国語科に入学テンプレート:要出典範囲1945年に現地で召集を受けて、混成第八旅団で特務機関員として活動、終戦後はシベリアで抑留生活を送った(この時、「暁に祈る」事件を体験したという[2])。1947年に帰国し大学を卒業、1949年に抑留体験をもとにした作品を執筆、東映でシナリオライターとなった後、放浪生活を送る。1953年からNHKプロデューサーとなり、1955年に「清水正二」名義で中央アジア探検を舞台にした『壮士再び帰らず』で第7回オール讀物新人賞を受賞し、作家専業となる。その後、本名の清水正二郎名義で高校の先輩寺内大吉の始めた同人誌「近代説話」の同人となる。近代説話の同人であった司馬遼太郎は清水を「静かでいつも微笑しているが、卓越した事務の才能があり気がつくと機械のように雑誌の刊行の事務の仕事をこなしてくれている」と表している。清水正二朗名義では多くの性豪小説を発表。「世界秘密文学選書」シリーズでは翻訳物から翻訳すらしていないオリジナルまで多くを発表(ウィリアム・バロウズの「ソフトマシーン」も「やわらかい機械」というタイトルで翻訳という形を取ってオリジナル作品を発表したとされる)。テンプレート:独自研究範囲結局500編近くを書いたうち64編が発禁処分となり、1967年執行猶予付き有罪判決を受けたため、作品の版権を1冊5万円で版元にすべて売り飛ばし、海外旅行会社などに勤めながら世界放浪へ旅立つ。旅行で交通手段として用いたバイクはホンダの50ccのスーパーカブであった。

9年間の沈黙の後、1977年に息子と娘の名前から取ったペンネームの胡桃沢耕史名義で「父ちゃんバイク」を発表して復帰、海外での体験を生かして異境を舞台にした冒険小説を発表する。1981年に「父ちゃんバイク」「ロン・コン」などを含む作品集『旅人よ』で第85回直木賞候補、『僕の小さな祖国』で第87回候補。1983年満州中国大陸を舞台にした『天山を越えて』で第36回日本推理作家協会賞を受賞。同年、シベリア抑留生活を描いた『黒パン俘虜記』で念願の第89回直木賞受賞。

代表作に東大法学部卒の岩崎白昼夢(いわさき さだむ)が活躍する『翔んでる警視』シリーズ(『新・翔んでる警視』『翔んでる警視正』『翔んでる警視正 平成編』『翔んでる警視正 新世紀編』)。第1作「私も犯人です」を1980年『小説推理』2月号に発表以来、胡桃沢名義の2割を占め、総出版部数は1000万部を越える。1986年と1987年にはTBSにて『翔んでる警視』『翔んでる警視2』として郷ひろみ主演で2時間ドラマとして放映され、自身もカメオ出演している。

テンプレート:要出典範囲

1994年3月22日、多臓器不全のため横浜市金沢区の横浜南共済病院で死去。同区の長昌寺にある、崇拝していた直木三十五の墓の隣に生前から建てていた墓に葬られた。

著作

清水正二郎名義

  • 国境物語 北斗書院第一文庫 1949
  • 動乱の曠野 学風書院 1956 (世界ドキュメンタリー文庫) のち胡桃沢名義、徳間文庫
  • 肉の砂漠 日本週報社 1958
  • 壮士不還 凡凡社 1959
  • 青い獣 六興出版部 1959
  • 漁色の海図 光書房 1959
  • エロスの航海 光書房 1959
  • 愛欲一万二千キロ 六興出版部 1959 「砂の嵐」胡桃沢、青樹社 1983
  • 新精力絶倫物語 光書房 1959
  • アメリカ情痴物語 光書房 1959
  • 情欲の大陸横断 新流社 1960
  • 浮気の大地 新流社 1960
  • 女の濁流 東洋書房 1960
  • 南海の情事 アフリカ・南欧篇 新文芸社 1960
  • パリ情欲記 新文芸社 1960
  • アメリカン・セキサス マイアミ出版社 1960
  • 東京の秘密地図 マイアミ出版社 1960
  • ヌード傑作選集 マイアミ出版社 1960
  • アフリカの性典 新流社 1960
  • 女体秘密航路 新文芸社 1960
  • 連邦警察艶笑記 マイアミ出版社 1961
  • 女は夜が好き 浪速書房 1961
  • 白の地帯 浪速書房 1961
  • 狂った生理 浪速書房 1961
  • 本当は欲しいの 浪速書房 1961
  • 情痴物語 浪速書房 1961
  • 媚薬探求綺談 マイアミ出版社 1961
  • 灰色の情事 浪速書房 1961
  • 満たされた欲望 浪速書房 1962
  • 強いられる開花 小出書房 1962
  • 裸体の青春 小出書房 1962
  • 世界娼婦めぐり 小出書房 1962
  • 桃色の地図 小出書房 1962
  • 絶対の処女 小出書房 1962
  • 泣かせる侍 アルプス 1962 のち胡桃沢名義、ケイブンシャ文庫
  • 桃色空中戦 小出書房 1962
  • 前垂れ元帥 アルプス 1963 (財界アルプス文庫)
  • 女性残酷物語 第二書房 1963
  • 花と銭 東京文芸社 1963
  • 女体無惨 東京文芸社 1963
  • 緋ぢりめん武士道 光風社 1963
  • 裸身の配当 曽田経済研究所 1963
  • 欲望の城 光風社 1963
  • 処女残酷物語 第二書房 1963
  • 欲望の砂丘 東京文芸社 1963
  • 東海道お色気五十三次 第二書房 1963
  • 口紅と白い肌 足立文庫 1964 (世界禁色新書)
  • 女性大百科 第二書房 1964 (ナイトブックス)
  • 女体交換 東京文芸社 1964
  • BG残酷物語 第二書房 1964
  • 浮気の刑罰 足立文庫 1964 (世界禁色新書)
  • 人間大百科 第二書房 1964 (ナイト・ブックス)
  • 金色の肌 光風社 1964
  • 愛の悲鳴 足立文庫 1965 (世界禁色新書)
  • 明治・大正・昭和呪われた女性犯罪 好江書房 1965
  • ぼくの世界漁色旅行 第二書房 1966
  • 女体残酷物語 第二書房 1966
  • ゼツリン人間奮闘記 第二書房 1966
  • エッチ読本 第二書房 1966
  • 鞭の生涯・サド侯爵 第二書房 1966
  • 人妻残酷物語 第二書房 1967
  • 女から女へ 第二書房 1967
  • 性風俗の秘境をたずねて 清風書房 1968
  • ぼくの女体獲得作戦 第二書房 1968
  • 女がよろこぶ本 第二書房 1968
  • 現代の性豪 第二書房 1969
  • セックス怪奇幻想物語 第二書房 1969
  • 春歌名曲集 本橋書院 1969
  • 世界史の美しい裸女たち 新風出版社 1969
  • 全裸の館を占領せよ 浪速書房 1970
  • えろめりか 現代ブック社 1971
  • 人妻乱熟 東京文芸社 1975
  • 処女散る 東京文芸社 1975

同・翻訳

  • O嬢の物語 ポアリイヌ・レアージュ 新流社 1961
  • 世界発禁文学選書シリーズ 全15巻 浪速書房 1967
  • キンゼイ博士との対話 スチュワート・リー、ジャニー・リー 浪速書房 1969
  • おまえの女は俺のもの レックス・ウェルダン 浪速書房 1969
  • 乱交の町 ローラ・デュシャン 浪速書房 1969
  • X27号の性生活 マタ・ハリ 浪速書房 1969
  • グルシェンカ アレキサンダー・ソコロフスキー 浪速書房 1969
  • セックス・フレンド ロジャー・ブレイク 浪速書房 1970

胡桃沢耕史名義

  • 旅人よ ロン・コン<母の河で唄え> 光風社出版 1981 のち徳間文庫
  • 救世主第4号 グリーンアロー出版社 1981 のち徳間文庫
  • 翔んでる警視(シリーズ)双葉社 1981-83 のち文庫
  • 六十年目の密使 東京文芸社 1981 のち徳間文庫
  • 危険な旅 光風社出版 1981 のち徳間文庫
  • ぼくの小さな祖国 サンケイ出版 1982 のち徳間文庫
  • 太陽の祭り 有楽出版社 1982 のち徳間文庫
  • 俺は秘密諜報員 青樹社 1982 のち光文社文庫
  • 天山を越えて 徳間書店 1982 のち文庫
  • 黒パン俘虜記 文藝春秋 1983 のち文庫
  • 新宿裏町流し唄 実業之日本社 1983 のち徳間文庫
  • 旅券のない旅 講談社 1983 のち文庫
  • 華やかな醜聞 日刊スポーツ出版社 1983 のち光文社文庫
  • 女探偵アガサ奔る 文藝春秋 1984 のち文庫
  • 新・翔んでる警視(シリーズ)広済堂出版 1984-87 のち文庫
  • 夜明けを奔る旗手 広済堂出版 1984(旗手シリーズ)のち文庫
  • ぶりっこ探偵 文藝春秋 1984 のち文庫
  • 黄金の聖女 広済堂出版 1984 のち文庫
  • らんらん武士道 青樹社 1984
  • OL博徒 光文社 1984 のち文庫
  • パリ経由・夕闇のパレスチナ 読売新聞社 1984 のち角川文庫
  • ごきぶり商事痛快譚(シリーズ)徳間ノベルス 1984-91 のち文庫
  • 静かなる殺意 角川ノベルズ 1984 のち文庫
  • ズベ刑事(シリーズ)光文社 1984-85 のち文庫
  • イルゼの旅 勁文社 1984 「恋と男と革命と」文庫
  • 太陽の忍者 駿河台書房、1984 「日女子神の黄金」勁文社ノベルス 1986
  • 銀座の恋の物語 広済堂出版 1985
  • アイラブ拳銃 文藝春秋 1985 のち文庫
  • ギャル探偵、翔る(シリーズ)双葉ノベルス 1985
  • 黄塵を駆ける 講談社 1985 のち文庫
  • ザ・ブス 角川ノベルズ 1985 のち文庫
  • 夢みる婦警(シリーズ)祥伝社 1985
  • ヒネモス・のたり氏は名探偵 徳間書店 1986 のち文庫
  • 疾れ!妻恋警部(シリーズ)双葉ノベルス 1986-91 のち文庫
  • 団地殺人事件 シャピオ 1986 のち光文社文庫
  • お嬢さん探偵 女子大探偵・美沙緒ちゃん 桃園新書 1986
  • ブルースはお好き 講談社 1986 のち文庫
  • 情炎つきるまで 実業之日本社 1986 のち徳間文庫
  • 気まぐれ令嬢・移動探偵局 光文社 1987 のち文庫
  • 田園調布ミセス探偵局 実業之日本社 1987 のち文春文庫
  • お嬢サマお気をつけて 広済堂出版 1987 「あぶないお嬢サマ」天山文庫
  • 天山・糸綢之路行 徳間文庫 1987
  • 素敵な殺し屋(シリーズ)サンケイ出版 1987
  • 袖ノ下捕物帳(シリーズ)文藝春秋 1987 のち文庫
  • 殺人指令千分の一 光文社 1987 (カッパ・ノベルス)
  • 夢みる女刑事(シリーズ)祥伝社 1987
  • 半佐夢デカ長事件帖 角川ノベルズ 1987 のち文庫
  • キャンパス秘密探偵団 勁文社 1987 のち文庫
  • 海老茶娘探偵帖 天山出版 1988
  • バロン探偵局 講談社ノベルス 1988
  • 陽気な探偵未亡人 桃園書房 1988
  • 素敵な奥様探偵 実業之日本社 1988 のち文春文庫
  • 可愛い拳銃使い 講談社 1989 のち文庫
  • 夕日よ止まれ 徳間書店 1989
  • 輝け女艇長(シリーズ)祥伝社 1989
  • 『シルクロード タクラマカン砂漠2500キロの旅』正木信之と共著、光文社文庫
1988年のシルクロード旅行の写真集。
  • 翔んでる源氏 角川書店 1989 のち文庫
  • ベランダ刑事の名推理 光文社 1989 (カッパ・ノベルス) のち文庫
  • 翔んでる警視正 平成篇(シリーズ)文藝春秋 1989 のち文庫
  • やさしく殺して(秘密諜報員07号シリーズ) 勁文社 1990
  • 闘神 文藝春秋 1990 のち文庫
  • 翔べ!従三位夕霧麿警部 光文社 1990 (カッパ・ノベルス)
  • 美人キャスターは殺し屋 講談社 1991
  • Tokyoトレンディ嬢危機一髪 天山出版 1991
  • 翔んでる人生 広済堂出版 1991(エッセイ)
  • 天地紙筒之説 文藝春秋 1992
  • コルトを抱いた渡り鳥 小樽篇・博多篇 学習研究社 1992
  • 美貌ほど素敵な武器はない 光文社 1992
  • 青木賞の取り方 光文社文庫 1992
  • 熱血イソ弁 文藝春秋 1992
  • 湘南ベルバラ探偵局 実業之日本社 1993
  • 紫の拳銃 講談社ノベルス 1993 のち文庫
  • 殺しは淑女におまかせ 講談社ノベルス 1993
  • すかたん奉行 徳間ノベルス 1993 のち文庫
  • 翔んでる淑女捜査官 広済堂出版 1993
  • 東京保安官 AIDS防止大作戦 双葉社 1993
  • 瀬戸内に唄うひとみよ(松山篇・京都篇) 学習研究社 1993
  • 妃殿下は名探偵 祥伝社 1993
  • 上海リリー 文藝春秋 1993 のち文庫
  • スキャンダル極秘捜査線 光文社 1994 「美少女探偵事務所」文庫
  • 翔んでる警視正 新世紀篇(シリーズ)広済堂出版 1994
  • 哀しい旅人たち 角川書店 1994
  • 最後の翔んでる警視正 平成篇 11 文藝春秋 1994 のち文庫

関連人物

脚注

  1. 後の東京市向島区
  2. ただし当事者である池田重善は自らの隊に胡桃沢に該当する人物はいなかったとして、後に胡桃沢を名誉毀損で告発した。池田が亡くなったこともあり、告発のその後の経緯は不明である。