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テンプレート:Redirect テンプレート:Infobox 解剖学 (みみ)は、動物器官の1つで、適刺激とする感覚器であると同時に、重力の向きと加速度を適刺激とする感覚器でもある。一般に、聴覚にとって重要な器官として広く認知されているが、聴覚以外にも平衡覚回転覚を感知しているため、合わせて平衡聴覚器とも言う[1]

概説

音波を受容し、それを感覚神経に伝える構造を持つのが耳である。動物全体で見ると、耳を持つの割合はそれほど多いわけではないが、脊椎動物には耳を持つ種が幾つも見られる。

ヒトの場合、耳介外耳道で音を拾い集め、音によって振動する鼓膜の動きを耳小骨を用いて蝸牛の中へと伝え、蝸牛の中にある有毛細胞で神経パルス(電気信号)に変換して、蝸牛神経を通して大脳の聴覚中枢へと送る。

なお、ほとんどの哺乳類(ヒトを含む)においては、五感を司る器官の中でも、耳は生まれたときすでに成体に近いレベルまで発達している。これは、外界の危険を感じ取ったり、とのコミュニケーション(ヒトの場合、特に言語)を維持・学習するために必要だからと考えられる。ただし、ヒトの聴覚は発育とともに徐々に発達していくものであるので、乳児成人と同じ聴覚をもってはいない。音を感じることはできても、それを周波数別に分別して音を理解する側頭葉の発育が不十分であるためである。検知はできるが、認知ができないのである。したがって、生下時に十分な聴力がなく音が聞こえない状態で育ったヒトは、たとえその状態が成人になってから良くなっても、音声を理解することができない。脳で音声信号を処理することができないのである。これは視覚についても同様のことが言える。

ヒトの耳

ヒトの耳は、外耳中耳内耳の3部分に区別できる[1]

外耳

耳介

外観として目立つヒトの耳介は、体外の音波を集める集音器の機能を持ち3,000Hzを中心に約10-15dbの音響利得があるとされる。構造は耳介軟骨(弾性軟骨)に耳介筋と呼ばれる横紋筋が取り付き、その全体を皮膚が覆っている。ヒトの場合、この耳介筋は退化しているため、動かす事は難しい[1]。耳介の下端には耳朶(耳垂)という柔らかい部分がある[1]

ヒトの耳介は、ヒトの身体の中でも特徴的な形状をしているので、様々な利用がなされてきた。例えば、耳介の形状による親子鑑定個体識別が挙げられる。柔道レスリング相撲などの組技格闘技をすると、耳介がこすれて内出血を起こしやすく、これを繰り返すうちに耳全体が腫れ上がって形状が変わってしまう場合がある。この形状の変化を、日本語では耳が湧く、餃子耳と呼び、英語ではカリフラワー・イヤーと呼ばれる。なお、この形状変化の起こりやすさには個体差があり、耳が湧いているからといって必ずしも練習を積んでいて、強いというわけではない。といった欠点はあるものの、耳介の形状はよく遺伝するので、DNA血液型による親子鑑定が一般的となる前は、親子鑑定の材料として用いられていた。さらに、同じ欠点が問題とはなるものの、成人に達したヒトの耳介の形状は基本的にほとんど変化しないので、まれに個体識別の材料となることもある。

耳介の血流の変化は見て取りやすく、興奮した時などに、耳介が赤くなる現象が見られる場合がある。よって、俗に興奮した際や強い羞恥を感じた際の比喩表現として、日本語では「耳まで赤くなる」と言ったりもしている。しかし、耳介の部分が赤くなるのは、このような時だけではなく、例えば冷気に曝された場合など、精神的な活動とは無関係に赤くなることもある。この部分はヒトの身体の中では比較的凍傷になりやすい部分であるため、寒冷地では耳介を保護する防寒具も用いられることがある。

ファイル:Darwin-s-tubercle.jpg
サル目としてヒト(左)とバーバリーマカク(右)の比較。矢印で示した部分がダーウィン結節。

耳介は、前は1個の黄色繊維軟骨がもたらす複雑な浮き上がりの中にくぼみがあり、後ろはとても滑らかで凸状になっている。人によっては見られるテンプレート:仮リンクは、耳輪の下向きになった部分にある突起で、長い耳を持つ哺乳動物の耳の穂先に対応する[2]

以前から、ヒトだけでなくオランウータンチンパンジーなど霊長類は、耳にあまり発達しておらず機能も持たないが識別するに充分な大きさがある筋肉を持つ事が知られている[3]。この未発達の筋肉はテンプレート:仮リンクに当る。理由はどうあれ耳介を動かせないこの筋肉は、生物学的機能を失ってしまったと言う事ができる。これは、近縁種間にある相同の証拠とみなされる。なお、ヒトの中でも変異性があり、この筋肉を使って実際に耳介を動かせる者や、訓練を積んで動かせるようになる者もいる[3]。一般の霊長類が耳介を動かす能力をほとんど失っているが、その目的は一般的なサルが持たない首を水平に回す能力で代替されている。これは、ある器官が備えた機能がのちに別な器官の機能に移ってしまう例に当る[4]

美容整形手術によって耳を小さくしたり形を整えたりすることはテンプレート:仮リンクと言う。まれにある耳介が形成されない先天性閉鎖症や発達が小さい小耳症などへの対応として、耳介を再建する事も行われている。通常の場合、肋骨部など身体の別な部位から軟骨を採取して耳の形に成形し、移植用皮膚や回転皮弁で覆う。近年ではラットの背中で耳介を発達させ、然るべき後に移植する方法もある。しかし問題は外耳にとどまらず、閉鎖症や未発達状態の耳介を持って生まれた新生児には、三半規管の未発達や欠落、または奇形がしばしば伴う。医学が打てる初期対処は、赤ちゃんの聴力や外耳道とともに三半規管の状態を調べる必要があり、その結果から耳介を含む耳全体の修復治療計画が立てられる[5][6][7]

20世紀後半までは、「サザエさん」や「ドラえもん」といった子供向け番組で、家族の年長者が耳介を引っ張るという児童虐待がしばしば見られた。近年では、自主規制によりあまり見られなくなっている。

外耳道

耳の外部に開かれた孔(外耳孔)と鼓膜の間にある約25mmの管状部分は外耳道という。外側から1/3は軟骨で、その奥の2/3はが周りを囲い、皮膚が覆う。形状はゆるやかなS字型に曲がっている。皮膚部分にはアポクリン腺という分泌を行う腺があり、この分泌物が耳垢となる[1]

中耳

ファイル:Ear-anatomy.png
ヒトの耳の構造。1:骨導、2:外耳道、3:耳殻、4:鼓膜、5:前庭窓、6:槌骨、7:砧骨、8:鐙骨、9:三半規管、10:蝸牛、11:聴神経、12:耳管

鼓膜と鼓室

鼓膜とは外耳と中耳の間にある線維性の薄い膜で、寸法は直径約10mm、厚さ約0.1mmである。外耳道に対し上が覆いかぶさるような斜めになっており、中央は漏斗状のへこみ(鼓膜臍)がある。鼓膜には外面内面ともに神経が分布し、痛覚にきわめて敏感である[1]。鼓膜の内側は粘膜で覆われた鼓室があり、耳管咽頭と繋がっている。鼓膜には耳小骨という米粒ほどの大きさである3つの骨が繋がっており、鼓膜側から槌骨砧骨鐙骨という。この3つの骨は関節で繋がり、耳小骨筋(鼓膜張筋・鐙骨筋)という筋肉がついている。音波を捉え鼓膜が振動すると、耳小骨は連動し、内耳へ伝える。耳小骨筋は、大きすぎる音によって耳小骨が過剰に動かないよう収縮の力を加えている[1]

耳管(エウスタキオ管)は通常は圧迫されて閉じている。しかし何かを飲み込むなどの動きに連動して一時的に開く。この動きによって外気圧と中耳の気圧差を解消する。これが何らかの原因で閉塞すると、鼓膜が陥没して振動しにくくなり、難聴を引き起こす。逆に開放されたままの状態だと、自らの声が異常に大きく聞こえる自声強聴という状態になる[1]

内耳

内耳全体は、側頭骨に空いた複雑な空間である骨迷路の中に、ほぼ同じ形の膜迷路が収まって形成されている。この間には外リンパというリンパ液で満たされている。膜迷路には、前方から三半規管(半規管)、前庭蝸牛の3つの構造がある[1]

前庭

前庭は三半規管と蝸牛に挟まれた内耳の中央にあり、側面の前庭窓で中耳の鼓膜部分と接している。その中には2つの袋があり球形嚢卵形嚢と呼ばれ、これらの中に有毛細胞を持つ平衡斑が感覚器官として働く。嚢の中には平衡砂という炭酸カルシウムの結晶を乗せた平衡砂漠と呼ばれるゼリー状物質が有毛細胞を覆っており、身体の動きや傾きなどによって平衡砂漠が動き、それを有毛細胞が感知する[1]

蝸牛

耳が捉えた音波は鼓膜を介して前庭窓から膜迷路を振動させる。蝸牛はカタツムリに似たらせん状の管が蝸牛軸に2巻き半巻いた形を持つ。らせん管の断面は、前庭球形嚢と繋がる蝸牛管を挟んで前庭階鼓室階という外リンパで満たされ蝸牛頂部で繋がった2つの空洞がある。蝸牛管の底には高さが伸びた上皮細胞によって作られた有毛細胞を持つラセン器(コルト器)が形成されている。膜迷路の振動は外リンパを介し、根元の穴(前庭窓・卵円窓)を通って前庭階内部に伝わる。そして蝸牛先端で鼓室階へ抜け、最終的に蝸牛窓(正円窓)で消える。この一連の振動は間にある蝸牛管に満たされた内リンパ液を揺らし、ラセン器の毛細血管に感知される[1]

三半規管

三半規管は、それぞれが直交に配置された半円弧状の前半規管・後半規管・外側半規管の3つの管で構成され、それぞれ途中に膨らんだ膨大部という部分がある。膨大部の中には有毛細胞の感覚毛が伸びた膨大部稜(小帽)があり、ここで身体のバランスを感じ取る[1]

内耳神経

内耳で感知された音波や平衡感覚などの神経信号は、神経系の器官に属し脳神経の感覚性の一部をなす内耳神経を伝ってへ届く。蝸牛から聴覚信号を送る部分は蝸牛神経、前庭から平衡覚などの信号を送る部分は前庭神経という。これらは内耳道の底で合流して頭蓋の中に導かれ、顔面神経の外側で脳と接続する[8]

機能から見た耳

先述のように、外観として目立つ耳介を俗に「耳」と呼ぶ場合も少なくないが、外耳、中耳、内耳までの全体が耳である。そして、音を感知する部分も、平衡覚を感知する部分も、回転覚を感知する部分も、全ては内耳に存在している。ただし、音の感知に関しては内耳以外に、外耳や中耳も一定の役割を果たしている。なお、いずれの感覚も、脳で処理されることによって、はじめて知覚される。

音の感知

音は、主に外耳より空気振動として外耳道を通って耳の中へ進入し、鼓膜により固体の振動へと変換され、それが中耳内の耳小骨を伝わり、内耳の蝸牛へと到達する。なお、蝸牛の中は液体で満たされているので、ここまでで、気体の振動、固体の振動、液体の振動と変化していることになる。ただし、自らが発したの場合は、自らのなどを伝わってゆく音、いわゆる骨導音も内耳の蝸牛へと到達しているように、音の伝達には別ルートも存在する。

いずれのルートから来た音による振動であっても、蝸牛に到達した振動は、蝸牛の中にある基底膜上の有毛細胞の毛を振動させる。この有毛細胞に伝わった振動は、有毛細胞の外にあるカリウムイオンが、有毛細胞の内側へと移動し、これによって電位の変化が発生する(カリウムイオンは正の電荷を持つため)。これが有毛細胞を興奮させ、その興奮は電気信号となって大脳聴覚中枢へと達し、音として知覚される(ただし、音として知覚されるためには、それが適切な周波数可聴域)で、かつ、適切なエネルギー(強さ)を持っていた場合に限られる)。なお、左右に2つの耳を持ち、この信号を脳で処理することによって、音源の定位なども知覚している。また、入力された音の強さに応じて感度を変えるといったこともしている。このように、音を知覚するには脳の活動が欠かせないが、内耳で有毛細胞が音によって生じた振動を電気信号に変えてくれなければ、脳の側ではどうすることもできない。ちなみに、音を電気信号に変換している有毛細胞が活動しているかどうかは、外耳道に高性能のマイクロフォンを近づけた時、微弱な音が耳の中から出ていれば、活動していることを確認することができるので、乳児の聴覚が正常かどうかの検査に利用されることがある。

音の感知に関しては、内耳以外に、外耳や中耳にも役割がある。まず、外耳の耳介は集音器としても役立っている。これは手を耳介の後ろにあてがってみれば、音の聞こえが良くなることから、その効果を簡単に確かめることができる。他にも、外耳道は閉管と考えることができ、これが共鳴器となり、共鳴する周波数付近の感度を上げている。

次に、中耳は、内耳の蝸牛を満たしている液体に、効率的に振動を伝えるために大きな役割を果たしている。この中耳の役割を担っているのは、主に鼓膜耳小骨だ。鼓室形成術のような手術が考案されたのも、たとえ内耳の機能が保たれていたとしても、鼓膜と耳小骨とが正常に機能していないと音の聞こえが悪くなってしまうからである。中耳は、内耳のように液体で満たされているのではなく、空気で満たされているので、耳小骨は振動しやすくなっており、これが振動を伝える効率を上げている。また、鼓膜も中耳側に凹むという形状を持っていることなど、なるべく空気の振動を効率良く受け取れるようになっている。ちなみに、加齢と共に鼓膜や耳小骨が振動しにくくなることが、老人性難聴の一因となっているわけだが、このことからも中耳の部分が音の感知に一定の役割を果たしていることが判る。なお、中耳は、耳管咽頭とつながっており、外耳と中耳の間に気圧の差が生じた時に、この耳管を用いて気圧差を解消することで、鼓膜の振動が妨げられないようにしている。

ヒトの耳は一般的に20ヘルツから20キロヘルツの音域を聴く事が可能で、これは可聴周波数と呼ばれる。聴覚は、耳の働きと同様に中枢神経の聴覚野に損傷が無く充分に機能していることが条件だが、ヒトの聴覚障害(音に対する極端な鈍感さ)は神経や聴覚野よりも内耳に問題を抱えている場合が最も多い[9]

平衡感覚

平衡感覚に関係しているのは、耳では内耳と呼ばれる部分のみである。ただし、ヒトの場合、平衡感覚に関係しているのは、内耳だけではない点には注意が必要である。しかし、それでも平衡覚の感知や回転覚の感知に、内耳は大きな役割を果たしている。もしも内耳の疾患があると、耳鳴り難聴が起こったりする以外に、めまいなどが起こったりするのは、これらの感覚が狂うためである。この内耳での平衡覚と回転覚の感知においても有毛細胞が活躍しており、耳石器卵形嚢斑球形嚢斑の部分)にある有毛細胞は、主に頭部の傾斜を感知し、三半規管にある有毛細胞は、主に頭部の回転を感知している。これらの有毛細胞からの情報が電気信号として脳に伝えられ、視覚皮膚感覚や関節の動きや筋肉の動きなど、他の感覚と統合することによって、ヒトは平衡感覚を得ている。

耳毒性

薬剤などがヒトの耳の機能に与える悪影響(耳毒性)については、ある程度の調査が行われてきた。聴力低下を招く物質や耳石器にダメージを与える物質を幾つか挙げておく。

トルエン

テンプレート:Main2 トルエンに暴露されると、聴力にも悪影響があることが知られている。ヒトの場合、日常的にトルエンに暴露されていた個体において、聴性脳幹反応の潜時(電位変化が現れるまでの時間)が長くなることが確認されている[10]。 つまり、音の入力があってから脳で解析されるまでの時間が、健康な個体と比べて長くなってしまうのである。

以下は動物実験でトルエンが聴力に悪影響を与えた事例である。1200ppm(4500 [mg/m3])のトルエンに5週間暴露され続けたラットは、その直後〜数週間程度は何ともなかったが、約10週間後(2.5ヶ月後)には4 [kHz]の音では問題が起こらなかったものの、8 [kHz]の音でわずかに聴力低下、12 [kHz]以上の音では顕著な聴力低下が見られた[11]。つまり、ラットはトルエンの影響で、特に高い周波数において聴力障害が起こるのである。さらに、聴性脳幹反応を見ても、音に対する反応速度が低下している(聴性脳幹反応の各波の発生が遅くなる)のが見られた[11]

他にも様々な条件で調べられており、

  • 1000ppm(3750 [mg/m3])のトルエンを1日当たり14時間・2週間に渡って暴露
  • 1500ppm(5625 [mg/m3])のトルエンを1日当たり14時間・3日間に渡って暴露
  • 2000ppm(7500 [mg/m3])のトルエンを1日当たり8時間・3日間に渡って暴露

などの条件でラットに聴力低下が発生した[11]。また、モルモットでもトルエンは、その蝸牛にダメージを与えることが明らかになっている[12]

なお、2005年現在なぜトルエンでこのようなことが起こるのかについては判っていない[13]

抗生物質

抗生物質の中でも、アミノ配糖体系抗生物質には耳毒性があることが知られており、内耳障害を引き起こす。音の感知については、まず高音域から聴力低下が始まり、次第に低音域へと進行し、最終的には聴力を喪失する。低下した聴力は、投薬を中止しても回復しない。また、耳石器へも毒性を発揮し平衡感覚を狂わせる。最悪の場合、耳石器の機能が完全に失われる。こちらも投薬を中止しても回復しない。このような抗生物質として、カナマイシンストレプトマイシンゲンタマイシンが知られる。

他の抗生物質でも、例えばテトラサイクリン系抗生物質のミノマイシンは耳石器への毒性が知られており、めまいなどを引き起こすことがある。ただ、ミノマイシンの場合は投薬を中止すれば回復する

ループ利尿薬

ループ利尿薬には、Na+/K+/2Cl-共輸送系を阻害ことで尿量の増加を起こさせているが、体内のNa+とK+とのバランスも崩してしまうという副作用が存在する。この時、内耳のリンパ液のNa+とK+とのバランスまで崩してしまい、結果として感音難聴を生じることがある。投薬を中止すれば、多くは難聴も解消するが、まれに障害が残るケースも存在する。このような利尿薬として、フロセミドエタクリン酸などが知られている。

その他の薬剤

他にも次のような薬剤で耳毒性が知られている。

  • アセチルサリチル酸 - 大量使用して血中濃度が高くなると、耳鳴りと難聴を生ずる。ただし、使用を中止すれば回復する。
  • シスプラチン - 副作用の1つとして、耳鳴りと難聴を引き起こす。使用を中止しても回復しない。

脊椎動物の耳

両生類爬虫類鳥類哺乳類が持つ半規管は、全て三半規管であるという共通点を持つ。したがって、以降は半規管の種類に関する記述は省略する。参考までに、脊椎動物の中で半規管がニ半規管なのはヤツメウナギが知られており、半規管が一半規管なのはヌタウナギが知られている。

両生類の耳

両生類の耳は、伝音の役目を果たしている耳小骨は1つだけであり、この部分は小柱(しょうちゅう)と呼ばれている。

爬虫類の耳

爬虫類の耳は、外耳道が短く、外側から見て浅いくぼみになっており、鼓膜が見える。また、両生類と同様、伝音の役目を果たしている耳小骨は1つだけであり、小柱と呼ばれている。なお、カメレオンなど幾つかの種類では、鼓膜は皮膚に覆われている。また、ヘビ無肢トカゲは、鼓膜を持っていない。

鳥類の耳

鳥類の耳は、爬虫類と同様、伝音の役目を果たしている耳小骨は1つだけであり、小柱と呼ばれている。なお、フクロウ科羽角は、耳そのものというわけではないものの、俗に「フクロウの耳」「ミミズクの耳」などと言われることもある。テンプレート:See also

哺乳類の耳

陸上に住む哺乳類は、しばしば耳介を動かすことができる。また、同じく陸上に住む哺乳類の中には、耳介が体温調節の機能を持っている場合もある。例えば、ゾウは、その表面積の大きな耳介を利用して、中を流れる血液を空冷している。ちなみに、これは自然界でのことではないが、ヒトが家畜としているウシの個体識別などのための札も、この耳介の部分に装着する場合がある。

ある種の哺乳動物の耳に見られる内側にある複雑な隆線は、反響や獲物が立てる音に耳を向けて敏感に受け止める行動の際に役立つ。この隆線は、フレネルレンズと似た効果を音響上で得る役割を持つと見なす事ができ、またコウモリアイアイショウガラゴオオミミギツネネズミキツネザルなどに関わらず多様な動物に見られる[14][15][16]

無脊椎動物の耳

陸上の脊椎動物ではほぼ標準装備の耳であるが、無脊椎動物では、専用の耳を持つ動物はそれほど多くない。耳と呼ぶべき構造を持つ動物は、以下の通り。

耳を持つのは、多くは鳴き声を上げるものである。すなわち、音によって個体間の情報伝達をするために、特に耳の発達が必要だったものと考えられる。また、ガについては、天敵であるコウモリ反響定位をするため、この音波を受信するための適応と考えられる。

ある種の昆虫が持つ鼓膜器は非常に感度が高く、他の動物の聴覚器を越えた能力を持つ。ヤドリバエが腹部の両側面に持つ鼓膜器は、薄いブリッジを介して外骨格と繋がっているためひとつの鼓膜のようにふるまい、鋭敏な指向性情報を得られるようになっている。ヤドリバエの雌は雄コオロギの居場所をこの「耳」を使って、わずかな反響周波数にある違いを聞き取って知る。この周波数の違いを、ヤドリバエはわずか500億分の1秒の音からも判断可能で、正確に寄生主へたどり着く[17]

同じような器官は節足動物も持っており、やはり同様に非常に短い音を聴く。例えばクモゴキブリは脚の毛で音を聞き分ける。また、ケムシの中には体の毛が振動を感じ取る器官として利用している可能性がある[18]。音波受容器を持つものに、

などがある。いずれも体表面の毛などに空気の振動を受けやすい仕組みがある。カは羽音での情報伝達をおこなう。

耳と文化

ファイル:Modified Ear.jpg
様々なピアスをつけた耳

何千年も昔から、伝統的に耳介のピアスなど宝石等が装飾された。中には装飾に耳たぶを伸ばして大きくする目的を持たせた文化圏もある。しかし一方で、余りに重い耳飾りや、衣服に絡んだりして耳介を傷つける事例も生じている[19]

耳(耳介)は、外観上目立つ部分なので、イヤリングなどで装飾されたり眼鏡の装着場所としても利用されたりする。また、コスプレなどにおいて、例えばバニーガールではウサギの耳介を模した装飾を付けたり、ある種の衣装では他の動物の耳介を模した装飾(猫耳など)を付けたりする例が見られる。さらに、そのようなヒトと他の動物の耳介をくっつけたイラストなども存在する。

また、耳に関する習慣として、外耳道から耳垢を取り出す行為である耳掻きのように、日本など限られた地域だけの習慣もある。他、福耳のように、特定の文化圏で珍重される耳介の形状などもある。

近年行われるようになった利用法として、皮膚の細胞の採取の場所として、耳介があるために目立たない耳介と頭の間が選択されたりもする。他に、体温の計測の時に、耳介の中央部にある外耳道が利用されることもある。

また、ヒトの耳介は、ヒトの身体の中でも特徴的な形状をしていて目立つ部分でもあるので、この部分にコンプレックスを持つ例も見受けられる。これは美容形成の分野で、耳介の角度を変えるといったことが行われることがあることからもうかがえる。中には、画家のゴッホのように、自分の耳介を切り取ってしまった者も存在する。

派生義

  • フクロウ科の羽角、物の外周部、先端部、突出部を耳介に喩えて、耳と呼ぶ場合がある。ミミズクの耳、食パンの耳、カステラの耳、ティーカップの耳(=取っ手)など。木工では、丸太を板に製材した後で側面に残る樹皮を、耳と言う。
    • 物の外周部という意味では同じだが、単に「耳」ではなく、例えば切手シートの耳紙のように、「耳*」などと呼ばれる場合もある。
  • 聴覚及び聴覚情報を使った認識を耳に喩える場合がある。地獄耳、早耳、英語の耳など。道教の神に、聴覚に優れた順風耳がいる。
  • 中国では漢字のこざとへん(阜部。阝)、おおざと(邑部。阝)を耳に喩えている。

脚注

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参考文献

関連項目

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外部リンク

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