紀元前

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紀元前 (きげんぜん) は、紀年法において紀元元年=1年)よりも前の年々を表現する方法。紀元の前年が紀元前1年となり、過去に遡る度に数値の絶対値が増加する。

天文学などでは、紀元前を用いず、ゼロおよび負数を用いた年数(西暦0年、西暦-1年など)が用いられる。この場合はその年数が紀元前の年数とは1年だけずれることに特に注意が必要である(後述)。例えば、ユリウス通日の起点は紀元前4713年1月1日正午(世界時)であるが、これは西暦-4712年1月1日正午(世界時)のことである。

現在の日本で単に「紀元前」と言った場合、通常は西暦(キリスト紀元)の紀元前を指す。西暦の紀元前であることを明示したいときは、西暦前、西暦紀元前、キリスト紀元前などと言う。英語では「BC」と書かれる事が多く、日本でも目にする事がある。これは「Before Christ」の略である。

キリスト紀元による紀元前

西暦元年1年)または紀元1年を紀元とし、それ以前のを表す時に用いられる。西暦元年を基準として紀元前1年紀元前2年紀元前3年…と年数を逆行させて呼称する。この紀年法では、紀元前1年紀元1年の前年であって、紀元0年(または西暦0年)という年は存在しないことに注意しなければならない。この紀年法17世紀の神学者ドニ・プト(Denis Petau)による案であり、18世紀末に一般に広まった。

西暦紀元前は、本来イエス・キリスト降誕前として定義された。ただし、現在では、それが実際に西暦1年だったとはみなされていない。さまざまな説があるが、紀元前7年紀元前4年ごろというのが定説である(詳細は「西暦#西暦元年とイエス生年のズレ」の項参照)。

天文学における紀元前

天文学においては、紀元前を使用せず、その代わりに西暦に0(ゼロ)または負記号をつけて用いる(en:Astronomical year numbering)。これは、紀元前の年数を用いたのでは整数演算規則に反することとなり、西暦1年をまたぐ年数計算(減法)が面倒になったり誤りが起きてしまうからである。天文学における紀年法では、紀元前1年は「西暦0年」、紀元前2年は「西暦-1年」、紀元前3年は「西暦-2年」…と表現されるので、「キリスト紀元による紀元前」に比べて絶対値が1だけ少なくなることに注意を要する。

  • 通常の紀年法:     紀元前3年 → 紀元前2年 → 紀元前1年 → 紀元1年 → 紀元2年 → 紀元3年
  • 天文学での紀年法:  西暦 -2年 →  西暦 -1年 →  西暦 0年  → 西暦1年 → 西暦2年 → 西暦3年

例:紀元2年から紀元前3年(西暦-2年)までの年数の算出法

  • 通常の紀年法     2-(-3)-1 = 4年 (紀元1年を跨ぐ場合には、1年を減じなければならない)
  • 天文学での紀年法  2-(-2) = 4年 (紀元1年を跨がない場合の年数の算出方法と同じである)

中立的な表現

テンプレート:Main 非キリスト教徒に配慮し、たとえば英語ではAnno Dominiを(Common Era - C.E. )とし、紀元前をBefore Common Era - B.C.E.と言い換える動きがある。

日本語では、「紀元」や「西暦」など、そもそもキリスト教的な要素がない語を使うため、日本ではあまり問題にならない。

関連項目

テンプレート:Chronology