精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

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テンプレート:Ambox テンプレート:Infobox 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(せいしんほけんおよびせいしんしょうがいしゃふくしにかんするほうりつ、昭和25年5月1日法律第123号)とは、精神保健精神障害者福祉について規定した日本法律である。精神保健福祉法などと略される。

目的は、精神障害者の医療・保護、その社会復帰の促進・自立と社会経済活動への参加の促進のための必要な援助、その発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進により、精神障害者の福祉の増進・国民の精神保健の向上を図ることにある(1条)。

当初の名称は「精神衛生法」で、1987年7月施行の精神衛生法等の一部を改正する法律(昭和62年9月26日法律第98号)により「精神保健法」に、1995年7月施行の精神保健法の一部を改正する法律(平成7年5月19日法律第94号)により「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改める。

構成

概要

強制入院の根拠法

本法は、その沿革からして精神障害者の強制入院制度に関する事項が多くを占めている。1964年ライシャワー事件以降は、精神障害者に対する隔離収容の強化に傾いたが、1984年宇都宮病院事件以降は、入院患者の人権・権利擁護尊重に傾き、現在では社会的入院からの退院促進に重きを置くことになっている。本法に規定される入院形態は措置入院緊急措置入院医療保護入院応急入院任意入院があり、前四者は強制入院(非自発入院)である。その他の強制入院として医療観察法による入院処遇、同法による鑑定入院、刑事訴訟法上の鑑定留置としての鑑定入院があるが、詳細は各項目を参照のこと。 本項はこれらに共通する事項について記述する。

精神科病院、精神病床、精神保健指定医

本法の入院規定の対象となるのは、精神科病院及び精神科病院以外の病院であって精神病室を有するものである(19条の5参照)。

  • 精神病患者は、原則として精神病室に入院させることとされる(医療法施行規則10条3号)が、例外的に精神病室以外の病室に入院させる場合(同条柱書ただし書き)、本法が適用されない。例えば、患者の拘束を精神保健指定医の判断なく行うことも可能である。このような例外を除いて、精神病床では本法に則った入退院や処遇が履践されなければならず、精神科臨床について一定の修練を経た精神保健指定医(指定医)を、常勤として置かなければならない(19条の5)。指定医は入退院、入院継続、処遇等に関し独占的な判断権を有する。詳細は以下及び精神保健指定医の頁を参照のこと。

処遇

入院患者に対しては行動制限を課すことができ、法律レベルではその内容・手続等の規定がなく、通達レベルへ広範に委任されている。

  • 36条2項及び昭和63年厚生省告示128号は信書の発受、人権擁護の行政機関職員及び代理人弁護士との電話、並びにこれらの者及び代理人となろうとする弁護士との面会はいかなる場合も制限できないとし、36条3項及び昭和63年厚生省告示129号は12時間を超える隔離及び身体的拘束は指定医の判断を要するとする(36条3項は「隔離その他の行動の制限」としており、告示に規定のない12時間を超えない隔離は、同条項の直接の規制対象とならないことになる)。その他の行動制限は医師の指示で可能であると解されているが、37条1項及び昭和63年厚生省告示130号の基準に従うこととされている。これらの規定は、告示130号の開放処遇について一部違える他は、全ての入院形態において(及び医療観察法92条以下で、同法による入院処遇についても)同様に適用される。すなわち、任意入院において退院制限がなくても、要件を満たせば身体的拘束すら適法である(もっとも、継続的に行動制限を要する患者が、真に任意入院の適応であるかは吟味されなくてはならないが)。
  • 入院の強制や行動制限があることのセーフガードとして、指定医の報告制度(37条の2)、定期病状報告制度(38条の2)がある。さらに、中心的な不服申立制度として退院請求・処遇改善請求制度(38条の4以下)と、これらの請求や、入院・定期病状報告の審査のため精神医療審査会の制度(12条以下)が定められ、可及的に中立的な機関として入院・行動制限の運用をチェックする建前となっている。
  • 以上のように強制入院(収容)及び行動制限等の処遇については定めがあるものの、強制医療の内容・手続そのものについては、何らの規定も置かれていない。

福祉制度の根拠法

関連項目

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