精神世界

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

精神世界(せいしんせかい)は、精神世界のことを広く指すための用語。

宗教哲学心理学が扱う世界のこと[1]全般を指しうる。だが、その中でも特にニューエイジの運動以降に人々から関心を集めるようになった様々な領域をまとめて指すための用語としてしばしば用いられている。「物質世界」の対義語として位置づけられることが多い。

概説

精神世界とは、宗教哲学心理学が扱う世界のこと全般を指しうるが、その中でも特にニューエイジの一連の運動以降に人々の関心を集めることになったことがらを指すためにしばしば用いられている。精神世界であるので、眼で見たり、手で触れたりする領域には属さないことが中心となっている。

出版界では、アメリカでニューエイジの運動が興隆し、そこである種の思潮や実践(霊性を回復しようとする運動を含む[2])が展開され、それが日本にも影響を及ぼすようになった後、宗教や哲学とは異なったカテゴリとして「精神世界」というカテゴリ(ジャンル)が確立された。1980年前後には各書店に「精神世界の本」といったコーナーが設けられ、ニューエイジ、ニューサイエンス、瞑想ヨーガ仙道神秘主義スピリチュアリズム心霊チャネリングなどの本がそこに配置されている。また心理学などの中から特にユングトランスパーソナル心理学などの本が選ばれ配置されている場合もある。書店によってはUFO古代史などの本が並んでいることもある。 『精神世界総カタログ: 専門書店が選んだ、心と人と世界をめぐる本』というカタログの2000年版では、実に10588冊もの書籍が掲載、カタログ化されている[3]

宗教哲学神話民間信仰などでは、多様な精神世界論が語られ、霊界や神々の世界や魔界が存在する世界論や、絶対的な他者である唯一の創造神と被造物で成り立つとする世界論、あるいは全てはひとつの神でありこの世は仮の姿と観る世界論、一切はとする世界論、アニミズム、汎神論、人格神、非人格神など、実に様々な世界観が語られている。単に見えない世界が存在すると語るだけでなく、その内部に秩序性、階層性、多重構造性などがあるとし多元性があるとする説や、反対に本質的には一元で多元と見えるのは仮、とする説なども存在している。精神・心で構成された世界が、目で見え手で触れることのできる物質世界と重なり合って存在しているという世界観[4]もあり、また本質的にひとつだとする世界観も語られている。

精神世界のジャンルでは、見えない世界のことを知ろうとするだけでなく、見えない世界との交流により何らかの体験をすることで、自身の精神の変革をはかろうとする傾向の本も多々見られる。

唯物主義の立場を採る人は、心理学や哲学や文化全般に無関心で不勉強な傾向があり、このジャンルに属することに関してはあまり知識が無いことが多く、知識が無いまま「精神世界」を(レッテル用語の意味での)「オカルト」と単純に短絡させていることも多い。だがこれはやはり理解不足や勉強不足であり、両者は一部重なることはあるが、基本的には別の概念である。

出典・脚注

  1. ハテナ「精神世界」
  2. 日本の島薗進はこれを「新霊性運動」と呼んでいる。
  3. 『精神世界総カタログ:専門書店が選んだ、心と人と世界をめぐる本』2000年
  4. 例えば、霊界と物質界は重なり合って存在している、とする説明。重なっている、としていて、一種の「場の理論」であって、単純に一元論とか二元論とかに分類できるものではない世界観。(たとえば物理学者がある場面で、世界には電界と磁界がある、と主張しても、それが即 二元論を主張したというわけではない、というのと同じことである)。

関連項目

関連書

  • 湯浅泰雄『古代人の精神世界』ミネルヴァ書房、1980年
  • 『精神世界の本』平河出版社、1981年
  • 平野仁啓『日本の神々: 古代人の精神世界』講談社、1982年
  • 池見澄隆 『中世の精神世界: 死と救済』人文書院、1985年 ISBN 4409410679
  • 倉田百三『倉田百三の精神世界: 出家とその弟子』白鵠会、1990年
  • 内藤景代『わたし探し・精神世界入門―ヨガと冥想で広がる「心の宇宙」』実業之日本社、1993年 ISBN 4408340421
  • 阿部 珠理『アメリカ先住民の精神世界』 NHKブックス、1994年
  • 関野直行『あなたにやさしい精神世界』PHP研究所、1996年 ISBN 4569554490
  • 島薗進『精神世界のゆくえ―現代世界と新霊性運動』東京堂出版、1996年 ISBN 4490202989
  • 北川隆三郎『精神世界がわかる事典:こころの不思議が見えてくる』日本実業出版社、1998年
  • 『精神世界が見えてくる: 人間とは何か気づきとは何か』サンマーク出版 1999年
  • 山本茂喜『ワクワク精神世界』文芸社、2001年 ISBN 4835515692
  • カール・スネソン『ヴァーグナーとインドの精神世界』法政大学出版局 叢書ウニベルシタス、2001年 ISBN 4588007289
  • 橋本幹子『良寛の精神世界と文学:大愚良寛の研究』考古堂書店、2003年
  • 山川健一『ヒーリング・ハイ オーラ体験と精神世界』幻冬舎、2009年
  • 栗本慎一郎『人類新世紀終局の選択―「精神世界」は「科学」である』青春出版社、1991年 ISBN 4413030184
精神世界本のカタログ
  • 『精神世界総カタログ:専門書店が選んだ、心と人と世界をめぐる本』(精神世界に関連する本数千冊~一万数千冊、百以上のジャンルに分けて紹介している。1995年、1996年、1997年、1999年、2000年版あり。2000年版で10588冊掲載)

外部リンク