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かゆ、かい、しゅく)は、うるち米)、ソバなどの穀類類、類などを多めの水で柔らかく煮た料理。粥の上澄み液は重湯(おもゆ)という。 英語ではポリッジ(英語:porridge)と呼ばれ、米の粥はライスポリッジ(英語:Rice porridge)と呼ばれている。

概要

穀類、熱源とひとつがあれば簡単に調理できる料理である。粥は消化が良く、体も温まることからが弱っている時や風邪などの病気の際に食べる事が多い。また、離乳食としても用いられ精進料理の主食としても欠かせない。或いは低カロリー食品としてダイエットとしても利用されることの多い食事である。朝食に食べる人も少なくなく、ホテルのレストランなどでも朝食に出す場合があり、専門店も存在する。

炊きあげてから時間がたつと糊状となって極端に食感が悪くなるため「人を待たしても粥は待たすな」の格言がある[1]


日本だけでなく、中国朝鮮半島ベトナムシンガポールマレーシアタイなど東アジア東南アジアでも一般的な食事である。中国では全般に用いる「粥(ジョウ zhōu)」の他、米のものを「大米粥(ダーミージョウ dàmǐzhōu)」、「稀飯(シーファン xīfàn)」、「糜(ミー )」などとも呼ぶ。三分粥のような薄いものは汁物扱いで「米湯(ミータン mǐtāng)」、「撩命湯(リャオミンタン liáomìngtāng)」などと呼ぶ地域もある。中国では日本の粥より米が原型を残していない場合が多いが、地域によって、どの程度まで煮込むかの違いがある。例えば広東省では半分形が無くなる程度まで煮込むことが多いが、潮州料理では原型を残すことが多く、逆に順徳料理にはほぼ米の原型がなくなるまで煮た「冇米粥」(モウマイチョッ。米無し粥の意味)と呼ぶものがある。

アジアだけではなくヨーロッパアフリカにも粥がある。フランスブルターニュ地方では古くからそば粥が庶民の常食とされていた。中欧北欧では、最も量の多い食事を昼に食べると、夕食は粥で軽く済ませることも多い。ドイツでは、オートミール、ソバ、米、セモリナなどの粥を穀物のスープと呼び、バター砂糖シナモンレーズン、果物のコンポートナッツなどを加えて食べる。ロシアにもカーシャという粥がある。砂糖を入れて甘く作った牛乳粥は南アジア西アジア中近東ヨーロッパ北アフリカにかけての広い地域で見られ、例えばスペイン語圏の各国では「アロス・コン・レチェ」として、主に子どもが喜ぶおやつとしてよく食べられている。粥の水分を少なくすればプディング、多くすればスープに近くなる。

種類

調理法による分類

生米から煮たものも、炊いた飯を煮たものも、ともに「粥」である(言海)。

入れ粥
一度通常の水分量で炊いたご飯に、ご飯の倍程度の量の白湯を加えて炊きなおして作る粥。余りご飯を粥にして食べる場合などの調理法で易しく、手早く作れるが、粘り気のある汁(一部地域で「おねば」と呼ばれる)が出易く、炊き粥にくらべると味が落ちる。
炊き粥
生米から炊いて作る粥で、米と水の分量比により呼称が異なる。後述する茶粥の場合はかき混ぜても米が崩れにくいが、白粥の場合は炊くときにかき混ぜると米が崩れ、粘りが出て味が落ちるのであまりかき混ぜない方がよい。吹きこぼれない程度の強火で、米が自然に対流するように炊くのが良いといわれる。米飯用の炊飯器で炊くことも出来、通常の米飯用とは別に炊き粥のための水調整用ゲージが用意されている機種も多い。

水分量による分類

(以下の米と水の分量比は、農林水産省による[2]

全粥
米の5倍量の水で炊く。
(重湯がない粥)
七分粥
米の7倍量の水で炊く。
(全粥7:重湯3)
五分粥
米の10倍量の水で炊く。
(全粥5:重湯5)
三分粥
米の20倍量の水で炊く。
(全粥3:重湯7)

穀類による分類

白粥(しらがゆ)
うるち米を水で炊いたもの。
黒米粥(くろまいがゆ)
黒米を水で炊いたもの。
赤米粥(あかまいがゆ)
赤米を水で炊いたもの。
粟粥(あわがゆ)
中国の華北でよく食べられているを使った粥。中国語で「小米粥(シャオミージョウ xiáomǐzhōu)」などという。山西省では、「稀粥」というと粟粥を指し、「稠粥」または「乾粥」というとご飯のように炊いた粟を指す。
稗粥(ひえがゆ)
ヒエを水で炊いたもの。アイヌ料理のサヨなど。
小豆粥(あずきがゆ)
小豆を使った甘くない粥。中国語で「紅豆粥(ホンドウジョウ) hóngdòuzhōu)」、朝鮮語で「パッチュク」(팥죽)という。パッチュクには白玉団子が入ることがある。紅豆粥は全量が小豆なので甘くない汁粉やぜんざいと同じもの。棗や粟・稗が入ることがある。パッチュクはコメの入ったかゆ。日本では小豆粥はコメをベースとしたまぜ粥であり、赤飯とは違い全量をうるち米で炊き上げて美味しく食べられ、炊飯も簡単なので好む人がいる。
緑豆粥(りょくとうがゆ)
中国と朝鮮半島でよく食べられている緑豆を使った甘くない粥。中国語で「緑豆粥(リュードウジョウ) lǜdòuzhōu)」という。
蕎麦粥(そばがゆ)
ソバの実をすりつぶさずに用いる粥。フランス、ロシアなどで一般的。
カーシャ(ロシア語:Каша)
エンバク、米、セモリナ、ソバキビなどから作るロシア東ヨーロッパの粥。
玉蜀黍粥(とうもろこしがゆ)
トウモロコシの実をすりつぶさずに用いる粥。ヨーロッパには粗く挽いたポレンタなどもある。
ウガリ (Ugali)
トウモロコシやキャッサバの粉から作るアフリカ東部、南部、北部の主食。水分が多いと粥状になる。
パップ (Pap)
トウモロコシの粉などから作る南アフリカの粥。
五穀粥(ごこくがゆ)、十穀粥(じゅっこくがゆ)など
上記の各種穀類を複数組み合わせて作るもの。

具や味付けによる分類

白粥(しらがゆ)
米を水で炊くだけで、具を入れていないもの。味も付けないことが多いが、少量のを加える場合がある。[3]漬け物梅干し塩辛しらす乾し佃煮なめ味噌寺納豆など、さまざまなものを付け合わせに食べる事が多い。中国では、各種漬け物、腐乳鹹蛋落花生大良牛乳、乾しエビ、肉鬆(豚肉のでんぶ)などを付け合わせにする。
茶粥(ちゃがゆ)
米をほうじ茶または緑茶(粉茶)で炊いたもの。もとは奈良の僧坊で食べられていたものが民衆に広がり定着したとの言われがある。茶は木綿などで作った茶袋に入れ、湯を沸かした鍋でさきに抽出し、そこに米を入れて炊き上げる。家庭では二度手間になるので先に粥を炊きはじめ、ひととおり湯が沸き米が踊りだす早めのタイミングで投入し一緒に炊いてしまう(渋みが立つので途中で引き上げる)。茶袋を入れたり引き上げるタイミングや、茶の量・種類などにより甘みや渋みが変わり、各家庭の味となる。塩を入れると甘みが増すが血圧を気にする家庭では入れないことも多い。梅干などを塩分の代わりにすることもある。文化としては「大和の茶粥」として奈良が発祥とみられるが西日本各地でこの食文化は見られ[4]、とくに和歌山県内では常食となっている他、大阪府南部・奈良県京都府の一部地域では郷土食として食べられている。北前船の影響か山口、能登、青森、仙台でも見られるとされる。畿内では名物として朝食として提供する旅館もある。東大寺の「お水取り」は1200年間続いた行事であるが行のあとの夜食に「ごぼ」という茶粥が出され、大和では1200年茶粥が食べられていた可能性を示唆している。他の地方ではめずらしい食し方なので、粥といって茶粥を出すと人によっては見た目が嫌がられる(傷んだ白粥と思われる)こともある。江戸時代の「名飯部類」には利休飯なるものが登場し、茶を煮出してこれを炊水として普通に米を炊き、その飯に出し汁をかけて海苔や茗荷を添えて食わせるというものがある[5]
砂糖粥(さとうがゆ)
中国の江蘇省浙江省などで一般的な、米の甘い粥。中国語で「糖粥」、「甜粥」と呼ばれる。
牛乳粥(ぎゅうにゅうがゆ)、ミルク粥(ミルクがゆ)
米を牛乳で炊いたもの。砂糖を加えて甘くするとライスプディングになる。
アロス・コン・レチェ
砂糖を入れて甘くしたスペイン語圏の牛乳粥。冷やして食べることが多い。
霰粥(あられがゆ)
米の粥の上に出汁を張り、などの魚の身をほぐして乗せたもの。
魚生粥(広東語 ユーサーンチョッ)
広東料理。米の白粥の上に、草魚などの魚の切り身を乗せたもの。
芋粥(いもがゆ)
米の粥に山芋またはサツマイモを入れて煮た粥。
サヨ
米やヒエで炊いた、アイヌ民族の粥。チポロ(イクラ)などを具として入れる。
ブブル (bubur)
白米や黒米で作るマレーシアインドネシアの粥。米の他に、豆のものもあり、甘いものもある。
ジョーク(โจ๊ก)、カーオ・トム(ข้าวต้ม)
タイの米の粥。ジョークは砕米の粥で、カーオ・トムは米の粒が残っている粥である。白粥はニオイタコノキの葉とショウガを加えて炊き、落花生や青ネギを薬味とし、好みでチャイポー(ダイコンの漬け物)やローストダックなどを添える。味のついた粥にはや肉、魚介類が入ることもある。
ポリッジ(英語:porridge
穀類を水や牛乳などで炊いた粥。生クリーム、バター、砂糖などを加えて食べる。オートミール小麦セモリナやクリーム・オブ・ウィート)のポリッジが最も一般的であるが、その他の穀類に小麦大麦トウモロコシの粉、エンドウマメの粉などもポリッジになる。
グリュエル(英語:gruel
ポリッジよりも薄く水だけで炊いた粥または重湯のこと。
ポレンタ (Polenta)
粗く挽いたトウモロコシの粉を水またはだし汁に溶き、かきまぜながら煮た北イタリアの粥。バターチーズパルミジャーノ・レッジャーノゴルゴンゾーラなど)、ミートソースなどをかけて食べる。肉料理の付け合わせとすることもある。トウモロコシ粥はクロアチアではジュガンツィ(žganci)、ルーマニアではママリガ(Mămăligă)、北アメリカではマッシュ(Mush) と呼ばれている。
ファイル:Chinese rice congee.jpg
中華粥 上にのっているのはザーサイと「肉鬆(ロウソン)」と称する豚肉田麩
中華粥(ちゅうかがゆ)
中国風の米の粥に対する日本での呼び方。白粥の他、干し貝柱(茹でたホタテガイタイラギの貝柱を天日乾燥したもの)などの出汁で炊くことも多い。水分量は五分粥と同程度。具入りのものも各種あり、魚、豚肉カキ牛肉鶏肉するめもやし落花生皮蛋鶏卵などさまざまなものを用いる。香菜ネギショウガなどを薬味とし、風味付けのごま油、付け合わせとして油条が添えられる。
八宝粥(はっぽうがゆ)
中国で一般的な、米の粥に豆類、ナツメなど8種類の材料を加えた、甘い粥。
チュッ(죽)
韓国の粥。厳密には米の粒が残っているものをチュッ、重湯のようなポタージュ状のものをウンイ(응이)と呼ぶ。中でもアワビ粥が代表的である。冬至に小豆粥、夏のスタミナ食に粥を食べる習慣がある。他にもカキエビ牛肉黒ゴマ松の実緑豆カボチャなどさまざまな具を入れた粥がある。カボチャ粥や小豆粥には餅粉の団子が入る。

行事食

七草粥(ななくさがゆ)
芹(セリ)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座(ほとけのざ、コオニタビラコ)、菘(すずな、カブ)、蘿蔔(すずしろ、ダイコン)の7種類の野草(春の七草)を茹でて刻み、米の粥に混ぜ込んだもの。一年の無病息災の祈願や、正月料理で疲弊した胃腸を休める目的等から、1月7日に食べる習慣がある。
小豆粥(あずきがゆ)
別名桜粥(さくらがゆ)。柔らかく煮た小豆を米とともに炊き込んだもの。日本では小正月(1月15日)に食べる習慣がある。小正月に食べる場合は鏡開きをしたをいれる。朝鮮半島の小豆粥パッチュクは冬至に食べる。中国では平日の朝食として食べることも多い。
臘八粥(ろうはちがゆ)
中国で、旧暦12月8日に食べる、米、豆、ナツメナッツなどの具入りの粥。

粥を使う料理

粥鍋(粥底火鍋 チョッダイフォーウォー)
広東省の順徳料理の名物。出汁ではなく、粥の中に各種の具を入れて、煮ながら食べる寄せ鍋。

商品

ファイル:Joshu no asagayu 2.jpg
高崎弁当(早朝のみ販売「上州の朝がゆ」)

脚注

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参考文献

  • 池上保子『池上保子の健康野菜スープおかゆ ビタミン、ミネラルたっぷり病気を防ぎ体に効く』食べもの通信社、1999年1月、ISBN 4880231851
  • 石橋エータロー『石橋エータローの おしゃれ粥 ザ・わーるど』日本出版社、1985年7月、ISBN 4930892430
  • ウー・ウェン『北京のやさしいおかゆ やさしく作れて体に優しいおかゆレシピ』高橋書店、2000年4月、ISBN 4471400010
  • 大場久美子『おいしく食べて無理なく痩せる 美人粥』辰巳出版、1985年12月、ISBN 4886410421
  • 岡本清孝(編)『お粥パワー まるごと1冊 超ヘルシーおいしい』主婦と生活社、1996年5月、ISBN 4391605589
  • 葛西麗子『毎日食べたいおかゆ』家の光協会、2004年10月、ISBN 4259560913
  • 講談社編『おかゆ・雑炊・リゾット おいしい味お店の味をあなたの手で』講談社、1986年10月、ISBN 4062027976
  • 小林カツ代『美人粥』文化出版局、2001年10月、ISBN 4579207858
  • 境野米子『おかゆ一杯の底力』創森社、2000年6月、ISBN 4883400832
  • 周富徳『周富徳 朝は健康お粥から』ワニブックス、1995年10月、ISBN 4847012291
  • スーパー・ドーム・スタジアム編『お粥の本 おいしい健康食』CBS・ソニー出版、1989年11月、ISBN 4789704882
  • 成美堂出版編集部編『きれいになれるお粥レシピ』成美堂出版、2001年5月、ISBN 441501674X
  • 全鎮植、鄭大聲(共編著)『粥譜 朝鮮がゆ・クッパプ』柴田書店、1983年1月、ISBN 4388056049
  • 道元(原著)、中村璋八、中村信幸、石川力山(共著)『典座教訓(てんぞきょうくん)・赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)』講談社、1991年7月、ISBN 4061589806
  • 中川陽子『五穀のおかゆでお腹がスッキリ!』リヨン社、2004年9月、ISBN 4576041800
  • 波多野須美『粥と小菜(シヤオツァイ) 波多野須美の中国料理』主婦の友社、1991年3月、ISBN 4079369905
  • 福田浩、島崎とみ子(共著)『変わりご飯 江戸の料理書にみる変わりご飯、汁かけ飯、雑炊、粥』柴田書店、ISBN 4388056804
  • 福田浩、山本豊(共著)『おかゆ 粥・汁かけ飯・雑炊・泡飯と粥のおかず』柴田書店、2002年8月、ISBN 4388059080
  • 古屋和江『やせるやせる秘密の薬膳粥 粛家秘伝の薬膳粥』世界文化社、1989年5月、ISBN 4418894020

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister

jv:Bubur Ayam

ru:Рисовая каша
  1. 清代の食通で随筆家の袁枚の著作『随園食単』が出典
  2. 農林水産省-三分がゆ、五分がゆなど、おかゆの水加減について教えて下さい。
    (cache) 農林水産省-三分がゆ、五分がゆなど、おかゆの水加減について教えて下さい。
  3. 醤油味噌で味付けしたものもある。
  4. 「奈良の食文化についての実体調査報告書」社団法人中小企業診断協会奈良支部(2010年1月)[1]PDF-P.21以降
  5. 西尾市岩瀬文庫コレクション[2]