空想科学読本

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空想科学読本』(くうそうかがくどくほん)とは、柳田理科雄の「SF科学」考察本である。2013年現在までに18冊(1〜13と6.5、Q、ミドリ、金の空想科学読本、銀の空想科学読本が存在)が刊行されている。

アニメ漫画特撮で描かれてきた様々なSFヒーロー・怪獣・各種キャラクターのSF設定を「科学的」に検証したもので、マニアに限らず一般読者にも受け入れられてベストセラーとなり、シリーズ化している。しかし、文庫化をめぐって当初の発行所である宝島社と決裂し、メディアファクトリーから改訂版・文庫版・新装版が発行されている。過去にはテレビ放映もされた。

近藤ゆたかが挿絵を担当しており、2までは木原浩勝が企画監修していた。

元々は著者である柳田理科雄が経営していた学習塾の赤字を少しでも減らす目的で、当時宝島社の編集者を務めていた友人の近藤隆史の勧めにより執筆された。しかし、柳田が経営していた学習塾は、本作の印税が入る前に倒産してしまったという。近藤隆史は後にメディアファクトリーへ移籍し、現在に至るまでずっと柳田の著書の編集を担当し続けている。

内容

本書のコンセプトは、基本的には、「怪獣映画やSFマンガなどの空想科学作品で描写されている事象を実際の現代科学で再現すればどうなるか」を現実の物理法則にあてはめてシミュレーションをすることである。ユーモアあふれる文と科学的な検証が好評を博してベストセラーになり、続編、関連書も次々と出版されるようになった。

本書の元になる企画は1995年の『帰ってきた怪獣VOW』における同様の企画で、検証したのも本書と同じ柳田理科雄が担当した。

なお、『3』および『4』はSPA!に連載された原稿を元にして、大幅な改稿や書下ろしが加えられたもの、『6』以降(『6.5』と『9』を除く)は全国の高校・高専の図書館向けのFAX空想科学 図書館通信の原稿を大幅に加筆・修正したものとなっている。

批判について

テンプレート:独自研究 本書は原作の設定を考慮せず、柳田自身の仮説を立て、その仮説を否定することで元々の設定を否定しているケースも少なからず存在する。

  • ドラえもん』のタケコプターを研究する上において、タケコプターは反重力を用いて飛行するという公式設定を無視する。
  • 公式設定で129.3kgとされるドラえもんの体重を、80kgと仮定して計算する。
  • 科学忍者隊ガッチャマン』の変身のメカニズムについて「服やヘルメットが圧縮されてブレスレットに収納されている」と本来無い設定を元に考察している。作品内で「ブレスレットの変身ジェネレーターが出す高周波によって普段着ている特殊な服が変化する」という説明がある[1]
  • マジンガーZ』において設定上の動力源を無視し、太陽電池で動かした場合の考察を行う。装甲材を鉄製と想定した場合の考察を行う。

これらの誤りは、重版時に改訂されるケースもあり、ドラえもんの体重は計算しやすいよう、ほど近い130kgに改められている。

また1巻には「ゴジラの体重は重すぎるため、生まれた瞬間に圧死する」と導き、初版の帯に書かれ表紙のモチーフにもなっていた研究があったが、後に間違いであったと認め、重版分から「ゴジラは科学的に正しい体重」と訂正された。間違いが存在する点は柳田自身も『空想科学読本4』の後書きなどで認め、謝罪している。

一方で、作品の制作サイドにおいては、本書の『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルのヘルメットが無重力下では危険だという指摘に対して、それをネタにしたイラストを描いた安彦良和の例がある。また、「ゴジラVS柳田理科雄」の出版においては、東宝がゴジラシリーズの映画で用いられたポスターや写真の提供も行うなどで積極的に協力しているほか、空想科学漫画読本シリーズの際には出版社や漫画家の協力で検証用のコマの絵も多数掲載され、『侍ジャイアンツ』の再放送の際や、『魁!!男塾』の公式ガイドブックに柳田が同作の空想科学読本的分析を行うミニコーナーが設けられた例もある。

本書に対する批判書として、山本弘による『こんなにヘンだぞ! 空想科学読本』があり、『空想科学読本1』の文庫版ではそれらの批判も含めた改訂が行われた。

挿絵について

テンプレート:出典の明記 本シリーズの挿絵は全て近藤ゆたかによるものであるが、著作権への配慮として、以下のような傾向が指摘されている。

  • キャラクターのイラストにおいてはオリジナルに似ないように描かれている。最初の「タケコプター」や「どこでもドア」の検証でドラえもんの顔を描いておらず、「ドラえもんの体形と野比家の構造」についての検証で、ドラえもんの顔(に近いもの)が描かれた[2]。また、ゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじでは、どう書いても似てしまうためか、目に横線が引いてある。
  • 『空想科学読本』の初版(宝島社刊)ではウルトラマンゾフィー、初代、ジャック)の頭から顔の中央にかかる鶏冠(とさか)状の物や体の模様など、テレビのとおりであったが、新刊(メディアファクトリー刊)以降では姿が実際と違う様子に描きかえられ、鶏冠も実際とは違うウルトラセブンのアイスラッガー状の形になった。さらに、ウルトラマンの赤い部分を表す黒っぽい着色も、初版では実際どおりに腰と膝だけ着色していたが、新刊では腰から足首まで両脚のほぼ全体が着色されている。
  • 挿絵の解説文でも本文とは違ってキャラクターの名前は意図的に書かず、「猫型ロボット、丸型ロボット(ドラえもん)」「正義のヒーロー(ウルトラマン・ウルトラセブンなど)」「カメ怪獣(ガメラ)」などという風に、作品中の別名及び形容とも異なる、曖昧な表現を用いている。

関連書籍

空想科学読本シリーズ

1999年の論争!までは木原浩勝が企画監修している。

出典

  1. 第76話「あばかれたブレスレット」より。科学忍者隊の落とした靴を分析して変身の秘密を知った敵組織が、変身を強制解除する武器を作って攻撃してくるというエピソードの鍵となっている。
  2. 空想法律読本』シリーズでドラえもんのイラストが掲載された際には、実際の顔とは大きく異なった顔で描かれている。

関連項目

外部リンク