神戸製鋼所

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株式会社神戸製鋼所(こうべせいこうしょ、テンプレート:Lang-en-short)は、日本の大手鉄鋼メーカー企業である。略称は、神戸製鋼神鋼(しんこう)。統一商標・国際ブランド名は、「KOBELCO」(コベルコ)。第一勧銀グループ三和グループの一員であり、みどり会の会員企業である。

概要

大手鉄鋼メーカーの中では最も鉄鋼事業の比率が低く、アルミ産業機械エンジニアリングなど複合経営が特徴。鉄鋼事業でも他社とは異なり、規模よりも特殊用途の付加価値の高い商材の開発に注力している。長い鉄の冬の時代に加え、阪神大震災では高炉などに大きな打撃を受け経営不振に陥ったが、2002年平成14年)以降の鋼材価格高騰により息を吹き返している。

2001年(平成13年)に新日本製鐵と鉄鋼事業で包括提携を結び、2002年(平成14年)からは住友金属工業を加えた三社提携戦略を取っている(前述2社は2012年10月に合併し、新日鐵住金となった)。トップリーグ参加のラグビーチーム・コベルコスティーラーズは強豪として知られる。

事業所所在地

本社・支社・支店

製造拠点

加古川製鉄所・神戸製鉄所は、鉄鋼事業部門に属す、グループの拠点たる銑鋼一貫製鉄所である。加古川製鉄所は厚板薄板線材棒鋼などの鋼材チタン製品などを、神戸製鉄所は線材・棒鋼を生産している。

高砂製作所は両製鉄所に次ぐ主要拠点である。鉄鋼事業部門および機械事業部門の製品である鋳造鋼鍛造鋼鉄粉などの鉄鋼・チタン加工品や各種機械類を生産している。

この他、藤沢事業所・茨木工場・西条工場・福知山工場の4か所は溶接事業部門、真岡製造所・長府製造所・大安工場の3か所はアルミ・銅事業部門、播磨工場は機械事業部門の生産拠点となっている。

研究所

  • 神戸総合技術研究所 - 神戸市西区高塚台1丁目5-5

事業部門・主な製品

沿革

明治・大正時代

昭和時代

  • 1929年昭和4年)12月 - 播磨造船所を分社化(現・IHI)。
  • 1929年(昭和4年)7月 - 東海岸工場(後の神戸製鉄所岩屋工場)新設。
  • 1939年(昭和14年)10月 - 長府工場(現・長府製造所)新設。
  • 1941年(昭和16年)3月 - 山田工場新設。
  • 1942年(昭和17年)4月 - 大久保工場新設。
  • 1943年(昭和18年)1月 - 日高工場新設。
  • 1943年(昭和18年)3月 - 日本鉄線を合併、同社工場を尼崎工場とする。
  • 1943年(昭和18年)7月 - 東京工場新設。
  • 1944年(昭和19年)1月 - 能登工場新設。
  • 1944年(昭和19年)4月 - 松阪工場新設。
  • 1945年(昭和20年)5月 - 高知電気冶金工業から高知工場を移管。
  • 1949年(昭和24年)5月16日 - 東証1部大証1部名証1部に株式上場。
  • 1949年(昭和24年)8月 - 神鋼金属工業、神鋼電機(現・シンフォニア テクノロジー)を設立。前者に長府工場・門司工場、後者に鳥羽工場・山田工場・松阪工場・東京工場を譲渡。
  • 1950年(昭和25年)5月 - 能登工場閉鎖。
  • 1951年(昭和26年)5月 - 長門北工場新設。
  • 1953年(昭和28年)9月 - 高砂工場(現・高砂製作所)新設。
  • 1954年(昭和29年)3月 - 神鋼鋼線索(現・神鋼鋼線工業)を設立、尼崎工場を譲渡。
  • 1954年(昭和29年)6月 - 琺瑯部を神鋼フアウドラー(現・神鋼環境ソリューション)として分離。
  • 1957年(昭和32年)1月 - 神鋼金属工業を合併。
  • 1957年(昭和32年)2月 - 工事部を神鋼工事として分離。
  • 1959年(昭和34年)1月 - 神戸製鉄所灘浜地区を新設、銑鋼一貫体制を確立。
  • 1961年(昭和36年)3月 - 藤沢工場新設。
  • 1961年(昭和36年)10月 - 茨木工場新設。
  • 1962年(昭和37年)3月 - 山手工場を茨木工場に統合。
  • 1962年(昭和37年)5月 - 明石工場新設。
  • 1965年(昭和40年)4月 - 尼崎製鉄を吸収合併、同社の尼崎工場・堺工場・呉工場を移管。
  • 1966年(昭和41年)10月 - 日新製鋼に堺工場を譲渡。
  • 1967年(昭和42年)4月 - 秦野工場新設。
  • 1968年(昭和43年)4月 - 加古川工場新設。
  • 1969年(昭和44年)8月 - 真岡工場(現・真岡製造所)新設。
  • 1970年(昭和45年)3月 - 加古川製鉄所を新設。
  • 1970年(昭和45年)7月 - 西条工場新設。
  • 1971年(昭和46年)9月 - 福知山工場新設。
  • 1984年(昭和59年)3月 - 高知工場閉鎖。
  • 1987年(昭和62年)10月 - 尼崎工場閉鎖。
  • 1987年(昭和62年)11月 - 呉工場閉鎖。
  • 1987年(昭和62年)12月 - 播磨工場新設。
  • 1988年(昭和63年)4月 - 門司工場を神鋼メタルプロダクツ株式会社に分社独立化
  • 1988年(昭和63年)9月 - 日高工場閉鎖(現・フジテックエスカレーター事業部「ビッグステップ」)。

平成時代

  • 1990年平成2年)12月17日 - 神鋼アルコアアルミを設立。
  • 1995年(平成7年)1月17日 - 阪神・淡路大震災で総額1,020億円の被害、被災企業で最大の被害額。
  • 1995年(平成7年)3月 - 大安工場新設、名古屋工場閉鎖。
  • 1996年(平成8年)4月1日 - 特殊鋼鋼管事業を分離し神鋼特殊鋼管を設立。切削工具事業(明石工場)を分離し神鋼コベルコツールを設立。
  • 1999年(平成11年)4月1日 - 社内カンパニー制を導入、鉄鋼カンパニー、溶接カンパニー、アルミ・銅カンパニー、都市環境カンパニー、エンジニアリングカンパニー、機械カンパニー、建設機械カンパニー、電子・情報カンパニーの合計8カンパニーが発足。
  • 1999年(平成11年)10月1日 - 建設機械カンパニー・油谷重工・神鋼コベルコ建機を統合し、コベルコ建機を設立。
  • 2000年(平成12年)1月31日 - 子会社神鋼コベルコツールの株式を三菱マテリアルに譲渡。
  • 2000年(平成12年)4月1日 - 塗装ロボット事業を川崎重工に、ハンドリングロボット事業をオークラ輸送機に譲渡。
  • 2002年(平成14年)3月1日 - 子会社の神鋼興産を合併、不動産カンパニー発足。
  • 2002年(平成14年)11月14日 - 新日本製鐵住友金属工業(現在は新日鐵住金に統合)と3社間資本・業務提携。
  • 2003年(平成15年)4月1日 - 川崎重工との破砕機部門統合会社アーステクニカを設立。
  • 2003年(平成15年)10月1日
    • 環境ビジネス部門を神鋼環境ソリューションに統合。
    • 溶接用ワイヤ部門(福知山工場)をJFEスチールと共同出資で設立したKOBE・JFEウェルディング(現・福知山工場)に譲渡。
    • アルミ缶事業を行う神鋼アルコアアルミを吸収合併。
  • 2004年(平成16年)4月1日
    • 銅管事業(秦野工場)を分離、コベルコマテリアル銅管を設立。エンジニアリングカンパニーと機械カンパニーを統合、機械エンジニアリングカンパニーが発足。
  • 2005年(平成17年)10月1日 - 不動産カンパニーを神鋼不動産に統合。
  • 2006年(平成18年)4月 - 神戸製鋼グループの商標「KOBELCO」を制定。
  • 2007年(平成19年) - 大阪国税局から、約18億5,000万円の申告漏れを指摘されていたことが報道により発覚。
  • 2008年(平成20年)4月1日 - 川崎重工との破砕機部門統合会社アーステクニカの全保有株式を川崎重工に譲渡。
  • 2009年(平成21年)2月 - 地方議員を務める同社社員・OB計5人の後援会に対し、選挙資金計約2,700万円を肩代わりしていたことが発覚。
  • 2010年(平成22年)4月1日 - 社内カンパニー制を再編し、事業部門制に移行。鉄鋼事業部門、溶接事業部門、アルミ・銅事業部門、機械事業部門、資源・エンジニアリング事業部門の5事業部門が発足。
  • 2010年(平成22年)5月10日 - 子会社のコベルコイーグル・マリンエンジニアリングの全株式をイーグル工業に譲渡。
  • 2010年(平成22年)10月1日 - 溶接事業部門の関連会社であった神鋼タセト株式会社(現・藤沢事業所)を吸収合併。
  • 2011年(平成23年)4月1日 - 溶接事業部門の関連会社であったKOBEウェルディングワイヤ株式会社(現・福知山工場)を吸収合併。
  • 2013年(平成25年)4月1日 - 神戸市中央区脇浜海岸通二丁目2番4号に本社を移転。

関連会社

鉄鋼部門関連

溶接部門関連

銅・アルミ部門関連

機械部門関連

エンジニアリング部門関連

不動産部門関連

その他事業

海外提携企業

USスチール、フェストアルピーネとは自動車用鋼板で、REP、アスコメタルとは特殊鋼関連で技術提携し、日米欧の世界三極で高級鋼材を供給できる体制を整えている。

なおアルミ事業ではアメリカのアルコアと技術提携しているが、日米で展開していた輸送機産業用アルミの合弁事業は2007年1月に解消した。

諸問題

法令違反など

大気汚染問題

  • 加古川製鉄所(2003年8月2006年5月
    • 大気汚染防止法に定める基準値を超過していることを知りつつ放置
      • 自家発電用ボイラ(窒素酸化物11時間、硫黄酸化物22時間)。
      • 鉄鋼生産関連設備(窒素酸化物96時間(2分塊工場)、硫黄酸化物1時間(ペレット工場))。
    • 大気汚染防止法などの基準値超過の際、記録の中止、廃棄、データ改ざんを行う
    • 自家発電設備の安全管理審査を受けなかった
      • 5件
    • 自家発電設備での設備事故の未報告・虚偽
      • 12件
      • 社内記録を設備事故とは書かずに、他の理由としていた。
  • 神戸製鉄所(2003年8月~2006年5月)
    • 大気汚染防止法に定める基準値を超過していることを知りつつ放置
      • 自家発電用ボイラ(窒素酸化物2時間)。
      • 鉄鋼生産関連設備(窒素酸化物20時間(均熱炉・加熱炉の3炉))。
    • 大気汚染防止法などの基準値超過の際、記録の中止、廃棄、データ改ざんを行う
  • 両製鉄所の測定システムは、基準値を超える窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を測定した場合、炉の稼働停止を意味する「欠測」の信号を神戸、加古川両市に送るようプログラミングしていた。

橋梁談合事件

2005年平成17年)発覚の橋梁談合事件に加わっていたことが判明している。

選挙資金の肩代わり

加古川・高砂両製鉄所と長府製造所が、加古川高砂下関各市の市議会議員計5人(現役社員3人、OB2人。いずれも労働組合が推薦)の後援会に対し、選挙事務所設営費や人件費などの選挙資金を肩代わりしていたことが発覚。政治資金規正法に違反する疑いがある。この事態を受け、当時の同社の水越浩士会長と犬伏泰夫社長が、2009年(平成21年)3月末を以って引責辞任することになった[2]

所得隠しの発覚

  • 同社が大阪国税局から税務調査を受け、2008年(平成20年)3月期までの7年間に亘り、約29億1,000万円(うちグループ会社分は約9億8,000万円)の申告漏れを指摘されたことが、2009年(平成21年)9月18日に判明した。うち約4億円については、先述の選挙資金の肩代わり分を経費と偽ったり、製品や半製品を廃棄処分扱いとした経理処理を行うなど、意図的な所得隠しと認定された[3][4]
  • 同社は2011年にも同国税局からの税務調査で、約16億9,000万円の申告漏れ(うち9億1,000万円は意図的な所得隠し)を指摘された[5]
  • 同社は、製造設備の入れ替え費用などを巡り約11億9,000万円(うち約1億4,000万円は意図的な所得隠し)を同国税局から指摘されていたことを、2013年6月に明らかにしている[6]

公害の発生

土壌汚染地下水汚染の発生

  • 高砂製作所(高砂市荒井町)内の旧メッキ棟の土壌汚染問題(2006年10月)
    • 施設の改造の目的で2006年(平成18年)6月土壌地下水を調査した結果、六価クロムが土壌で最大3.12mg/L、地下水で同0.92mg/Lが検出され、土壌汚染地下水汚染が発生していることを公表した。同社は、敷地内だけで周辺住民への健康影響はないと判断しているが、地下水は工場の敷地境界付近でも地下水の環境基準値を上回っており、敷地外へも有害物質を拡散させた。

人材育成

  • 優秀な社員を兵庫県尼崎市の産業技術短期大学1962年一般社団法人日本鉄鋼連盟が設立)に派遣して、人材育成を行っている。具体的には、「製造現場における知識創造と人材の多機能育成政策・綿密な能力開発策のひとつとして、企業内選抜を経て中堅技術者への昇進に結びつく産業技術短期大学への派遣を行う政策の実行」であり、このような人材育成形態(教育訓練形態)を「オフ・ザ・ジョブ・トレーニング・OFF-JT」という。

脚注

  1. 神戸製鋼株主訴訟が和解 橋梁談合、コンプラ委も設置 産経新聞 2010年2月10日
  2. 神戸製鋼が選挙資金肩代わり 地方選2700万円 社長と会長辞任へ 産経新聞 2009年2月10日
  3. 所得隠し:神鋼が7年間で4億円、申告漏れは29億円 毎日新聞 2009年9月19日
  4. 神戸製鋼グループで29億円申告漏れ 産経新聞 2009年9月18日
  5. . 神戸製鋼:9億円所得隠し 大阪国税局指摘 毎日新聞 2011年7月16日
  6. 神戸製鋼所、11億9千万円申告漏れ…国税指摘 読売新聞 2013年6月28日

参考文献

ほか

関連項目

外部リンク

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