白馬岳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Infobox 山

白馬岳(しろうまだけ)は、飛騨山脈(北アルプス)北部の後立山連峰にある標高2,932 m長野県富山県とにまたがり、中部山岳国立公園[1]内にある。

概要

南に続く後立山連峰の山々とともに、南北に伸びる稜線の両側の傾斜が著しく異なる非対称山稜が発達している特徴的な山容を持つ[2]。山頂を含む南北700 mの地帯は県境が設定されていない。山頂には一等三角点があり[3]一等三角点百名山に選定されている[4]。 東側の谷筋には冬季の膨大な積雪と周囲の山塊からの雪崩が集積した日本最大の雪渓である白馬大雪渓がある。雪渓の上部は夏期には日本有数の高山植物のお花畑が広がる。日本百名山[5]新日本百名山[6]花の百名山[7]及び新・花の百名山[8]に選定されている。 鑓ヶ岳中腹の標高2,100 m地点には、日本有数の高所にある温泉である白馬鑓温泉があり、白馬大池の北麓には蓮華温泉がある。雪渓、お花畑、岩場、山の温泉と様々に楽しめる要素があり、交通の便も比較的良いことから、夏季にはたくさんの登山者が訪れて混雑する。なお、山頂直下に位置する白馬山荘日本最大の収容人員を誇る山小屋である。夏期の登山者の大半は大雪渓を経由して登るため、夏休みの時期には大雪渓上は長蛇の列となることが多い。しかし、雪渓上は数年ごとに落石事故によって死傷者が出ているので、注意が必要である。

歴史

山名の由来と読み (「しろうま」か「はくば」か?)

ファイル:Sirokakiuma.jpg
山名の由来となった6月頃に現れる代掻き馬の黒い岩肌

江戸時代の中期頃までは信州側では「西岳」や「西山」と呼ばれ、越中越後では白馬岳・小蓮華山白馬乗鞍岳の花に見えることから「大蓮華岳(山)」と呼ばれていた[14][22]。今でも北に連なり新潟県の最高峰である小蓮華山や蓮華温泉にその名残が見られる。また西側の越中では上駒ヶ嶽と呼んでいた。これに対する下駒ヶ嶽が北に存在している。 「しろうま岳」の名前の由来は春になると雪解けで岩が露出し黒い「代掻き馬」の雪形が現れることから、「代掻き馬」→「代馬」→「しろうま」となったものである。つまり本来の表記は黒い「代馬岳」であったわけである。

1883年に北安曇野郡長と大町小学校長渡辺敏ら登頂の際に、「白馬登山記」の表記を残している[10]1915年(大正2年)には陸地測量部による五万分の一の地形図に「代馬岳」ではなく「白馬岳」と記された。地元で「しろうま岳」が早くから「白馬岳」と記述されていたことによる表記の変更であることをうかがわせる。

「白馬」は「しろうま」の当て字であるから「はくば」と読むのは本来は誤りだが、地元で「白馬」を「はくば」と読むことは古くから行われており、白馬山荘をはじめとする白馬連峰一帯の山小屋を経営している株式会社白馬館は、1890年に現在の白馬駅前にあたる場所に登山者向けの旅館「山木旅館」を建設し、1916年には「白馬館」と改名した。また、1906年には現在の白馬山荘の位置に山小屋「頂上小屋」を設置し、1915年には「白馬山頂小屋」と改名している。また、1908年には白馬尻小屋を設置しているが、これらは「白馬」を称した当初からすでに「はくば」と読ませている。

その後も1956年(昭和31年)9月30日に合併で発足した白馬村は「はくばむら」と呼ばれ、1932年(昭和7年)11月20日に開業した大糸線信濃四ツ谷駅1968年(昭和43年)10月1日白馬駅と改名され「はくばえき」と呼ばれている。

現在では山と高山植物の名称以外の多くが「はくば」と読むのが正式名称とされており、「しろうま」と読むことは誤りである。この山を「はくば」と呼ぶことは地元の村民を中心に一般化しており、山の名も含めて「しろうま」と読む人はほとんどいない。すべての「白馬」のつくスキー場もすべて「はくば」が正式の読みとなっており、スキーヤーも「はくば」読みが主流であるが、登山ガイドブック・登山雑誌に一時期「はくばの読みはおかしいと」いう主張が掲載された影響により、登山者は「しろうま」派が現在でも主流である。

最初にこの山で発見された高山植物の和名には、「シロウマ」を冠するものは多数あるが、「ハクバ」を冠するものは全くない[23]。学術的な名称には山の正式名称が採用される傾向にあるからである。ただ、動物ではハクバサンショウウオが存在する。これは白馬岳ではなく白馬村から名付けられたからである。

白馬連山高山植物帯

山域では高山植物の固有種や希少種も多く、高山植物群落の規模も大きいため、日本を代表する高山植物帯・特殊岩石地(蛇紋岩、石灰岩)植物群落として、特別天然記念物「白馬連山高山植物帯」に指定されている。「高山植物の宝庫」と言われ、明治から植物学者による研究が行われ、昭和になって高橋秀男が345種あることを報告した[8]作家田中澄江は2度この山に登り、その著書で代表する花としてイワイチョウ、シロウマアサツキ、コマクサ、リンネソウなどを紹介した[7][8]。山の上部は森林限界ハイマツ帯でライチョウの生息地となっている。

「シロウマ」を冠する和名の種

10種以上のシロウマを冠する種が自生している[23][24][25]。シロウマアカバナ、シロウマイタチシダ、シロウマスゲ、シロウマチドリ、シロウマヒメスゲ、シロウマリンドウは、白馬岳の固有種である[25]。 一部の種は長野県、富山県、新潟県レッドリスト準絶滅危惧 絶滅危惧IA類(Critically Endangered, CR)、絶滅危惧IB類(Endangered, EN)、準絶滅危惧(Near Threatened, NT)に指定されている[26]

  1. 1.0 1.1 中部山岳国立公園区域の概要 環境省、2010年12月16日閲覧。
  2. 富山県側がなだらかな斜面であるのに対して、長野県側はフォッサマグナ糸魚川静岡構造線に面した急峻な斜面となっている
  3. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「kijyun」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  4. 『一等三角点百名山』 山と溪谷社、1988年、ISBN 4-17030-6
  5. 5.0 5.1 『日本百名山』 深田久弥(著)、朝日新聞社、1982年、ISBN 4-02-260871-4、pp.174-178
  6. 『新日本百名山登山ガイド・下』、』 岩崎元郎(著)、山と溪谷社、2006年、ISBN ISBN 4-635-53047-7、pp.18-21
  7. 7.0 7.1 『花の百名山』 田中澄江(著)、文春文庫、1997年、ISBN 4-16-352790-7、pp.213-216
  8. 8.0 8.1 8.2 『新・花の百名山』 田中澄江(著)、文春文庫、1995年、ISBN 4-16-731304-9、pp.245-248
  9. 9.0 9.1 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「y1000」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  10. 10.0 10.1 10.2 『新日本山岳誌』 日本山岳会(著)、ナカニシヤ出版、2005年、ISBN 4-7795-0000-1、pp877-879
  11. 『日本アルプスの登山と探検』 ウォルター・ウェストン(著)、青木枝朗(訳)、岩波文庫、1997年、ISBN 4-00-334741-2、第11章、pp.372-373
  12. 『日本アルプス再訪』 ウォルター・ウェストン(著)、水野勉(訳)、平凡社、1996年、ISBN 4-582-76161-5、p455
  13. 13.0 13.1 13.2 13.3 13.4 『北アルプス山小屋案内』 山と溪谷社、1987年、ISBN-4-635-17022-5、pp.14-30
  14. 14.0 14.1 14.2 14.3 『北アルプス山小屋物語』 柳原修一(著)、東京新聞出版局、1995年、ISBN 4-8083-0374-4、pp.128-146
  15. 宗教登山に由来する山小屋としては日本最古の山小屋は、18世紀に建立されて立山室堂小屋である。
  16. 『わが山旅五十年』 田部重治(著)、平凡社、1996年、ISBN 4-582-76134-8、p104
  17. 『黒部渓谷』 冠松次郎(著)、平凡社、1996年、ISBN 4-582-76145-3
  18. 『新・北アルプス博物誌』 大町山岳博物館(編)、信濃毎日新聞社、2001年、ISBN 4-784-09906-9、p388
  19. 白馬岳頂上宿舎 白馬村振興公社、2011年1月31日閲覧。
  20. 『強力伝・孤島』 新田次郎新潮社、1965年、ISBN 4-101122021
  21. 『歩いてみたい日本の名山』 EDICO(著)、西東社、2004年、ISBN 4-791-61227-2、p182
  22. 『コンサイス日本山名辞典』 三省堂、1992年、ISBN 4-385-15403-1、pp.267-268
  23. 23.0 23.1 『日本の高山植物(山溪カラー名鑑)』山と溪谷社、1988年、ISBN 4-635-09019-1、p715
  24. 白馬岳花図鑑 白馬館グループ、2011年1月31日閲覧。
  25. 25.0 25.1 白馬岳の高山植物 白馬村、2011年1月31日閲覧。
  26. 日本のレッドデータ検索システム エンビジョン環境保全事務局、2011年1月31日閲覧。
  27. 『花の百名山地図帳』 山と溪谷社、2007年、ISBN 978-4-635-92246-3、pp.152-155
  28. 『花の百名山ガイド(下)』 山と溪谷社、1996年、ISBN 4-635-00489-9、pp.32-33
  29. 29.0 29.1 『白馬岳(山と高原地図34)』 昭文社、2010年、ISBN 978-4-398-75714-2
  30. 『アルペンガイド9 白馬・後立山連峰 (ヤマケイアルペンガイド) 』 山と溪谷社、2008年、ISBN 4-635-01353-7
  31. テンプレート:Cite web
  32. テンプレート:Cite web
  33. テンプレート:Cite web
  34. テンプレート:Cite web
  35. テンプレート:Cite web
  36. テンプレート:Cite web
  37. テンプレート:Cite web土曜スペシャルで谷川真理福島和可菜が白馬大雪渓から登頂した。
  38. テンプレート:Cite web
  39. テンプレート:Cite web