生活

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テンプレート:出典の明記 生活(せいかつ)とは、

  • 生存して、活動すること。生きながらえること[1][2]
  • 世の中で暮らしてゆくこと[1]

概説

生活とは基本的に、命をつなぎ活動することであり、また生きながらえるために行う様々な活動である。 人は生き続けるためには、少なくとも、何らかの栄養を取らなければならず、(一般に)身体に何かをまとうことで体温を保つ必要があり、また野の雨や風をしのげる場所で眠りをとることを必要とする。つまり食べること、着ること、住まうことである。日本では、そうした生活の基本を漢字で簡潔に表現しようとする時は「衣食住」(いしょくじゅう)などと表現する[注 1]。「衣食住」の基本は、人が生活していく上で必要な、食(食事)、衣(衣服)、住(居住、雨風をしのげる寝場所)の確保である。

人類の歴史を俯瞰して見ると、実は、人類はその歴史の90%以上、野外での生活(=キャンプ)をして生きてきた[3]食べるものを得るために狩りをしたり木の実などを採りまたをし、動物のを身にまとい、洞穴や樹木の陰で雨風をしのぎ眠り、新たな獲物を求めて移動を繰り返してきた[3]。(人類学ではこうした人類の社会、生活形態を「狩猟採集社会」と言う。)人類は自然界(山や野や海)に生きている動物や植物を食糧とし、またそれをほとんどそのまま(あるいはわずかに加工して)衣類として用い、自然の地形や樹木等をそのまま活かして眠る場所を確保し、そのように生活してきたのである。そうした一連の行為は、近・現代人が考えるような「苦しみに満ちたもの」というよりは、大自然の生命力を讃えたり、その恵みに感謝したりする行為であった[注 2]

その後、人類の中に農耕をする者が現れると、農耕人(民族)たちは(その性質上)土地を占有するようになり、狩猟人(民族)たちを排除しようと暴力をふるってきた歴史がある、と指摘している学者が幾人もいる。また農耕がおこなわれるようになって、他の者が栽培・収穫したものを奪って自分のものにしてしまう者も現れるようになり、それによっても貧富の差が広がりはじめた、と指摘している歴史学者も多い。貨幣の使用も、さらに貧富の格差をもたらしたという。

人類の歴史の中に位置づけてみれば、ごく最近という位置付けになるのであるが、人類の中で自然から離れて都市で生活する者の割合が増えると、他の人々に、狩猟・漁などの、食べ物を得る行為をさせて(ある意味で、他人に押しつけてしまって、自分自身で汗水をたらして働かずに)食糧を得て食べる者も増えた。

さらに、近代になり資本主義化が進められると、大企業なども出現し、組織で何らかの仕事をすることで「給料」という形で貨幣を得てその貨幣を用いて食糧を確保する者の割合が大きくなった。(かつては各部族、各家族がそれぞれ狩猟採集を行い、自分たちが食べる食糧を直接的に得ていた、のと比べると大きな違いがある)。生活の重要な要素である「食糧を得る」ためにすることが、狩猟や漁をすることでも農耕・栽培をすることでもなく、食べ物とは直接的には無関係の何らかの"仕事"をすることで貨幣(給料)を得ること、という人々の割合がますます増えたのである。かくして「生活」の一角に、「金銭稼ぎ」(=「仕事」「職業活動」)が位置を占めるようになったのである。

近年

上述のように、「生活」というのは、もともと命をつなぎ活動することや、命をつなぐために活動することを指しておりそれが基本の意味であるが、近年では、より柔軟に広範囲のことがらを指しても用いられるようになっている。

また、命をつなげることが当たり前のように可能になることが増えるにつれて、ただ生きながらえるだけ、ではなく、同じ生きながらえるにしてもその「生」の内容、「生」の質も問われることが増えるようになり、「クオリティ・オブ・ライフ (Quality of Life)」という用語でそれが言いあらわされるようになった。

ただし、近年でも基本的に、生き延びるためにあまり必要ではないような行為・要素、例えば極端に贅沢な行為などは「生活」とは呼ばれていない。[注 3]

現代人の生活の具体的な有様は、地域・文化・信仰・年齢・婚姻状態・家族構成・経済状態 等々等々の影響を受けており、実に多様である。住居、家庭の人間関係、学校、学校での人間関係、仕事場・勤務先、仕事での人間関係など、人の生活をとりかこむものを指して「生活環境」と呼ぶことがある。

生活を構成するもの

基本、普遍
  • 食べる - 栄養をとること。食事。そのために食材を入手し調理をすること(あるいは食品を入手すること)。
  • 着る - 身体が冷えないように衣類をまとう。
  • 住まう - 睡眠をとり身体に休養を与えるための場所を確保すること。居住住居の確保。
  • 世界を解釈し、その世界像のもと、上記のさまざまな活動を営み(食べ、住まい、子供を産み育て)表象行為を行う。(もともと生きることと、世界解釈と一体化して生きることは不可分であった)現代風に言えば、「信仰生活」「宗教行為」「年中行事」など。
  • 子供をつくり、産み、育てる - (婚姻)、性生活出産子育て
  • 老人が孫の子育てを手伝い若い世代に知恵を授け、若い世代が老人の世話をする - 子育て扶養介護[注 4]
近代化、資本主義化以降
  • (食糧を直接自分で狩る、採る、漁する代わりに)貨幣を得る - 貨幣を得られる仕事労働)をする。家計を成り立たせること。
近年

「生活」の原義にとどまらず、生活以上の何か、QOLに関わる様々なこと。例えば健康の維持・増進など[4]。 


医療・介護と生活

看護には(看護の一部ではあるが)、疾病者や褥婦の生活の援助をすることまでが含まれている。またケアという概念にも生活の援助をすることが含まれている。 医療・看護の領域では、生活を送る上で必要・重要な動作を「日常生活動作」と呼ぶ場合がある。それができるかどうかを看護・介護ケア計画立案の目安などとして使う。

学問・学科

特に家庭での生活に特化してそれを総合的に扱う学問としは家政学があり、(かつて)日本では特に家政学科を設置する大学も多く、多くの女性たちがそこで学び良妻賢母となり、幸福な家庭の実現に貢献した歴史がある。

介護学看護学等からもそれぞれの視点から生活については研究されている。

日本では初等・中等教育を受けている子供には「家庭科」や「家庭」と呼ばれる教科で、(現代の)家庭での生活に関する知識を教えたり生活技能の訓練を行ってきた。

動物

人間以外の生物も、それぞれ生活を行っている[5]。「アリの生活」「ミツバチの生活」などと言うこともある。各生物の生活については、各生物の記事を参照のこと。

生活環境を変えて生活を始めることを「新生活」と呼ぶことがある。

脚注

  1. 「食衣住」でも良いのだが、「衣食住」のほうが語呂が良いため。
  2. そのような行為、自然から食料・衣服・材料などを得ることを(後付けで)「労働」だと解釈するようになったのは、あくまで近代以降のことである。当時の人々にとっては現代人が思うようなことではなかったのである。(「労働」の記事も参照のこと)
  3. 例えば、男性が、仕事に使いもしないのに高価なスポーツカーや模型 等々等々を購入して熱中したり、女性が(実用着でない)ファッション服、ファッションアイテム等 をコレクションしたり、自分の姿をあれこれいじくりまわして悦に入ること 等々は通常、「道楽」や「贅沢」に分類されていて、「生活」には分類されない。命をつなぐのに絶対に必要という領域からはあまりにかけ離れているからである。
  4. 近年では、これも制度化され、家族ではなく、政府・社会がこれを行うことも増えている。老人から見れば「ケアされる」と「生活」が一体化している場合も多い。
出典
  1. 1.0 1.1 広辞苑 第五版 p.1461【生活】。
  2. 孟子、虚心上にこの意味の用法あり。
  3. 3.0 3.1 クリストファー・ロイド『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』文藝春秋、2012
  4. 心のバランス・健康に関わる余暇リクリエーション休暇なども「生活」のうちに含められることも増えた。そういったものがなければ、結局は健康が損なわれ、生きてながらえてゆくことも難しい、「生活」も困難、と感じられるストレスの多い状況が増えているのである。
  5. 広辞苑

関連項目

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