現金
現金 (げんきん、テンプレート:Lang-en-short) とは、一般には現金通貨のことを指す。現金通貨とは強制通用力を有する貨幣のことで、現在の日本を例に挙げれば日本銀行券と政府発行の補助貨幣がそれにあたる。
「現金」という言葉が用いられる場面には以下のようなものがある。
- 「預金通貨」に対して、現に貨幣として存在している通貨を指す場合
- 振り込みやクレジットカードなどによる「預金決済」に対して、現に貨幣を用いて行う決済を指す場合
- 「預金」「有価証券」「固定資産」などに対して、現に貨幣として保有している資産を指す場合
一般的にはキャッシュ、(お)金とも呼ばれる。
特徴
- 資産として
- 資産形態としての長所は、決済用預金でない預貯金(定期預金など)に比べて破綻の恐れがない(当座預金などの決済用預金であれば、破綻しても全額保護される)、株式や債券、不動産などに比べて額面下落の恐れがないなどである。
- 短所としては、盗難や焼失の恐れがある、インフレ時に価値が下落する、外貨では為替相場によって自国通貨との為替レート(価値の換算額)が変動する、などが挙げられる。
- 決済手段として
- 決済(価値の受け渡し)の手段としての現金は、長所として設備や信用が不要、短所として運搬中や保管中の盗難や紛失などの恐れが挙げられる。
- 遠隔地への送金には向いていないことから銀行振り込み、クレジットカードなどが使用されるほか、財布を持ち歩いたり小銭(硬貨)をやりとりする不便さを解消するためにプリペイドカードや電子マネー(非接触型IC)などが使用される。
- 企業など多額の決済を行う場合には、通常は銀行振り込みや小切手、約束手形などの手段を用い、現金そのものを動かすことは少ない。
- フランスにおいては、付加価値税や法人税の脱税を防止するため、一定金額(2013年5月初頭の時点では3000ユーロ。今後、1000ユーロへ引き下げ予定。)以上の取引において現金決済を禁止し、クレジットカードや小切手、銀行振り込みによる決済を義務付けている。イタリアやスペインもフランスに追従する予定であると報じられている[1]。
簿記における現金
簿記における勘定科目としての「現金」には、上で挙げた狭義の現金のほかに、金融機関においてただちに現金化できる通貨代用証券も含める。通貨代用証券には、他人振り出しの小切手(自己振り出し小切手は当座勘定となる)、期限の到来した公社債の利札、配当金領収証、郵便為替証書、トラベラーズチェックなどがある。
現金は毎日の出入りが多いため、専用の補助簿を設けて管理することが多い。これを 現金出納帳という。現金出納帳の残高と実際の現金有高は一致するのが本来であるが、日々照合すると一致しない場合がままある。このときには不一致額を現金過不足勘定に計上することによって帳簿上の現金残高を実際の現金有高に合わせ、後日不一致の原因が判明したときに適切な勘定に振り替えるという処理を行う。決算においても原因の判明しない現金過不足は雑収入あるいは雑損失に振り替えられることになる。
また、消耗品の購入や近距離の旅費など少額経費の支払いのため、ある程度の額をすぐ支出できる形で保管しておくことがある。これを小口現金という。小口現金による支払いは事後に経理担当者に報告され、それと同時に支払いと同額を小口現金に補充するという方法をとることが多い。これをインプレスト・システム(定額資金前渡制度)という。
派生語
"リアルマネー"と言う言葉はネット上の有料コンテンツ、特にネットゲームの課金またはその対象に対して使われることがある。これらの場合一般的な決済方法は電子マネーやクレジットカードであることから"リアルマネー"="現金"と言う本来の意味からすれば間違った表現であることは否めない。が、一方でゲーム上の架空通貨での支払いと(支払い方法はともかく)現実世界の通貨での支払いを区別することを考えれば完全に間違っているとも言いがたい。
脚注
- ↑ 『プレジデント』(2013年5月4日)「現金決済 -フランスはなぜ上限額の規制を強化するのか?」