玉鋼

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テンプレート:出典の明記 玉鋼(たまはがね)とは、主に日本刀の材料として使われる、砂鉄を原料とし、たたら吹きにより造られる和鋼で、通称として玉鋼と称される。 なお、玉鋼という名称は明治になって使われ始めたが、これは大砲の砲弾「玉」に使われる「鋼」のことであり、大砲の技術の発達に伴い、当初使われてきた鋳鉄では発射時の衝撃に耐えられないことから、より強力な衝撃に耐える鋼が使われ始めたことによる。

日本刀専用の素材となっているが、かつてはほとんどの刃物に用いられた。現代でも高級な刃物道具等には用いられる事がある。 玉鋼は純粋な鉄-炭素合金(ハガネ)であるが、明治以来玉鋼は特別鋼(安来港誌)の範疇にあり、一種の工具鋼である。 現在、鋼の精錬(操業)はヤスキハガネの有名な日立金属が受託で行い、供給(販売)は日本美術刀剣保存協会が行っており、刀匠以外には販売していない。

たたら吹き1回の操業1代(「ひとよ」は3日3晩の事)で約2トンのけらを産出するが、その中から1級Aに当たる部分は約1割程度しか取れない。 不純物が少ない和鋼の中でも特に炭素量と鍛錬時の介在物分散性が作刀に好適であるため、貴重な物である。 現在は、島根県安来地方にある、仁多郡奥出雲町において国家の伝統技術継承事業として日立金属が受託して少量生産されている。

日本刀では主に1級品が刃金皮鉄として使われる。玉鋼を幾度も鍛錬を繰り返すことにより、玉鋼の中にある不純物が外に出ていき、より硬くより曲がりにくい皮鉄ができる。 ここ数年の年次操業回数は2夜(平成5年頃は4夜操業していた)しか行っておらず操業回数が減少傾向にある。 その結果、1級Aについては1人当たり10キロ程度迄と購入制限が設けられており、刀匠と言えども自由に購入することができなくなってきている。 それに比べ2級Bや卸し鉄等の等級の低い鉄はt(トン)単位で在庫があり過剰在庫となっている事が結果、操業回数の減少に繋がっているとも思われる。 平成20年度の操業回数は数年ぶりに3夜となった。

日本美術刀剣保存協会が供給する玉鋼の種類は大きく分けて1級A、1級B、2級A、2級B、銑鉄(せんてつ)、卸鉄(おろしてつ)の6種類に分けられている。 戦中までは他にも靖国たたら等、供給していた所がありそこでは鶴、亀、松、竹、梅、包丁鉄、大割り下などと分類されていた。 安来地方でおこなっていた靖国たたらの鋼は今では殆ど目にすることも無くなったが、古参の刀匠達の元に極少量が研究資料として残されている。


関連項目

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