玄海原子力発電所

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テンプレート:Infobox power station 玄海原子力発電所(げんかいげんしりょくはつでんしょ)は、佐賀県東松浦郡玄海町にある九州電力原子力発電所

概要

九州電力で最大の発電所であり、九州7県で使用される電力供給量の3割以上を発電する。3号機は日本初のプルサーマル発電を2009年平成21年)から実施している。敷地面積は約87万平方メートル。

見学・PR施設として「玄海エネルギーパーク」が設置されている。

発電設備

番号 原子炉形式 定格電気出力 定格熱出力 燃料
装荷量
燃料集合体 運転開始日 建設費 現況
1号機 加圧水型軽水炉
(PWR)
55.9万kW 165.0万kW 低濃縮二酸化ウラン
約48トン
121体 1975年昭和50年)10月15日 545億円 定期点検中
2号機 加圧水型軽水炉
(PWR)
55.9万kW 165.0万kW 低濃縮二酸化ウラン
約48トン
121体 1981年(昭和56年)3月30日 1236億円 定期点検中
3号機 加圧水型軽水炉
(PWR)
118.0万kW 342.3万kW 低濃縮二酸化ウラン・MOX燃料
約89トン
193体 1994年平成6年)3月18日 3993億円 定期点検中
4号機 加圧水型軽水炉
(PWR)
118.0万kW 342.3万kW 低濃縮二酸化ウラン
約89トン
193体 1997年(平成9年)7月25日 3244億円 定期点検中
  • 3号機は、2009年(平成21年)11月5日よりプルサーマル試運転。同年12月2日より営業運転を開始。
  • MOX燃料費は、1回目18体10.7トンで139億6400万円。2回目20体13トンで150億8200万円。

耐震性

2005年(平成17年)3月20日福岡県西方沖地震の際、揺れを観測した。3号機補助建屋で震度4を観測し、3号機原子炉建屋の基礎部分では水平方向で85.0ガル、鉛直方向で54.2ガルの最大加速度を観測したが、被害はなかった[1]

1号機の老朽化問題

1号機の脆性遷移温度が、1993年(平成5年)に56℃、2009年(平成21年)には98℃と上昇しており、専門家からは、想定以上に老朽化が進んでおり、緊急冷却の際に原子炉圧力容器が破損する恐れがあると指摘されている。なお、九州電力側は脆性転移温度を測定するための試験片を圧力容器より炉心に近い場所に置いてあることから、現在の脆性遷移温度は80℃と推定している[2]。 この指摘を受け、古川康佐賀県知事は脆性遷移温度のデータ開示を要求し[3]岸本英雄玄海町長は「廃炉の議論を今すぐにでも始めなければならない」と述べた[4]

過去の主なトラブル

  • 1998年(平成10年)
    • 1月20日 - 3号機定期検査中、燃料集合体シッピング検査の結果、1体に漏洩を発見
    • 7月18日 - 1号機で定格出力運転中、復水器細管漏洩により出力低下
  • 1999年(平成11年)3月31日 - 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査の結果、管板拡管部に有意な信号指示を発見
  • 2008年(平成20年)6月20日 - 4号機の冷却水圧に異常を検知したため自動停止
  • 2010年(平成22年)12月9日 - 3号機の1次冷却水のヨウ素濃度がこれまでの平均値の4倍に上昇。燃料棒に穴が生じ放射性物質の漏洩が確認される。同年12月11日より第13回定期検査を前倒して実施し、現在まで3号機検査停止中[5][6][7]
  • 2011年(平成23年)10月4日 - 4号機で、タービンを回転させた蒸気を水に戻す復水器の異常を示す信号を検知し、自動停止[8][9][10]

2011年以降の運転再開問題

2011年3月11日の時点では、玄海原子力発電所の1 - 4号機はそれぞれ以下の状態であった[11]

番号 状態
1号機 2010年11月2日から通常運転中
2号機 2011年1月29日から定期検査中
3号機 2010年12月11日から定期検査中
4号機 2010年11月26日から通常運転中

3月11日に福島第一原子力発電所事故が発生し、原発の安全性の問題が全国で注目を集めるようになった。国の原子力安全・保安院は約3週間後の3月末に、緊急安全対策を各電力会社に指示した[12]経済産業省はこの対策が講じられたことが確認できれば再稼働は可能との見解で、海江田万里経済産業大臣は6月に原発の安全宣言を出し、定期検査の予定の作業が終了した玄海原発の再稼働のために佐賀県古川康知事を訪ねた[12]

しかし、全国の市民からの反対の他、事故の検証が未実施で安全基準が示されていないとして、13基の商用原発を抱える福井県などからも時期尚早との声が上がった[12]。そこで、政府(菅政権)は、ストレステストを導入し、1次評価で安全性を確認してから再稼働の是非を判断することとなった[12]

また、運転再開への「地元住民の疑問や不安を解消するために」経済産業省は「佐賀県民向け説明会」を開催した。この「説明会」は、「県民」と学者、経済産業省の担当者が、佐賀市にあるケーブルテレビぶんぶんテレビのスタジオで公開質疑をするという内容であったが、開催前に九州電力担当者との会談で古川康知事が「経済界には再稼働を容認する意見があるが、表に出ない」「こうした機会を利用して声を出すことも必要だ」と発言し、担当者が「再開賛成の意見を増やすことが必要」との認識で一致した後、九州電力本社が関係会社の社員らに、番組に対して再開賛成のメールを出すよう指示した世論偽装工作事件(サクラ)が起こされた。 テンプレート:See also

このやらせメール事件は国会質疑によって重大問題とみなされるようになり、第三者委員会が会社ぐるみでの指示があった事件だということを認める最終報告書を9月30日に提出した。これを受けて、海江田大臣の後継の枝野幸男経済産業大臣は、九州電力の姿勢を批判し、原発再稼働への障害になるとの認識を示した。

しかし、九州電力は再稼働手続きを進め、2011年12月14日に2号機のストレステストの結果を原子力安全・保安院に提出した。2012年5月4日の時点で、2号機は保安院によるストレステスト1次評価の審査中であり、他の号機については九州電力はストレステストを提出していない[12]

2,3号機は福島原発事故後、日本国内の原発再稼働の一番手と目されていた[13]が、現時点では再稼働予定は未定である。2012年夏は九州電力管内の玄海原発と川内原発は稼働しない予定だが、節電を実施すれば猛暑でも需要を超える供給力が確保できると九州電力は計画を立てている[14]。しかし、玄海町岸本英雄町長は現在でも再稼働の必要性を強調している[13]

また東京新聞は、太平洋側でなく運転年数が比較的少なく加圧水型原子炉である3,4号機は、この条件を満たす他の原発とともに、政府が再稼働の候補にしそうである、と報じている[15]。しかし、九州電力は、免震施設も、事故の時にベントを迫られた際に放射性物質の放出を減少させるためのフィルターも「設置時期は未定」といった回答しかしていない[15]

その他

  • 玄海原子力発電所の所長や佐賀支店長ら九州電力の幹部社員が、古川康佐賀県知事の政治団体に対し、2005年(平成17年)から2009年(平成21年)の5年間に計49万5000円を寄付していたことが判明している。同社幹部らは、個人献金であるとしているものの、事実上、個人献金の形を取りつつ、政治資金規正法によって禁じられている企業献金が行われているとの指摘が出ており、原発絡みの献金ではないかとの意見もある[16]
  • テンプレート:要出典範囲

脚注

  1. 福岡県西方沖地震における原子力発電所の状況 九州電力
  2. 玄海原発1号機 想定以上に劣化進行か 2011年7月1日 佐賀新聞
  3. 知事、九電に玄海原発1号機の劣化データ開示求める 2011年7月2日 佐賀新聞
  4. 「玄海原発1号機 今すぐ廃炉の論議を」岸本玄海町長 2011年6月18日 佐賀新聞
  5. 玄海原発プルサーマル停止へ、ヨウ素濃度上昇で 読売新聞九州本社版2010年12月11日
  6. 玄海原子力発電所3号機 漏えい燃料集合体の調査結果について 九州電力
  7. 玄海3号機再開時期、揺れる 九電社長「想定外の事態」 産経新聞2011年3月19日
  8. 玄海原発4号機自動停止 復水器に異常 補修中ミスか 西日本新聞2011年10月5日
  9. 玄海原子力発電所4号機の原子炉自動停止について 九州電力 2011年10月4日
  10. 玄海原発 4号機が自動停止 NHK NEWS WEB 10月4日
  11. 玄海原子力発電所の運転状況等について(玄海原子力発電所の運転状況等について) 九州電力 2011年8月11日
  12. 12.0 12.1 12.2 12.3 12.4 原発再稼働、迷走の1年 国の場当たり対策に批判 朝日新聞 2012年5月4日
  13. 13.0 13.1 原発ゼロ、玄海町長「夏乗り切れるか」 読売新聞 2012年5月6日
  14. 九電4.6%不足 夏の電力供給予測 大分合同新聞 2012年4月24日
  15. 15.0 15.1 再稼働狙う候補9基 東京新聞 2012年5月5日
  16. 九州電力:幹部が個人献金 佐賀県知事に年3万円、歴代「継承」 毎日新聞 2011年7月10日

関連項目

外部リンク

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