献立

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献立(こんだて)とは食卓に並べる料理種類順序のこと[1]

メニュー(Menu)とは、

献立の歴史

献立は、日本では平安時代の三献の議[2]から発展し、室町時代に式三献などの形式が確立した本膳料理や酒宴の内容を記録したものであった。響宴の記録の献立表は「類聚雑要抄」[3](平安時代)、「大饗記」[4](室町時代)などに記されている。

精進料理と日本料理の献立

鎌倉時代から室町時代にかけて禅宗寺院で発達した精進料理は、武家の食膳(献立)にとりいれられ、精進物の調理法の発達を促した[5] (発酵食品である)味噌を使った汁(味噌汁)や胡麻を使った和え物、大豆を様々に活かす豆腐湯葉。野菜や乾物の多様な食べ方を発達させたのである[5]

現在、禅寺の雲水(うんすい、=修行僧)は、夏・冬で210日ほど続く修行の間の食事の献立は次のような内容である。朝食(「粥座(しゅくざ)」)は おかゆ漬物。昼食(「斎座(さいざ)」は麦飯味噌汁漬物。夕食(「薬石(やくせき)」)は朝昼の残り物と漬物。基本的にこれだけである。時には豆腐などが足されたり、托鉢で檀家を回る時に食事を提供されたりして栄養が補われる工夫がありはするが、粗食であり、だがそれでも「僧侶が餓死した」などという話は聞かれない。雲水にはこうした献立の食事をいただくことで、人々に支えられていることに感謝する心をはぐくむことが求められている。本当は食べ物のある無しは切実な問題で、食品のかけらも粗末にはできないはずなのに、それを現代人は忘れてしまいがちだが、雲水の生活ではそれを体験して、現代生活で隠されてしまっている現実を見る。また(現代人は広告文句などに躍らされ、本当は必要でないことに振り回されてばかりいるが)、こうした献立の食事をとることによって「足るを知る」ことができる。つまり自分には本当は不必要なことと、本当に必要なことを、原点に戻って考え直すことができるのである。「正に良薬を事とする形枯を療せんがためなり」という言葉があり、この言葉は、食事というのは快楽・享楽のためにしたりするものではなく、健康を保つため、あたかも薬を呑むような心がけで食事をするべきだ、と教えてくれているのである。[6]

一汁一菜

一汁一菜は、主食の他には汁物一品と(=おかず)一品にとどめる、という献立である。これが日本人の健康を支えてきた歴史がある。

米飯を中心とする献立である一汁一菜は、鎌倉時代から始まり[7]、室町、戦国、安土桃山、江戸、明治を経て、米食が史上最高の普及を見た大正末期ころから昭和10年代には、日本の津々浦々、どこの地域でも、そしてどの社会層でも網羅的に普及した。[8][9]

日本の行政の判断ミスとその修正

1985年に厚生省(現・厚生労働省)は「食生活指針」を発表したが、同指針で、同省は「1日に30品目以上の食品を食べるように」と指導してしまっていた。だがこれが大問題で、必ず30品目となるようにすると、夕食時、大量に食品を摂りすぎてしまい、肥満睡眠障害生活習慣病を引き起こしてしまう。

この失敗が指摘されるようになり、”30品目以上”という文言は、2000年の食生活指針からはずされた。

栄養の観点からは、食品をカテゴリ(食品群)に分け、それぞれのカテゴリからバランスよく摂ることが望ましいので[10]、そのバランスの目安として、2006年に厚生労働省と農林水産省は「食事バランスガイド」を策定した[11]

近年の状況

人々が日常的に食べる日常食の献立は、食べる人の健康をまず第一に考えて立てるべきである、と指摘されるようになってきている。快楽志向・享楽志向で献立を組み立てると栄養過多になり、生活習慣病に陥ってしまうことが、様々な医学的研究によって明らかになってきているのである。しかも健康に良い食事というのは、(快楽志向・贅沢志向の食事と反対方向であり)比較的安価であり、家計にも優しい。

ただし、家庭での日々の献立の実情としては、買ってしまって冷蔵庫に入れてある食材を無駄に腐らせるわけにはいかない、ということも考慮される傾向がある。したがって逆に言うと、そもそもある程度計画的に食材を購入すること、特に生鮮食料品は買い過ぎないようにする配慮、衝動買いをしないようにする心構えが必要となる。これは家庭内の料理担当者でも飲食店の調理人でも同じである。


献立の立てる順としては様々な方法がある。 例えば家族が栄養過多で肥満ぎみでダイエットを行っている場合にしばしば行われるのは、その人の基礎代謝量と活動レベルを考慮して、総カロリーを決め、その範囲内におさまるように、しかもミネラルやビタミンも十分にとれるように献立を組み立ててゆくという方法である。

栄養のバランスに関しては食品群別摂取量の概量を目安に食品の組み合わせを考えるのがひとつの方法である。

ただ最近の日本の家庭の食卓には世界各国の食文化が流入してきているので、まずは和食か、中華料理か、洋食(洋食の中でもイタリア料理なのかスペイン料理なのかフランス料理なのか、)等々から選択し、それからそれぞれの食文化で規定されているスタイル・様式・流れにそって献立を組み立てる、ということがしばしば行われている。

例えば、和食であれば、健康重視で一汁一菜や一汁二菜にするのか、あるいは(手間もかかり、また栄養過多になり健康を害する結果になると知りつつも)一汁三菜~にするのか、を考え、汁もの(味噌汁が一般的)の具をどうするか考慮し、あとは「菜」(=おかず)の部分に、家族の好みを反映させつつ野菜料理、魚料理、肉料理などをあてはめてゆく、ということが一般的であろう。

例えば洋食を選ぶと、洋食の場合は多くは、時系列でおおまかな流れが決まっている。たとえばイタリア料理を選んだ場合は、イタリア料理の伝統なども考慮して、食前酒は飲むのか飲まないのか、飲むならどれにするのか、サラダを用意するのかしないのか、用意するならどんな野菜を入れるのか、チーズはどうするのか、またパスタ類やニョッキ類は何を出すのか、そのソースや味付けをどうするのか、あるいは(家庭の日常料理などでは、イタリアでもしばしばそうなのだが)食前酒もサラダも飛ばして、いきなりパスタやニョッキの料理単品を一皿だけを出すのか、などを考え、献立(この場合は洋食なので「メニュー」になるが)を組み立てることになる。

特別な日、ハレの日

お祝いの日などには、日常食は脇に置いておき、また健康のことも一時脇に置いておいて、お祝いされる人が楽しめることを重視して、その人の好物をたっぷりと供する献立にされることが多い。

メニューの歴史

ファイル:Businesslunchmenu.sergeyrest.moscow.jpg
モスクワ、Kammergansky PerelukのSergeyレストランでのビジネスランチメニュー
ファイル:Yungkee-menu.jpg
中華料理店「鏞記酒家」のメニュー

メニューは、他の料理用語同様に、フランス語が語源である。ラテン語で小さく作ったものを意味する「minutusミヌトゥス」 に由来し、フランス語「menu ムニュ」で詳細なリストや履歴書を意味するようになった。客に選択を提供した最初のメニューは小さい「carte カルト、キャルト」(フランス語で黒板の意)に書かれた。こうしたことから、メニューから選ばれる料理は「黒板に従って」を意味するアラカルト(à la carte)と呼ばれている。

中国(960年-1279年)の時代、商人層に主に提供される初期のレストランの発展に伴い、献立の起源が見つかっている。[12]

初期のレストランは現在のようなメニューを持たなかった。ターブルドート(定食)店ではシェフまたは経営者が選んだ料理が提供され、客は現在の宴会と同様に、店舗がその日に提供する料理を食べるものであった。料理を決定するのは店の側であったのである。現在のメニューは18世の後半に最初に現れた。ここでは、共通に提供される料理ではなく、レストランが客の選択で注文されて作る料理の一覧から選択する。定食店は定価であったが、メニューでは選択した分の価格である。[13]

メニューの表記法

テンプレート:出典の明記 印刷されたメニューにみられる表記は、広告の形態として、宣伝文句がよく知られる。調理過程を頻繁に強調し、魅力的な材料で注意を引き、フランス語や他の外国語表記を追加し、料理を洗練され魅惑的に見せる。メニュー表記の目的の一部は、レストランで提供される料理には、家庭で同様の料理を調理できないような技術、設備、および魅力的な材料が必要であるという認識を、客に印象づけることがある。

特定の献立

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ
  1. 大辞泉
  2. 日本の飲酒文化 [[月桂冠 (企業)|]] お酒の事典
  3. 行幸の演出 風俗博物館
  4. 貴重書紹介 > 大饗記 慶応技術図書館
  5. 5.0 5.1 遠藤元男『日本史小百科〈16〉飲食』1983年。ASIN B000J7A5QS
  6. [1]
  7. 大塚力『食生活近代史』 雄山閣出版、1969年
  8. 大塚力『食生活近代史』 雄山閣出版、1969年
  9. 『味をたがやす:味の素八十年史』味の素株式会社 1990年、pp.103~105
  10. 『見てわかる!栄養の図解事典』p.10-18
  11. 『見てわかる!栄養の図解事典』p.10-18
  12. Gernet, Jacques (1962). Daily Life in China on the Eve of the Mongol Invasion, 1250-1276. Translated by H. M. Wright. Stanford: Stanford University Press. ISBN 0-8047-0720-0. Page 133.(英語)
  13. Rebecca L. Spang, The Invention of the Restaurant: Paris and Modern Gastronomic Culture (Harvard, 2000: ISBN 0-6740-0685-2)(英語)

関連項目