メタンハイドレート

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燃える氷から転送)
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テンプレート:告知 テンプレート:Amboxテンプレート:DMCA メタンハイドレートテンプレート:Lang-en-short[† 1]、methane clathrate、hydromethane、 methane ice)とは、メタンを中心にして周囲を分子が囲んだ形になっている包接水和物の一種である。低温かつ高圧の条件下で、水分子は立体の網状構造を作り、内部の隙間にメタン分子が入り込み氷状の結晶になっている。メタンは、石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよそ半分であるため、地球温暖化対策としても有効な新エネルギー源であるとされる(天然ガスも参照。)が、メタンハイドレートについては2013年時点では商業化されていない。化石燃料の一種であるため、再生可能エネルギーには含まれない。

性状

ファイル:Gashydrat mit Struktur.jpg
オレゴン州沖で採取されたメタンハイドレート

見た目は氷に似ている。1 m3のメタンハイドレートを1気圧の状態で解凍すると164 m3のメタンガスと水に変わる。解凍する前のメタンはメタンハイドレートの体積の20%に過ぎず、他の80%は水である。分子式は CH4·5.75H2O と表され、密度は0.91 g/cm3である。火をつけると燃えるために「燃える氷」と言われることもある。

水分子で構成される立体網状構造の間隙中にガス分子が位置して安定な固体結晶となっている氷状の物質は包接水和物、ガスハイドレート、あるいは、クラスレートと呼ばれる構造になっている。

ガスハイドレートには、ガスが失われると残された立体網状構造である「包接格子」だけでは格子構造を維持できないもの(ガスハイドレート、クラスレート)と、包接格子だけでも格子構造を維持出来るものがある。メタンハイドレートは「包接化合物」とも呼ばれるクラスレートであり、骨格となる水分子間の5-6 Å(オングストローム、1 Å = 100 pm)程度の隙間に入り込んだガスが出て行くと格子は壊れる[1]

生成過程(海底下)

メタンが海底下で大量に保存されている原因は、無機起源説と、生物起源説に大別される。

現在までに報告されているメタンハイドレートを構成するメタンの炭素同位体比は比較的小さい値(13C が少ない)を示していることから、これは堆積物中で有機物の分解によって生じる生物起源のものであるという主張があるほか、巨大な地震がすぐ近くで発生した場所の海底から1.6メートルほどの深さの地層にメタンハイドレート等が含まれていることからメタンガスが海底に埋まっている場所に地震で裂け目ができる可能性があるというドイツとスイスの科学者らが英科学誌ネイチャージオサイエンスで発表した論文など、これらのメタンは海底熱水系等において確認されている非生物起源であるという主張もある[2]

生物生成メタン
メタンハイドレートは大陸周辺の海底に分布しており、大陸から遠く離れた海洋の深部に有意な発見はない。それら分布領域における表層堆積物の特徴は、長い運搬過程を経た粒度の小さい砕屑物鉱物粒子、火山灰などの他に有機物有孔虫などの生物遺骸が含まれる海底泥質堆積物である。その海底面(表層)では生物活動による土壌が作られ、土壌の上に新たな堆積物が積み重なり海水の比率が減少するとともに堆積物の続成作用が働く環境となる。堆積作用により表層から埋没後しばらくは硫酸還元菌(例えば ArchaeoglobusDesulforudis など)の活動が続き、この活動している地層を硫酸還元帯という。活動時間が長い深部になるほど炭素同位体比は大きい値を示す。硫酸塩の枯渇などにより硫酸還元菌の活動が終わると、メタン生成菌の活動が活発になり、メタンと炭酸水素イオンが生成される。ここでは地層深部の圧密作用を受けメタンや炭酸水素イオンを含む水が上層へ移動し、一定の条件下で水分子のかご構造にメタンが入り込みメタンハイドレートとして蓄積される。このメタン醗酵が発生する層では 13C炭酸水素イオンに濃縮されるため、メタンの炭素同位体比は軽く(13C が少なく)なる。
熱水噴出孔などでこれらのメタン菌の活動を垣間見ることができる。例えば MethanopyrusMethanocaldococcus は地底で発生する水素と二酸化炭素からメタンを合成する。この他 Methanocalculus などのメタン菌が油田から得られている。
熱生成メタン
更に地中深くなると、地温が上昇するとともに微生物の活動は減少し、有機物は熱によるカルボキシル基が除去される反応によってメタンが生成される。ここでは生成された炭酸水素イオンから炭酸塩物を析出する。これらの炭素同位体比は、硫酸還元帯にみられる有機体と比べ大差がない(近似値を示す)特徴がある。ただし、上記 Methanopyrus の培養の際、高温高圧下(122 テンプレート:℃、400気圧)では炭素同位対比の重いメタンを合成することが報告されており、今後研究の進展しだいでは一部の熱生成メタンの起源について再考される可能性もある。なお、日本海側で発見された海底表面に露出しているものは、海底下数kmでの深部ガスに由来している熱分解起源のメタンハイドレートである可能性があり、地球の深部から熱生成ガスが生成され無尽蔵に湧出し続けるため地球活動が続く限り枯渇することが無い可能性があるという主張もある[3]テンプレート:要高次出典

安定条件

ハイドレートの網状構造を維持するためには、環境が低温かつ高圧であることが求められる。地球上では、シベリアなどの永久凍土の地下数100-1000 mの堆積物中や海底でこの条件が満たされ、メタンハイドレートが存在できる。実際にはほとんどが海底に存在し、地上の永久凍土などにはそれほど多くない。またメタンハイドレートを含有できる深海堆積物は海底直下では低温だが、地中深くなるにつれて地温が高くなるため、海底付近でしかメタンハイドレートは存在できない。また、圧力と温度の関係から同じ地温を成す大陸斜面であれば、深くなるほどメタンハイドレートの含有層は厚くなる。これらの場所では、大量の有機物を含んだ堆積物が低温・高圧の状態におかれ結晶化している。

地表の条件では、分解して吸熱反応を起こす。この時生成される水はの薄膜を形成するため、メタンハイドレートは常圧下-20 テンプレート:℃程度でも長く保存できる自己保存性を持つ。

埋蔵域

ファイル:Gas hydrates 1996.svg
1996年アメリカ地質調査所の調査によるハイドレートの分布図
黄色の点がガスハイドレートを示す。

状況によって異なるがおおむね、大陸棚が海底へとつながる、海底斜面内の水深500-1000 m[4][5](2000mまでとする研究もある)[6]での、地下数十から数百m[5]に存在し、メタンガス層の上部境目に存在するとされている。通常は高圧下でありながら、凍った水分子の篭状の結晶構造に封じ込められている。

日本近海の埋蔵域

2008年現在、日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵量を持つとされる。本州四国九州といった西日本地方の南側の南海トラフに最大の推定埋蔵域を持ち、北海道周辺と新潟県沖、南西諸島沖にも存在する[5]。また、日本海側には海底表面に純度が高く塊の状態で存在していることが独立総合研究所の調査よりわかっている。日本海の尖閣・竹島を始めとする領土問題は日本海側のメタンハイドレートが目的だとの見方もある[7]。なお、新潟、秋田、京都など日本海沿岸の10府県による「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」は、「日本海側では、一部の地域における学術的な調査の実施にとどまり、開発に向けた本格的な調査・産出試験が実施されていない」として、日本海のメタンハイドレートの開発に向け、経済産業省資源エネルギー庁に予算の確保を要請しており[8]海洋基本法に合わせて海洋政策の指針とする2013年度「海洋基本計画」では2018年度の商業化と2023年度以降の民間企業主導による商業化を目途として日本海側も調査する方針を示しており[9]、日本海側における表層型の調査を行った結果、新潟県上越沖と能登半島沖だけでメタンハイドレートを含んでいるとみられる特殊な地形をした有望な地点が広範囲に渡り225ヵ所見つかったことが2013年8月に経済産業省により発表され[10][11]、経済産業省資源エネルギー庁が2014年度に採掘調査を計画していることが発表された[12][13]

また2013年6月には、千島列島と北方領土の大陸棚に最大でガス87兆立方メートル相当のメタンハイドレートが埋蔵されている可能性が高いとして、ロシアの国立研究機関であるロシア科学アカデミー極東地質学研究所露もロシア国営石油大手「ロスネフチ」に開発検討を提案している[14]。また中国では青海地区で350億トンの油に相当するメタンハイドレートが見つかっており、南シナ海には680億トン相当のメタンハイドレートがあるとされており、2013年の6月から9月には、中国国土資源部が広東沿海の珠江口盆地東部の海域で初めて高純度のメタンハイドレート採掘に成功。1000億から1500億立方メートルの天然ガスに相当する資源を確認しており、2030年の商用化を目指していると発表している[15]

ファイル:Methane hydrate around Japan Ilands.PNG
2008年までに調査された(民間等による一部の調査は除く)日本周辺海域におけるメタンハイドレート推定埋蔵域

日本近海の埋蔵量

日本のメタンハイドレートの資源量は、1996年の時点でわかっているだけでも、天然ガス換算で7.35兆m3(日本で消費される天然ガスの約96年分)以上と推計されている[16]。通常、可採埋蔵量という場合は、現在の価格で採算が取れる埋蔵量を指し、採掘すると赤字になる存在量もあわせた総量は究極埋蔵量という。通常 可採埋蔵量は究極埋蔵量の極一部である。テンプレート:要出典そして木材よりカロリー単価が高い埋蔵は資源とは言えないという考えから、可採年数は可採埋蔵量のみが対象となる。しかし、もし将来、石油や天然ガスが枯渇するか異常に価格が高騰し、海底のメタンハイドレートが低コストで採掘が可能となれば、日本は自国で消費するエネルギー量を賄える自主資源の保有国になるという意見があり[7]、尖閣諸島近海の海底にあるとされている天然ガスなどを含めると日本は世界有数のエネルギー資源大国になれる可能性があるという意見もある[17]

採取方法とその課題

例えば、南海沖海底のメタンハイドレートは潜水士が作業できない深い海底のさらに地下に氷のような結晶の形で存在する。そのままでは流動性が無いので、石油やガスのように穴を掘っても自噴せず、石炭のように掘り出そうとしてもガスの含有量が少なく費用対効果の点で現実的ではない。ハイドレートを含む地層を暖めるなどすれば、少しの温度の上昇や圧力の低下でメタンがガスとなって漏れ出してくるが、上層や周囲の土中がハイドレート生成に適する氷を含む温度や圧力の環境であれば再びメタンガスは水分子のカゴに取り込まれてしまう。メタンがガスとなって結晶から遊離する時は吸熱反応となる事も、結晶化を助ける。これらの事情によって、低コストでかつ大量に採取することは技術的に課題が多いという意見がある。

また、ストロー状の筒を刺して自噴もしくは吸い上げることができる液体と違い、メタンハイドレートは固体状態で存在しているため、砂層型と呼ばれる砂と交じり合っている太平洋側のメタンハイドレートに対して深海油田採掘方法を応用してもパイプに砂が詰まるなど[18]採取には課題が多い。

政府が試掘を行なっている南海トラフの海底地下メタンハイドレート鉱床では、現有する採掘技術を使用して採掘・生産しても現時点では経済的には全く引き合わないため、商業生産に向けた民間レベルでの採掘計画は少なく、研究用以外の目的では採掘されていない。

日本海沿岸では、表層型と呼ばれる海底表面に露出したメタンハイドレート鉱床が発見されているがこの表層型に関しては現在は開発段階ですらない調査中の段階であり、現在のところ効率的な採掘方法の方針は立っていない[19][20]。今まで東京大学独立総合研究所海洋研究開発機構産業技術総合研究所などにより調査が行われてきたが[21][22]、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアムによる調査は行われていない。 日本海側については一部の学者や民間らが独自に調査を続けてきたものの、政府による本格的な調査は後回しにされていたが、2012年9月に日本海沿岸の10府県により設立された「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」が広範囲の調査を国に求め[23]、その結果、政府の総合海洋政策本部が日本海側について、明治大学、国の委託を受けた独立行政法人産業技術総合研究所と学者のチームにより佐渡沖と石川県・能登半島沖で母船からのケーブルなしで航行できる自動の自立型巡航探査機を使い、2013年度から2015年度までの3年程度で音波を使って地質探査、海底地形、海底下での構造データ等の海底調査を行い、資源量把握に向け集中的に調査すると同時に、調査データの分析を踏まえたうえで試掘実施地点を絞り込み、表層型メタンハイドレートの試掘を実施する方針を打ち出した[23][24][25]。調査はチャンバーで海底のメタンハイドレートの塊を砕き、その衝撃と水圧の低下で解離したメタンを採取する方法を用いる[26][27]。調査予定海域には、メタンハイドレートの存在がこれまでに確認されている佐渡沖、能登半島沖、秋田・山形沖、隠岐周辺が2013年夏に行われる他、2014年度は秋田県・山形県沖と島根県の隠岐島周辺、2015年度はオホーツク海の北海道網走沖周辺も候補に入っている[25][23][28][29]。佐渡沖ではピストンコアリングと呼ばれる一般的な調査方法でも容易にメタンハイドレートの結晶を試掘できる[22]
ファイル:Seafloor mounds.jpg
メタンガス(気泡)を放出するメタンハイドレート塊

メタンハイドレートが多く存在する場所には、ズワイガニがたくさんいることや、魚群探知機にメタンハイドレートの泡が写ることがわかっており[21][30][31][32]、水産学博士の青山千春は魚群探知機を使った調査方法を日本、韓国、中国、アメリカ、ロシア、オーストラリアで特許取得している[31][32]。2012年も兵庫県や和歌山県などと連携して日本海側の調査が行われ[33]、兵庫では水深が1000mから1500mになる沖合約100kmから150kmにおける4カ所の海底でメタンハイドレートが存在する可能性が高いことが判明したほか[34]、2013年7、8月にも兵庫県が詳細な調査を実施する方針を打ち出している[35][36]

日本海のメタンハイドレート調査を行っている独立総合研究所社長の青山繁晴は、メタンハイドレートは天然ガスなので、LNGのように液化天然ガスを溶かして使っている日本のような国ではメタンハイドレートの取り扱いは得意であり、日本海のメタンハイドレートは砂と交じり合っておらず塊状で存在しているため青函トンネルや関門トンネルの建設に裏打ちされた世界トップクラスである日本における海洋土木の技術を使用すれば取るだけで済むことなどからコストも技術もさほど難しく無く、海洋土木工学を利用して海水からメタンハイドレートを取り出すことや早期の実用化自体は可能だと主張している[3][32]テンプレート:要高次出典。事実、韓国では竹島近海で露出している豊富なメタンハイドレートについて[37]2013年を目標に、竹島の南方海域で米国ゼネコンの海洋土木技術による採掘実用化を行うと発表している。日本では三井造船が2010年4月に世界初の天然ガスハイドレート (NGH) 陸上輸送の実証研究を完了させており[38]、三井造船は「日本が自前のエネルギーを確保できれば国力維持につながる」として商社などと連携のうえ日本近海でのメタンハイドレート採掘を将来への事業の柱と位置づけ取り組んでいく方針を表明している[39]

メタンの回収方法

メタン回収方法には以下のような方法がある[40][41][42]

  • 土木的手法
メタンハイドレートを土木的に陸上まで運びあげ陸上でメタンを取り出す。上述のピストンコアリングもこの方法の一つ。海底から固体のメタンハイドレートを引き上げる必要があり、かつ引き上げた後に改めてメタンを取り出す必要があるため膨大なエネルギーを要する。なお土木的な手法は海底面に何度も衝撃を与えるためブローアウトを引き起こす可能性がある[43]
  • 加熱法
温水注入や発電などで海底の温度を上げることでメタンハイドレートからメタンを取り出す。メタンハイドレートからメタンが自壊するほど海底の温度を引き上げるには膨大なエネルギーを要する。
  • 減圧法
海底の圧力を下げメタンハイドレートからメタンを取り出す。海底の圧力を広範囲に下げるにはかなりのエネルギーが必要である。
  • 化学的手法
分解促進剤や分子置換材の注入により化学反応でメタンハイドレートからメタンを取り出す。上記の手法に比べエネルギー効率は格段に良いが、注入した物質や、化学反応後の残留生成物による海水汚染の可能性がある。

2011年愛媛大学大学院理工学研究科のグループは、液中プラズマでメタンハイドレートを分解し、水素として採取する技術を発表した[44]

2012年にはアメリカ合衆国エネルギー省石油天然ガス・金属鉱物資源機構が採掘・生産試験を共同で実施。3月4日から4月10日に、地層の中にあるメタンハイドレート層へ二酸化炭素を圧入して二酸化炭素の圧力をメタンハイドレートが溶解する圧力に保ちながら減圧法を使用することにより、メタンハイドレートを二酸化炭素ハイドレートへ置換する生産試験を行い、成功させた[45]

メタンハイドレートに関する議論

コストパフォーマンスに関して

日本近海で初期に日本政府(メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム)によるメタンハイドレート採取の研究が行われたのは南海トラフであった。この海域では、海底油田の採掘方法を応用して1999年から2000年にかけて試掘が行われ、詳細な分布状況が判明しているが、総額500億円を費やしたが商業化には至っていない。これは、南海トラフなど太平洋側のメタンハイドレートは、分子レベルで深海における泥や砂の中に混溜しており、探索・採取が困難を極めているからであるとされているテンプレート:要出典

一方、2013年に国による日本海側の本格調査が発表されるまでは、巨額の予算がつく政府主導の南海トラフに対して、低コストで採掘できそうな日本海側の研究には年間250万の予算しか付いておらず[46][47]、船を動かすためには燃料代だけでも1日100万円以上かかるうえ、調査のためには政府の船を借りねばならず、水産高校の実習船のような小型の船を借りた場合でも金額や人件費を含めると一日300万円は必要になってくる。調査のための予算が下りないことについては、青山繁晴は石油利権に絡む東大教授や国会議員や企業など既得権益に関わる者が採掘に対し反対の姿勢をとっていることが原因ではないかとの主張している[47][17][48][49][50] テンプレート:要高次出典

1990年代に設立されたエネルギー総合工学研究所の、太平洋側で調査を行ったメタンハイドレート調査委員会で初代調査委員長を務めた石井吉徳は「採掘以外にもメタンハイドレートからメタンを取り出すためにもエネルギーが必要であり、最終的に1のエネルギーを使ってメタンハイドレートから得られるエネルギーは1に満たない。メタンハイドレート採掘は旨みを享受できる政府機関や関連企業、鉱山閉鎖で食い扶持を失った企業のための公共事業と化している」と主張している[51][52][53]テンプレート:要高次出典。ただし、採掘が既得権益と化しているという主張に関する具体的な証拠は示していない。また太平洋側が3段階中のフェーズ2の段階で、日本海側においては調査段階であり、メタンハイドレートに否定的な石井の見解については否定的な意見もある[54]。一方、青山繁晴は火力発電に使用している天然ガスの主成分とメタンハイドレートから取り出せるメタンガスは同じなため、ガスの取り出しさえ上手くいけば、発電や運搬は既存のインフラを最小限改良することで活用できるため、すぐにでも発電でき、都市ガスとしての供給も可能になると主張し[3]、火力発電所の所長たちと何度も会って確認した結果、砂と交じり合っておらず結晶状で存在している日本海側のメタンハイドレートは海洋土木の技術を使用して海底から拾い上げ溶かしてガス化すれば、火力発電所の横に小さな建屋を立てるだけで既存の火力発電所でも直ぐに使うことは可能で、その場合、コストがどれくらい安くなるか見当も付かないほど安くなり、どれくらい高く見積もっても輸入した液化天然ガスの10分の1の価格にはなるだろうとも主張しているが、具体的な方法や採算性の計算は提示していない[32]テンプレート:要高次出典

2013年7月にはプラント建設の大手である千代田化工建設が、開発における初期段階からのノウハウを獲得する狙いや、メタンハイドレート等において今後、日系企業などが資源開発に進出する際サービスを提供していく方針により、海底油田・ガス田における調査、設備設計等に強みを持つ世界大手の英国「エクソダス」社の株式の過半数を取得している[55]。国内では2014年度以降に海底から掘り出したメタンハイドレートを地上に運ぶため、メタン、砂、海水を分離するセパレータ、メタンハイドレートを約10本の生産井から集約する集気システム、地上に送るための海底設置型送気システム、パイプラインなどで構成された生産機器群の開発も計画されている[56]。また2013年7月に茂木敏充経済産業相が渡米した際には、エネルギー省のモニツ長官とのワシントンでの会談においてメタンハイドレートの開発で協力する方針を確認している[57]。2013年9月には、インドでニューデリーで行われた「日印エネルギー対話」第7回会合において、インド周辺海域での地質解析や分布エリア推定の研究などで協力を進め、インド政府が計画するメタンハイドレート研究開発に日本が協力して技術情報を交換していくことすることでも合意した[58][59][60][61]

地球温暖化

テンプレート:Amboxテンプレート:DMCA 大気中のメタンは二酸化炭素の20倍超もの温室効果があるのではないかと言われており[62]、メタンハイドレートは放置したままでも海水温の変化や海流の影響で僅かずつメタンを乖離し、そのメタンは自然と海中から大気中に放出されてしまう。このメタンによる温室効果は最終的には数千兆円もの損害を与える可能性が指摘されており[62][63][2]アメリカ地質調査所等はメタンハイドレート開発によって発生するメタンのうち回収しきれずに大気中に放出されるメタンが気候変動にさらに大きな影響をもたらす可能性があることを警告している[64][65]アメリカ合衆国エネルギー省国立エネルギー研究所メタンハイドレート開発技術マネージャーのレイ・ボズウェルは特に表層型のメタンハイドレートは回収不能なメタン放出の危険性が高く、安易に開発を進めることは好ましくないとしている[66]。なおメタンの大気中の滞留期間は12年程度、二酸化炭素は5年から200年と解析方法によって差がある[67][68][69][70]

また、地球温暖化が進むと海水温がさらに上昇し、やがてこれまでは海底で安定状態にあったメタンハイドレートからメタンが乖離され大気中に放出される。するとさらに温暖化がすすみ海水温を上げ、さらに多くのメタンが吐き出される悪循環をおこすだろうという仮説がある。2億5千万年前のP-T境界では、この現象が実際におこり、大量絶滅をより深刻なものにしたという説もある(NHKスペシャル 地球大進化〜46億年・人類への旅〜第4集で詳しく説明されている)。

こういった危惧がある反面、放置したままでもメタンハイドレートは海中から大気中に少しずつ放出され最終的に数千兆円の損害を与える可能性があるため[62][2][63]燃やして使用したほうが温暖化防止に繋がるという考え方や[71]、メタンガスは燃やすと石油や石炭より、CO2 の排出量が少ない[72][73][17]という点では歓迎出来るとする考え方から、メタンハイドレートは石油に替わるエネルギー源として期待する意見もある[74][75][76]

メタンハイドレートの発見及び調査・採取事例

 メタンハイドレートの発見及び調査・採取事例年表
事柄
1930年代 シベリアなどの寒地において、天然ガスパイプライン内にできるガスハイドレート(周辺構造は、メタンハイドレートとほぼ同じ)という現象や物質自体は確認されていた。
1960年代 永久凍土内で、天然ハイドレートの堆積層が発見された。
1967年 天然ガスハイドレート岩石資料が世界で初めてシベリアのヤクーチャの永久凍土地帯で採取された。
1970年代 海底において大量に存在する可能性が予測され、実際に計測が行われた。
1974年 カナダのマッケンジー・デルタで、天然のメタンハイドレートが浅い砂質層に埋蔵されている事が発見された。
1980年 南海トラフ周辺でメタンハイドレートを発見。
1989年 奥尻海嶺でサンプル回収。
1990年 四国沖でサンプル回収。
1996年 アメリカ合衆国内の海底において発見され、具体的研究が進められる。
2000年 南海トラフでメタンハイドレートの存在を確認。
2000年 経済産業省に開発検討委員会設置。
2001年2002年 カナダでメタンハイドレートから世界初のガス産出。
2002年 日本・カナダ・アメリカ・ドイツインドの国際共同研究として、カナダのマッケンジー・デルタ Mallik 5L-38号井において、世界で初めて地下のメタンハイドレート層から地上へのメタンガス回収に成功した。
2004年7月 日本海側の新潟、佐渡の南西沖では、範囲は小さいながらも、海底の深くではなく海底の上までメタンハイドレートが上がってきているような濃集してる特別な海域が発見される。2005年8月にピストンコアリングによりサンプル採取[30]
2005年 新潟県上越市沖で海底に露出した試料を取得[22]東京大学海洋研究開発機構の研究グループにより新潟県上越市直江津港沖合30km付近に海底上(水深約900メートル)に露出しているメタンハイドレートを確認。海底面上にあるのを発見したのは東アジア周辺海域では初。
2008年3月 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が、カナダ北西部のボーフォート海沿岸陸上地域での国際コンソーシアムに参加して、カナダ天然資源省との共同研究で陸上験実を行い、永久凍土の地下1100mのメタンハイドレート層から減圧法によってメタンガスを連続的に産出することに成功。投入した30倍のエネルギーを採集。これを受けて同機構は、2018年頃にメタンハイドレート事業を商業化すると発表。
2008年8月 清水建設北海道大学北見工業大学ロシア科学アカデミーは共同でバイカル湖湖底のメタンハイドレートの採取を実施。ウォータージェットで湖底を攪拌、ガスを湖水に溶け込ませて引き揚げる手法により14 m3のガスを採取した。表層のメタンハイドレートからガスを採取した事例としては世界初。
2010年 新潟県上越沖で試料採取。
2011年2012年 明治大学、北見工業大学の研究・知財戦略機構を拠点に、東京大学などの研究者などが参加して構成している研究共同体・表層ガスハイドレート研究コンソーシアムが、網走沖での深さ約900メートルの海底や、秋田~山形沖、網走沖で試料を採取した[77]
2012年2月14日 愛知県渥美半島沖から志摩半島南方沖(紀伊半島三重県東紀州沖の熊野灘)の深海でメタンハイドレート掘削試験を日本が開始[78]。海底での採掘は世界初の試みとなる[78]
2012年2月 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC) は、メタンハイドレートから天然ガスを取り出す海洋産出試験に着手すると発表[79]。世界初としている[80]。事業主は経済産業省、作業地点は愛知県沖(第二渥美海丘)[† 2]2012年2月中旬に試掘を始め、2013年の1~3月の期間に産出試験(フローテスト)を予定・計画している[79]。商業生産に向けた技術基盤の整備は、2016~2018年度を予定として進める。
2012年6月4日6日 兵庫県と独立総合研究所が共同で県の漁業調査船「たじま」と魚群探知機を使用して、香住沖約百数十キロの海域にて埋蔵域を調査するため2度に渡り予備調査を行っている[81][82]
2012年 秋田~山形沖、網走沖で試料取得[77]
2013年3月12日 日本の独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と産業技術総合研究所が愛知県と三重県の沖合で、世界で初めて海底からのメタンガスの採取に成功したと発表した[83][84]。このことについてMH21プロジェクトリーダーの増田昌敬は「陸上試験の結果から推して1日5000m3出れば御の字だと思っていた。2万m3は画期的な量。北米のシェールガスだって最初は数千m3程度だった」と評しており[85]、2013年時点においてメタンハイドレートの濃集帯を推定する技術で日本は他の国々を大きく引き離している[86]
2013年7月25日 鳥取県の平井伸治知事が定例記者会見で日本海側の資源量を調査する採掘調査が、明治大学を中心とした関連大学共同学術研究チームにより2013年8月から10月にかけ上越沖2海域、秋田山形沖1海域、隠岐東方2海域の計15地点で行われ、このうち1海域が2013年9月下旬に隠岐東方の鳥取県沖で1週間程度行われることを発表した[87][88][89][87][88][89]。日本海洋掘削社長の市川祐一郎は、データが揃っていないため詳細は分からないと前置きした上で、鳥取沖の海底にメタンハイドレートが存在する可能性が高いことを示唆する見解を述べている[90]

施設

国内においては、和歌山県御坊市の日高港新エネルギーパークにおいてメタンハイドレートの紹介が行われており[91]、事前に予約した一定数以上の団体客は、シャーレに乗せられた人工的に造りだしたメタンハイドレートに触れることができたり、燃焼実験を見ることが可能となっている。

脚注

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注釈

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出典

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関連項目

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外部リンク


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  1. 松本良・奥田義久・青木豊 『メタンハイドレート21世紀の巨大天然ガス資源』 日経サイエンス社、1994年1月、39-40頁 ISBN 4-532-52029-0
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