無反動砲

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無反動砲(むはんどうほう、テンプレート:Lang-en-short)は、発射する砲弾が持つのと同じ運動量を持たせた物体や爆風を砲後部に放出することにより、作用反作用の法則を利用して、発射時の反動を軽減し、駐退復座機構や頑丈な砲架を省略した砲である。 反動が少ない事により、照準器を砲身に直接取り付けることも可能だが、実際には砲の規模や方式に応じたある程度の反動が発生し、砲身内部にライフリングがあるものは、砲弾通過時にその回転力の反作用も受ける。

発射方式

発射方式には後方に反動と同じ運動エネルギーを持つ重量物(カウンターマス、カウンターウエイト)を射出するデイビス方式(イギリス式)、後方に発射ガスを高速で噴出させて反動を軽減させるクルップ方式(ドイツ式)、クルップ方式を改良し、初速低下をある程度防いだクロムスキット方式(アメリカ式)がある。

いずれの方式でも後方へ打ち出される爆風やカウンターマスによる危険区域が存在するため、そこに味方が立ち入らないよう配置、運用される。また、クルップ式とクロムスキット式では後方に噴出したガスによる爆風や炎で敵に発見される危険を伴う。

デイビス式

ファイル:Recoilless rifle korea.jpg
朝鮮戦争で無反動砲を発射する兵士

初期のカウンターウエイトは金属の塊やワックスなどの軟体で、大きな後方爆風(バックブラスト)を生じないため、閉鎖された空間や狭い陣地から発射しても射手が爆風に巻き込まれないが、打ち出されたカウンターウエイトの飛ぶ距離は他の方式より長い。

後に、砕けやすい硬質プラスチックや金属の微粉末を使用するようになったことで、後方の危険区域を縮小している。

クルップ式

発射する砲弾と同程度の運動エネルギーを持つガスを、ガス圧により容易に底が破砕する薬莢と砲後部のノズルを用いて後方に噴出させて反動を軽減する。

砲弾の加速用に加えて、反動軽減用のガスを発生させる分の発射薬が必要となるため、通常の砲に比べて大量の発射装薬が必要となる。

クロムスキット式

ファイル:Recoilless rifle schematic.svg
無反動砲の原理(クロムスキット式)

砲弾の薬莢には多数のガス噴出用の孔が空いており、発射時にはその孔より噴出したガスを大型の薬室に一時溜め、適度な初速を得るのに必要な砲腔圧力を発生させた後、砲尾から噴出させる。

反動低減効果とともに、ガスが一時的に閉じこめられているため、他の方式より砲弾の初速を得やすい。また、薬莢の小孔から薬室へガスを導く際、砲のライフリングと逆向きに導く事により、カウンタートルクを軽減させる構造のものもある。
クルップ式同様に、通常の砲弾より大量の発射薬が必要となる。 テンプレート:-

利点・欠点

主に対戦車兵器として歩兵部隊に配備される。弾種を変更して火力支援煙幕展開、信号弾打ち上げなどにも利用される。

従来の火砲のような反動が無いため、衝撃吸収機構を必要とせず、砲腔圧力の低さから砲身の肉厚を薄くできる。これにより小型軽量の発射装置で大口径砲弾を発射でき、重量が軽減されることで、歩兵や軽車輛にも対戦車能力を付与することができた。しかし、より軽便であるロケット砲や高性能な対戦車誘導弾などが普及し、対戦車兵器の主流となった。それでも現代まで無反動砲がこれらと併存していたのは、ロケット砲より弾道性能が高く、対戦車ミサイルより安価かつ多目的に使用できるという立ち位置のおかげである。

構造上、反動軽減のために装薬が発生させるエネルギーを消耗するため、砲弾の運動エネルギーが低くなる。初速を得るには発射薬を大量に充填しなくてはならないため、砲弾のサイズが同じなら通常の砲より弾速と射程が劣る。対戦車用の無反動砲の場合、威力を弾速に依存しない成形炸薬弾粘着榴弾を弾頭に使用することで欠点を補っているほか、RPG-7カールグスタフ無反動砲の対戦車榴弾、パンツァーファウスト3のように、弾体にロケット推進装置を取り付け、発射後に加速することで速度と射程を向上するものもある。

無反動砲一覧

第二次世界大戦

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第二次世界大戦後

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無反動砲搭載装甲車両

テンプレート:Flagicon 日本

テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国

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