消毒

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消毒(しょうどく、disinfection)とは、広義では人体有害物質を除去または無害化することであり、広義の消毒には有害装置中和(無毒化)なども含まれる。

狭義では病原微生物を殺すこと(殺菌など)、または病原微生物の能力を減退させ病原性をなくすことである。無菌にすることではない[1]

類似する概念として滅菌殺菌があるが意味が異なる。

  • 滅菌(sterilization):病原性の有無を問わずすべての菌(細菌だけでなく、ウイルスプリオンを含めたすべての生命体)を死滅させるか、除去することである(従って滅菌は器具に対して行うものであり、人体或いは患畜に対して行うことは出来ない)。病原性をなくすレベルの達成を目的とした消毒とは異なる。
  • 殺菌(bacteriocision):菌を殺すことである。消毒の手段として殺菌が行われることがあるが殺菌はせずに病原性をなくすことによって消毒が達成される場合もあるので、意味合いが異なる。

消毒の方法

消毒の方法には物理的方法(煮沸)と化学的方法(消毒剤)とがある[1]

物理的方法

調理器具まな板包丁など)では摂氏80度5分間以上又はこれと同等の殺菌方法[1]ふきんあるいはタオルなどでは摂氏100度5分以上又はこれと同等の殺菌方法が効果的であるとされている[1]

化学的方法

手洗い
手洗いは要求される清浄度に応じて、外出先から帰宅した場合などにおいて汚れの除去を目的とする日常手洗い[1][2]学校給食の調理現場などにおいて環境から付着した病原菌を取り除くことを目的とする衛生的手洗い[1][2]、外科手術の手術時手洗いとに分けられる[2]。衛生的手洗いにおいては、石けんと流水による手洗いに加えて、爪ブラシの使用やアルコール等を使用した消毒が必要となる[1]。さらに手術時手洗いの場合には皮膚固有の常在細菌や深層の常在細菌についてもなるべく少なくするよう厳密な手洗いが行われる[2]。手術時手洗いについては手術野の消毒も含めて以下の外科手術における消毒を参照。
外科手術における消毒
外科手術の手腕消毒法
Furbringerが提唱した方法が現在でも基礎になっている。
手術野の消毒
Grossich法が有名であり現在でもこの方法が基礎になっている。
手指の消毒法
ラビング法擦式法)、スクラブ法洗浄法)、スワブ法清拭法)、ベースン法浸漬法)がある。

消毒剤

効力の検定法

種類

重金属化学物質

アルコール類

アルデヒド類

フェノール類

ビグアナイド類

界面活性剤

塩素化合物

ヨウ素類

過酸化物

アルカリ

色素類

サニタイザー

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水洗便器用薬剤供給装置サニタイザー
ファイル:NCM 07760.JPG
薬剤の濃度をに安定供給する最新のサニタイザー
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サニタイザーが連結され薬剤が供給されている男性用トイレの小便器
ファイル:C75 TOTO-1.JPG
女性用トイレではサニタイザーが大便器に連結され薬剤が供給される

概要

サニタイザーとは消毒薬を供給する装置または機器である。 病院の待合室や診察室、店舗においてある衛生面や快適性を重視する施設のディスペンサーに入った、手を消毒させる装置をサニタイザーと呼ぶほか、衛生面や快適性を重視する施設のの水洗トイレでは、尿石便器排水管に付着するのを防止するために水洗便器の洗浄管にサニタイザーと呼ばれる薬剤供給装置水洗便器の洗浄管に連結して、界面活性剤を主成分とする尿石防止の洗浄消毒薬水洗便器に供給する。

水洗トイレにおけるサニタイザー

尿石は尿中に溶けているカルシウムイオンが炭酸などと反応し、カルシウム化合物として、便器および便器のトラップ、便器からの排水管の内部に付着する。尿石には尿中の有機物も含まれており、これが腐敗分解すると、トイレ独特の臭気が発生する。トイレにおける悪臭の主たる原因になっており、尿石が便器〜排水管への付着、蓄積が進むと悪臭がさらにひどくなり、やがて排水管の詰まりが起こる。このため各業者から尿石除去及び防止の薬剤が発売されており、古くからトイレボールと呼ばれる球状の尿石防止薬剤を男性用小便器排水口付近に投入されることが多かったが、最近は洗浄水を電気分解して生成した機能水を流しバクテリアの繁殖を抑制してアンモニアの発生や尿石付着を防止する機能がある小便器が発売されているほか、公共の施設の水洗式トイレでは水洗便器の洗浄水に尿石防止や消毒薬剤を添加する装置であるサニタイザーディスペンサーなどが設置されることが多い。主にデパート、駅、ホテル、劇場、病院などの衛生面や快適性を重視する施設の、男性トイレでは小便器に、女性トイレでは和式大便器洋式大便器の便器洗浄管(便器への給水管)に組込み連結して設置される。

サニタイザーディスペンサーが設置されている男性トイレでは、概ね小便器のみに設置され、和式大便器・洋式大便器には設置されないことが多いが、同一箇所の女性トイレにはほとんどの和式大便器・洋式大便器にサニタイザーディスペンサーが設置されている。これは同じ大便器でも男性トイレの大便器に比べ女性トイレの便器(大便器)は実質上、小便器の役割も兼ねている為に排尿に供される頻度が極端に高いためである(男性トイレの大便器にもサニタイザーディスペンサーが設置されているトイレも存在する)。

サニタイザーディスペンサーの作動原理は、水洗フラッシュバルブを操作して便器に水を流すと、水は水圧により給排水管(便器の給水管からサニタイザーディスペンサーに連結した管)を通り、フロート弁を経由してサニタイザーディスペンサー内に流入する。サニタイザーディスペンサー内の水量が増えるにつれて、フロートが上昇していき、やがてフラッシュバルブの流水がピークに達する頃、サニタイザーディスペンサー内が満水になると同時にフロートが最上昇点に達し、フロート弁が閉鎖される。このためにサニタイザーディスペンサーへ流入する水の量は、常に一定となる。サニタイザーディスペンサーに流入した水は、薬剤本体と接触して薬剤を溶解する。便器へ流れる水流の強さが弱まると、フロートが降下してフロート弁が開き、サニタイザーディスペンサー内の薬剤を溶解した水は給排水管を経由して便器に流れ込む。一回のフラッシュバルブの操作により便器に流れる水の量はほぼ一定であり、水流の強さの時間的変化も一定した状態が繰り返されるので、サニタイザーディスペンサーに水が流れ込み、薬剤を溶解して便器へ流れる過程も一定した状態が繰り返され、常にほぼ一定量の薬剤が溶解して便器に供給される。便器への流水が終了する間際に薬剤を溶解した水が便器に供給されるので、薬剤を溶解した水はほとんど希釈されることなく、常に安定した薬剤量及び薬剤濃度の溶液(使用水に対し100ppmの濃度の溶液)が便器内に留まり、大腸菌黄色ブドウ球菌などの菌を消毒して、脱臭、尿石の付着防止に効果的に作用させることができる。 テンプレート:Double image stack また便器洗浄後のサニタイザーから便器への管路や便器内の管路に残留した薬剤は次回の洗浄開始直後に便器から出てきて消毒剤による便器内の消毒と、洗浄剤よる便器内の防汚洗浄がなされる。便器洗浄水を流す度にサニタイザーから便器への薬剤溶出の一連の動作が繰り返され、使用待機状態の便器は常に表面や管路は除菌消毒され、トラップ等の便器内の水溜りには一定量の、濃度の薬剤の溶液(約100ppmの濃度の溶液)が常時滞留している状態となる。

最新のサニタイザーはさらに薬剤濃度を一定に保てるように本体内部に薬剤タンクと薬液混合用タンク(希釈槽)が内蔵されており、薬剤タンクの底部にはダイアフラム押圧弁があり、便器の水を流すと水は水圧により給排水管(便器の給水管からサニタイザーディスペンサーに連結した管)を通り、サニタイザーディスペンサー内に流入するサニタイザー内の薬液混合用タンク(希釈槽)に水が流入する一方、内蔵された複数のフロート弁とマグネットの反発力にて薬剤タンク底部のダイアフラム押圧弁が押され、薬液通過孔から薬液混合用タンク(希釈槽)に一定量の薬剤が滴下して薬液混合用タンク(希釈槽)で一定濃度に希釈される。便器の洗浄が終わり近くなって、洗浄水の水圧が低下すると、フロートの弁体に接続管部側からの水圧が印加されなくなり、薬液混合用タンク(希釈槽)内の薬液は接続管部、水の流入・排出管部及び連通管を通じて洗浄水供給管に至り、便器内に流下し始める。なお、ここで流下する洗浄水は、流出口との間に残存しており、薬液混合用タンク(希釈槽)内は前回流れた洗浄水及び薬液との混合液と、今回の新たな洗浄水との洗浄混合液である。この一定量の薬液との混合液は、下蓋部材の底面上に残留する。次に洗浄水が流れてきて、薬液混合用タンク(希釈槽)内へ流入すると、この一定量の薬液が混合された混合液と新たに流入した洗浄水とが混合せしめられ、さらに洗浄水の水圧が低下すると、再びこの洗浄混合液が一部のフロートに形成した液体通過孔、接続管部、水の流入・排出管部、連通管を介して洗浄水供給管に至り、該供給管から便器内に流下し、便器の洗浄水を流す度にこの動作が繰り返される。

サニタイザーディスペンサーに内蔵されている薬剤はメーカーや種類により様々であるが、殺菌、尿石防止剤としてのカチオン系界面活性剤(スルファミン酸)、洗浄剤としてのノニオン系界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、メチルビニルエーテル・マレイン酸共重合体液)、成形助剤としてのホウ酸、及び防錆剤としてのイビット155Kを含有したを主成分とする強力な便器洗浄薬剤が、液体またはゲルゼリー)状の薬剤としてカートリッジ式の耐薬性容器ボトルタンクに入っており、その薬剤ボトルタンク底にある蓋部の薬剤溶出部は、海綿体の合成樹脂製のスポンジになっており、その海綿体の無数に開いた小さな穴から薬剤が滲み出るようになっており、サニタイザーディスペンサー内には常に少量の水が残る構造になっており、残留した水に絶えず薬剤を溶解させる以外に、長期間使用しない場合のサニタイザーディスペンサー内及び薬剤溶出部の乾燥防止や、水圧が高い場合の飛沫の飛散などを防止することができる仕組みなっている。これらは、水を流す度に尿石防止、消毒薬剤と共に強力な洗浄剤等の化学物質が便器から出てきて便器をコートし、便器内~排水管までが絶えず防汚される。さら香料が含まれる芳香効果も併せ持っている薬剤もあり、便器から出てきた薬剤でトイレ内を芳香する他、一部にはトイレボールと同じ薬剤であるパラジクロロベンゼンを主成分とした薬剤や布製又は多孔フィルム製の袋に入ったティーバッグ状の薬剤が内蔵されている物もあり、液体状、ゼリー状の薬剤が内蔵されている場合、薬剤の溶解による泡立った水や芳香効果がある泡立っ水が便器から出てくるのに対し、パラジクロロベンゼン系の固形の薬剤が内蔵されている場合、トイレボールと同様のナフタレン(ナフタリン)系の独特な匂いの薬剤の溶液が水に混ざって便器から出てくる。

それぞれのサニタイザーディスペンサーの薬剤は、夏用と冬用の薬剤があり、その時の水温に応じた薬剤がセットされ、常に一定した濃度に溶解されるようになっている。

液体薬剤用の最新のサニタイザーディスペンサーでは、サニタイザーディスペンサー本体に赤外線人感センサと薬剤供給用輸液ポンプが内蔵されており、便器の使用人数や使用頻度を感知し、適量の薬剤が自動滴下し、便器の使用状況に応じた薬剤量及び薬剤濃度の溶液が便器に供給される機構を持つ機器も増えている。

いずれもサニタイザーディスペンサーにはフロート弁が内蔵され、サニタイザーディスペンサーへの水の入排水はフロート弁の昇降動作により薬剤を便器に供給する。

サニタイザーはメーカーから一定周期で定期的に薬剤交換、薬剤補充され、同時にサニタイザーの作動状況の確認点検と便器に出てきた薬剤の濃度をpHメーター等で測定し、便器の状態をカルテにて管理される同時に便器を徹底的に磨き上げられる。

関連項目

外部リンク

脚注

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  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 テンプレート:Cite web
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 テンプレート:Cite web