洗濯機

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洗濯機(せんたくき[1])は、洗濯を半自動または全自動で行う機械。洗濯槽の回転を手動で行う手動式洗濯機も存在する。現代の日本においては、単に「洗濯機」と言うと「電気洗濯機」を指すことが通例である。家事労働の省力化に貢献し、日本の近代化を支えてきた機械の一つである。なお、本項は、特段の断りが無いものは主に家庭用の洗濯機についての記述である。

概要

電気式が登場する前は、ハンドルを手動で回したり、蒸気機関・ガソリンエンジン等を用いて回転させる撹拌式洗濯機が使われていた。電気式洗濯機は1908年[2]アメリカで発明され、1908年にアメリカのHurley Machine Companyが「Thor」として販売。日本では1928(昭和3)年に東芝の前身である東京電気株式会社がHurley Machine Companyの「Thor」(ソアー)の輸入販売を開始し、国産第一号は1930年に東芝の前身である芝浦製作所から攪拌式洗濯機「Solar」(ソーラー)として販売された[3][4]。その後、1953年三洋電機から現在の洗濯機の原点とも言える噴流式洗濯機が低価格で発売され[5]、一気に普及した。

白物家電と呼ばれている家電製品の代表格である。他の白物家電の例に漏れず、日本では一部の高付加価値製品を除き、アジア圏での海外生産品が多数を占めている[6]

日本では「電気洗濯機」として家庭用品品質表示法の適用対象となっており電気機械器具品質表示規程に定めがある[7]。また、テレビ受像機エアコン冷蔵庫とともに2001年より家電リサイクル法の対象となり、廃棄する場合には、適切な処理が義務付けられ、粗大ゴミとして処分できなくなった。固定資産としての法定耐用年数は6年だが、家庭での平均的な使用年数は8.4年[8]である。

一部では芋洗いや、タコのぬめり取りなどの魚介類を洗うために使われる事もある。メーカーの想定外・保証外の利用法であり、故障の原因ともなるので推奨されない利用法である[9][10]

歴史

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ドイツの野外博物館での手回し式洗濯機の実演
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19世紀の手回し式洗濯機
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ドイツ製の古い洗濯機

洗濯は布をこすることによって汚れを布から浮かせ、石鹸を布地に浸透させる。以前は川縁の岩に衣類を打ち付けたり、こすったりすることで洗濯していたが、その後波状の溝をつけた洗濯板が使われるようになった。古代ローマでは、"fuller" と呼ばれる人たちが発酵した尿などの入ったバケツに洗濯物を入れ、それを足で踏んで洗濯した[11]

洗濯という重労働を何とか低減させるため、洗濯する機械が開発されてきた。最初は、容器に水や洗濯物を入れ、容器ごと手で回し、中身を攪拌する方式だった。電力が欧米で普及するのは1930年代で、それ以前には1気筒の低速なガソリンエンジンなどがよく使われていた。

洗濯はお湯を使った方が汚れが落ちやすい。石鹸の入ったお湯は貴重だったため、そのまま何度も再利用されていた。まず汚れの少ない衣類を洗い、徐々に汚れのひどいものを洗っていく。初期の洗濯機は木製だったが、金属製のものができると、洗濯槽を下から火で加熱できるようになった。このため、一日中洗濯しても洗濯水を暖かく保つことができた。

イングランドでは、1691年に初の洗濯機および脱水機に類する特許が成立している[12]。また、1752年1月の "The Gentlemen's Magazine" というイギリスの雑誌に初期の洗濯機の絵が掲載されている。ドイツでは Jacob Christian Schäffer が洗濯機を考案し、1767年にその設計が出版されている[13]1782年には、イギリスで Henry Sidgier が回転ドラム式洗濯機の特許を取得している。

洗濯後、洗濯物から石鹸水を除去する工程は全く別の工程だった。元々はびしょぬれの衣類を手で絞っていた。この仕事を助けるため、2つのローラーばねで力をかけ、そこに衣類を通してローラーを手で回すという手絞り機(または手回し脱水機)が開発された。これには1枚ずつ衣類を入れてやる必要があった。元々は独立した機械だったが、洗濯機に組み込まれるようになり、搾り取った石鹸水が洗濯槽に戻って再利用できるような構造になった。

アメリカ合衆国では1797年ニューハンプシャー州の Nathaniel Briggs が "Clothes Washing" と題した特許を取得している。特許事務所が後に火事で焼け落ちたため、彼が具体的にどういう発明をしたのかは分かっていない。洗濯機に手絞り機を組み込んだものは、1843年セントジョンの John E. Turnbull が取得した "Clothes Washer With Wringer Rolls" という特許が最初である[14]

回転による脱水が一般化するのは、電動機が開発されてからである。回転で脱水するには高速で強力な回転力が必要であり、脱水機は洗濯機とは別の装置として作られた。洗濯した衣類を洗濯槽から脱水槽に移して脱水していた[15]。このような初期の脱水機は、中身が偏っていると脱水槽自体が危険なほど揺れるという問題があった。それでこの揺れをなんとかしようと様々な試みがなされた。まず、若干のアンバランスを吸収する緩衝フレームが考案され、さらに激しい揺れを検出して脱水機の回転を止める機構が考案された。この場合、人間の手で中身を均等にして再度脱水する。最近では、液体を封入した環を使い、それを脱水槽と同時に回すことで全体としてバランスが取れるようにしていることが多い。

電気洗濯機は20世紀初めにアメリカで登場している[16]。アルバ・ジョン・フィッシャーが1910年に電気洗濯機の特許を取得しており[17]、電気洗濯機の発明者とされることが多いが、フィッシャー以前にも電気洗濯機の特許が存在していた[18]

アメリカでの電気洗濯機の年間販売台数は1928年には913,000台に達した。しかし、世界恐慌が発生したために販売台数が減少し、1932年には出荷台数が約600,000台となっている。洗濯機の設計は1930年代に改善が進み、安全性を考慮して電動機などの機械が筐体に覆われるようになった。1940年には、アメリカの電力供給を受けている2500万戸の60%が電気洗濯機を所有していた。

いわゆる全自動洗濯機は、洗濯槽と脱水槽が1つになり、水の出し入れが自動化され、洗濯から脱水まで自動的に行うようになっている。1937年ベンディックスが初の全自動洗濯機の特許を取得し[19]、それを使った洗濯機を同年発売した[20]。この洗濯機は現代の全自動洗濯機の基本機能は全て備えていたが、サスペンション機構がなかったため、動き回らないよう床に固定する必要があった。

第二次世界大戦中、アメリカ国内の洗濯機メーカーは軍需に徴用されたが、全自動洗濯機の開発は続けられ、戦後間もなく全自動洗濯機を発売した。ベンディックスは1947年、改良型の Bendix Deluxe(当時249.50ドル)を発売。ゼネラル・エレクトリックも同年、全自動洗濯機を発売している。他社も1950年代初めまでに次々と全自動洗濯機を発売している。中には2槽式で、洗濯槽から脱水槽に洗濯物を手で移さなければならない半自動洗濯機もあった。

電気掃除機で知られるフーバー社は、マイコン制御が登場する以前にカートリッジ式で洗濯パターンをプログラム可能な全自動洗濯機 Keymatic を製造していた。洗濯機のスロットにプラスチック製の鍵状のカートリッジを挿入すると、それにしたがって洗濯パターンを決定するものである。しかし、ダイヤル式で設定する他の洗濯機に対して特に優れているわけでもないため、成功したとは言い難い(カートリッジは失くしやすいという問題もあった)。

初期の全自動洗濯機は機械式タイマーを使い、タイマーシャフトに一連のカムがあり、様々なスイッチを時間で操作していた。1950年代、これが電子式タイマーになり、設定の自由度が格段に向上した。

ヨーロッパでは1950年代まで電気洗濯機は一般化しなかった。これは、第二次世界大戦の戦禍により、ヨーロッパの消費者市場が1950年代後半まで回復しなかったためである。当初はローラーによる手絞り機構付きの電気洗濯機が主流だった。1960年代には2槽式が主流となった。全自動洗濯機が主流となったのは1970年代になってからのことである。

初期の全自動洗濯機では、洗濯槽/脱水槽の回転速度は機械的手段か電動機に供給する電力を可変抵抗器で加減することで制御していた。1970年代には上位機種から電子制御が一般化していった。1990年代になると、タイマーの代わりにマイクロコントローラを採用した機種が登場する。これが今では一般化している。ファジィ制御も洗濯機にいち早く採用されている。

最近では衣類乾燥機の機能まで1台でこなすものもある。

2008年リーズ大学は約280mlの水だけで洗濯できる洗濯機を開発した[21]。なお同年10月31日を以て三菱電機は(売り上げ不振で赤字が続いたことから)洗濯機の生産より完全撤退している。

2009年カトリック教会の半公的な新聞である L'Osservatore Romano が、洗濯機が女性を家事の苦役から解放したという意味で、女性解放における重要なマイルストーンだったと表明している[22]

種類

一槽式
洗濯槽のみの洗濯機。一般的な洗濯機では1960年代までこの種類が存在していた。脱水部分は手で絞るか、洗濯機傍についていたローラーで絞る。現在でも簡易・小型洗濯機でこの種類が存在する[23]。また、脱水槽のみの脱水専用機も存在している[24]
二槽式洗濯機
「洗い」と「すすぎ」を行う槽と「脱水」を行う槽が分離しており、それぞれの作業工程を各層で行う。洗濯槽と脱水槽の間で洗濯物を移し替える必要がある。1957年、イギリスフーバー社によって開発され[4]、1960年に三洋電機によって脱水槽側に熱風乾燥装置を組み込んだ「二槽式脱水乾燥洗濯機」が発売[25]。1970年代から1980年代前期までの主流。現在では少数派であるが、洗濯・すすぎと脱水を同時並行で行えるため時間あたりに洗える量は全自動洗濯機に比べて多く、構造的にも単純で丈夫なため、理容店ガソリンスタンドなどでの業務用として根強い需要がある。脱水能力において一槽式の全自動洗濯機を上回る場合が多い[26]。反面、洗濯能力は全自動のものより劣る傾向にある[27]。また、脱水槽に注水でき、注水しながら脱水することで、すすぎを助ける機種もある。現代の日本においては、下述の全自動洗濯機の普及率が高まっていて、住宅の設計・建設においてもこれを前提としている物件が多いため、全自動洗濯機に比べて横幅が広い機種が多い二槽式洗濯機を置くためには予めそのスペースの確認を要するケースが多く、注意を要する。

以上の2方式の操作方法は一時期ボタン操作式(マイコン制御)のものもあったが、現在に至るまで回転スイッチ式である。

三槽式洗濯機
日立製作所がかつて製造していた、二槽式洗濯機の亜種。同社が製造していた攪拌棒付異型パルセータ「からまん棒」(後述)の特長を生かしたもので、洗濯槽の上部中央に、もうひとつ小さなバケツ状の小型洗濯槽を取り付けている。「からまん棒」の内側に駆動軸を通し、小型洗濯槽のパルセータを駆動していた。
自動二槽式洗濯機
外見は二槽式洗濯だが、「洗い」と「すすぎ」を行う槽で「洗い」から「すすぎ」までの作業行程を自動進行ができる。多くの二槽式はすすぎの前に排水コックを操作して排水、コックを戻して水を交換してやる必要がある。機種によっては「脱水」を行う槽で「すすぎ」から「脱水」までの作業行程を自動進行ができる場合もある。現在日本国内メーカーでは日立しか製造していない。
全自動洗濯機
「洗い」、「すすぎ」、「脱水」をすべて1つの槽で行うもの。注水から最後の脱水までをすべて自動で行う。1965年に松下電器産業(現・パナソニック)によって第1号機が開発・販売された[28]。使用する水の量が多くなる問題があり、普及は遅れた(1970年代初頭、全自動洗濯機普及率4.7-8.6%[28])。1980年代以降改良が重ねられ、現在までの主流となっている。
乾燥機付洗濯機(洗濯乾燥機)
一般的に洗濯乾燥機と呼称される、全自動洗濯機にさらに乾燥機能がついたもの。乾燥機が分けられたものと「洗い」「すすぎ」「脱水」「乾燥」まで1つの槽で全自動で行えるものがある。前者は乾燥機のみ横倒しの槽になっている。2000年代前半から需要・台数が伸びている[29]。一般的に家庭用の乾燥機付洗濯機は、洗濯できる量より乾燥できる量が少ないため、洗濯物全てを乾燥させる場合は、乾燥手前で、洗濯物を取り出す必要がある。乾燥可能な量の洗濯物であっても全自動で乾燥させると衣類がクチャクチャのまま乾燥されたり、乾燥ムラがおきるなどの問題が発生することもある。このため、加熱をせず、送風のみで簡易乾燥を行い、ある程度水分を飛ばしてから自分で干すといった使い方をすることもできる。
ヒートポンプ式の乾燥機能は、室温が低すぎるといった場合性能が発揮できず完全に乾燥できない場合がある。そういった場合は暖房して室温を調整すればよい。一方、除湿冷却方式の同機能は、そのようなことはないが、除湿水の温度をリアルタイムに監視しているサーミスタに糸くずなど異物が付着すると、正確に温度を読み取れなくなり、乾燥不良が発生することがある。基本的には、熱に耐える素材で仕上がりがしわになっても支障ないものであれば洗濯から乾燥まで全自動でよい。前述のとおり乾燥も配慮した量の範囲で洗濯するようにする。
ドラム式はすべての工程において使用水量が少ないため、投入洗剤量を指定分に抑えないと残洗剤が過多となり濯ぎ不足状態となる可能性がある。
手回し式洗濯機
初期には、非電動洗濯機も存在した。洗濯物と水を球形の金属製洗濯槽に密閉して人力で回転させることで攪拌し洗浄する。構造的には現在のドラム式洗濯機に近い。現在でも少量の洗濯向けに「手動洗濯機」「簡易洗濯機」と称してわずかに生産されている。

撹拌方式

円筒型

槽の中に洗濯物が入った円筒のドラムを入れ、ドラムを回転させて洗濯する。ドラム式の元となった。

攪拌式

槽と同じ程度の高さのある大型の羽根をゆっくり反転させて水流を発生させる方式で、初期 - 1950年代まで利用されていたもの。構造的に大型となるため日本では業務用の一部に限られるが、アメリカでは現在も主流。 日本では1922年大正11年)年に初めて輸入され、1930年昭和5年)に東芝が国産初の電気洗濯機として製造。終戦直後は日本のメーカーも進駐軍向けに製造していたが、1947年昭和22年)に「日本人メイドの人件費が安く、しかも上手に手で洗ってくれる」という理由で納入が打ち切られた。これを契機に一般向けにも発売されたが、5万円以上(ローラー絞り器なし 当時の日本人の大卒初任給は22,000円)と非常に高価だったため普及しなかった。

パルセーター式(噴流式・渦巻き式)

洗濯槽にパルセータと呼ばれる羽根を持ち、それを高速回転させて激しい水流を発生させて汚れを落とす方式。1953(昭和28)年に出力100W以下の洗濯機が物品税の対象から外れたのを契機に、槽の側面にパルセータがある噴流式の開発が日本で盛んになった。しかし噴流式は洗濯物がよじれやて傷みやすかったり、洗濯物が多くても少なくても同じ水量が必要だったことから、1954(昭和29)年にパルセーターを底面に設置した渦巻き式が開発された。日本では渦巻き式が1960(昭和35)年から現在までの主流となっている。パルセータが大径口で乾燥機能が付くものは、タテ型(2000(平成12)年12月に松下電器、現パナソニックが発売)と呼ばれる。ごく初期のパルセータは小型のものが主流であったが、現在ではほぼ洗濯槽いっぱいの大きさとなっている。昭和 - 平成初期に建てられたアパートや賃貸マンションに住む者は洗面台の入り口が55cm - 59cmと狭小のため、室内にドラム式が設置できないことから、この渦巻き式を購入することが多い。 日本では1953年昭和28年)8月三洋電機が初めて製造。定価は28,500円(当時の大卒初任給は17,000円)と、比較的買いやすい値段だった。

からまん棒
日立製作所が1982年昭和57年)に開発した方式で、本来は同社の登録商標であったが、現在は使われていない。パルセータの軸部分を垂直に延長し、羽のついた攪拌棒を持たせた方式。名前から解るとおり、当初は衣類の絡みを抑止する目的で開発されたが、この意味ではあまり役立たなかった。その後、それまで手洗いに限定されていたおしゃれ着やウールの洗濯のできる機種が現れ始めると、電子制御と併用することで、従来のパルセータよりも一歩抜きん出た。欠点として、本体のサイズの割りに洗濯容量が小さくなる。この欠点のため、その後の家庭用洗濯機大容量化の波についていけなくなり、順次廃止され、通常の渦巻き式となった。
攪拌棒方式は他に三菱電機の「Mr.かくはん」が、また様式は異なるがパルセータ方式に攪拌式の特徴を取り入れた方式としては東芝の「最洗ターン」、三洋電機の「手もみL」が存在したが、いずれも現在までに廃止されている。
ビートウォッシュ
日立製作所が開発した方式。基本構造は渦巻き式と同様であるが、波状の形状をしたパルセータを洗濯物に直接接触させ洗濯する点が異なる。
二重噴流式
富士電機が開発した方式。洗濯槽側面に2個のパルセータを対面させるように配置し、洗濯能力を高めたもので、1954年W361型が発売された。対面している2個のパルセータは互いに回転軸を1cmほどずらすことで、洗濯物のよじれ、洗浄むらを防ぐ[30][31]。その性能は「暮しの手帖」も認めるほどであったという[32]
二重水流式
富士電機が開発した方式。洗濯槽底部に1個のパルセータを傾斜を付けて設置することで、洗濯水に噴流と上下振動を与え、高い洗濯性能にもかかわらず洗濯物を傷めない。1958年W261型が発売されている[33]

ドラム式(回転式)

横を向いた円筒状の洗濯槽を回転させ、洗濯物が上がっては落ちを繰り返すことにより叩き洗いをすることで汚れを落とす方式。ドラムの上底面から洗濯物を出し入れする。クリーニング店コインランドリーの洗濯機ではこの方式が良く使われている。洗濯物の傷みが少なく、水の使用量も少ない。ヨーロッパでは主流の方式。 重量が重いために家庭用では乾燥機付き洗濯機に限られる。また奥行きが大きいことから置き場所の考慮も必要である。 家庭用のサイズだと高温多湿で軟水の日本では脂肪を含んだ汗や泥汚れが充分に落ちづらいという点で不利。1950年代には日本でも製造されていたが、当時は家庭用としては主流とならなかったが、ポンプアップと電子制御を併用・ヒートポンプ式乾燥機能等を追加することで2000(平成12)年から日本でも普及し始めた。

斜めドラム式
パナソニックが開発した方式。従来の縦型に比べ使用水量及び衣類の傷みが少ない。最新機種の上位モデルは「エコナビ」も搭載している。なお東芝は発売には至らなかったが、1956(昭和31)年に日本初の傾斜ドラム式全自動洗濯機を開発している。
2011年秋モデルにおいては、パナソニック製洗濯機としては初めて「系列店(パナソニックショップ)限定モデル」が登場(第1号機は「NA-VX710SL/R」)。コース数が量販店兼用モデルより多く、掃除機に取り付けられる乾燥フィルター掃除用ノズルと(パナソニック以外の他社製掃除機に繋ぐ場合の)継ぎ手パイプ(アダプター)付属。その他仕様は量販店兼用モデルNA-VX7100L/Rと共通。さらにマンションなどの狭い空間にも設置可能な小型モデルも登場している。
トップオープンドラム式
回転軸が正面から見て水平で、ドラムの側面を開閉するような構造のドラム。ヨーロッパでは主流だが、日本では三洋電機と東芝のみが採用。2002(平成14)年に三洋電機が日本で初めて発売したが、三洋電機・東芝ともに2007(平成19)年までに廃止された。

振動式

洗濯物が浮き上がらないように上から蓋で押さえたうえで、洗濯槽の底にある振動板を高速で振動させて汚れを落とす方式。1950年代に発売したが、汚れの落ちが悪く振動がうるさいため全く普及しなかった。

技術

制振鋼板
脱水時のモータの振動と外箱の共鳴を抑えるため、鉄板と鉄板の間にポリエステル樹脂などを挟んだ鋼板。
ニューロファジー
洗濯の制御を行うマイコンの動作に使われていたキャッチフレーズ。
直流インバーター制御
直流モータの電圧をインバーターで調整することによって回転速度を変える制御方式。1990年に東芝が発売。それ以前はギアを使って交流モーターの回転速度を調整していたため、それが騒音源の一つになっていた。
ダイレクトドライブ
インバーター制御の直流モーターとパルセータを直結し、モーターとパルセータの間にあった駆動用ベルトをなくして低騒音化をはかったもの。1991年に三菱電機が全自動洗濯機AW-A80V1として発売。1997年に東芝がアウトローター方式のダイレクトドライブインバーターモータを採用した洗濯機を発売し、モーターを小型化し低騒音化(洗濯時に約40db)した。

洗濯の過程

注水

  • 一般には水道に給水ホースを直結させて水道水を利用するが、井戸水や風呂の残り湯などが利用される場合もある。
  • 水道水を利用する場合には水栓が開いている必要がある。電気洗濯機では自動で注水し洗濯物の分量に合わせて水量も自動制御されるものが多い。
  • 風呂の残り湯を利用する場合には一般には注水ポンプが用いられる。注水ポンプは、主に節水を目的として風呂の残り湯などを洗濯(すすぎには水道水を使う)に使うためのポンプで、風呂水ホース付属機種は、ホースの先端にポンプがある機種と、洗濯機本体にポンプを内蔵している機種に分かれる。

洗い

  • 色移り等を防ぐために洗濯前に衣類の分類が必要な場合がある。
  • しみ抜きなど前処理が必要な場合がある。
  • 洗濯機に定められた適量の洗剤を投入する。
  • 予洗いの機能を有するものもある。

すすぎ

  • この過程で洗剤を落とす。
  • この過程で汚れが洗濯槽に汚れが蓄積しないよう毎回自動で槽洗浄を行う機能を有するものもある。

脱水

  • 二槽式の場合には脱水槽へ衣類を移す必要がある。
  • かつては外付けのローラー絞り機が用いられていたこともあるが、電気洗濯機の多くは遠心脱水が主流となっている。
    • ローラー絞り機
      2本のゴムローラーの間に洗濯物をはさんでハンドルを回して洗濯物を絞るもの。厚さが均一でない場合は完全に脱水ができず、なおかつ衣服のボタンが割れることもあった。手回し式洗濯機・初期の電気洗濯機で使われた。
    • 遠心脱水機
      槽を回転させて、遠心力により洗濯物の水分を振り切って脱水する。1874年にRobert Pilkingtonが手動回転式を、1903年にW.L. Dolierが電気駆動式を発明。二槽式洗濯機で洗濯機本体に組み込まれる。現在の主流。

乾燥

  • 乾燥機能を有するものもあり、遠心脱水では飛ばしきれなかった水分を乾燥させる。
  • 乾燥装置の汚れを少量の水を使いながら自動で取り除く機能を持つものもあるが、これらの機種では乾燥過程でも水栓が開いている必要がある。

注意点

ファイル:Accidentally washed guide book.jpg
書籍を洗ってしまった場合
感電の防止
洗濯機を設置する際には、確実にアース(接地)をしておく必要がある。
幼児の落下
洗濯槽に水がたまっている場合には、幼児の落下に注意を要する。幼児の落下に備えて、運転中に蓋を開けるとブザーが鳴り続け、蓋が開いた状態が一定時間継続すると洗濯槽内の水を強制的に排水する機能をもつもの、または運転中は蓋がロックされ開けることができないものもある。
洗濯槽の定期的な洗浄
洗濯槽は定期的に専用クリーナーなどの洗浄剤を用いて洗浄することが望ましい。
放り込む前にポケットなどを確認
ティッシュ携帯電話スマホ紙幣などを気づかずに洗ってしまう恐れもある[34]ので、常に確認することが好ましい。

ギャラリー

日本国内の洗濯機メーカー

現在生産中

斜めドラム型は系列店「パナソニックショップ」限定モデルも2011年より「NA-VX710SL/SR」を皮切りに販売開始。なお2槽式の現行モデルはダイヤル操作式の「NA-W40G2」のみで、ボタン操作の2槽式洗濯機「愛妻号」シリーズは生産終了。またバスポンプも製造(現行モデルは「N-30P」のみ)。
日立製作所の子会社。2012年12月より縦型洗濯機「白い約束」NW-8SY/6SYのOEMモデルとなる三菱電機ストアー向け縦型洗濯機「MAW-70AP/60AP」も生産開始。
2槽式洗濯機の生産は2007年限りで終了し、現在はドラム式及び縦型洗濯乾燥機のみを生産。
パナソニックの完全子会社となった三洋電機の洗濯機事業を継承。

生産より撤退

業界初のドラム角度可変機能付き洗濯乾燥機「ムービングドラム」シリーズを2007年5月に発売したが、不具合によるリコール続出のため発売からわずか3ヶ月で製造中止に追い込まれ、これに出荷台数の落ち込みも加わって洗濯機事業全体の赤字が膨らんだ事から、洗濯機の自社生産は2008年12月限りで終了。現在は系列店「三菱電機ストアー」のみで販売される縦型2機種「MAW-70AP/60AP」のみを日立アプライアンスへ生産委託する形で販売。
子会社「三洋アクア」が洗濯機を生産していたが、パナソニックの完全子会社化に伴う「SANYO」商標廃止により2011年9月限りで生産終了。三洋の洗濯機事業は中国の家電メーカー「ハイアール」へ売却され、三洋時代からの「AQUA」ブランドはハイアール製品へ継承。

関連項目

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参考文献

  • 「家庭電化製品それぞれの戦後史」『家電製品にみる暮らしの戦後史』久保道正、ミリオン書房、1991年。ISBN 4-943948-46-4
  • 『電気洗濯機100年の歴史』大西正幸、技報堂出版、2008年。ISBN 978-4-7655-4461-0。

脚注

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外部リンク

  • 「せんたっき」と発音することが多く、日本語入力システムでも概ね「せんたっき」で変換できる。
  • 後述のように諸説があり、1906年のT.J. Winansの特許(特許図面にはプーリーはあるが動力源が書かれていない 1907年に1900Co. Nineteen Hundred Washer Company、現Whirlpool Co.から発売)、1908年のOliver B. Woodrowの特許(特許請求の範囲は「モーターあるいはその他の動力源を備えた洗濯機」)、1910年のAlva J. Fisherの特許(1908年にHurley Machine Companyから「Thor」として発売)がある。
  • Hurley Machine Companyから技術導入をして開発された
  • 4.0 4.1 東芝一号機ものがたり「1930年 わが国初の電気洗濯機」 東芝科学館
  • 洗濯機「初」物語 1950年代 三洋電機公式
  • 三洋電機は二槽式洗濯機に至るまですべて日本製を貫いている。
  • テンプレート:Cite web
  • 内閣府経済社会総合研究所景気統計部 「消費動向調査(全国、月次) 平成21年3月実施調査結果」 2009年4月17日
  • かわいさんちの手作りコロッケおいしさの秘密
  • タコの茹で方
  • 洗剤の力 - 酵素の科学 第3回松柏軒バイオカフェ、くらしとバイオプラザ21
  • Mothers and Daughters of Invention: Notes for a Revised History of Technology, Autumn Stanley, Rutgers University Press, 1995, p. 301
  • Die bequeme und höchstvortheilhafte Waschmaschine Deuches Museum
  • Mario Theriault, Great Maritme Inventions 1833-1950, Goose Lane, 2001, p. 28
  • 1919年の洗濯工場の図。水平型の洗濯機と垂直型の脱水機が見える。 -- Don't Waste Waste, Popular Science monthly, January 1919, page 73, Scanned by Google Books: http://books.google.com/books?id=HykDAAAAMBAJ&pg=PA73
  • "Electric Washing Machine the Latest. Housewives can do Washing in one-third the Time," Des Moines Daily Capitol, November 12, 1904, p. 13.
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  • テンプレート:US patent など
  • テンプレート:US patent
  • http://www.oldewash.com/cf/images/IMAGES/327.jpg
  • Ûniversity University of Leeds creating a washing machine that needs but 2% of the water/electricity requirements of a conventional washing machine
  • Vatican’s praise for washing machine. The Hindu. 10 March 2009.
  • ただのバケツじゃありま洗(せん) N-BK2 ASCII24 2001年6月20日、など
  • 家電製品ミニレビュー/トーマス「高速脱水機」 家電Watch(Impress Watch)2008年1月10日、家電製品ミニレビュー/ソメラ「高速脱水機 C-14LSS」 家電Watch(Impress Watch)2007年11月14日、など
  • 洗濯機「初」物語 1960年代 三洋電機公式
  • 全自動タイプは洗濯槽と一体の為遠心力が弱く脱水時間が長い(3分から10分程度の時間を要する)事に対して、二層式の脱水槽は遠心力が高く短時間(1分から2分)で脱水が完了しやすい
  • 洗濯漕の回転方向を頻繁に反転する全自動式では反転時に遠心力で洗濯物が漕にぶつかり、叩き洗いの効果が得られるが、二槽式は数秒間一定方向に回転し、回転を止めてから反転するため、この効果は得られない
  • 28.0 28.1 洗濯機/衣類乾燥機の歴史 パナソニック公式
  • テンプレート:PDFlink 国民生活センター
  • 佐々木洋一郎「新型電機洗濯機(W361型)」『富士時報 第27巻 第4号』富士電機、1954年、77 - 78ページ。
  • 定石照夫「普及型二重噴流式電機洗濯機について」『富士時報 第28巻 第2号』富士電機、1955年、34 - 40ページ。
  • 家庭用品」『富士時報 第36巻 第1号』富士電機、1963年、110ページ。
  • 佐々木洋一郎「二重水流式W261型電機洗濯機」『富士時報 第31巻 第2号』富士電機、1958年、76 - 77ページ。
  • 11 Common Laundry Mistakes - Eco Nuts Organic Soap Nuts