泡坂妻夫

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:Infobox 作家 泡坂 妻夫(あわさか つまお、1933年5月9日 - 2009年2月3日)は日本推理作家小説家東京都出身。東京都立九段高等学校卒。筆名の"泡"の旁は正しくは"己"ではなく"巳"。本名は厚川 昌男(あつかわ まさお)。筆名は本名のアナグラムである。

経歴

東京・神田で「松葉屋」の屋号を持つ紋章上絵師の家に生まれ、約5年の会社勤めを経て家業を継いで絵師として働くかたわら、幻影城新人賞に応募した短篇「DL2号機事件」が佳作入選して1976年に作家デビューした[1]

その逆説を多用する作風から「日本のチェスタトン」と呼ばれた。また、劇中で用いられているトリックのタネを書籍自体に施した『しあわせの書』や、袋綴じされているページを切り開くと内容が変化する『生者と死者』など、紙媒体でしか成立しない仕掛けを施した[2]、遊び心と技巧が一体となった作品がある。 文章中に繰り返し符号「々」を使用しないことが知られている[3]

作中で活躍する探偵役としては、亜愛一郎曾我佳城、ヨギガンジー等。作品世界はすべて繋がっているらしく、ある作品の登場人物が別シリーズの作品にチラリと登場したり、時代小説にも先祖らしき人物が現れたりする。シリーズを終了させる際にパーティ場面を設定して、これまでの全主要人物が一堂に会する恒例のパターンなど、こまかな遊びがファンを喜ばせている。

また、泉鏡花賞を受賞した「折鶴」、直木賞を受賞した「蔭桔梗」などは、職人の世界を舞台にした「人情もの」小説である。

奇術愛好家兼奇術師としても有名であり、1968年に第2回石田天海賞を受賞している。また、自身の名を冠した奇術の賞に厚川昌男賞がある。

作家活動と並行して家業の紋章上絵師の仕事も続け、その経験・知識から、家紋についての本も著している。

2009年2月3日、急性大動脈解離のため東京都内の病院で75歳で他界した。15年ぶりのシリーズ再開で、死の前日まで執筆した『ヨギガンジー、最後の妖術』が絶筆となった[4]

受賞

作品リスト

亜愛一郎シリーズ

  • 亜愛一郎の狼狽 (1978年5月)
  • 亜愛一郎の転倒 (1982年7月)
  • 亜愛一郎の逃亡 (1984年12月)

テレビ東京水曜ミステリー9」枠でテレビドラマ化された。 テンプレート:Main

曾我佳城シリーズ

  • 天井のとらんぷ (1983年6月)
  • 花火と銃声 (1988年6月)
  • 奇術探偵 曾我佳城全集 (2000年6月)
    • 上2冊の合本+数編の短編(本シリーズの完結編となる短編を含む)
  • 奇術探偵 曾我佳城全集(秘の巻) (2003年6月)
  • 奇術探偵 曾我佳城全集(戯の巻) (2003年6月)

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ヨギ ガンジーシリーズ

  • ヨギ ガンジーの妖術 (1984年1月) ※連作短編集
  • しあわせの書〜迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術 (1987年7月)
  • 生者と死者〜酩探偵ヨギ ガンジーの透視術 (1994年11月)

海方・小湊シリーズ

  • 死者の輪舞 (1985.5)
  • 毒薬の輪舞 (1990.4)

宝引の辰捕者帳

  • 鬼女の鱗 (1988.3)
  • 自来也小町 (1994.6)
  • 凧をみる武士 (1995.5)
  • 朱房の鷹 (1999.4)
  • 鳥居の赤兵衛 (2004.8)
  • 織姫かえる (2008.8)

NHK金曜時代劇枠でテレビドラマ化された。

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夢裡庵先生捕物帳

  • びいどろの筆 (1989.1)
  • からくり富 (1996.5)
  • 飛奴 (2002.10)

その他の長編

  • 11枚のトランプ(とらんぷ)幻影城(1976.10)のち角川文庫、双葉文庫、創元推理文庫  
  • 乱れからくり 幻影城(1977.12)のち角川文庫、双葉文庫、創元推理文庫   
  • 湖底のまつり 幻影城(1978.11)のち角川文庫、双葉文庫、創元推理文庫   
  • 花嫁のさけび 講談社(1980.1)のち文庫、ハルキ文庫  
  • 迷蝶の島 文藝春秋(1980.12)のち文庫 
  • 喜劇悲奇劇 角川ノベルス(1982.5)のち文庫、ハルキ文庫  
  • 妖女のねむり 新潮社(1983.7)のち文庫、ハルキ文庫  
  • 花嫁は二度眠る 光文社(1984.4)のち文庫 
  • 猫女 双葉社(1985.12)のち文庫 
  • 斜光 角川ノベルス(1988.7)のち文庫、扶桑社文庫  
  • 黒き舞楽 白水社(1990.3)のち新潮文庫  
  • 旋風 集英社(1992.5)のち文庫 
  • 写楽百面相 新潮社(1993.7)のち文庫、文春文庫  
  • 弓形の月 双葉社(1994.4)のち文庫 
  • からくり東海道 光文社(1996.9)のち文庫 
  • 春のとなり 南雲堂(2006.4)

短編集

  • 煙の殺意 講談社(1980.11)のち文庫、創元推理文庫  
  • ゆきなだれ 文藝春秋(1985.2)のち文庫 
  • ダイヤル7をまわす時 光文社(1985.12)のち文庫 
  • 妖盗S79号 文藝春秋(1987.7)※連作短編集 のち文庫 
  • 奇跡の男 光文社(1988.2)のち文庫 
  • 折鶴 文藝春秋(1988.3)のち文庫 
  • 蔭桔梗 新潮社(1990.2)のち文庫 
  • 砂のアラベスク 文藝春秋(1990.10)のち文庫 
  • ぼくたちの太陽 光文社(1991.1)⇒改題「雨女」文庫 
  • 夢の密室 光文社(1993.8)のち文庫 
  • 恋路吟行 集英社(1993.10)のち文庫 
  • 泡坂妻夫の怖い話 新潮社(1995.5)のち文庫 
  • 砂時計 光文社(1996.12)のち文庫 
  • 亜智一郎の恐慌 双葉社(1997.12)※連作短編集 のち文庫、創元推理文庫  
  • 鬼子母像 祥伝社(1998.12)のち光文社文庫 
  • 泡亭の一夜 新潮社(1999.10)のち文庫 ※新作落語集とエッセイ
  • 比翼 光文社(2001.2)のち文庫 
  • 蚊取湖殺人事件 光文社文庫(2005.3)
  • 揚羽蝶 徳間書店(2006.11)
  • トリュフとトナカイ 岩崎書店 2006.1

小説以外の著作

  • 秘文字(1979.02)※3人の作家(泡坂と中井英夫日影丈吉)による書き下ろし短編の全文を、暗号化した作品集。最初のバージョンでは、暗号化以前の平文(原文)は収録されていなかった。泡坂の提供作「かげろう飛車」の原文は、後に扶桑社文庫版「斜光」に初収録された。
  • トリック交響曲 時事通信社 (1981.2)※エッセイ集 のち文春文庫 
  • 魔術館の一夜 社会思想社 (1983.2)※奇術ショートショート集 のち現代教養文庫 
  • ミステリーでも奇術でも 文藝春秋(1989.10)※エッセイ集 のち文庫 
  • 日本の名随筆 別巻7 奇術(編纂)作品社 1991
  • 家紋の話 上絵師が語る紋章の美 新潮選書(1997.11)※エッセイ
  • 大江戸奇術考 手妻・からくり・見立ての世界 平凡社新書(2001.4)※奇術エッセイ集
  • 泡坂妻夫 マジックの世界 東京堂出版(2006.12)※創作マジック集
  • 卍の魔力、巴の呪力 家紋おもしろ語り 新潮選書(2008.4)

海外への翻訳

中国(簡化字)

  • 亚爱一郎的狼狈 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-亜愛一郎の狼狽
  • 亚爱一郎的忙乱 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-亜愛一郎の転倒
  • 亚爱一郎的逃亡 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-亜愛一郎の逃亡
  • 奇术侦探曾我佳城・秘之卷 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-奇術探偵 曾我佳城全集(秘の巻)
  • 奇术侦探曾我佳城・戏之卷 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-奇術探偵 曾我佳城全集(戯の巻)
  • 十一张牌 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-11枚のトランプ
  • 失控的玩具 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-乱れからくり
  • 湖底的祭典 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-湖底のまつり
  • 荫桔梗 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司)-蔭桔梗

台湾(正体字)

  • 蔭桔梗 (1991年、皇冠文化、 許珀理訳)-蔭桔梗
  • 失控的玩具 (1999年、台灣英文雜誌社有限公司、刘子倩訳)-乱れからくり
  • 亞愛一郎的狼狽 (2010年1月、獨步文化、王華懋訳、ISBN 9789866562433)-亜愛一郎の狼狽
  • 亞愛一郎的慌乱 (2010年9月、獨步文化、王華懋訳、ISBN 9789866562655)-亜愛一郎の転倒
  • 亞愛一郎的逃亡 (2011年4月、獨步文化、王華懋訳、ISBN 9789866562914)-亜愛一郎の逃亡
  • 11張撲克牌 (2011年9月、獨步文化、王華懋訳、ISBN 9789866562990)-11枚のトランプ
  • 幸福之書:迷偵探約吉・甘地之心靈術 (2010年10月、新雨出版社、張嘉芬訳、ISBN 9789862270752)-しあわせの書〜迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術

大韓民国

  • 아 아이이치로의 낭패 (2010年7月、出版:シゴンサ(Sigongsa)、訳:クォン・ヨンジュ、ISBN 9788952758743) - 亜愛一郎の狼狽

出典

  1. 直木賞の泡坂妻夫さんが死去 紋章上絵師の顔も 共同通信 2009年2月4日
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. オール讀物』2009年4月号、p.418。