池田菊苗

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池田 菊苗(いけだ きくなえ、1864年10月8日元治元年9月8日) - 1936年5月3日)は、戦前日本化学者。東京帝国大学(現東京大学)理学部化学科教授。「日本の十大発明」のひとつといわれるうま味成分、L-グルタミン酸ナトリウムの発見者として知られる[1]

概要

現在、世界中で広く普及しているうま味調味料の発見者で、その成分はL-グルタミン酸ナトリウム(2-アミノペンタン二酸,HOOC(CH2)2CH(NH2)OOH)であることを解明した。幼少期より昆布だしに関心を持ち、湯豆腐のだし汁昆布の研究に着手。1907年に約38 kgの昆布から煮汁をとり、うま味の素であるL-グルタミン酸ナトリウム約30 gを得ることに成功。1908年4月24日には「グルタミン酸を主要成分とせる調味料製造法」に関する特許を出願し、3か月後の7月25日に特許登録された。池田から事業経営を任された鈴木三郎助(当時鈴木製薬所代表)により、「味の素」という商品名を付けられ、製造販売。その後、味の素株式会社へと発展した[1]

甘味酸味、塩味、苦味に次ぐ第五のとされる「うま味」の存在に関しては長く学界で議論されてきたが、その後、舌の味蕾に存在する感覚細胞にグルタミン酸受容体が発見されたことから味覚のひとつとして認められるようになり、日本語のUMAMIのままで世界に通用するようになった。その後さらに、消化器官にも受容体があることが明らかにされ、にうま味が入ると、消化を促進する効果があるとする生理学的学説が示されている。[1]

来歴・人物

1864年薩摩藩士池田春苗の次男として京都で出生する。京都府中学大学予備門を経て、1880年から大阪衛生試験所で化学を学ぶ。

1889年帝国大学理科大学化学科(現東京大学理学部化学科)卒業、大学院へ進学する。

1891年高等師範学校教授となる。

1896年、東京帝国大学理科大学化学科の助教授となる。

1899年より、物理化学研究のためにドイツライプツィヒ大学オストワルド研究室に1年半留学する。

1901年5月から10月までロンドンに滞在。夏目漱石と同じ下宿に住み、以降親交を持つ。帰国後、東京帝国大学教授に昇進。

1902年理学博士の学位を取得。

1907年、酸甘塩苦の4基本味以外の味成分を「うま味」と名づけ、単離研究に着手。昆布の旨み成分がグルタミン酸ナトリウムであることを発見し、翌1908年にグルタミン酸ナトリウムを主成分とする調味料の製造方法を発明し特許を取得。1909年5月、うまみ調味料味の素」が鈴木製薬所(現味の素株式会社)から発売された。本人はグルタミン酸を、「具留多味酸」と表記した。

1913年日本化学会会長。

1917年理化学研究所の創立に参加(同化学部長)。

1919年帝国学士院会員に任命される。

1923年、東京帝国大学を退職。

高弟に鰹節のうま味成分であるイノシン酸を発見した小玉新太郎がいる。

その他

  • 1907年に約38kgの煮汁を取り出した際に、昆布を煮詰めるために用いられた英国製の大蒸発皿は、当時の貴重な資料として、その後も池田教授から鮫島教授、赤松教授、黒田教授、太田教授へと受け継がれ、現在も東京大学大学院・理学系研究科研究室にある[1]

参考文献

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 東京大学大学院 理学系研究科・理学部公式サイト「うま味の発見と池田菊苗教授」大越慎一化学専攻教授

関連項目

外部リンク