求人

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求人(きゅうじん)は、労働力となる者を収集するために行う告知、及び雇用契約の誘引行為のことである。対義語は「求職」。

以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。

概要

一般に、企業団体など事業者が、雇用したいとする者を、一般の市民学校卒業見込みの者を含む)から募集することを指す。正社員アルバイトパートタイマーなど、雇用形態についても、労働条件と共に募集する際に明示する。

企業などの事業の展開により、人手が足りなくなることがある。軽微な場合は現有スタッフの勤務時間の増加(残業)などで補うことが多いが、実質的に限度があり、また、労働基準法に基づく労使協定(いわゆる36協定)で定める上限時間を超えることはできない。あるいは、定年退職による欠員の補充、また、事業内容によっては特定分野の能力(スキル)を持った者を必要とすることもある。

以上のような場合に、事業者は労働力もしくは一定のスキル・ノウハウの確保のために、労働者の雇用の必要性が生じるのである。

年齢制限の撤廃

求人における年齢制限については、2007年10月1日付施行の改正雇用対策法によって、基本的に禁止となった。ただし、実態として企業は募集時は年齢制限を設けていなくても、書類選考や面接といった採用の段階で実質的に年齢制限をかける事例が多く見受けられ、法改正後もこうした年齢制限が残る可能性が指摘されている[1]

求人手段

求める人(労働者)の職種によって、求人方法は異なっている[2]。一般的なものとしてはハローワーク職業紹介所、インターネット媒体や紙媒体などがある。

歴史

日本では、次のような求人手段が用いられてきた経緯がある。

かつてはもっぱら新聞を用いた告知が主力として用いられた。また比較的安価な労働力などに関しては、新聞折り込みチラシなどの募集も行われた。ポスターで告知が行われることもあった。公共職業安定所(ハローワーク)に求人情報を提出し、求職者の内に直接紹介してもらう方法もあった。また大学や専門学校などの学校の就職担当部門に募集要項を届け掲示してもらい、卒業予定者を内定者として獲得する手法もあった。アルバイト募集(アルバイト求人)に関しては学生援護会という組織に依頼すると同施設内の壁に掲示され、学生が応募してくれた。病院が医師の求人を行う場合は医局に依頼を出した。家政婦に関しては家政婦紹介所というものがあった。

日本では1980年代になると欧米のエージェンシーに似た業者が出現した。企業のマネジメント層、財務M&A法律関連などに詳しい特殊な能力を有する人物、特定分野の高度な技術を持つ人が必要な場合、職業紹介会社やスカウター(いわゆる「ヘッドハンター」)に依頼して探し、採用するようになったのである。これはやがて職業紹介事業として法整備されるようになり、現在でも行われている。テンプレート:Main

1980年ごろから有料の求人情報雑誌が登場した。リクルート社が発行する「ビーイング」はやがて求人方法の代表のひとつとなった。また「とらばーゆ」、学生援護会の「デューダ」「サリダ」などが発行された。相当な件数が掲載され、ビーイングなどは数百ページにも及ぶ案件を掲載していた。(が、2000年ころになると、インターネットの普及にインターネット経由での求人が増えるにつれて、発刊部数が減少、掲載案件数も減少し、各紙の休刊があいついだ)

また、大規模な就職説明会(就職フェア、転職フェア、求人イベント)も開催されるようになった。(規模の大きな会場[3]に複数の求人企業が出展し、人事担当者は企業や仕事について求職者に直接説明し、また求職者も企業担当者から直接情報収集することができる。

やがて求人専門の無料の冊子(フリーペーパー[4]が全国各地の主要鉄道駅書店等で無料配布されるようになり、アルバイトや安価な労働の求人はそこで行われる率が増えた。

2000年以降、ブロードバンドインターネット接続の普及によってインターネットの常時接続が一般化すると、自社ウェブサイトでの求人や求人・求職専門ウェブサイト(いわゆる求人ポータル)を使った求人が増えてきた。

情報誌の無料化が進行するのと並行的に、インターネット上の求人情報発信は増加の一途をたどった。もともと求人情報誌の老舗であったリクルート社の「リクナビ」をはじめ、企業がハローワークに申請・登録した求人情報を求職者が検索できる「ハローワークインターネットサービス」などのインターネット求人情報サービスが2000年頃から開始した。また、各社の自社サイトに掲載された求人情報をロボットでかき集めてリスト化して表示する検索エンジン型無料求人サイトも登場した。[5]

また、インターネット上には「求人情報掲示板」もある。これは誰でも無料で求人情報を掲示できるもので、「スキン」という技術を用いて、投稿内容を自由にデザインできるものである。

求人に係わる法規制

いわゆる求人広告による求人は、職業安定法64条に該当する犯罪(1年以下の懲役)を助長する行為となる恐れがある。また、求人業者による中間搾取(労働者基準法6条違反、1年以下の懲役)を助長する犯罪となるリスクが存在する。

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過去に労働省(現厚生労働省)が求人広告による求人の規制に動いた際にリクルート事件が発生し、収賄による当時の事務次官、課長が逮捕されることになった。

合法的に求人を斡旋できる事業者
  1. 公共職業安定所
  2. 高校・大学の無料職業紹介事業(許可制)
  3. 労働組合が斡旋する無料職業紹介事業(許可制)
  4. 有料職業紹介事業(許可制)

違法な求人による社会的影響

インターネットや求人誌を通じた求人形態は、職業の紹介・斡旋となる可能性が高く、違法性・ILO条約違反については、リクルート事件の発生原因となったように度々指摘されることがある。斡旋ということになれば中間搾取(労働基準法6条違反、中間搾取の排除)にあたるため、国内で求人広告をみて応募した労働者の多くが中間搾取つまり刑事事件の被害者となる。

無料の職業紹介においてもハローワークにおいても、労働基準法に違反する犯罪企業(いわゆるブラック企業)や派遣会社が求人をだすなど、公共・民間を全て含めた日本の労働市場への不信や不満が非正規労働者などの経済的弱者のなかで高まりつつある。

行政・司法への不信による社会問題化

違法な求人広告等の違法行為の被害者として憲法において保全されるはずの権利である給料が中間搾取され、ストなどの団結権や団体交渉権も有名無実化し、派遣社員・非正規労働者・失業者のなかでは法治国家への不信が増大しているとの議論が存在するが、国家に絶望した者がテロに走るなどと秋葉原事件と五・一五事件二・二六事件らの昭和維新、「一殺多生」を謳い三井財閥総帥を殺害した血盟団事件(後に議員となった菱沼や、殺人罪の刑を受けた四元義隆は戦後政界の黒幕的存在となるなど、団員は社会的成功をおさめる)を結びつける刺激的な見解が言論界では存在する。

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元厚生事務次官宅連続襲撃事件では、

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とし、厚生労働省内でもテロとの見方があったことを報道している。事件の控訴審では「被告人の動機は動物の殺処分に限らず、国家行政への怒りや不満から元官僚らに対する殺意を抱いたことにある。被告人が主張する動機である『愛犬のあだ討ち』については、公判で無罪を主張する計画の中で口実として脚色した疑いが強く、重視するのは適切でない」と判決がでており、メディアが根拠なくテロと煽ったとのイメージには誤りがある。一部のメディアの取り上げかたとして秋葉原事件も元次官殺人も犯人の動機は国への怒りや不満であり、それが国家の崩壊につながるとの見方である。日刊ゲンダイでは、秋葉原事件を国家が生み出した人間扱いされないものたちの反抗と位置づけ、

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などと小泉政権(当時)を痛烈に批判した。

違法求人広告会社による中間搾取の犯罪被害者は20~40歳程度の若年・中年層が過半数を占めており、人口構成上、公共の治安への影響力はきわめて強いといえる。被害者のなかで行政(厚生労働省・労働局・労働基準監督署)および司法作用(検察庁、司法警察職員)に対しての不信や怒りが高まれば、大きな社会不安をおこす可能性がある。

違法な求人広告は違反行為が単純かつ、該当する範囲が広範であり、告訴・告発で必要な証拠収集が問題とはなりえない。行政や司法(作用)が違法求人の立証成否の可能性を考慮して告訴・告発を受理しないとすれば怠慢であり、法律に反した行政・司法(作用)の運用がなされているといえる。数百万の若年層の非正規労働者や失業者が行政(厚生労働省、労働局、労働基準監督署)や司法作用(検察庁、司法警察職員)が、違法な求人広告を悪用した搾取を容認・奨励して基本的人権を脅かしていると解釈することになれば、法秩序は大きく損なわれることになる。

関連

脚注

  1. 2007年9月23日付配信 読売新聞
  2. 例えば、マネジメント層の求人などは基本的にフリーペーパーなどでは行われない。ヘッドハンターなどを介して行われる。
  3. 例 - 東京では東京国際フォーラムなど
  4. 例 - ジョブアイデムアイデム社)、タウンワークリクルート社)、アルバイトニュース学生援護会)など
  5. 注 - 検索エンジン型求人サイトは、ロボットが各社の自社サイトに掲載した求人情報を自動収集し、解析したデータを求人情報として提供しているため、従来の求人ポータルと比較すると圧倒的に情報量が多いことが特徴であるが、古い情報もそのまま掲載されたり、掲載情報の責任者が不明確な場合がある。