比例代表制

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
比例区から転送)
移動先: 案内検索

テンプレート:選挙方式 比例代表制(ひれいだいひょうせい)は、現代議会制民主主義における代表的な選挙制度の一つ。

概要

テンプレート:未検証 テンプレート:独自研究

比例代表制は、政党の得票率に比例して議席配分を決定する、または得票率に比例して候補者の当選順位を決定する選挙制度である。このため政党名簿を用いる方式(政党名簿比例代表)が一般的だが、単記移譲式投票等の、政党名簿を用いず候補者個人を選択する制度も比例代表制として認知されている[1]。対立概念としては多数代表制がある。

相対多数派を優遇し死票を大量に発生させる「小選挙区制」の対極にあり、有権者の民意を最大限正確に立法府に反映させる制度である。死票が少ない全国区ブロック制道州制のような大選挙区が前提になるため、一票の格差による定数是正の必要が比較的少ない。

小選挙区制が大政党、特に二大政党に有利な選挙制度であるのに対して、比例代表制は全ての政党に、その得票率に比例した議席を与える。つまり二大政党制が必ずしも議会制民主主義の最善の形とは言えないということを前提にしている。これを政党乱立(政局不安定化)と解釈するか、より民主的な制度(専制への予防)と捉えるかで立場が分かれる。

比例代表制への批判としては、選挙民から候補者を選べないという不満が出やすい(拘束名簿式の場合)、同じくらいの力をもつ中規模政党が複数ある場合に各政党間に政策の一致がないと政争によって政局が不安定になりうる、強力な政権を生み出しにくい、などがある。但し比例代表制であっても、非拘束名簿式や小選挙区比例代表併用制等の方式では、個人単位で候補者を選択できる。

これに対して比例代表制を肯定する立場からは、政策重視型の政治を実現できる(政党比例代表の場合)、候補者と選挙民との個人的癒着が起こりにくい(拘束名簿式の場合)、多数代表制・二大政党制は実際には絶対少数派意見に基づく専制政治をもたらす(個々にはより少数である多様な諸意見が不当に封じられる)ため比例代表制の方がシステムとして安全である、そもそも民意が議席に正確に反映されることは民主主義にとって最大の利点である、等が指摘される。

採用している国・地域

政党名簿比例代表

小選挙区比例代表併用制

単記移譲式投票

小選挙区比例代表並立制

沿革

比例代表制は、19世紀前半にトーマス・ライト・ヒルによって考案され、ジョン・スチュアート・ミルがイギリスでの実施を訴えたことでその考えが広まった。単記移譲式投票は1857年にデンマークで初めて採用され、最古の比例代表制となっているが、デンマークでは本格的に普及しなかった。単記移譲式はイギリスで(独自に)再考案されたが、イギリス議会はそれを退けた。しかし、タスマニア州で1907年に採用されると、そこから広がっていった。単票移譲式はアイルランド共和国で1919年より使用されている。

政党名簿比例代表は、19世紀後半にベルギーヴィクトル・ドントによって考案された。空想的社会主義者ヴィクトール・コンシデランもこの制度を1892年の著書で考案した。スイスのいくつかのカントン(1890年のティチーノ州が最初)で採用された後、ベルギーが国として初めて1900年の国政選挙で採用した。類似した制度が第一次世界大戦の間とその後にかけて多くのヨーロッパ諸国で施行された。

選挙方法

比例代表は、いくつかバリエーションがあるが、政党を立候補単位とした選挙を基本とし、各政党が立候補者の名前を並べた「立候補者名簿」を事前に提出し、政党の得票数に比例して政党ごとの当選者数を決定する制度が基本である。このため、政党名簿比例代表とも呼ばれる。
政党名簿比例代表では無所属の立候補は形式的に不可能であるが、立候補者数1人の立候補者名簿を提出することで認める場合もある。

政党名簿比例代表は、以下の手順で行われ、それぞれにバリエーションが存在する。

  1. 立候補者名簿内での事前順位付け
  2. 有権者の投票方法
  3. 各政党の得票数の集計
  4. 各政党の当選者数の計算
  5. 当選者の決定


立候補者名簿内での事前順位付け

立候補者名簿内での事前順位付けには、立候補者名簿を届け出る段階で、立候補者に順位を付けている「拘束名簿式」と、順位付けしない「非拘束名簿式」に大別される。
拘束名簿式は、順位付けの程度によって、さらに「厳正拘束名簿式」、「単純拘束名簿式」に区別される。

拘束名簿式
厳正拘束名簿式
詳しくは厳正拘束名簿式を参照。
厳正拘束名簿式では、立候補者名簿に重複なく順位が記載されている。


単純拘束名簿式
単純拘束名簿式では、立候補者名簿に立候補者ごとに順位が記載される。運用するルールによって重複する順位を付与することがある。


非拘束名簿式
詳しくは非拘束名簿式を参照。
非拘束名簿式では、立候補者名簿に順位を記載しない。

有権者の投票方法

有権者は、支持する(当選者を増やしたい)政党に投票する。

拘束名簿式
拘束名簿式では、政党を指定して投票する。
投票用紙に政党名を記入するか、あらかじめ印刷された選択肢の中から政党に印を付けて投票する。
非拘束名簿式
非拘束名簿式では、政党または立候補者いずれを指定して投票する。
投票用紙に政党名または立候補者名を記入するか、あらかじめ印刷された選択肢の中から政党または立候補者に印を付けて投票する。

拘束名簿式、非拘束名簿式のいずれの場合も、有権者が名簿を書き換えたり、順位を変更したりして投票を認める国も存在する。

各政党の得票数の集計

有権者の投票は、各政党の得票として集計する。

拘束名簿式
拘束名簿式では、票で指定された政党に1票の得票としてを集計する。
非拘束名簿式
投票を以下にわけて集計し、合算する。
票の指定が政党の場合、その政党の1票の得票とする。
票の指定が立候補者の場合、その立候補者の所属政党の1票の得票とする。

各政党の当選者数の計算

得票数に比例して、各政党の当選者数を計算する。 後述、「比例代表の計算方式 」を参照。

当選者の決定

各政党の当選者数が確定した後、立候補者名簿から当選者を選定する。

拘束名簿式
厳正拘束名簿式
政党ごとに名簿順位の上位の者から当選とする。
その拘束性は100パーセントである。かつてワイマール共和国で導入されていたが、あまりに硬直的であるため、現在ほとんどの先進国で採用されていない。しかし、その分かりやすさから独裁国家から民主制へ移行した国家がしばしばこれを採用することがある。日本では参議院選挙(比例区)において1983年から1998年まで行われていた方式である(全国1つのブロックで選挙を行った)。
単純拘束名簿式
政党ごとに名簿順位の上位の者から当選とする。
同順位とした立候補者の中で当選・落選を決めなければならない場合は、あらかじめルールで決めている。日本の衆院選の比例代表制の場合は、小選挙区での重複立候補だけ同一順位にすることができ、小選挙区での当選者の得票数に対する得票率(惜敗率)が高い重複立候補者を上位とする。


非拘束名簿式
投票を再集計し直す。立候補者ごとに得票数を集計し、得票数の多い立候補者を上位とする。各政党の当選者数分、上位の立候補者を当選とする。
再集計では、政党を指定した票は無視される。
この集計・当選者決定の方法のため、他党の当選者よりも多い得票ながら落選する立候補者がいる逆転現象もあり得る。
日本では参議院選挙(比例区)2001年から採用されている。


比例代表の計算方式

議員定数、各政党の当選者数は整数であるため、得票数に完全に比例して計算されることは稀である。 そのため、小数点以下の値を処理する加工が必要であり、その加工方法によってさまざまな計算式(決定方法)が提案、採用されている。

ヘア=ニーマイヤー式(最大剰余方式)

ヘア=ニーマイヤー式は、ドイツスイスの比例代表制で用いられている方式である。

  1. まず有効投票総数を定数で割り、これを基数とする。
  2. 各政党の得票数を基数で割り、商を求める。
  3. その商の整数分だけ一旦、配分する。
  4. 商の整数で配分しきれなかった「残余議席」については、割り算の余り(剰余)が大きい順に議席を割り振る。

「剰余の大きい順」とするのは、「余り(小数点以下)がより大きい値が1議席により近い」という考えに基づく。

ヘア=ニーマイヤー式の例

議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。

A党B党C党D党
得票数1500700300200
÷基数5210
剰余0.56(3位)0.59(2位)0.11(4位)0.74(1位)
議席数5311

基数は(1500+700+300+200)÷10=270だから、これで割ると整数部分は5+2+1+0=8で、あと2だけ足りない。その分を剰余の大きい順から補うと、上のようになる。

この方式では、総議席数が増えたときに配分議席が減る政党が生ずる「アラバマのパラドックス」が発生する。 このパラドックスは、後述のような基数を変えても、剰余の大きい順に割り当てる方式である限り、総議席数や各政党の得票数によって発生する可能性がある。

ヘア=ニーマイヤー式の亜流

ドループ式
基数=「有効投票総数÷『定数+1』」とする方式である。
仮に全体の議席が1議席しかない場合、2分の1を超える得票率であれば議席獲得に十分である。
同様に2議席なら3分の1、3議席なら4分の1・・・n議席なら(n+1)分の1を超える得票率が十分であるとする考えに基づく方式である。
インペリアル式
基数=「有効投票総数÷『定数+2』」とする方式である。

ハーゲンバッハ=ビショフ式

「アラバマのパラドックス」は余りの値に依存することに起因するため、別の方法で残余議席を配分する方法が模索された。 その1つの方法がハーゲンバッハ=ビショフ式である。さらに1議席、2議席与えた場合の「1議席あたりの得票数」が大きい順に残余議席を配分する。

ドント式

ドント式は、ハーゲンバッハ=ビショフ方式ジェファーソン方式と同じ結果になる。

この計算式は、仮に本来の比例配分をした場合(小数点以下の議席も認めた配分の場合)、1議席あたりの得票数は、一致する考えに基づく。 まず得票数を÷1、÷2、÷3…で割る。この割り算の答え(商)の多い順に議席を配分することになる。

定数10の場合において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。

A党B党C党D党
÷11500(1)700(3)300(7)200
÷2750(2)350(6)150
÷3500(4)233(10)
÷4375(5)175
÷5300(7)
÷6250(9)
÷7214

商の大きいものから順に議席数10までが当選となる。まず一番大きい1500のA党が1議席。次にA党の÷2とB党の÷1で比較するとA党の÷2が大きいので、A党が2議席。次にB党÷1が1議席。このように進め、B党÷3の233で全10議席が確定する。

最終的にはA党が6議席、B党が3議席、C党が1議席、D党は議席無しとなる。

日本の比例代表制選挙では、いずれもドント式を用いている。

サン=ラグ式

ドント式では÷1、÷2、÷3と除数を1ずつ増やして議席を確定していくところを、サン=ラグ式は÷1、÷3、÷5……と除数を2つずつ増やして奇数で割っていく。 ドント式と比べると1議席増えたときの除数が大きくなる度合いが大きいため、小政党が議席を獲得し易く、特に最初の1議席を確保しやすい。

André Sainte-Laguë による。ウェブスター方式と同じ計算法である。

議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。

A党B党C党D党
÷11500(1) 700(2) 300(4) 200(8)
÷3 500(3) 233(6) 100 66
÷5 300(4) 140(10)
÷7 214(7) 100
÷9 166(9)
÷11 136

まず、一番大きい1500のA党が1議席。次にA党の÷3とB党の÷1で比較するとB党の÷1が大きいので、B党に1議席の次にA党に2議席。というように順々に決めると、10議席に達するのはB党の÷5の140であるので、最後にB党の3議席が確定する。

最終的にはA党が5議席、B党が3議席、C党が1議席、D党は1議席となる。

ちなみに÷2、÷4、÷6と除数を偶数で割った場合は、ドント式の商すべてを2で割った場合と同じであり、結果、ドント式と結果が一致する。

修正サン=ラグ式

修正サン=ラグ式ではサン=ラグ式で最初に1で割るところを1.4で割る。北欧各国の国政選挙で使われている。

議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。

A党B党C党D党
÷1.4 1071(1) 500(2) 214(6) 142(9)
÷3 500(2) 233(5) 100 66
÷5 300(4) 140(10)
÷7 214(6) 100
÷9 166(8)
÷11 136

サン・ラグ式があまりにも小政党に有利であるという批判を受けて、最初の1議席目までの条件のみを厳しくした制度である。2議席目以降はサン・ラグ式と変わらない。

クオータ式

ヘア・ニーマイヤー式と違いドント式、サンラグ式は、ある党の配分議席数が(総議席数×その党の得票率)の小数点以下切り上げを越えてしまう場合が出る。これをアラバマのパラドックス無しで回避するため、ヘア・ニーマイヤー式での基数を「有効投票総数/(配分し終えた議席数+1)」にして、一議席ずつ当選者を決める毎に、あたかもその候補者が定数を埋める最後の候補者であるかのようにヘア・ニーマイヤー式の計算をする。

議席数 6において、有効投票総数6000、A党の得票数が2800、B党が1900、C党が900、D党が400獲得したときの例で説明する。

A党B党C党D党
得票数28001900900400
0議席配分済みの時の議席数0000
得票数-(基数(=6000/(0+1))×配分済み議席数)) 28001900900400
1議席配分済みの時の議席数 1000
得票数-(基数(=6000/(1+1))×配分済み議席数)) -2001900900400
2議席配分済みの時の議席数 1100
得票数-(基数(=6000/(2+1))×配分済み議席数)) 800-100900400
3議席配分済みの時の議席数 1110
得票数-(基数(=6000/(3+1))×配分済み議席数)) 1300400-600400
4議席配分済みの時の議席数 2110
得票数-(基数(=6000/(4+1))×配分済み議席数)) 400700-300400
5議席配分済みの時の議席数 2210
得票数-(基数(=6000/(5+1))×配分済み議席数)) 800-100-100400
6議席配分済みの時の議席数 3210

この計算方法だと分母の最大が定足数になる分数を扱う可能性がある。このため普通は先の計算方法と同じ議席配分の「議席を一つ配分する度に、各党に得票数分のポイントを与え、議席を追加された党から有効投票数分の票を減らす」方法が採られる。

A党B党C党D党
得票数28001900900400
0議席配分済みの時の議席数0000
ポイント加算 28001900900400
1議席配分済みの時の議席数 1000
A党から6000減算&各党にポイント加算 -40038001800800
2議席配分済みの時の議席数 1100
B党から6000減算&各党にポイント加算 2400-30027001200
3議席配分済みの時の議席数 1110
C党から6000減算&各党にポイント加算 52001600-24001600
4議席配分済みの時の議席数 2110
A党から6000減算&各党にポイント加算 20003500-15002000
5議席配分済みの時の議席数 2210
B党から6000減算&各党にポイント加算 4800-600-6002400
6議席配分済みの時の議席数 3210

この方式では、党Aの得票が減り党Bの得票が増えたのに党Aの議席が増え党Bの議席が減る「人口パラドックス」が発生する[2]

個人を立候補単位とした選挙方式

単記移譲式投票

単記移譲式投票では、有権者は候補者リストに順位をつけて投票する。 これは比例代表制そのものではないが、似たような効果があるとされている。

累積投票

累積投票制度では、投票者はその票の価値の好きな割合を候補者に対して投じることができる。完全な比例代表制ではないが、少数派の選出が可能になる。コーポレートガバナンスにおいて用いられることがある。巨大な票占有率を持つ組織票と違い一人分の持ち票では、死票が出ないよう候補者の得票率を均等にすることは不可能なので、票の価値を分割せず単一の候補に投ずるのが合理的な戦略投票になり、単記非移譲式投票に帰着される。

部分的な比例制

小選挙区比例代表併用制

小選挙区比例代表併用制は広い意味での比例代表制であり、小選挙区併用型比例代表制と呼ばれることもある。選挙区で獲得した分だけ名簿比例代表の議席を失うので、小選挙区比例代表並立制に比べ、比例性の強い選挙制度である。
しかし、比例代表の配分議席を負数にまで補正することは出来ないので、比例代表の議席数を越えて多くの議席を選挙区から獲得した政党は、越えた分だけ比例配分より多く議席を得てしまう。特に、比例代表で配分される議席数が0である、無所属や所属政党を選管に届け出なかった選挙区候補の議席は、全てが比例配分の枠外となる。比例代表議席の没収では補正し切れなかった議席は超過議席と呼ばれる。

問題

区割りの効果

詳しくは区割り選挙区政党名簿比例代表を参照。

大抵の選挙制度では、政党の獲得議席数は有理数ではなく自然数であり、選挙区定数を越える数の政党は選出されない。

よって、選挙区定数が小さいほど、名簿式比例代表制では得票率を議席数に変換する時に生じる丸め誤差が大きくなる。同時に、選出された政党は最低でも一議席は奪るため、個人を立候補単位とした選挙方式では開票時に生成する個人政党の数は選挙区定数と等しくなり、定数が小さいと有権者の政党への分類を細かくできない。

このため、選挙区定数が小さいほど、当選者と有権者との比例性が確保しづらくなる。

阻止条項・足切り条項

詳しくは阻止条項足切り条項)を参照。

小党濫立を防ぐため、得票率が基準値を下回る政党には議席を配分しないという取り決め。例えばドイツでは、全国の得票率が5%未満の政党には議席が配分されない。(ただし3つ以上の小選挙区で第1位の得票を得た政党には議席が配分される)

趣旨の通り、直接的には小政党・無所属・個人政党の得票率は切り捨てられる(直接的影響)。また、基準値に近い得票率の政党は他の政党より少ない得票率変化で大きな議席数変化が起こり、基準値を確実に下回る政党は多少の得票率変化では議席数が0のまま変化しないので、基準値ギリギリの政党への投票が行われ易くなり、基準値を下回る政党への投票が避けられる戦略投票が誘発される(心理的影響)。ドイツでは、阻止条項ギリギリの連立相手政党が条項に引っかかって議席を全て失うのを避けるため、大政党の票の一部が基準値ギリギリの政党に流れる選挙協力が見られる。デュヴェルジェの法則と同様、心理的影響は得票率の段階から働くため、得票率と議席占有率が乖離する直接的影響より発見されにくい。

日本におけるエピソード

政党名の投票

衆議院選挙で行われる比例代表選挙は政党・政治団体名でのみの投票となっている(名簿届出の個人名の投票は無効扱い)。だが、2005年9月の第44回衆議院議員総選挙に関して、いわゆる「疑問票」の扱いについて以下のような通知が行われた。

所属政党の移籍の制限

日本では2000年以降の国政選挙から、比例当選議員は所属政党が存在している場合において、当選時に当該比例区に存在した他の名簿届出政党に移籍する場合は議員辞職となることになった(公職選挙法第99条の2)。

ただし無所属になることや、当選時に当該比例区に存在しなかった新政党への移籍は議員辞職の必要はない(当選時に存在した政党であっても、自分が比例選出された選挙で該当比例区に候補者擁立しなかった政党には辞職せず移籍可能。具体的な例として、2009年衆議院総選挙みんなの党は衆議院比例区では北海道・東北・北陸信越・中国・四国で擁立しなかったので、北海道・東北・北陸信越・中国・四国の比例当選衆議院議員は議員辞職することなく、みんなの党への入党が可能である。)。

政党が他政党の比例選出議員を議員辞職させずに入党させるため、一度解党手続きをしてから新党結成する形で事実上の政党移籍は可能である(過去に保守党が他政党の比例選出議員を入党させるために一度解党した上で保守新党を結成したのがこれに該当する)。その場合は一度解党手続きをとるために、解党前の国政選挙の得票による政党助成金が受け取れず議員数による政党助成金しか受け取れないデメリットが存在する。過去の得票数が多かったり入党議員が少ない場合は逆に政党助成金が減ってしまう可能性がある。

また、当該比例選出政党が合併した場合や解散した場合は、比例当選議員は政党移籍において議員辞職せずに移籍可能である(自由党と民主党の政党合併はこれに該当する)。

当選枠が比例候補者を上回った場合

日本ではある政党や政治団体の比例名簿の登録者を上回る当選者が出た場合、上回った議席分は次に議席が配分される他の政党や政治団体に配分される。ただし、これは選挙時に限り、補充(繰上げ)の場合は他の政党や政治団体に配分されず、欠員となる。

2005年9月の衆議院選挙において、自民党は東京ブロックで8人分確保したが、重複立候補の小選挙区当選者を除く比例名簿登載者が7人しか残っていなかった。このため、公職選挙法の規定により全員が当選した場合、次に上位を占める政党や政治団体に議席を与えることになり、社民党の候補者(保坂展人)にその1議席を「譲渡」した形になった。

2009年8月の第45回衆議院議員選挙の近畿ブロックでは、民主党の名簿登載者が2人不足した。その結果については次節を参照のこと。

小選挙区の得票不足で比例枠を失った例

2009年8月の衆議院選挙において、みんなの党は東海ブロックと近畿ブロックでそれぞれ1人、計2人分の当選枠を確保した。ところが、2ブロックの同党の候補者は全て重複立候補で、かつ当該地域の小選挙区で有効票の10%を得られなかったために、比例復活当選の資格を得ることができなかった。このため東海ブロックの議席は民主党の候補者(磯谷香代子)に割り振られ、近畿ブロックでは民主党の候補者不足(2人)もあって合計3議席が自民党(谷公一谷畑孝)と公明党(赤松正雄)に振り分けられた。

日本における比例代表制の党派別獲得議席実績

いずれも議席獲得事例がある政党に限った。

衆議院

自民 民主 維新 公明 みんな 共産 社民 未来 国民 大地 日本 新進 自由 合計
41 1996年 70 35 24 11 60 200
42 2000年 56 47 24 20 15 18 180
43 2003年 69 72 25 9 5 180
44 2005年 77 61 23 9 6 2 1 1 180
45 2009年 55 87 21 3 9 4 0 1 0 180
46 2012年 57 30 40 22 14 8 1 7 0 1 180

注:-は立候補しなかった場合(政党等が存在しない場合も含む)、0は立候補したが当選者がいなかった場合をさす。

参議院

拘束名簿式(13回~18回)
自民 社会 民主 公明 共産 民社 新自ク 新自連 二院ク 新進 自由 日本新 さきがけ スポ平 サラ新 福祉 税金
13 1983年 19 9 8 5 4 1 1 2 1 50
14 1986年 22 9 7 5 3 1 1 1 0 1 50
15 1989年 15 20 6 4 2 [3] 1 1 0 0 1 50
16 1992年 19 10 8 4 3 1 4 1 50
17 1995年 15 9 5 1 18 2 0 50
18 1998年 14 4 12 7 8 0 5 0 0 50
非拘束名簿式(19回~)
自民 民主 維新 公明 みんな 共産 社民 国民 日本 自由 保守 改革 たち日
19 2001年 20 8 8 4 3 4 1 48
20 2004年 15 19 8 4 2 48
21 2007年 14 20 7 3 2 1 1 48
22 2010年 12 16 6 7 3 2 0 1 1 48
23 2013年 18 7 6 7 4 5 1 48

注:-は立候補しなかった場合(政党等が存在しない場合も含む)、0は立候補したが当選者がいなかった場合をさす。

参考

テンプレート:Reflist

関連項目

nn:Høvestalsval ta:விகிதாசாரப் பிரதிநிதித்துவத் தேர்தல் முறை

tr:Seçim#Nispi temsil sistemi
  1. [1]
  2. 伊藤暁・井上克司 「議席配分法に対する線形時間アルゴリズム」『数理解析研究所講究録』1375巻、2004年、85-91頁。
  3. 同名の政党は立候補したが、組織的には別団体なので立候補していないものとした。