リンゴ

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リンゴ(林檎、学名テンプレート:Snamei)は、バラ科リンゴ属の落葉高木樹。またはその果実のこと。植物学上はセイヨウリンゴと呼ぶ。

植物学上の特徴

原産地はカザフスタン南部、キルギスタンタジキスタンとされており、ここからヨーロッパアジアルートで日本にも広まったと考えられている。現在テンプレート:いつ日本で栽培されているものは、明治時代以降に導入されたものであり、日本において、病害抵抗性、食味、収量などの点から品種改良が加えられた。人口比で比較しても日本の青森における生産量は多く、日本ブランド名で(元々の日本リンゴ農家などから商標に関する係争がり)中国でも多量に生産されている。現在テンプレート:いつは7500以上の品種が栽培されており、亜寒帯、亜熱帯及び温帯で栽培可能であるが、暑さに弱いため熱帯での栽培は難しい。

リンゴの木は、落葉高木で晩春頃に白い5弁花が開花する。リンゴの果実は直径約3-15 cm、重さ約35-1000 g。色は黄緑または黄色をしている。熟するとヘプタコサンを含んだ状の分泌物に覆われる。 テンプレート:Gallery

栽培法と品種

テンプレート:Multiple image

栽培法

リンゴに限らず商品価値の高い果実を収穫するためには、開花直前から開花時期に優位な花を残す「花摘み」、結実後30日程度を目安に実を間引く「摘果」作業が必要である。リンゴには果実に袋をかける有袋栽培とかけない無袋栽培がある。無袋の方が日光が多くあたり糖度も上がるが、ふじ等の一部の品種は果実の色を鮮やかにし商品価値を上げるため有袋栽培を行う。また、有袋栽培には貯蔵性が向上する効果もあり、さび防止のためには遮光度の弱いを使用し、着色向上のためには遮光度の強い新聞紙や二重袋などを使用する。名称の頭に「サン」が付くリンゴは無袋で栽培されたことを示し 見栄えは悪いが甘く美味しいリンゴが収穫される。着色には太陽光が大きな役割を果たすため、果実の日当たりをよくするため摘葉および玉まわし(着色ぐあいを均一にするため、樹上の果実を回転させること)、太陽光を反射させるためのシートの敷設などが行われる(参考画像参照)。なお、これらの作業は農家にとって大きな負担となるため、近年テンプレート:いつでは着色促進剤が使われることもあるが、着色系と呼ぶ色付きの優れた選抜亜種への更新も行われる。省作業になる「葉とらずリンゴ」は摘葉を行わない。樹形は矮性が主流となっている。近年テンプレート:いつは花粉を媒介する昆虫の減少から人手による人工授粉も広く行われている。または摘花の省力化目的でギ酸カルシウム剤を散布する場合もある[1]

樹形と台木

ファイル:Chuisihaitang.jpg
台木として使われるカイドウ

日本にリンゴ栽培が伝えられた頃と同様な伝統的な樹形で栽培する場合、台木は、マルバカイドウエゾノコリンゴ (Malus baccata) 、ズミミツバカイドウ)が用いられる。矮性栽培法は、1975年頃より普及が始まった樹高を低くし矮性栽培を行う方法で、台木はM26、M9、JM7等を使用する[2] [3]矮性栽培により生産者の肉体的負担の軽減や農薬散布の機械化に大きく貢献した。

品種

日本の農林水産省に登録されている品種は177種で、うち品種登録が維持されているものは85種[4]。多くの有名品種は誕生年が古く、品種登録されていない。世界中では数千から1万以上の品種が存在するとみられている。

世界一生産量の多いリンゴ「ふじ」

ふじ」は、1962年に青森県藤崎町で誕生した日本で最も一般的に栽培される品種で、日本国外にもさかんに輸出され、名前も日本語発音同様「Fuji」の名で親しまれている。中国・韓国・北アメリカ・オーストラリアなどでの栽培も多く、世界的にも最も生産量の多い[5]品種であることが2001年に米国人学者達による調査によって確認された。無袋で日光を十分に浴びさせて栽培したものは「サンふじ」の名で出荷される(「サンふじ」はJA全農長野の登録商標)[6]。早い時期に市場に出回る早生(わせ)ふじは同じ糖度の果実であっても甘みや酸味にばらつきがある。見た目は赤く色づいていてもふじらしい食味がないことがある。ふじを品種改良をしたものは、小玉のふじ「姫ふじ(ひめふじ)」の他、「千秋」、「こうこう」、「シナノスイート」、「北斗」、「こうたろう」、「ハックナイン」など多数である。

品種と特徴

品種名 誕生年
誕生地
元となる品種 収穫時期 特徴 備考
ふじ 1939年
青森県
農林省
園芸試験場
東北支場
国光
×
デリシャス
10月中旬 - 年間生産量約1230万tで、日本・世界的にも最も多く生産される品種。「新津宏」らにより1958年に「東北七号」と仮称命名され、1962年に「ふじ」と命名された。品種名の由来は、育成地である青森県藤崎町(ふじさき)にちなみ、「富士山」にもかけている[7]。甘みが強く歯ごたえも良く日持ちもする。
レッドデリシャス 1870年
アメリカ
アイオワ州
偶発実生 9月中旬
- 10月上旬
年間生産量約930万t。日本では単に「デリシャス」と呼ばれることもある。1913年に岡山県「花房省吾」が導入したとされるが、1911年カリフォルニア州より北海道大学が導入[8]との説もある。
似た名前にゴールデンデリシャスがあるが、系統的には無関係。
ゴールデンデリシャス 1914年
アメリカ
ウェストバージニア州
GrimesGolden
×
GoldenReinette
9月中旬
- 10月上旬
年間生産量約880万t。1923年日本に導入された。
王林
(おうりん)
1952年
福島県
伊達郡
桑折町
大槻只之助
ゴールデン
デリシャス
×
印度
10月中旬 - 緑色に斑点のついた外見が特徴の晩生品種で香りと甘みが強い。
貯蔵性が非常に優れており、春先まで出荷される。緑や黄色の状態で流通するのが一般的だが、果実が赤く色づくこともある。
紅玉
(こうぎょく)
英名:Jonathan
(ジョナサン)
1800年頃
アメリカ
ニューヨーク州
リック農園
偶発実生 9月下旬
- 10月中旬
1871年に開拓使によって導入され、1900年に邦名を紅玉と命名された
その名の通り艶やかな深紅のリンゴで、やや小玉で酸味が強く、果肉のきめは細かく芳香もある。
戦前は美味しいリンゴの代名詞として、国光とともに一世を風靡。戦後は酸味の強さから後継品種に追われるが、アップルパイなど焼き菓子には最適な品種のため、製菓用として根強い需要がある。
国光
(こっこう)
アメリカ
バージニア州
原産
不明 10月下旬 - 1871年日本に導入。戦前から1950年代にかけては「紅玉」と並ぶ日本ではもっともポピュラーな品種であった。
原名はRall's Janett.
果皮は黒ずんだ赤色で、果肉はかたく、甘みは少なく比較的さっぱりした味わい。
「ふじ」などの交配親として利用された。現在テンプレート:いつ黒石市でネット販売のみである。
津軽
(つがる)
1930年
青森県
りんご試験場
1975年
種苗登録
ゴールデンデリシャス
×
紅玉
8月下旬
- 9月中旬
果汁が多く、甘みが強いが果肉は比較的柔らかい。
1970年に「青り2号」と仮称命名され、1973年に「つがる」と命名された。
千秋
(せんしゅう)
1966年
秋田県
果樹試験場
1980年
種苗登録
東光
×
ふじ
9月中旬
- 10月中旬
果汁が多い深紅のリンゴ。千秋公園の名から品種名がとられた。 [9]
アルプス乙女
(アルプスおとめ)
1964年
長野県
松本市
波多腰邦男
ふじ
×
紅玉
偶発実生
9月下旬
- 11月中旬
ヒメリンゴの一種で、最小級の大きさのミニりんご。実の重さは30gほどである。
姫小町
(ひめこまち)
1988年
長野県
上伊那郡
中川村
(有)小町園
(民間育種)
アルプス乙女
実生
7月下旬
- 8月上旬
ヒメリンゴの一種で鮮紅色、実の重さ約80g - 100gの大きさのミニりんご。アルプス乙女に比して1ヶ月以上早く、初夏に実をつける。観賞・生食兼用種で、実生時期と適度な実の大きさから縁日りんご飴に好んで用いられる。 [10]
世界一
(せかいいち)
1930年
青森県
りんご試験場
デリシャス
×
ゴールデンデリシャス
9月中旬
- 10月上旬
最大級の大きさ(500 - 1000gほど)の品種。
印度
(いんど)
1875年
弘前市
不明 9月中旬 - 水分が少なく歯ごたえに欠けるが、甘味が強くて酸味はほとんどない。
戦後、高級リンゴとして出回ったが、他品種が広がると共に一時姿を消す。
2002年頃より再び出荷されるようになった。料理用として焼きリンゴに向く。品種名の由来はインドではなくインディアナから。
[11]

(あさひ)
英名:McIntosh
(マッキントッシュ)
1870年
カナダ
アラン・マッキントッシュ
農園
偶発実生 10月中旬 北米ではポピュラーな品種。早生で強い芳香があるが、日持ちがしない。
日本では、ほとんど生産がされないが、積雪に強いことから北海道でわずかの農家で栽培されている。
アップルのパソコン「Macintosh」の名前の由来。
ジョナゴールド 1943年
アメリカ
ニューヨーク州
農業試験場
ゴールデンデリシャス
×
紅玉
9月中旬
- 10月上旬
1970年に秋田県果樹試験場によって日本に導入された。
シャリシャリ感がある果肉で酸味と甘みのバランスが良く(比較的酸味が勝る)、生食の他、酸味があるため、菓子や料理に向く。

(いわい)
アメリカ 7月中旬
- 8月上旬
早生の小玉リンゴ。8月下旬に熟するが、8月上旬に未熟な状態で収穫される。
青リンゴ・供物用のりんごとして売られている。
フラワー オブ ケント 俗称、ニュートンのリンゴ。落ちる実を見て、ニュートンが万有引力の法則についてヒントを得たという逸話(後述)で知られる。
落果しやすい性質を持ち、生食用ではなく、料理用として使われる。味は渋みと酸味が強いが追熟させると甘く、酸の利いたいい味になるという。
[12]
シナノスイート 1978年
長野県果樹試験場
1996年
品種登録
ふじ
×
つがる
10月中旬 果汁が多く、甘さも強く、香りも良い。「つがる」と「ふじ」の間を埋める品種として開発された。 [13]
シナノゴールド 長野県果樹試験場
1999年
品種登録
ゴールデンデリシャス
×
千秋
10月中旬
- 11月中旬
黄色く色付く。果汁が多く、甘さと酸味のバランスが良く、濃厚な味わいが楽しめる。
蜜が入らないことから貯蔵性に非常に優れる。日本国内よりヨーロッパでの評価が高く、2007年12月27日SKズードチロルへの栽培許諾の契約がなされた。
[14]
秋映
(あきばえ)
1993年
品種登録
長野県中野市小田切健男
千秋
×
津軽
9月下旬
- 10月上旬
甘さと酸味のバランスがよく、濃厚な味わいが楽しめる。色は濃厚な赤色。
リンゴの産地でも比較的温暖で低標高な地帯でも栽培に適す。つがるの特性を引き継いで、果肉がしっかりしていることと、食味が優れている。 
[15]
ぐんま名月
(ぐんまめいげつ)
1971年
群馬県
1991年
品種登録
あかぎ
×
ふじ
9月下旬
- 10月下旬
果汁が多く蜜入、糖度は15度程度で食味も良好。 [16][17]
陽光
(ようこう)
群馬県
1981年
品種登録
10月中旬
- 10月下旬
大玉で甘さと酸味のバランスがよく、濃厚な味わいが楽しめる。
大玉な上に日持ちがよいため、贈答品としても使われる。歯ざわりが良く、食味が優れている。
[18]

その他日本で生産される品種

  • 茜(あかね) - 皮は、赤色。大きさは、比較的小振りで酸味が強い。
  • 北上(きたがみ・きたかみ) - 皮は、赤色。大きさは、比較的小振り。命名の由来は、同名の地名より。
  • 金星(きんせい) - 皮は、黄色系クリーム色。大きさは、比較的大振り。命名の由来は、同名の惑星より。
  • 昂林(こうりん) - 皮は、赤色。大きさは、比較的小振り。「ふじ」の自然交配から生まれた品種。
  • さんさ
  • スターキング - 皮は、黒味の強い赤色。大きさは、比較的小振りで酸味もあるが甘味が強い。蜜入りのもある。
  • 姫神(ひめかみ)
  • ハックナイン
  • 北斗(ほくと) - 皮は、斑模様の赤色。大きさは、比較的大振りで甘味と酸味のバランスが良く甘い。
  • 陸奥(むつ) - 皮は、ピンク色系。大きさは、比較的大振り。贈答用の飾りりんごとしても用いられる。命名の由来は、同名の旧地名より。
  • レッドゴールド
  • 黄王(きおう) - 「王林」と「はつあき」を交配育成した品種。その姿から「黄色い王様」→「黄王」と名付けられる。黄白色の果肉でやや硬め。甘みと酸味に富んだ味わいとサクサクとした歯ごたえ。
  • シナノレッド - 「つがる」に「「ビスタベラ」を交配育成した品種。長円形の中玉で、甘みと酸味のバランスがよい。
  • 紅ロマン - 岩手県の江刺しリンゴというブランドの新しい品種。程よい酸味があり、真っ赤なのが特徴。

テンプレート:Gallery

産地

日本における平成25年産リンゴの収穫量、出荷量[19]
都道府県 収穫量(単位 t) 出荷量(単位 t)
全国 741,700 660,700
青森県 412,000 371,600
長野県 155,300 137,200
山形県 46,500 40,500
岩手県 42,800 36,500
福島県 26,800 23,500
秋田県 24,300 21,400
群馬県 8,970 7,980
北海道 7,720 7,130
宮城県 3,520 2,980
岐阜県 1,770 1,590
富山県 1,560 1,380
広島県 1,460 1,390
山梨県 806 690
石川県 734 647
リンゴの生産国トップ10
(単位 t)
順位 2010 2011 2012
1 テンプレート:Flagicon 中国 33,263,000 35,985,000 37,000,000
2 テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 4,214,599 4,275,108 4,110,046
3 テンプレート:Flagicon トルコ 2,600,000 2,680,075 2,889,000
4 テンプレート:Flagicon ポーランド 1,877,906 2,493,078 2,877,000
5 テンプレート:Flagicon インド 1,777,200 2,891,000 2,203,000
6 テンプレート:Flagicon イタリア 2,204,972 2,411,201 1,991,312
7 テンプレート:Flagicon イラン 1,662,430 1,842,972 1,700,000
8 テンプレート:Flagicon チリ 1,624,242 1,588,347 1,625,000
9 テンプレート:Flagicon ロシア 992,000 1,200,000 1,403,000
10 テンプレート:Flagicon フランス 1,778,433 1,857,349 1,382,901
世界 60,271,191 65,800,145 63,454,495
Source: UN Food & Agriculture Organization [20]

2012年現在世界では年間約6千万tのリンゴが栽培されている。生産量は中国がトップでアメリカ合衆国トルコなどが続く。

日本国内での主な産地

貯蔵

一般家庭

  • 水分の蒸発を抑えるため、出来るだけ密閉し冷蔵庫の野菜室などで。

生産地

栽培史

トルコで紀元前6000年頃の炭化したリンゴが発見されている。スイスでは遺跡から紀元前2000年頃のリンゴの化石が見つかっており、その時点で既にリンゴは栽培されていたとする研究がある。16 - 17世紀頃になるとヨーロッパでリンゴの栽培が盛んになり、17世紀前半にはヨーロッパからアメリカへ持ち込まれた。

中国の書物『本草綱目[22]に「林檎一名来禽,言味甘熟則来禽也。」(林檎(りんきん)の果は味が甘く能く多くの禽(の意)をその林に来らしむ。故、来禽(らいきん)の別名がある)との記述がある。

日本へは中国から最初に持ち込まれたが、西洋から西洋リンゴが持ち込まれると日本でも西洋リンゴの方が一般的になり、それまでの種は「和りんご」などと呼ばれて区別された。

平安時代中頃の書物『和名類聚抄』には「利宇古宇(りうこう、りうごう)」としてリンゴが記述されており、これが訛って「りんご」になったと考えられている。地域によっては「リンキ」という古名も伝わる。

葛飾北斎の絵にその花が描かれるなど、実よりはどちらかといえば花が珍重されていたこともあったが、およそ食用として各地域に伝承されていた。また、仏前の供え物として多用された。近江国の戦国大名であった浅井長政は、領内の木之本の寺から届けられたリンゴに対する礼状を同寺に届けており、この書面は現存している。 天明7年6月7日1787年7月21日)に発生した、御所千度参りと呼ばれる事件の際、京都市中に溢れ返った3万から7万人ともされる人数に対し、後桜町上皇からは3万個のリンゴが下賜配布された記録がある。当時、権力の中枢とは言えなかった皇室が即座に3万個ものリンゴを放出した記録により、基本的に食用ではなく仏事用であるとしても、大規模な栽培・集荷・流通が行われていたことがわかる。

後に和リンゴは極少数となったが、例えば長野県上水内郡飯綱町では、わずかな農家が栽培してその姿を伝えている[23]。和リンゴの実は大きさ直径3-4cm、重さは30gぐらい。熟すると赤くなり、収穫適期はお盆前である。

2003年より「彦根りんごを復活する会」が、全国に残存するワリンゴや野生種を調査し数十種類の木(数百本)を育て、収穫した実はお盆に各地の寺社に奉納している。同じ滋賀県で前述の浅井長政ゆかりの木之本などでも復活保存の動きがある。

初めて西洋リンゴが栽培された例としては、文久2年(1862年)、越前福井藩主で幕府政事総裁職であった松平春嶽アメリカ産のりんごの苗木を入手し、それが江戸郊外巣鴨の福井藩下屋敷にて栽培されていたと残る記録が有名である[24]。またそれより先、安政1年(1854年)に、アメリカからもたらされた「アッフル」が加賀藩下屋敷(板橋宿)にて栽培され、翌年に実をつけたために食用とされたことが、当時の加賀藩士の記録[25]に残っている。藩主(前田斉泰)から「小さな餅に塗って食べるように」と言われて近習らはそのようにしていることから、ジャムにして食したものと思われる。[26]

これらの栽培は、当然ながら藩主直接の手によるものではなく、栽培の能力を持った家臣や屋敷近隣の農家や植木屋が関わっていた。板橋と巣鴨は近隣であり、双方での栽培に関わった人物間のなんらかの交流や情報交換があったとも推測され、また福井藩屋敷では接ぎ木により100本以上の樹が生えていたとされ、当時既にりんごの株分け・接ぎ木のノウハウがあったとも推測される。また、この福井藩屋敷の株を、藩と直接関係のない人物が藩邸出入りの植木屋を通して入手した話が伝わることなどから、これら2箇所の藩邸だけにとどまらず、もっと広く栽培されていた可能性がある。この両藩邸のリンゴの株の導入経路はどちらも「アメリカから」と伝わるが、正確な入手経路や品種などは明確になっていない。

明治4年(1871年)に明治政府の命を受けた北海道開拓使次官の黒田清隆は、アメリカから75品種の苗木を持ち帰った。それが広がり出したのは明治7年(1874年)、内務省による配布が始まってからになる。リンゴの産地のほとんどが、この内務省配布にその歴史を求めることができる。さらに生産が軌道に乗ったのは明治20年代とされる。

利用

食品としての利用

テンプレート:栄養価

100g中の食物繊維[27]
項目 分量
炭水化物 14.6 g
食物繊維総量 1.5 g
水溶性食物繊維 0.3 g
不溶性食物繊維 1.2 g

食用

表面には薄い皮があり、皮に付着する農薬等の問題や、食べやすさの点から、皮をむいて食べられることが多いが、便秘の改善のため、皮ごと食されることもある。皮むきにはナイフや包丁などが用いられるが、回転式のアップルピーラーが用いられることもある。また、リンゴを放射状に切り分けるアップルカッターが用いられることもある。味は酸味と甘みが強い。日本におけるリンゴの収穫は品種によるが9月中旬から11月中旬である。各品種とも収穫期間は約1ヵ月程度と短いが、リンゴは高湿度低酸素状態で冷蔵保存することにより長期の貯蔵(およそ9ヶ月間)が可能である。このため、リンゴの出荷は9月 - 翌年7月ごろまで約10ヶ月間行われほぼ一年中食べることができる。

リンゴの果実は空気に触れると変色する(褐変)。これはリンゴに含まれるポリフェノールが空気中の酸素と結合するために起こる現象である。これを防ぐために古くから知られているのが塩水に晒す方法である。これは塩素イオンが、ポリフェノールを酸化する際に働く酵素を阻害する作用を持つことを利用したものである。もっとも効果的に変色を防ぐにはレモン汁に晒すとよい。レモン汁に含まれるビタミンCが酸素と結びつき、ポリフェノールと結合した酸素をも奪うため、変色したリンゴも元の状態へと戻すことができる。

生のまま食用にするほか、ジュースリンゴジュース)やアップルパイジャム焼きリンゴ、リンゴ酒(シードルカルヴァドスなど)などにする。リンゴのスライスやプレザーブは製菓・製パン材料ともなる。また、まるごとで覆ったリンゴ飴が、縁日出店などで売られている。ドライフルーツにも加工される。また、サイダー(リンゴ酒、シードル)には、サイダー用の栽培品種があり、サイダーアップル(テンプレート:Lang-en-short)と呼ばれている(例:'Kingston Black', 'Stoke Red', and 'Dymock Red')。このほか、りんごを用いた果実酢としてりんご酢がある。

リンゴの「蜜」は、ソルビトールである。バラ科の植物は、光合成産物のデンプン篩管を通じて転流するときに、デンプンの加水分解で生じたグルコースをソルビトールに変換する。スターキングデリシャスなど、リンゴの品種の一部では、果実内に転流してきたソルビトールを、グルコースやフルクトースといった糖に変換する代謝系が果実の成熟に伴って停止しても、果実内へのソルビトールの転流は継続する。そのため、果実内の維管束周辺にソルビトールが蓄積していわゆるリンゴの「蜜」と呼ばれる半透明部分を形成し、果実の成熟の指標となる。成熟の過程で蜜が生成されるもので、蜜(=ソルビトール)そのものが特に甘いわけではない。また、蜜が多くても、その実が甘いとは限らない。「ゴールデンデリシャス」「つがる」は蜜ができにくく、「ふじ」「スターキング」は蜜ができやすい。近年テンプレート:いつ市場では蜜入りが好まれるが、長期保管したものは蜜が褐色に変化しやすいので注意を要する。

シラカバ花粉症を持つ人のうち一定割合の人がリンゴやモモなどバラ科の果物を食べた際に咽喉(のど)にアレルギー症状を起こすことが知られている[28]

加工製品では、保存中に生じるカビが生産する毒素のパツリンに汚染されている可能性がある事から、2003年にりんご果汁について50 μg/kgの基準値を設定された[29]

栄養価

食物繊維ビタミンCミネラルカリウムが豊富。1日1個のリンゴは医者を遠ざける(An apple a day keeps the doctor away.)という諺があるように、リンゴは栄養価が高い果実として食されてきた。リンゴに含まれるリンゴポリフェノールには脂肪の蓄積を抑制する効果があるともいわれる[30]。生産者の間では広く知られているが、「5月〜6月に摘果した直径3cm程度の未熟果の一部は、秋まで土の上で腐らず残っている。」この成分はポリフェノールの一種が関係していることが研究の結果明らかになった。

生薬への利用

『本草綱目』第30巻[22]においては、小児の閃癖(せんへき)によいとされていた。

実験への利用

リンゴはそれ自身が熟成するにつれてエチレンガスを多く発生する。そのためエチレンガスを必要とする実験によく使われる。

  • 花の開花実験
    まだつぼみの状態の花を2本それぞれ別のビニール袋に密閉し、片方にリンゴを入れる。すると、リンゴを入れた方が先に開花する。
  • キウイフルーツの熟成
    キウイフルーツはそれ自身のみで追熟しないため、リンゴと同じ場所に保管することで熟成の促進が行われる(食品総合研究所での研究参照)。その他の追熟しにくい果物(バナナやオレンジなど)も同様である。
  • ツバキの落葉実験
    葉のついたツバキの茎2本をリンゴと一緒にしたものとそうでないものそれぞれ別の袋に密閉する。すると、リンゴと一緒にした方が先に落葉する。
    このようにリンゴから発生するエチレンガスは植物の熟成を促進するので、促進させたくない場合はそれぞれ別々に密閉して保存する必要がある。ただし、下記のような効果もある。
  • ジャガイモの発芽抑制
    熟成したリンゴとジャガイモを密閉状態に置くと、リンゴから発生するエチレンガスによりジャガイモの発芽が抑制される。
  • もやしの生育
    熟成したリンゴともやしを密閉した状態で育てる。リンゴと一緒に育てると太いもやしができ、リンゴと一緒に育てない場合は細くて長いもやしとなる。

リンゴにまつわる話

テンプレート:雑多な内容の箇条書き

ニュートンのリンゴ
「近代理論科学の先駆者であるアイザック・ニュートンは、木から落ちるリンゴを見て万有引力の法則に気づいた」という逸話がある。この良く知られた逸話は史実ではないとされる(詳しくはアイザック・ニュートンの項参照)。なお、この「ニュートンのリンゴ」は「フラワー オブ ケント」 (Flower of Kent) という品種で、生食用ではなく料理用である。最初に「ニュートンのリンゴの木」と言われたものは既に枯れてしまったが、接木をして増やした2世代以降の木は世界各地で今テンプレート:いつも栽培されている。
1964年イギリス国立物理学研究所の所長ゴードン・サザーランドから日本学士院長・柴田雄次にニュートンのリンゴの苗木が寄贈されたが、防疫検査により、この苗木はすでに高接病ウイルスに汚染されていることが発覚。一時は焼却処分が検討されたが、学術上貴重なものであること等から例外的に東京大学理学部附属小石川植物園に隔離され、ウイルス除去の研究対象となった。1980年、ようやくこの木からウイルスに汚染されていない接ぎ穂の切り出しに成功。これ以降、ニュートンのリンゴは日本国内各地に移植されている。
聖書におけるリンゴ
旧約聖書に登場するアダムとイヴが、蛇にそそのかされて食べた「善悪を知る果実」(禁断の果実)はリンゴだとされる。あわてて飲み込もうとしたアダムが善悪を知る果実をのどにつかえさせ、これがのどぼとけの始まりであるとの故事から、男性ののどぼとけは「アダムのリンゴ」ともいわれる。なお、食べたのがリンゴというのは後の時代に創作された俗説で、当時旧約聖書の舞台となったメソポタミア地方にはリンゴは分布せず、またその時代のリンゴは食用に適していなかった。
ギリシャ神話におけるリンゴ
ギリシア神話には、「最も美しい女神に与えられる」と言われた黄金のリンゴを巡ってヘラ、アテナ、アフロディテの3女神が争い、遂にトロイア戦争に至るエピソードがある(パリスの審判)。また、ヘラクレスの12の冒険の中にもヘスペリデスの園から黄金のリンゴを取ってくる話がある。
ウィリアム・テルとリンゴ
ウィリアム・テルヘルマン・ゲスラーの帽子に頭を下げなかったために逮捕され、息子の頭の上の林檎をで射るか、それとも死ぬかを選択することになり、一発で見事に林檎を射抜いた、という逸話がある。後にテルがスイス独立運動において英雄とされたことから、この「矢の刺さったリンゴ」というのはスイス人の好きなモチーフの1つであり、イラストなどになって様々な場面で登場する。児童福祉慈善切手に2回、普通切手にもテルの息子と共に登場していた他、1957年に発行され、1980年まで流通した第5次紙幣の最高額面1000フラン紙幣の裏面の地模様として矢の突き刺さったリンゴが描かれていた。また、電話や地下鉄の代用コインにも描かれたものがあった。
アップル・レコード
英国のロックバンド ビートルズは1968年にレコード会社であるアップル・レコードを設立した。この会社のマークは、日本ではあまりポピュラーではない「グラニースミス・アップル」という品種がモデルである(形は丸ではなく若干横長の楕円形)。アップル・レコード名義のレコードジャケットには一部を除いて、目立つ位置にリンゴマークが描かれており、一目でアップル・レコードと分かる。このリンゴマークはポール・マッカートニーが所有するベルギーの画家、ルネ・マグリットの青いリンゴの絵がヒントになっている。ちなみにアップル・レコードの影響を受けて、食べ物を題材にしたマークのレコードレーベルが日本にもいくつか設立されている。
アップル(コンピューターメーカー)
コンピューターメーカーであるアップル社 (Apple Inc.) は、リンゴを会社のロゴマークとしている(1997年頃までは6色、1999年以降はほとんど単色で用いられる)。「バイト」と呼ばれる右上の囓られた様な跡は、元々「Apple」の社名ロゴが重なっていた部分である。また同社の主力製品であるパソコン「マッキントッシュ(Macintosh、マック)」もリンゴの品種名「McIntosh」(日本名:旭)から採られている(オーディオメーカー商標と区別する都合で綴りが変えられている)。
ミス・ビードル号とりんご
世界初の日米間太平洋無着陸横断飛行を達成したミス・ビードル号が、日本淋代海岸を飛び立つ際に地元住民から機内食用として手渡されたものの中に、20個のりんごがあった。また同機の離着陸地はともに、りんごの産地でもあり、その縁で米国ワシントン州ウェナッチ青森県三沢市姉妹都市となった。
その他
  • リンゴの蜜は比重が大きいため、水の中に入れると沈む。他の果実の部分は比重が小さいため水に浮かぶ。
  • 青森県が「ふじ」に並ぶ新たな品種として24年間におよぶ歳月をかけて開発した「あおり21」 は、2006年3月に登録申請をし、2008年3月官報に載ったが、農林水産省へ登録手数料6,000円を2回に渡り国から期限内に納めるように電話を受けたのにもかかわらず、県の担当者が納めず、同2008年10月17日に登録は抹消され幻の品種となった。これにより登録品種の名称は登録年月日に遡って育成者権の消滅日ともなった[31][32][33]
  • リンゴを意味する単語(英語の“apple”など)は、しばしばリンゴではなく果物全般を指すものとして使われてきた。パイナップルもその一つで、英語の“pineapple”は「松の果実」という意味であり、リンゴとは直接の関係がない。
  • リンゴの産地である青森県の弘前実業高校藤崎校舎は、「りんご科」という学科を設置している。
  • リンゴを素手で握りつぶす、割ることは握力自慢芸として定番となっている。つぶし方にはコツが必要な部分もあり、リンゴの種類によって難易度が違ってくる。詳細は握力の項目を参照。
  • キティちゃんの設定は、身長りんご5個分、体重りんご3個分。好物はママが作ったアップルパイである。
  • 三菱・ミラージュの初代モデルは、車体スタイルが青りんごのイメージでデザインされたといわれる。

リンゴ(林檎)が題名か歌詞に出てくる歌

脚注

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関連項目

外部リンク

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  1. テンプレート:Cite journal
  2. 低樹高栽培農林水産研究成果ライブラリー
  3. テンプレート:Cite journal
  4. 登録品種情報農水省
  5. 1999年で五割のシェア
  6. JA全農長野 信州農産物
  7. 育種者の一人が山本富士子のファンだったことも由来の一つ
  8. 『りんごを拓いた人々』斎藤康司著(筑波書房、1996年)ISBN 4-8119-0140-1
  9. 農林水産省
  10. 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
  11. 印度
  12. ニュートンのりんご
  13. 農林水産省
  14. 農林水産省
  15. 農林水産省
  16. 農林水産省
  17. テンプレート:Cite web
  18. 農林水産省
  19. テンプレート:Cite web
  20. テンプレート:Cite web
  21. 青森県りんごCA貯蔵研究会 - リンゴ貯蔵の発達史
  22. 22.0 22.1 『本草綱目』第30巻「林檎」
  23. 牟礼村 - 高坂リンゴ
  24. 「越前松平試農場史」
  25. 藩主近習の小川仙之助「御参勤御供中日記」
  26. 「広報いたばし」2009年3月21日
  27. 五訂増補日本食品標準成分表
  28. テンプレート:Cite news
  29. 第55回学術講演会要約 - 食品中のマイコトキシンに関する規格基準について マイコトキシン Vol.54 (2004) No.2 P119-123
  30. アサヒビール - リンゴ・ポリフェノールの脂肪蓄積抑制作用 2004
  31. 読売新聞2008年10月25日38面13S版
  32. テンプレート:Cite web
  33. テンプレート:Cite web