最高裁判所 (日本)

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概要

日本における最高裁判所は、司法権を担当する司法における最高機関である。全ての裁判所下級裁判所)は、最高裁判所の下に置かれ、唯一の終審裁判所として、上告及び特別抗告について裁判権を持つ(裁判所法第7条)。また、最高裁判所は、規則制定権(最高裁判所規則を制定する権限、憲法77条1項)、下級裁判所裁判官の指名権(憲法80条1項)、司法行政監督権を持つ(裁判所法法80条1号)。さらに、違憲審査制における法令審査権を持ち、法令審査に関する終審裁判所となる(憲法81条)。このため、最高裁判所は「憲法の番人」と称されることがある。

最高裁判所は、日本国憲法が施行された1947年(昭和22年)に設置され、同時に施行された裁判所法に基づき東京都に置かれた。建築家岡田新一によって設計され、1974年(昭和49年)に竣工した庁舎の建物は、日本建築学会賞を受賞している。

沿革

構成と組織

最高裁判所は、最高裁判所長官と14名の最高裁判所判事により構成される。最高裁判所長官は内閣の指名に基づき、天皇によって任命される。最高裁判所判事は内閣が任命し、天皇がこれを認証する。最高裁判所裁判官の定年は70歳である(日本国憲法第79条第5項、裁判所法50条)。

最高裁判所は、裁判事務における最上位の裁判所であるだけでなく、日本国内の全ての下級裁判所を統制する司法行政部門の長でもある。また、裁判所における訴訟の手続や司法事務処理に関する事項について規則(最高裁判所規則)を制定する権限も有している。

最高裁判所の司法行政権および規則制定権は、法律上は最高裁判所の裁判官会議の議決により行使される。これを補佐し、最高裁判所の庶務を執行する機関として、最高裁判所事務総局が置かれている。また、法曹三者を養成する司法研修所や、裁判官以外の裁判所職員の研修を行う裁判所職員総合研修所なども、司法行政部門に属する最高裁判所の附属機関として置かれている。

最高裁判所の各裁判官は任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に最高裁判所裁判官国民審査(国民審査)に付され、審査から10年を経過した後の衆議院議員総選挙の際に再審査に付され、その後も同様とすると定められている(日本国憲法第79条第2項)。審査は罷免をしたい裁判官の氏名の欄に「×」を付けるという方式で行われる。しかし、これにより罷免された裁判官は1人も存在しない。また、最高裁判所裁判官の定年は70歳であるが、現在の最高裁判所裁判官は全て60歳以上で任命されているため、実際には国民審査の再審査が行われることもない。

最高裁判所裁判官の報酬は、在任中減額できないと憲法で定められている(日本国憲法第79条第6項第2文)。これは、公務員の中で最高裁判所裁判官の報酬だけを削減することは違憲とする見解であり、国家財政上の理由などで、公務員全体と足並みをそろえて一般的に報酬に関する法律を改正して在任中の裁判官の報酬を減額することは、「司法権の独立や裁判官の身分保障に対する侵害には当たらず合憲」とする見解を取って、2002年(平成14年)に裁判官報酬法を改正して憲政史上初の在任中の減額が行われた。

現在の最高裁判所裁判官

テンプレート:Main 2014年(平成26年)4月1日現在の最高裁判所裁判官を挙げる。

氏名 官職 任命年月日 学歴 出身分野[1] 担当小法廷
寺田逸郎 最高裁判所長官 2014年(平成26年)4月1日
(2010年(平成22年)12月27日最高裁判事任命)
東京大学法学部 裁判官(26期) 第二小法廷
桜井龍子 最高裁判所判事 2008年(平成20年)9月11日 九州大学法学部卒 行政官 第一小法廷
金築誠志 最高裁判所判事 2009年(平成21年)1月26日 東京大学法学部卒 裁判官(21期) 第一小法廷
千葉勝美 最高裁判所判事 2009年(平成21年)12月28日 東京大学法学部卒 裁判官(24期) 第二小法廷
横田尤孝 最高裁判所判事 2010年(平成22年)1月6日 中央大学法学部卒 検察官(24期) 第一小法廷
白木勇 最高裁判所判事 2010年(平成22年)1月15日 東京大学法学部卒 裁判官(22期) 第一小法廷
岡部喜代子 最高裁判所判事 2010年(平成22年)4月12日 慶應義塾大学大学院
法学研究科修士課程修了
裁判官(28期)
大学教授
第三小法廷
大谷剛彦 最高裁判所判事 2010年(平成22年)6月17日 東京大学法学部卒 裁判官(24期) 第三小法廷
大橋正春 最高裁判所判事 2012年(平成24年)2月13日 東京大学法学部卒 弁護士(24期) 第三小法廷
山浦善樹 最高裁判所判事 2012年(平成24年)3月1日 一橋大学法学部卒 弁護士(26期) 第一小法廷
小貫芳信 最高裁判所判事 2012年(平成24年)4月11日 中央大学大学院
法学研究科修士課程修了
検察官(27期) 第二小法廷
鬼丸かおる 最高裁判所判事 2013年(平成25年)2月6日 東京大学法学部卒 弁護士(27期) 第二小法廷
木内道祥 最高裁判所判事 2013年(平成25年)4月25日 東京大学法学部卒 弁護士(27期) 第三小法廷
山本庸幸 最高裁判所判事 2013年(平成25年)8月20日 京都大学法学部卒 行政官 第二小法廷
山崎敏充 最高裁判所判事 2014年(平成26年)4月1日 東京大学法学部卒 裁判官(27期) 第三小法廷
※掲載順は一番上を最高裁判所長官にして、二番目以降は最高裁判所裁判官就任順。

裁判部門の構成

ファイル:最高裁判所機構図.png
最高裁判所の機構図
ファイル:Background of judges in superme court of Japan.png
最高裁判所裁判官の出身別人数推移

司法行政部門の組織

権限

最高裁判所は、上告および訴訟法において特に定める抗告について最終的な判断を下す権限を持つ。

最高裁判所の最も重要な機能は、上告事件について法令の解釈を統一すること、および、憲法違反の疑いのある法令などについて最終的な憲法判断を下す(違憲審査制)こと(憲法81条参照)にある。

さらに、最高裁判所は司法権に関する事項について規則を制定する権限、司法行政権下級裁判所裁判官の指名権などを有している。

最高裁判所固有の特徴

最高裁判所調査官制度がある
最高裁判所では、下級裁判所においては特定分野の事件のみを扱う裁判所調査官が、あらゆる事件を扱うために民事、刑事、行政の各分野に分かれて置かれている。調査官は上告された裁判の記録を読み、最高裁判所判事に答申することを職務とする。最高裁は裁判官が15人と少ないため、調査官はその人的リソースを補う効果を有するが、法律によって最高裁判所への上告が制限され、最高裁判所において実質的に審理を行う必要性がないと判断される事件をスクリーニングし、速やかに棄却させる役割を果たしていることから、最高裁判所の裁判官ではなく調査官によって上告審の裁判がなされていると批判されることもある。
判決文に個別意見が付けられる
最高裁判所の判決文には個別意見として判決となった多数意見と別に裁判官それぞれの意見を表示することができる。意見には一般に補足意見、意見、反対意見がある。
補足意見とは、多数意見に賛成であるが、意見を補足するもの。
意見とは、多数意見と結論は同じであるが、理由付けが異なるもの。
反対意見とは、多数意見と異なる意見をいう。
追加反対意見は反対意見にさらに補足するもの。

この他、下級裁判所と異なり、裁判所法に「東京都にこれを置く。」と所在地が規定されている(裁判所法6条)。

庁舎

ファイル:Saikosai thumb.jpg
三宅坂交差点より全景
  • 所在地 : 東京都千代田区隼町4番2号
  • 面積 : 敷地面積 3万7427m²、建築面積 9690m²、延べ床面積 5万3994m²
  • 構造 : 鉄筋コンクリート構造一部、鉄骨鉄筋コンクリート及び鉄骨造
  • 規模 : 地上5階・地下2階
  • 設計 : 岡田新一(岡田新一設計事務所)
  • 施工 : 鹿島建設
  • 完成 : 1974年(昭和49年)3月
  • 総費用 : 約126億円(完成当時)
  • 備考: 東京の建築遺産50選

裁判所の国際交流

最高裁判所は、他国の裁判官や学者などとの交流を盛んに行っている。かねてから、アメリカヨーロッパ諸国に裁判官などを留学させて他国の法制度を調査・研究させたり、それら国の裁判官などの訪問を受け入れたりしてきたが、近年ではアジア諸国からの訪問も増えている[2]。これは、アジアで最初に近代的な司法制度を確立した日本に学びたいという各国の意向を反映してのことであり、日本による法整備支援活動への協力という枠組みで行われることも少なくない[3]。また、法整備支援への協力の一環として、現役の裁判官を、法整備支援の長期専門家としてベトナムカンボジアといった国に年単位で派遣することも行われている[4][5]。 なお、アジア太平洋地域の国や地域の最上級裁判所のトップが一堂に会し、司法に関する共通の諸問題を話し合うことを目的とするアジア太平洋最高裁判所長官会議が2年ごとに開催されており、日本の最高裁判所もこの会議に参加している。[6]

名称と異名

「最高裁判所」の漢字表記は通例常用漢字を用いるが、最高裁判所庁舎に掲げられている銘板には最髙裁判所(最髙裁判所)と「はしご高」で書かれている。

略称は、一般には「最高裁」が通用するが、法曹界ではさらに簡略化し「最高」とも呼ばれる。また、庁舎が三宅坂(みやけざか)に面していることから、所在地より「三宅坂」という通称もある。この他、庁舎の特徴的で威圧的な外観や、行政権力者側に片寄った裁判の運営方針などから、法曹関係者や法律学者からは揶揄的・否定的な意味合いを込めて「奇巌城」「奇岩城」などと呼ばれることもある[7]

記念切手

  • 1974年(昭和49年)5月23日、「最高裁判所庁舎落成記念」として額面20円の切手が発行された。

参考文献

  • 山本祐司『最高裁物語』、日本評論社、1994年(上 ISBN 4535581738 下 ISBN 4535581746)。(講談社+α文庫、1997年(上 ISBN 4062561921 下 ISBN 406256193X))。
  • 野村二郎『最高裁全裁判官』、三省堂、1986年。

関連項目

脚注

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外部リンク

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  5. JICA長期専門家としての日々~途上国で裁判官にできること
  6. 特集・第10回アジア太平洋最高裁判所長官会議
  7. 「奇岩城 無人の法廷で判決(孤高の王国 裁判所100周年の今:5)」『朝日新聞1990年10月31日朝刊4面