新幹線E1系電車

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テンプレート:鉄道車両 新幹線E1系電車(しんかんせんE1けいでんしゃ)は、かつて東日本旅客鉄道(JR東日本)に在籍していた新幹線車両

概要

編成記号は「M」でM1 - M6の12両編成6本(72両)が製造され、1994年平成6年)7月15日から2012年(平成24年)まで営業運転を行った。

新幹線では初めて編成中の全車両が2階建車両とされ、Multi Amenity Expressを略したMaxという車両愛称がある。試運転の時点ではこの愛称が決まっておらず、暫定的にDouble Decker Shinkansenを略したDDS形式称号である「E1」が表記されたロゴステッカーが車体側面に貼付されていた。

設計時点では600系の形式番号を付与する予定であったが、JR東日本が新幹線の車両番号付番方法を変更したため、東日本旅客鉄道株式会社の英文社名表記East Japan Railway CompanyEast(東)の頭文字を取って「E1系」の形式称号を付与することになった。そのため、600系は欠番となった。 テンプレート:-

構造

車体概観

車体は普通鋼製で、JR東日本の新幹線車両の中では1両あたりの重量および編成重量が最も重い。現在のところ最後の普通鋼製新幹線電車でもある[注 1]

外観のデザインコンセプトは「グランド&ダイナミック」を掲げ、先頭部分は2階建てのボリュームを生かしながら、騒音・微気圧波対策を考慮したエアロダイナミックノーズとなっている[1][2]

主要機器

電源・制御機器

2階建車両で床下に各種機器を配置することが困難であるため、床下機器は水タンク、空気圧縮機、主電動機電動送風機にとどめ、主変圧器主変換装置、補助電源装置は車端部の床上に搭載する[1]。機器室は室内とは気密壁によって仕切り、気密外としている[1]

ファイル:E145-4.jpg
走行機器を車端部の床上に搭載

4両(T+M1+M2+T)で1ユニットを構成し、M1車に主変換装置・補助電源装置を、M2車に主変圧器・主変換装置を搭載する。

主回路制御にはJR東日本の新幹線電車では初めて可変電圧可変周波数制御(VVVF制御)が採用された。主変換装置 (CI2)は、GTOサイリスタ素子を使用した2レベルコンバータ+2レベルインバータで構成されている。

主変圧器(TM208)は強制風冷式を採用し、3,730kVAの容量を備える[3]

電動機(MT204)はかご形三相誘導電動機を採用し、連続定格出力を410kWに増強した[4]。これによって、編成でのMT比が1:1でありながらも、200系と同等の起動加速度1.6km/h/sを確保している。

電動空気圧縮機はMH1114-TC2000Aを採用する[4]

台車

台車は、ゴム併用板バネ式ボルスタレス台車である。電動台車はDT205、付随台車はTR7003と称する。車輪径や軸距は200系と同値である(それぞれ910mm、2,500mm)[5]

ブレーキシステムは回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキであり、回生ブレーキはJR東日本の新幹線車両では初採用となった。付随車のブレーキシステムは空気ブレーキのみであり、300系などの付随車で採用された渦電流式ディスクブレーキは装置の重量が電動車の誘導電動機よりかさむことと、高速域からの減速では電動車の回生ブレーキで付随車のブレーキ力も負担する遅れ込め制御を導入した[1]ことから、本系列および以後登場するJR東日本の新幹線車両では採用していない。

集電装置

集電装置は200系と同様の下枠交差型パンタグラフが採用された。PS201と呼称される。集電舟(架線と接触する部分)が可動式となった微動すり板を採用したことにより架線追従性が向上し、台枠をFRP製にすることで誘導障害の低減を図った[6]。さらに、降雪対策として押上げ力を5.5kgから7.5kgまで向上させた[6]

車体が車両限界ギリギリで作られているためパンタグラフカバーはなく、パンタグラフ設置部の屋根が一段低くなっている。

ファイル:Shinkansen-e1.jpg
初期車体塗装のE1系
(2004年11月14日 大宮駅
ファイル:E1 Max logo M1 Omiya 20031202.JPG
リニューアル前のロゴマーク

内装

「ハイクオリティ&アメニティ」をデザインコンセプトに掲げてデザインされている[1][2]

通勤・通学輸送をはじめとする東北上越新幹線の需要増加に対応するべく、速度よりも大量輸送(1編成の座席定員は1,235名)に重きを置いた設計がなされている。そのため、全車両が2階建車両とされた。自由席として使用される車両の1 - 4号車の2階座席は車内販売を行わないことを前提に通路幅を極限まで切り詰めることにより、横3+3配列構造を実現した。座席幅は窓側・通路側420mm、中央席は440mmを確保しているが、中央部の肘掛が無い構造であるため横3+2列の座席と比べて相当狭隘である。また座席構造の問題からリクライニング機能がついていない回転クロスシートであるが、背ずりの角度をある程度リクライニングした状態と同様に傾けた状態で固定している。また、 2 - 4号車の新潟寄りデッキには、壁面に収納された補助席(通称ジャンプシート)が2席ずつ設置されている。

8・9号車には、車椅子用の昇降リフト装置が設置されているほか、車椅子対応の座席(2階席のみ)と便所が設置されている。

側面の行先表示機はLEDを採用し、表示は列車種別・指定席/自由席と行先を交互に表示する方式となった。この方式はこれ以後のJR東日本の新幹線車両の標準ともなった。

2階建てとしたことによる定員の増加に対応するために、客用扉は1,050mm(200系は700mm)と広く設定されている[1]

当初、車内には弁当の自販機があったが(途中に階段があって車販でワゴンが使えない代わり)、利用状況が悪く、弁当の出し入れや交換が面倒だったこともあってか、後に撤去されている。

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写真はすべてリニューアル前の内装

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リニューアル

E1系のデビューから10年近くが経過し、内装の陳腐化が目立ち始めたことなどから、2003年(平成15年)度から2006年(平成18年)度にかけて内外装のリニューアルが施工され、最初に施工されたM4編成は同年11月28日の「Maxとき」326号より営業運転を開始した[7]。車体塗装はE2系E4系と同様白と青の2色を中心に境目に「朱鷺(とき)色」と称されるピンクの帯を配したものに変更された。あわせてロゴにも朱鷺イラストが加えられた[注 2]

座席は、グリーン車はE2系1000番台のもの、普通車はE4系のものに交換されている。自由席車(1 - 4号車)2階部分の3人掛け座席のうち中央の座席の背もたれ部分にくり抜かれていた肘掛けの代用品も廃止となった。ほかにも、床材などが交換されたが走行機器関係には手を加えられてはいない。

車体塗色変更は新幹線総合車両センターで行われたが、アコモ改造は新潟新幹線車両センターで実施された[7]

東北新幹線および上越新幹線のデジタルATC (DS-ATC) 採用に伴って、全編成に対してDS-ATCへの改造も実施された。

2005年4月に新潟県が発売した「新潟県中越大震災復興宝くじ」には、E1系リニューアル車が図柄に選ばれた。

この朱鷺色の塗装は2014年4月から2015年度末まで、順次施工されるE4系の塗装変更にも採用された。

編成名 新製年月日 製造会社 車体塗色変更 アコモ改造 DS-ATC搭載改造 廃車年月日 備考
M1 1994年03月03日 川崎重工業 2004年09月17日 2004年07月10日 2005年09月15日 2012年04月02日
M2 1994年03月23日 日立製作所 2004年11月27日 2005年06月04日 2005年08月05日 2012年04月14日
M3 1995年02月06日 日立製作所
川崎重工業
2003年12月26日 2004年03月31日 2005年11月02日 2012年08月29日 [注 3]
M4 1995年10月17日 日立製作所 2003年11月25日 2003年10月02日 2006年02月02日 2012年12月07日 リニューアル第1編成
M5 1995年11月03日 川崎重工業 2006年03月11日 2006年06月06日 2006年03月11日 2012年10月04日
M6 1995年11月22日 川崎重工業
日立製作所
2005年11月27日 2005年12月23日 2005年11月27日 2012年11月07日 [注 4]

形式および車種

本系列に属する各形式名とその車種は以下のとおり。

奇数形式と偶数形式2両ずつ、計4両(電動車 (M) 2両と付随車 (T) 2両)のT+M1+M2+Tで1ユニットを構成する。

番台としては、基本的に0番台を名乗るが、自由席の2階部分が3+3列シートとなっている1 - 4号車は100番台を、8号車は200番台を名乗る。

E1系(M1 - M6編成) 運用終了時の編成表[7]
  テンプレート:TrainDirection
号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
形式 1号車
E153 (T1c)
2号車
E155 (M1)
3号車
E156 (M2)
4号車
E158 (T1)
5号車
E159 (T2)
6号車
E155 (M1)
7号車
E156 (M2)
8号車
E158 (Tpk)
9号車
E148 (Tps)
10号車
E145 (M1s)
11号車
E146 (M2s)
12号車
E154 (T2c)
番台 100番台 100番台 100番台 100番台 0番台 0番台 0番台 200番台 0番台 0番台 0番台 0番台
座席 普通車 普通車 普通車 普通車 普通車 普通車 普通車 普通車 グリーン車 グリーン車 グリーン車 普通車
普通車 普通車 普通車
定員 86 121 121 135 124 110 110 91 75 91 91 80
E145形 (M1s)
普通席(1階)とグリーン席(2階)を備える中間電動車。M編成10号車として使用。新潟寄りに公衆電話が設置されている。多目的室を備え、主変換装置、補助電源装置、集電装置などを搭載する。新製当初は東京寄りに自動販売機があったが、2008年3月31日限りで使用停止となった。定員91名。
E146形 (M2s)
普通席(1階)とグリーン席(2階)を備える中間電動車。M編成11号車として使用。主変圧器、主変換装置などを搭載する。定員91名。
E148形 (Tps)
普通席(1階)とグリーン席(2階)を備える中間付随車。M編成9号車として使用。新潟寄りに便所、洗面所、パウダールームが設置されている。車椅子対応設備を搭載。定員75名。
E153形 (T1c)
普通席を備える制御付随車。M編成1号車として使用され、東京向き運転台が設置されている。新潟寄りに便所と洗面所を備え、空気圧縮機などを搭載する。定員86名。0番台は存在しない。2011年4月29日より、東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の復興支援スローガンである「つなげよう日本」のステッカーが貼られた。
E154形 (T2c)
普通席を備える制御付随車。M編成12号車として使用され、新潟向き運転台が設置されている。東京寄りに便所と洗面所を備え、空気圧縮機などを搭載する。定員80名。2011年4月29日より、東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の復興支援スローガンである「がんばろう日本! がんばろう東北!」のステッカーが貼られた。
E155形
普通席を備える中間電動車。主変換装置、補助電源装置などを搭載する。東京寄りに設置されていた自動販売機は、2008年3月31日限りで使用停止となった。
0番台 (M1)
M編成6号車として使用。定員110名。
100番台 (M1)
M編成2号車として使用。定員121名。
E156形
普通席を備える中間電動車。主変圧器、主変換装置などを搭載する。
0番台 (M2)
M編成7号車として使用。定員110名。
100番台 (M2)
M編成3号車として使用。定員121名。
E158形
普通席を備える中間付随車。
0番台 (T1)
M編成4号車として使用。東京寄りに便所と洗面所、新潟寄りに公衆電話がある。定員135名。
200番台 (Tpk)
M編成8号車として使用。東京寄りに便所と洗面所、新潟寄りに売店がある。車椅子対応設備、空気圧縮機を搭載する。定員91名。
E159形 (T2)
普通車を備える中間付随車。M編成5号車として使用。新潟寄りに便所と洗面所を備える。定員124名。

ラッピング

  • 2002年(平成14年):ガーラ湯沢スキー場の営業シーズンに合わせ、一部の編成に「JR Snow Alpen Super Express」のラッピングが施された。
  • 2005年(平成17年)4月:新潟県中越地震復興推進企画として、一部の編成に「がんばってます!にいがた」のステッカーが掲出された。
  • 2011年(平成23年)4月29日以降:東日本大震災復興推進キャンペーンとして、全編成の東京方・新潟方にステッカーを貼付
  • 2011年(平成23年)7月1日 - 9月30日:「群馬デスティネーションキャンペーン」開催に伴い、M4・M6編成の1・6・12号車の東京方に「心にググッとぐんま」の車体広告が掲出された。
  • 2012年(平成24年)8月28日 - 9月28日:放鳥トキのひな誕生を受け、M4 - M6編成の車体のロゴに記念のラッピングを追加のうえ運転された[8]

運用

運転開始当初

ファイル:E1 M1 Max Asahi 317 Omiya 20020629.jpg
「Maxあさひ」317号
(2002年6月29日 大宮駅)

1994年の営業開始時点では仙台総合車両所(現在の新幹線総合車両センター)に配置され、東北新幹線では東京駅 - 盛岡駅間の「Maxやまびこ」2往復および那須塩原駅 - 東京駅間の「Maxあおば」上り1本、上越新幹線では東京駅 - 新潟駅間の「Maxあさひ」2往復および高崎駅 - 東京駅間の「Maxとき」上り1本に運用された。なお、東北新幹線運用は毎週水・木曜日は車両検査のため全列車が運休し、200系が代走した(M3編成が増備された翌1995年3月に解消)。

東北新幹線からの撤退

その後、東北新幹線では途中駅において分割・併合を行う列車が増えたことから、全車2階建車両であるが他系列などとの相互連結を考慮して8両編成としたE4系を投入し、1998年12月8日のダイヤ改正からは東京駅 - 仙台駅間の「Maxやまびこ」1往復のみとなり、同時に仙台駅 - 盛岡駅間で定期運用から撤退。そして1999年12月4日のダイヤ改正をもって東北新幹線大宮駅以北での本系列の運用は消滅し、全編成が新潟新幹線第一運転所(現在の新潟新幹線車両センター)に転属した[9]

廃止および廃車に至った経過

2003年からは車両内装や外装のリニューアル工事が行われたが、本系列は1994年の運用開始から既に15年以上経過していた。

2011年12月16日付のJR東日本プレスリリースにおいて、2012年3月17日のダイヤ改正で東北新幹線向けにE5系が増備され、それによって運用の余裕が出たE4系で運用を置き換えることが発表された[10]。これに伴い、越後湯沢駅 - 新潟駅間(ガーラ湯沢駅を除く)ではホームの延長工事が実施され、上越新幹線全区間にてE4系2本連結(16両編成)での運転を開始されることとなった。

2012年4月、M1・M2の2編成が廃車となった[11]。残るM3 - M6の4編成は引き続き上越新幹線の「Maxとき」(4往復のみ)および「Maxたにがわ」(2往復のみ)で運用されていた[注 5]

運用終了

2012年7月6日、JR東日本は同日付のプレスリリースで、2012年9月29日のダイヤ改正をもって上越新幹線内のE1系運行列車をE4系2本併結(16両編成)に置き換え、E1系による全ての定期運用を終了すると発表した[12]。下り定期運行最終列車は「Maxとき343号」、上り定期運行最終列車は「Maxとき348号」であった。

E1系の営業運用からの撤退を記念し、10月27日に新潟駅→東京駅間で団体専用列車「ありがとう Maxあさひ号」が[13]、翌28日には東京駅→新潟駅間で団体専用列車「さよならE1Maxとき号」が[14]それぞれ運転された。

運転日 列車名 運転区間(始発・終着時刻) 途中停車駅 使用
編成
備考
2012年10月27日 ありがとうMaxあさひ号 新潟 7:02発 → 東京 9:20着 燕三条長岡浦佐越後湯沢大宮上野 テンプレート:要出典範囲 団体専用列車
2012年10月28日 さよならE1Maxとき号 東京 9:32発 → 新潟 11:36着 上野、大宮 M4[15] 団体専用列車

その後、2012年12月7日付のM4編成を最後に全編成が廃車となり、本系列は形式消滅となった[16]。これにより、営業運転に供される普通鋼製の新幹線電車は全て姿を消した。

脚注

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注釈

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出典

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関連項目

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テンプレート:日本の新幹線


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  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 鉄道ファン』2003年11月号、交友社、2003年、p.34
  2. 2.0 2.1 JR東日本:車両図鑑>新幹線 E1系 Maxとき/Maxたにがわ(JR東日本)
  3. 車両システム・推進制御システム・主変圧器--製品紹介--三菱電機 車両システム
  4. 4.0 4.1 ジェー・アール・アール『JR電車編成表』2010夏、交通新聞社、2010年、p.8
  5. テンプレート:Cite book
  6. 6.0 6.1 テンプレート:PDFlink富士時報 第55巻第6号(1982年)、富士電機
  7. 7.0 7.1 7.2 テンプレート:Cite book
  8. テンプレート:Cite web
  9. テンプレート:Cite book
  10. テンプレート:PDFLink - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2011年12月16日
  11. 鉄道ダイヤ情報 2012年7月号、P28
  12. テンプレート:PDFlink - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2012年7月6日
  13. テンプレート:Cite web
  14. テンプレート:PDFlink - 東日本旅客鉄道
  15. E1系,営業運転から引退 - 交友社鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース 2012年10月29日
  16. 『JR車両のうごき』 鉄道ダイヤ情報・2013年3月(交通新聞社