括弧

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テンプレート:JIS2004 括弧(かっこ)とは約物の一つ。言語の記述の中で、その一部を一対の括弧で囲むことにより、その中と外とを区切る役割を果たす。

括弧は対で使用され、先に記述される括弧を括弧開き(かっこひらき)、後に記述される括弧を括弧閉じ(かっことじ)と呼ぶ。横書き表記の記述においては、相対的に左括弧(ひだりかっこ)・右括弧(みぎかっこ)とも呼ぶ。

また、対となる括弧がそれぞれ縦並びの括弧を縦括弧(たてかっこ)、横並びの括弧を横括弧(よこかっこ)と呼ぶ。

数学においても括弧は頻繁に用いられ、特殊な意味を持つ。

仮名とは異なり、縦書きか横書きかで形が変わる。この項目では横書き表記ですべて取り扱われているが、縦書きの場合は右90度回転されたものになる。

起源

江戸時代以前の文献では見られないため、明治維新辺りの時期に輸入されたものと想像されるが、日本語には鉤括弧が先にあったとする説もある(鉤括弧参照)。詳細は不明。

種類

括弧には丸括弧(まるかっこ)・鉤括弧(かぎかっこ)・二重鉤括弧(にじゅうかぎかっこ)・角括弧(かくかっこ)・波括弧(なみかっこ)・亀甲括弧(きっこうかっこ)・山括弧(やまかっこ)・隅付き括弧(すみつきかっこ)などの種類がある。

そのうち、日本語の補助記号に当たるのは、丸括弧鉤括弧二重鉤括弧である。これらは、句点(。)・読点(、)・中点(・)と合わせて区切り符号と呼ばれる。

丸括弧()

( )

丸括弧(まるかっこ)はパーレンとも言う。一般に括弧と言った場合は丸括弧を指す。「パーレン」の語は、ドイツ語で丸括弧を示す Parenthese に由来するテンプレート:要出典。なお、小括弧(しょうかっこ)と呼ばれることもあるが、この呼び方は望ましくないと考えられる[1]

  • 語句または文の次に、それらについて特に注記を加えるときに用いる。
    • 語句の読みを示す場合に用いる。
    • 説明文自体または読み飛ばせる追記事項などを書く場合がある。
    • 横括弧は箇条書きの文章で、それぞれの条文の番号等を囲むのに用いる[例: (1)(ア)]。左括弧を省略することもある[例: a)]。
  • 数式においては、式をグループ化して演算優先順位の明示・変更を行うときに用いる。プログラミング言語でも同様の用途で使用する言語が多い。
  • 数学プログラミング言語で、関数引数を明示するのに用いる。
  • 幾何学で座標を示す場合に1座標の定義を示す。
  • 行列を表す目的で使用する。
  • 数学の区間において、開いていることを示す。
  • BASIC などの一部のプログラミング言語スクリプト言語では配列の要素を指定するのにも用いる。
  • 小説等の文学作品ゲーム作品では、会話に表れない心中表現であることを示すのに用いることがある。また、ゲーム作品おいては、回想シーンやテレパシー(実際に喋っていない)等での会話に用いる事もある。
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二重丸括弧⦅⦆

⦅ ⦆

丸括弧を2つ重ねるか繋げた括弧で、二重丸括弧(にじゅうまるかっこ)・二重パーレン二重括弧(にじゅうかっこ)と呼ばれる。

  • 表示する字形は「((」 と横に並べるだけの場合と、「(」を白抜き文字にする場合とがある。
  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
  • 注記を記載する場合に使用されることが多い。
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鉤括弧「」

「 」

鉤括弧(かぎかっこ)

  • 旧来、人の会話部分を書く際に文頭に置かれた「庵点」と改行を示す記号の「鈎画」の間とに囲まれていたところから、会話の箇所を囲む括弧として鉤括弧が出来たと言われている。
  • 引用引用符としての用法)、あるいは特に注意を喚起する語句を挿入する場合も用いられるようになった。
    • 題目(題名・表題・外題・箇条・主題・問題・名目)などを特に提示する場合に用いる。
    • 「いわゆる」「いわば」という、言葉を文字通りに受け取ってはいけないということを示す際に用いる。鉤括弧を付けた相手に、「相手はそう自称しているが、自分は認めない」という意思表示になる[2]
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二重鉤括弧『』

『 』

二重鉤括弧(にじゅうかぎかっこ)は二重鉤(にじゅうかぎ)・白括弧(しろかっこ)とも言う。

  • 鉤括弧「」の中にさらに語句を引用する場合や、引用に複数の意味があり鉤括弧で示す引用とは異なることを示す場合に用いる(引用符としての用法)。
  • 書名など特別の種目に属するものの名称を表す場合に用いる。
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鉤括弧と二重鉤括弧の使い分け

鉤括弧および二重鉤括弧は、名称や題目を特に提示する場合に用いられる。

  • ある作品が複数の作品から成り立っている場合、個々の作品の名称(タイトル名)に鉤括弧「」を、作品全体ないし作品集の名称に二重鉤括弧『』を、それぞれ用いる。
    用例
    アルバム『アルファ』から「ベータ」をお聞きください。
  • 書物に対しては、書籍の形を取る単行本雑誌新聞の題名などには二重鉤括弧『』を用いる。書籍の形を取らない、単行本を構成する個々の作品名・雑誌論文名・新聞記事名などには鉤括弧「」を用いる。
    用例
    「デルタ」は雑誌『イプシロン』にて絶賛連載中! 今夏には単行本『デルタ』の発売が予定されています。

また、国語では会話文の中に他人の言葉を引用する場合に用いる。

  • 用例: 「お母さんが、『雨が降るから傘を持って行きなさい』と言ってたよ」

小説作品でも、電話やテレビ等の機械を通した台詞に用いられる事がある。この場合、作品名や他人の言葉の引用は「」で表記され、「」と『』の立場関係が逆転する事がある。

  • 用例: 『もしもし、俺だ。今日は「デルタ」の最新作が発売されるから、それを本屋で買って俺の所に来てくれないか? 妹が「欲しい」と言っていてな……』

角括弧[]

[ ]

角括弧(かくかっこ)はブラケット (bracket) とも言う。なお、大括弧(だいかっこ)と呼ばれることもあるが、この呼び方は望ましくないと考えられる[1]

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
    • 丸括弧()が入れ子になる場合に、それぞれの括弧が区切る範囲を明らかにするため用いることがある。
    • 引用部分に補足説明を加える場合に用いることがある。
  • 数式においては、丸括弧 () を入れ子にする場合に外側の括弧を角括弧とするほか、丸括弧の代わりに角括弧を用いる様式もある[1]
  • 数学の区間において、閉じていることを示す。
  • 自然科学において、表やグラフに単位を記載する場合に、単位であることを明示するために付ける。
  • 化学において、[H2O] のように化学式に角括弧を付けた場合には濃度を表す。また、[Fe(CN)6]3− のように錯イオンの表記にも使う。
  • 言語学では(音素ではなく)音声を表記する場合に用いられる。
  • C言語を始めとした多くのプログラミング言語スクリプト言語では配列の要素を指定するのに用いる。
  • ウィキ文法では"[[内部リンク]]"や"[http://www.example.com 外部リンク]"のように内部リンクや外部リンクなどを作成する場合によく用いられる。
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二重角括弧〚〛

〚 〛

二重角括弧(にじゅうかくかっこ)

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
  • 表示する字形は「[」を白抜き文字にする場合と、「[」の中央に縦線を入れる場合とがある。
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波括弧{}

{ }

波括弧(なみかっこ)は、ブレースブレイス (brace) および カーリーブラケット (curly bracket) ・カール (curl) とも言う。なお、中括弧(ちゅうかっこ)と呼ばれることもあるが、この呼び方は望ましくないと考えられる[1]

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
    • 丸括弧()が入れ子になる場合に、それぞれの括弧が区切る範囲を明らかにするため用いることがある。
  • 数式においては、角括弧 [] を入れ子にするときに外側の括弧を波括弧とすることが多い[1]
  • 数学においては、集合を記述するときに用いられる。
  • C言語を始めとした多くのプログラミング言語スクリプト言語ではブロックを記述するときに用いられる。
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亀甲括弧〔〕

〔 〕

亀甲括弧(きっこうかっこ)は亀甲(きっこう)・キッコー亀の子括弧(かめのこかっこ)とも言う。

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
    • 引用部分に補足説明を加える場合に用いることがある。
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二重亀甲括弧〘〙

〘 〙

二重亀甲括弧(にじゅうきっこうかっこ)

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
  • 表示する字形は「〔」を白抜き文字にする、「〔」の中央に縦線を入れる、「〔〔」と横に並べる3種類がある。
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山括弧〈〉

〈 〉

山括弧(やまかっこ)は山鉤(やまかぎ)・山パーレン(やまパーレン)・アングルブラケットとも言う。

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二重山括弧《》

《 》

二重山括弧(にじゅうやまかっこ)

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
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代用表記

コンピュータの世界では、ASCII にある不等号 “<” (U+003C) ・“>” (U+003E) を使って山括弧を表現する場合がある。これは以下のような場面で使用される。

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また、山括弧「〈」(U+3008) ・「〉」(U+3009) や二重山括弧「《」(U+300A) ・「》」(U+300B) の代わりに不等号 “<” (U+FF1C) ・“>” (U+FF1E) ・“≪” (U+226A) ・“≫” (U+226B) が使われることもある。しかし後者の不等号 “<”・“>”・“≪”・“≫” が扱える環境であれば前者の山括弧「〈」・「〉」や二重山括弧「《」・「》」も扱えることがほとんどなので、この置き換えは不適切もしくは誤用と見なせる。

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ギュメ «»

« »

ギュメは主にヨーロッパで利用される引用符である。二重山括弧引用記号(にじゅうやまかっこいんようきごう)ともいう。

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称

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隅付き括弧【】

【 】

隅付き括弧(すみつきかっこ)は隅付きパーレン(すみつきパーレン)・太亀甲(ふときっこう)・黒亀甲(くろきっこう)・墨付き括弧(すみつきかっこ)とも言う。

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
    • 強調したい場合、目立たせたい場合に用いることが多い。
    • 項目名の表記にもしばしば使われる。
    • 漢和辞典では教育漢字を示す目的で使用されることがある。
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隅付き括弧(白)〖〗

〖 〗

隅付き括弧(白)[すみつきかっこ しろ]

  • 日本語の文法においては補助記号に当たらず、決まった用途はない。
    • 漢和辞典では教育漢字外の常用漢字であることを示す目的で使用されることがある。
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そのほかの括弧

日本語では、上記以外にもさまざまな括弧が用いられている。たとえば、「【(」「)】」の形の括弧や、「【」「】」の内側の曲線が、くの字型の直線(< 、>)で書かれる括弧などである[4]

脚注

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  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4
    • 日本などの一部の国では、数式における括弧の入れ子は [{()}] の順で用いられてきた。しかし、世界的には {[()]} の順で用いられる方式が多数派である。
    • JIS Z 8201-1981 においても「小括弧」・「中括弧」・「大括弧」という名称は廃止され、現在は「丸括弧」・「角括弧」・「波括弧」と表記されている。
      • なお、この日本工業規格 (JIS) の解説文において、丸括弧・角括弧・波括弧を入れ子にする際の順序については「特に規定しない」としたうえで、{[()]} が大多数(世界中の学術誌のうち約90%)であることが付記されている。
  2. 法政大学大原社会問題研究所の「IV 国鉄分割・民営化関連諸法の成立と新会社への移行準備」での「労働組合」、日本共産党ニセ「左翼」暴力集団の「左翼」の用法、日本国政府北朝鮮の発射したロケットについて、「北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射事案」と表現したことなどを参照。
  3. HTML 版青空文庫工作員作業マニュアル — 2. 入力-1 #【ルビ】
  4. 第17回 約物の深い世界を垣間見た | DNP 大日本印刷株式会社」には実際に使用されていた明治時代の活字見本帳が掲載されている。

関連項目

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