徳川家康 (NHK大河ドラマ)

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テンプレート:基礎情報 テレビ番組徳川家康』(とくがわいえやす)は、NHK1983年1月9日から12月18日にかけて放送された大河ドラマ第21作。

概要

「昭和59年から大河ドラマは近代路線に移行する」とのタイムテーブルのもと、時代劇大河・最後の作品として「戦国時代・最後の大物」徳川家康を主人公としたこのドラマは企画された。スタッフが意図したものは大河ドラマの王道たる「直球」的作品。当初はオリジナル脚本案も浮上したが、過去にNET系(現:テレビ朝日)でドラマ化された例はあるものの「山岡荘八・著『徳川家康』ほど家康に関する名作はない」との結論に達し、山岡荘八の小説『徳川家康』を原作にしたドラマ化がスタートした。家康の出生前からその死までを描く山岡版「家康」、その原作に忠実を期し「家康の生涯は生母・於大を抜きには語れない」との意見から於大役に、息子・家康役の滝田栄よりも若かった当時26歳の大竹しのぶを配するなど大胆な配役がされた。従来陽気な秀吉に比べ老獪な謀略家としての面が強調されていた家康を泰平を求める求道者として描いた。

また、それまで一般に知られていなかった若手俳優役所広司が織田信長を演じて人気を博した。この作品で一躍注目を集めた役所は出演ドラマ・映画が増え、NHKでも翌年のNHK新大型時代劇宮本武蔵』で主演を果たしている。

音楽は過去『新・平家物語』などでもテーマを手がけた冨田勲が担当した。この作品でもシンセサイザーと混声合唱、打ち込み音楽をあわせたものであり、重要な局面においては館野直光アナウンサーの語りと相まった。そして、オープニング・テーマでは一定の旋律を転調しながら繰り返すのみのシンプルな楽曲であった。

映像では山奥の小さなせせらぎが小川となり、幾つかの滝や濁流を経て大河となって、やがて大海に注がれるといった演出がなされた。また、家康にゆかりのある日光の華厳滝なども登場した。

原作が大作であり、たくさんのエピソードが多く盛り込まれており、ドラマ展開がスピーディー過ぎてひとつひとつのエピソードが希薄な印象になりがちであった。第35回「太閤死す」では前半に関白・秀次の死があり、さらに後半に秀吉の死が描かれるという一回の放送分に大きな山場が二度あった。「初回から総集編を見せられているようだ」「もっとじっくりとした描き方を望む」との意見が新聞紙上に寄せられたこともある。さらに当初、重要な役どころだった登場人物がその役割を終えるや、後日譚もその死も全く語られない人物が幾人か見られる。

なおこの年、堪忍の心の家康、同年に放送された連続テレビ小説おしん』の我慢強さ、苦難を越えて横綱となった力士・隆の里とを合わせ、「おしん、家康、隆の里」という流行語も生まれた[1]

平均視聴率が31.2%、最高視聴率が37.4%という高い記録を残した。

キャステイングエピソード

  • 徳川家康 当初は小柄で丸顔、やや小太りという従来のイメージのもとキャスティング選考が行われた。リストアップされたのは緒形拳松平健中村梅之助江守徹。しかしながら、前者三人は前年度の大河『峠の群像』に出演しているため見送り、江守もスケジュールや家康の16歳時からの出演という条件には無理があり、こちらも実現出来なかった。代わってスタッフ間に浮上してきたのが「なにも家康のそっくりショーをやるわけではない。われわれの手で新しい家康像を作り出そうではないか」という声で、30代前半の俳優に的を絞り、実力本位で選考した結果、滝田栄に決定。かくて長身で面長、「最も家康に似ていない俳優」が家康役に決定した。なお、候補の1人だった中村梅之助は2年後のNHK大型時代劇『真田太平記』で家康を演じている。
  • 織田信長 「最後の時代劇大河」になるかも知れない、ということで有終の美を飾らんと番組のヒットを祈念するスタッフは信長役には大物俳優の起用を切望していた。その第一候補は当時の大人気歌手沢田研二である。この出演依頼に沢田も所属事務所の渡辺プロダクションも大乗り気。早速スケジュールの調整が行われたが沢田の予定は既に先の先まで埋まっており、拘束時間の長い時代劇大河の入り込む余地は殆んど無く、「出演不可能」の結論が出されたのは配役発表の一週間前[2]。トップ演出の大原誠はじめスタッフは急遽大物スターの起用を諦め、新人採用の方針に転換。時任三郎などが候補に挙がったが、最終的に端役ながら大河ドラマ出演の経験もあり、連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』で滝田とも共演済みで、NHKスタッフには既にその実力が認知されていた無名塾所属の役所広司に決定。放送後、NHKには問い合わせの電話が殺到、評判となった。送られてきたファンレターも番組出演者中最大量。「役所君の持つ、精悍さの中にある優しい瞳に我々は賭けたのだ」というスタッフの意気に応えた[1]

撮影エピソード

ドラマの戦闘シーンのロケは富士山麓と御殿場市で10日間かけて撮影された。兵士役はエキストラを招集し東京からバスでロケ地へ送迎していたが、撮影3日目に東名高速道路で起きた事故の影響で足止めに遭い、撮影の遅れが懸念された。やむを得ずチーフプロデューサーの澁谷康生をはじめ現場のスタッフ20名が衣装をつけ雑兵役に扮して撮影に臨み、6時間遅れでエキストラを乗せたバスが到着するまで、撮れることが可能なシーンを撮影して急場を凌いだ。[3]

スタッフ

出演

徳川家の人々

家康の正室・側室

家康の子女

徳川家の嫁・孫

親類たち

徳川家の家臣たち

幼少期(岡崎・駿府人質時代)

青年・壮年期(岡崎・浜松時代)

老年・晩年期(駿府・江戸時代)

家臣の家族・侍女たち

織田家の人々

織田家の家臣たち

豊臣家の人々

豊臣家の家臣たち

大老

中老

奉行

参謀

西軍諸将(関ヶ原戦役)

東軍諸将(関ヶ原戦役)

夫人たち

(秀吉死後の)豊臣家の家臣たち

大坂の陣で入城した浪人武将

今川家の人々

武田家の人々

諸大名と、その関係者

文化人たち

家康のブレーン

商人たち

その他

  • 木の実:紺野美沙子(納屋蕉庵の養女、架空の人物)
  • おみつ→栄の局:萬田久子(納屋蕉庵の養孫、のち豊臣秀頼の侍女、架空の人物)
  • お袖(小女郎):神崎愛(本阿弥光悦が石田三成の許へ間者として放った博多の遊女、のち三成の愛妾、架空の人物)
  • 於こう:加賀まりこ(本阿弥光悦の妹、大久保長安の愛妾、架空の人物)
  • 金蔵:倉田保昭(竹之内波太郎の配下の忍びの者)
  • 銀蔵:佐乃貢司(竹之内波太郎の配下の忍びの者)
  • 糟谷長閑:金井大(灸医師)
  • 大石村孫四郎:小島三児(伊賀大石村の百姓、伊賀越えの途上で家康一行が出逢った一揆の頭目)
  • 柘植三之丞:野口貴史(伊賀の地侍、伊賀越えをする家康一行に協力して警護・道案内にあたる)
  • 孫三:三谷昇(伊勢白子浜の漁師、伊賀越えを果たした家康一行の為に自分の船を提供する)
  • 近侍:江原正士
  • 明使:丸山詠二
  • 側室:小川菜摘
  • 老女:森康子
  • 侍医:谷津勲
  • その他:大木正司久保晶

放送

放送日程

放送回 放送日 演出
第1回 1月9日 竹千代誕生 大原誠
第2回 1月16日 離別 加藤郁雄
第3回 1月23日 人質略奪 松本守正
第4回 1月30日 忍従無限 大原誠
第5回 2月6日 人質交換 加藤郁雄
第6回 2月13日 試練の時 松本守正
第7回 2月20日 初陣 大原誠
第8回 2月27日 桶狭間 加藤郁雄
第9回 3月6日 岡崎入城 松本守正
第10回 3月13日 三河一向一揆 大原誠
第11回 3月20日 興亡の城 兼歳正英
第12回 3月27日 人生の岐路 加藤郁雄
第13回 4月3日 三方ヶ原合戦 大原誠
第14回 4月10日 父と子 松本守正
第15回 4月17日 陰謀 兼歳正英
第16回 4月24日 無常の風 加藤郁雄
第17回 5月1日 無血の勝利 国広和孝
第18回 5月8日 陰謀発覚 大原誠
第19回 5月15日 長篠の戦 松本守正
第20回 5月22日 難題 兼歳正英
第21回 5月29日 信康追放 加藤郁雄
第22回 6月5日 落花有情 松本守正
第23回 6月12日 安土への道 兼歳正英
第24回 6月19日 本能寺の変 大原誠
第25回 6月26日 伊賀越え
第26回 7月3日 次に吹く風 加藤郁雄
第27回 7月10日 小牧長久手の戦 松本守正
第28回 7月17日 数正出奔 国広和孝
第29回 7月24日 三河の意地 加藤郁雄
第30回 7月31日 両雄対面 大原誠
第31回 8月7日 妻ならぬ母 兼歳正英
第32回 8月14日 家康江戸入り 国広和孝
第33回 8月21日 戦雲動く 松本守正
第34回 8月28日 渦中の人 加藤郁雄
第35回 9月4日 太閤死す 大原誠
第36回 9月11日 分裂の芽 松本守正
第37回 9月18日 窮鳥猛鳥 高橋幸作
第38回 9月25日 機は熟す 加藤郁雄
第39回 10月2日 関ヶ原前夜 大原誠
第40回 10月9日 関ヶ原
第41回 10月16日 将軍家康 加藤郁雄
第42回 10月23日 世界の風 松本守正
第43回 10月30日 連判状の夢 大原誠
第44回 11月6日 騒動の根 加藤郁雄
第45回 11月13日 巨城の呼び声 松本守正
第46回 11月20日 老いの決断 加藤郁雄
第47回 11月27日 大坂 冬の陣 大原誠
第48回 12月4日 大坂 夏の陣 松本守正
第49回 12月11日 落城 加藤郁雄
最終回 12月18日 泰平への祈り 大原誠
平均視聴率 31.2%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)[8]

総集編

  1. 「忍従の日日」
  2. 「戦国無情」
  3. 「両雄対決」
  4. 「泰平への道」

メディア

  • 総集編: 3枚組 (DVD)
  • 完全版: 全7巻、13枚、50話 (DVD)

脚注

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外部リンク

  • NHKオンデマンド 大河ドラマ 徳川家康(現在のところ配信期間は、初回から第10話までが2015年2月28日、第11話から第20話までが2015年3月31日、第21話から第30話までが2015年4月30日、第31話から第40話までが2015年5月31日、第41話以降が2015年6月30日までとなっている)

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  1. 1.0 1.1 参考・出典 大原誠・著「NHK大河ドラマの歳月」日本放送出版協会
  2. 沢田は翌年の大河ドラマ「山河燃ゆ」に出演している。
  3. 「NHK大河ドラマストーリー 徳川家康」(日本放送出版協会、1982年)p114-115参照。
  4. タイトル音楽は1話から5話までのものと、6話以降のものとは別のバージョンになっている
  5. 独眼竜政宗』においても徳川秀忠を演じている
  6. 岸田森の予定だったが、死去のため変更
  7. 沖雅也の予定だったが、死去のため変更。『独眼竜政宗』においても真田幸村を演じている
  8. ビデオリサーチ NHK大河ドラマ 過去の視聴率データ