後天性免疫不全症候群

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テンプレート:半保護 テンプレート:Infobox disease 後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん、Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症のことである[1]。一般にエイズAIDS)の略称で知られている。性行為感染症の一つ。

HIVに感染した時点ではAIDSの発症とは言えないが、ここではHIV感染症全般の事柄についても記述する。ウイルスとしてのHIVについてはHIVを参照。

歴史

テンプレート:Main HIVの起源はカメルーンチンパンジーという説が有力であり[2] 、そこから人に感染して世界中に広まっていったと考えられている。1981年にアメリカのロサンゼルスに住む同性愛男性(ゲイ)に初めて発見され症例報告された。ただし、これはエイズと正式に認定できる初めての例で、疑わしき症例は1950年代から報告されており、「やせ病」(slimming disease)という疾患群が中部アフリカ各地で報告されていた。1981年の症例報告後、わずか10年程度で感染者は世界中に100万人にまで広がっていった。

当初、アメリカでエイズが広がり始めたころ、原因不明の死の病に対する恐怖感に加えて、感染者にゲイや麻薬の常習者が多かったことから感染者に対して社会的な偏見が持たれたことがあった。現在は病原体としてHIVが同定され、異性間性行為による感染や出産時の母子感染も起こり得ることが知られるようになり、広く一般的な問題として受け止められている[3]

疫学

世界

現在全世界でのヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者は5千万人に達すると言われている。その拡大のほとんどがアジアアフリカ地域の開発途上国において見られる。サハラ以南のアフリカには全世界の60%近くのエイズ患者がいるといわれ[4]、増加傾向にある。また一部の開発途上国では上昇していた平均寿命が低下しているという現状がある。近年では中国インドインドネシアにおいて急速に感染の拡大が生じて社会問題化している。

ファイル:Life expectancy in some Southern African countries 1958 to 2003.png
アフリカの深刻な国における平均寿命の変遷

アフリカ

AIDSが最も猛威を振るっている地域はサハラ以南のアフリカ、いわゆるブラックアフリカである。2002年末においては全世界4200万人の患者のうち、アフリカが2940万人(70%)を占め、圧倒的に多い。同年のAIDS新規感染者は全世界で500万人、うちアフリカが350万人。同年のエイズ死亡者は全世界で310万人で、うちアフリカは240万人、77.4%を占めている[5]。このうち中東圏に属する北アフリカではAIDS患者がほとんどいないため、この数値のほとんどはブラックアフリカにおける数値である。その中でももっとも被害の激しいのは南部アフリカであり、上図にもあるように南アフリカ共和国ナミビアボツワナスワジランドレソトジンバブエザンビアの7か国においては人口の15%以上が感染している。最も人口に対する感染率が高いのはボツワナであり、2001年末においては成人人口の38.8%がエイズに感染している。この影響により、上図のように南部アフリカ諸国においては1990年代以降AIDSによる死者の急増によって平均寿命が急速に落ち込み、ボツワナにおいては20歳以上平均寿命が短縮してしまった。

1986年にはウガンダが感染率5%を超えていたものの、それ以外に感染率5%を超えるような国はなかった。しかし1991年にはウガンダ、ザンビア、ジンバブエで感染率が20%を超え、1996年にはボツワナ、スワジランド、レソトで20%を超え、2001年には上記の状況となったように、感染は急速に拡大していった。

アフリカにおける感染拡大は、他地域と異なり異性間の性行為によるものが圧倒的に多い。これは性的な寛容さや女性の地位の低さなどによると考えられている[6]。また、AIDSに対する知識の低さや迷信、貧困戦争による影響も感染拡大の一因とされている。現在では治療薬によって病状を食い止めることは可能になっているものの、アフリカの多くの国においては貧困のためそれらの治療薬を入手することができない患者が多い。AIDSによる死者は働き盛りの男女が多いため、死亡率が急速に上昇した国々においては労働人口の減少を招き、経済に悪影響を招いている。一方で、ウガンダのように政府によるプログラムが功を奏し感染率の減少した国[7]や、ボツワナのように患者に対するケアの体制を整えられた国も存在する[8]

日本

1985年、初めてAIDS患者が確認され、1989年2月17日、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」が施行。当初は大半が凝固因子製剤による感染症例(薬害エイズ事件)だった。

新規HIV感染者数は世界でも特に少ない水準にあるが、年々増加する傾向にある。日本人患者・感染者の現状は、同性間性的接触(男性同性愛)による感染が多く、ついで異性間性行為による感染が続いている。静注薬物濫用や母子感染によるものは少ない。

臨床像

急性感染期

HIVの初期感染像はCDC分類にでは以下がある。いずれも感染後2-4週で起こるといわれ、多くの場合、数日 - 10週間程度で症状は軽くなり、長期の無症候性感染期に入るため、感染には気付きにくい。

  • 急性感染 (Acute seroconversion) - 伝染性単核球症様あるいはインフルエンザ様症状
  • 無症候性感染
  • 持続性全身性リンパ節腫脹 (PGL)
  • その他の疾患合併

上記以外にも、突然の全身性の斑状丘疹状の発疹(maculopapular rash)や、ウイルス量が急激に増加し重症化する例では、多発性神経炎、無菌性髄膜炎脳炎症状などの急性症状を示す場合もある。しかしながら、これらの症状はHIV感染症特有のものではなく、他の感染症や疾病においても起こりうる症状であることから、症状だけで判断することは困難である。

感染後、数週間から1か月程度で抗体が産生され、ウイルス濃度は激減する。一般のHIV感染検査はこの産生される抗体の有無を検査するため、感染後数週間、人によっては1か月程度経過してからでないと十分な抗体が測定されないため、検査結果が陰性となる場合がある(ウインドウ期間 ※詳しくは検査を参照)。

無症候期

多くの人は急性感染期を過ぎて症状が軽快し、だいたい5 - 10年は無症状で過ごす。この間、見た目は健康そのものに見えるものの、体内でHIVが盛んに増殖を繰り返す一方で、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞がそれに見合うだけ作られ、ウイルスがCD4陽性T細胞に感染し破壊するプロセスが繰り返されるため、見かけ上の血中ウイルス濃度が低く抑えられているという動的な平衡状態にある。無症候期を通じてCD4陽性T細胞数は徐々に減少していってしまう。無症候期にある感染者は無症候性キャリア(AC)とも呼ばれる。

またこの期間に、自己免疫性疾患に似た症状を呈することが多いことも報告されている。他にも帯状疱疹を繰り返し発症する場合も多い。

発病期

血液中のCD4陽性T細胞がある程度まで減少していくと、身体的に免疫力低下症状を呈するようになる。

多くの場合、最初は全身倦怠感、体重の急激な減少、慢性的な下痢、極度の過労、帯状疱疹、過呼吸、めまい、発疹、口内炎、発熱、喉炎症、咳など、風邪によく似た症状のエイズ関連症状を呈する。また、顔面から全身にかけての脂漏性皮膚炎などもこの時期に見られる。大抵これらの症状によって医療機関を訪れ、検査結果からHIV感染が判明してくる。

その後、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞の減少と同時に、普通の人間生活ではかからないような多くの日和見感染を生じ、ニューモシスチス肺炎(旧 カリニ肺炎)やカポジ肉腫悪性リンパ腫皮膚がんなどの悪性腫瘍サイトメガロウイルスによる身体の異常等、生命に危険が及ぶ症状を呈してくる。また、HIV感染細胞が中枢神経系組織へ浸潤(しんじゅん)し、脳の神経細胞が冒されるとHIV脳症と呼ばれ、精神障害認知症、ひどい場合は記憶喪失を引き起こすこともある。

通常感染してから長期間経過した後に以下の23の疾患(AIDS指標疾患という)のいずれかを発症した場合にAIDS発症と判断される。

感染経路

HIVは通常の環境では非常に弱いウイルスであり、一般に普通の社会生活をしている分には感染者と暮らしたとしてもまず感染することはない。

一般に感染源となりうるだけのウイルスの濃度をもっている体液は血液精液膣分泌液母乳が挙げられる。一般に感染しやすい部位としては粘膜(腸粘膜、膣粘膜など)、切創(せっそう)や刺創(しそう)などの血管に達するような深い傷などがあり、通常の傷のない皮膚からは侵入することはない。そのため、主な感染経路は以下の3つに限られている。

性的感染

性交による感染では、性分泌液に接触することが最大の原因である。通常の性交では、女性は精液が膣粘膜に直接接触し血液中にHIVが侵入することで感染する。男性は性交によって亀頭に目に見えない細かいができ、そこに膣分泌液が直接接触し血液中にHIVが侵入する事で感染する。そのため、性交でなくても性器同士を擦り合わせるような行為でもHIV感染が起こる恐れがある。また肛門性交では粘膜に精液が接触しそこから感染するとされている。腸の粘膜は一層であるため薄く、HIVが侵入しやすいため、膣性交よりも感染リスクが高い。 コンドームの着用がHIVの性的感染の予防措置として有効である。ただし使用中に破れたり、劣化した物を気付かずに使用する場合があるため、完全に感染を防ぐことができるとはいえない。コンドームの使用に際しては、信頼できる製品を使用期限内に正しい用法で用いることが推奨される。 また割礼によって感染リスクが低減するという研究結果が複数ある。傷つきやすく、免疫関連細胞の多い包皮を切除することで、HIVの侵入・感染が抑えられるためだと考えられている。 なお口腔性器を愛撫する場合も、口腔内に歯磨きなどで微小な傷が生じていることが多く、そこに性液が接触することで、血液中にウイルスが侵入する恐れがある。

血液感染

感染者の血液が、輸血麻薬まわし打ち等によって、血液中に侵入することで感染が成立する。特に麻薬・覚醒剤中毒者間の注射器・注射針の使い回しは感染率が際立って高い。以前は輸血血液製剤からの感染があったが、現在では全ての血液が事前にHIV感染の有無を検査され、感染のリスクは非常に低くなっている。医療現場においては、針刺し事故等の医療事故による感染が懸念され、十分な注意が必要である。

母子感染

母子感染の経路としては三つの経路がある。出産時の産道感染、母乳の授乳による感染、妊娠中に胎児が感染する経路である。 産道感染は子供が産まれてくる際、産道出血による血液を子供が浴びることで起こる。感染を避ける方法として、帝王切開を行い母親の血液を付着させない方法があり、効果を上げている。母乳による感染が報告されており、HIVに感染した母親の母乳を与えることは危険とされている。この場合は子供に粉ミルクを与えることによって、感染を回避することができる。胎内感染は、胎盤を通じ子宮内で子供がHIVに感染することで起こる。物理的な遮断ができないため、感染を回避することが難しい。感染を避ける方法として、妊娠中に母親がHAART療法により血中のウイルス量を下げ、子供に感染する確率を減らす方法がとられている。

検査

日本での検査方法は、日本エイズ学会による「HIV-1/2 感染症の診断ガイドライン」が広く用いられている。

種類

  • 血清抗体検査
    • PA法(粒子凝集法)
    • ELISA法(酵素抗体法)
    • CLEIA法(化学発光酵素免疫法)
    • IC法(免疫クロマトグラフィー法)
    • IFA法(間接蛍光抗体法)
    • Western Blot法
  • 血清抗原検査
    • 抗原抗体法(HIV-1 p24抗原検査)
  • 核酸増幅検査
    • HIV-1 PCR法(リアルタイムPCR法:RT-PCR法)
    • HIV-1 proviral DNA法
    • NAT(Nucleic acid Amplification Test)

検査機関

HIVに感染しているかの検査は居住地に関係なく全国の保健所で匿名・無料で受ける事が出来る[9]。都市部の保健所では、夜間や休日にも検査を行っている所があり、仕事や学業に影響を与えず検査できる体制を整えつつある。また、医療機関でも実費負担で検査を受けられる所がある。

結果はおよそ一週間ほどで判明するが、近年は30分以内で判明する即日検査も普及し始めている。通常は抗体スクリーニング検査が行なわれるが、より感度が高くウインドウ期間の短いNAT検査(詳細は後述)を実施している保健所や医療機関もある。

方法

血液を採取して以下の検査が行なわれる。

  • スクリーニング(通常の抗体検査)
一般にスクリーニング用検査キットとして様々なものが市販されているが、ELISA法またはPA法によるHIV-1抗体・HIV-2抗体・HIV-1 p24抗原が同時測定が可能な第4世代キットが広く用いられるようになってきている。
検査時期としては、「感染の機会があってから3か月(検査機関により異なる)以上経過した後」での検査が推奨される。これはHIVの感染初期においては抗体が十分に作られず、血液検査では検出できない期間があるためであり、この期間は「ウインドウ期間(ウインドウピリオド・空白期間)」と呼ばれている。ウインドウ期間には個人差があり、スクリーニングでの検出が可能なほど血中の抗体が十分に増加するまでに通常1 - 3か月かかるとされている[10]。この間に検査を行った場合、HIVに感染していても陰性(感染なし)と判断されてしまうため、ウインドウ期間が最大の場合を考慮し3か月以上としている。
ウイルス遺伝子である核酸を検知できるほどに複製する方法で、通常のスクリーニング検査と比較してウインドウ期間の短縮が可能である[11]。一部の検査機関では抗体検査と同時に実施されており、「感染の機会があってから2か月以上経過した後」で信頼できる結果が得られる。後述する献血においても実施されている。
  • 確定診断
上記検査にて陽性となった場合、「Western Blot法によるHIV-1抗体・HIV-2抗体検査」と「HIV-1 PCR法検査」を施行し診断していく。一般的なスクリーニング検査では約0.3%、即日検査では約1%の確率で、HIVに感染していないにも関わらず陽性結果となる偽陽性が発生する[12]ため、確定診断は重要である。
  • 感染後経過
HIV-1 PCR法によるウイルス量測定と、フローサイトメトリー法によるCD4陽性細胞数検査が行われる。CD4数は現在の病態を反映する数値である。正常ならば800 - 1200個/μlであるが、HIVに感染すると徐々に低下していく。500個/μl程度では帯状疱疹結核カポジ肉腫非ホジキンリンパ腫、200個/μl程度ではニューモシスチス肺炎トキソプラズマ脳症、100個/μlではクリプトコッカス髄膜炎、50個/μlではサイトメガロウイルス非定型抗酸菌症を起こしやすいとされている。

献血における検査

献血で採取された血液からHIVやその他のウイルスの感染の有無を調べるため、日本赤十字社による献血では現在、抗体検査やNAT検査が行われている。

  • 検査目的の献血について
献血においては安全性の面から上述の検査を行っているが「検査目的の献血」を防ぐことから、HIVの感染においては陽性であってもその結果は献血者本人に知らせることはない。日本赤十字社では感染リスク後の献血は遠慮を願うとしており、HIV検査をする場合は保健所等で行うようにとしている[13]
  • 献血で行なわれる検査の詳細
NAT検査では、感染初期の体内でウイルスが増加するウイルス血症に陥ってから(感染直後 - 1か月ほどと個人差がある)、平均11日( - 22日)以降に検出可能であり、通常の抗体検査ではNAT検査より時間がかかり平均22日以降[10](感染後4日 - 41日の間に抗体の陽性化が起きるケースは95%である[14])で検出が可能となる。NATで検出が出来ない期間を「NATウインドウ期間」、抗体による検査で検出ができない期間を「血清学的ウインドウ期間」という。そのため、ウイルス血症の発生時期やウインドウ期間に個人差があることなども考慮して感染が疑われる機会があった場合は、それから最低でも2か月以上経過した後に保健所などで抗体検査を行ってから献血を行うことが望まれる。
現在、NATは試薬が大変高価で検査費用が高いこと、完全自動化されておらず一度に大量の検査ができないため、20検体を1つにプールしてNATを実施し(ミニプールNATと呼ばれている)、あるプール検体が陽性となった場合はプールされている20検体に対し、個別に再検査を実施し(個別NATと呼ばれている)、陽性の検体を特定して、その検体に対応する血液のみを輸血に使用しないという方法をとっている。

治療

現在、抗HIV薬は様々なものが開発され、著しい発展を遂げてきている。基本的に多剤併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy:HAART療法)にて治療は行われる。ただ完治・治癒に至ることは現在でも困難であるため、抗ウイルス薬治療は開始すれば一生継続する必要がある。

それでも現在では、HIV感染と診断されても、適切な治療を受ければ通常の寿命を全うすることが十分可能となっている[15]

ガイドライン

一般に、アメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)の治療ガイドラインが世界的に広く用いられている。 主なガイドラインには以下が存在する。

  • US DHHS Guidelinesアメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)による 成人・妊婦・小児と別れて存在する
    • Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-1-Infected Adults and Adolescents-1-Infected
    • Recommendations for Use of Antiretroviral Drugs in Pregnant HIV-1-Infected Women for Maternal Health and Interventions to Reduce Perinatal HIV Transmission
    • Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection
    • Guidelines for Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in HIV-Infected Adults and Adolescents
    • Guidelines for Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Children Guidelines
  • HIV感染症治療の手引き:日本のHIV感染症治療研究会による
  • Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection:英国HIV学会(BHIVA)による
  • Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection:アメリカ国際エイズ学会(International AIDS Society–USA)による
  • HIV GUIDEジョンズ・ホプキンス大学エイズサービス(Johns Hopkins AIDS Service)による

治療開始

※US DHHS Adult and Adolescent Guidelinesによる

治療薬

現在以下のような種類のHIVに対する抗ウイルス薬が存在する。

治療方法

基本的に、世界的に広く感染している「HIV-1」に対する治療について主に記述する。「HIV-2」に関しては同じような治療であるがNNRTIは効果が薄い等の違いがある。

アメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)の治療ガイドライン」における推奨レジメンは以下の通りである。

推奨レジメン(Preferred Regimens)
NNRTIを基本としたレジメン EFV/TDF/FTC1
PIを基本としたレジメン ATV/r+TDF/FTC1
DRV/r+TDF/FTC1
INSTIを基本としたレジメン RAL+TDF/FTC1
妊婦に対するレジメン LPV/r+ZDV/3TC1
代替レジメン(Alternative Regimens)
NNRTIを基本としたレジメン EFV+(ABC or ZDV)/3TC1
NVP+ZDV/3TC1
PIを基本としたレジメン ATV/r+(ABC or ZDV)/3TC1
FPV/r+[(ABC or ZDV)/3TC1] or TDF/FTC1
LPV/r+[(ABC or ZDV)/3TC1] or TDF/FTC1
SQV/r + TDF/FTC1
許容レジメン(Acceptable Regimens)
NNRTIを基本としたレジメン EFV+ddI+(3TC or FTC)
PIを基本としたレジメン ATV+(ABC or ZDV)/3TC1
許容されるがデータが必要なレジメン
(Regimens that may be acceptable but more definitive data are needed)
CCR5拮抗薬を基本としたレジメン EFV+ddI+(3TC or FTC)
INSTIを基本としたレジメン RAL+(ABC or ZDV)/3TC1
注意して使用するレジメン(Regimens to be Used with Caution)
NNRTIを基本としたレジメン NVP+ABC/3TC1
NVP+TDF/FTC1
PIを基本としたレジメン FPV+[(ABC or ZDV)/3TC1 or TDF/FTC1]

日本の「HIV感染症治療研究会によるHIV感染症治療の手引き」における推奨レジメンは以下の通りである。 キードラッグ(NNRTI or PI)とバックボーンドラッグ(2-NRTI)から1つずつ選択し併用する。

キードラッグ
NNRTI 好ましい薬剤 EFV
その他の薬剤 NVP
PI 好ましい薬剤 ATV+RTV
DRV+RTV
FPV+RTV
LPV/RTV
その他の薬剤 ATV
FPV+RTV
FPV
SQV+RTV



 

バックボーンドラッグ
2-NRTI 好ましい薬剤 ABC/3TC
TDF/FTC
その他の薬剤 AZT/3TC
ddI+3TC

免疫機能障害ということで都道府県に申請することにより身体障害者手帳が交付される。

免疫不全の患者は、感染量に比べると炎症は実は軽度であり、日和見感染症治療中にHAART療法を開始すると免疫が賦活化することによって、日和見感染症が悪化することがある。これを「免疫再構築症候群(IRIS アイリス)」と呼ぶ。この危険を避けるため、HAART療法は日和見感染症治療後に開始することとなる。

HAART療法は、安定期まで持っていければ、ほとんどAIDSで死亡することはなくなった。ガイドラインで用いられているデータも、10年生存率まで記載されており、おそらく平均余命まで行くであろうというのが、大方の予想である(HIVの発見が1981年ということを考えると、ここまでデータがあれば十分である)。

現在のHIV療法である多剤併用療法は、決して根治的な療法ではなく、血中のウイルス量が検出限界以下となっても、依然としてリンパ節や、中枢神経系などにウイルスが駆逐されずに残存(Latent Reservoir)していることが知られており、服薬を中止すると直ちにウイルスのリバウンドが起こってくる等の問題がある。基本的にHAART療法は、一生継続しなければならない。

有名な副作用としては、開始直後から出現し徐々に軽快する胃腸障害や精神障害、開始後1 - 3週で一過性に生じる皮疹、開始後1カ月以上経過してから生じ、持続する高脂血症、リポアトロフィー(脂肪分布の変化)、糖代謝異常(高脂血症と併せて年間30%リスクで虚血性心疾患のリスクが高まる、かつ、PIとNNRTIはスタチン系と併用禁忌)、末梢神経障害、まれだが重篤な乳酸アシドーシス(NRTIにてミトコンドリアDNA合成を阻害するため)などが知られている。

予後

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脚注

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参考文献

関連項目

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外部リンク


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  1. テンプレート:Cite web
  2. テンプレート:Cite journal
  3. エイズ情報net:疫学
  4. Fact sheet
  5. 「アフリカ経済論」p195-196 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
  6. 「アフリカ 苦悩する大陸」ロバート・ゲスト著 伊藤真訳 2008年5月15日 東洋経済新報社 p106-107
  7. 「アフリカ 苦悩する大陸」ロバート・ゲスト著 伊藤真訳 2008年5月15日 東洋経済新報社 p99-110
  8. 「アフリカ 苦悩する大陸」ロバート・ゲスト著 伊藤真訳 2008年5月15日 東洋経済新報社 p178
  9. HIV検査・相談マップ
  10. 10.0 10.1 HIV検査まめ知識(HIV検査・相談マップ)
  11. 核酸増幅試験(社団法人 日本血液製剤協会)
  12. HIV検査Q&A(HIV検査・相談マップ)
  13. テンプレート:Cite web
  14. ふたつのウインドウ・ピリオドとは
  15. CNNニュースの転載