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平坦性問題
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'''平坦性問題'''(へいたんせいもんだい、flatness problem)とは[[ビッグバン]][[宇宙論]]における微調整問題の一つである。[[宇宙のインフレーション]]仮説によって解決される。 膨張宇宙では、宇宙内部に含まれる物質や[[エネルギー]]によって作られる重力場によって宇宙膨張が減速を受ける傾向にある。宇宙に十分多くの[[質量]]が存在すれば、膨張は最終的に止まって宇宙は収縮に向かい、[[ビッグクランチ]]と呼ばれる[[特異点]]に達する。このような宇宙の時空は正の[[曲率]]を持ち、「[[閉じた宇宙]]」と呼ばれる。それほど多くの質量がなければ、宇宙は単純に永遠に膨張を続けることになる。このような宇宙の時空は負の曲率を持ち、「開いた宇宙」と呼ばれる。両者の中間、すなわち宇宙の膨張率が0に向かって漸近するような宇宙は曲率0の時空を持ち、「平坦な宇宙」と呼ばれる。平坦な宇宙のエネルギー密度ρ<sub>c</sub>を'''臨界密度'''と呼び、 <math>\rho_c=\frac{3H^2}{8\pi G}=1.9\times 10^{-29}h^2</math>[g/cm<sup>-3</sup>] で与えられる。ここでhは[[ハッブルの法則|ハッブル定数]]を100[km/s/M[[パーセク|pc]]]で割った量(ハッブルパラメータ)である。観測から、現在の宇宙に於けるhの値は0.72程度なので、臨界密度ρ<sub>c</sub>は約 1 × 10<sup>-29</sup> g/cm<sup>-3</sup> である。宇宙の実際の密度とこの臨界密度との比を'''密度パラメータ'''と呼び、記号 '''Ω''' で表す。 (注:開いた空間ではビッグクランチは行われない。現宇宙が閉じた空間なのか開いた空間なのかは現宇宙の末端が発見されていない以上確定は出来ない。現宇宙が閉じた空間である事を前提にΩ が 1.0前後という事になる) [[2005年]]現在の観測結果によると、Ω は 0.98 と 1.06 の間にあるとされている。言い換えれば、現在の我々の宇宙の密度は臨界密度に非常に近いか、あるいは正確に臨界密度に一致している。しかし宇宙論の基礎方程式から、もし宇宙のごく初期に Ω が 1 よりわずかに大きい値から始まったとすると、宇宙はあっという間につぶれてビッグクランチに達してしまうことが知られている。逆に Ω が1よりわずかに小さな値から始まったとすると、宇宙は非常に速く膨張してしまい、[[恒星]]や[[銀河]]が形成される時間がなかったはずである。宇宙創生から約140億年が経過している現在でもなお Ω が非常に1に近い値をとるためには、宇宙創生直後の Ω は約 10<sup>15</sup>分の1の精度で1に一致していた必要がある。 標準的なビッグバン理論では初期の宇宙のエネルギー密度はどんな値をとっていてもかまわないため、このように Ω が1に非常に近い状態から始まった必然性を説明できない。この問題は平坦性問題と呼ばれ、[[1960年代]]から[[1970年代]]にかけて、地平線問題と並ぶビッグバン理論の未解決問題とされてきた。 この問題は[[1980年代]]初めに提唱されたインフレーション宇宙の仮説によって解決される。インフレーション宇宙論では、宇宙が生まれた直後に宇宙のサイズが[[指数関数]]的に膨張する。よって、元々の宇宙が平坦でないどんな曲率を持っていたとしてもこのようなインフレーションの過程によって極端に引き伸ばされて平坦化され、宇宙の密度は自然に臨界密度にほぼ一致する値をとることになる。 ==関連項目== * [[地平線問題]] [[Category:宇宙論・宇宙物理学|へいたんせいもんたい]]
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