島桂次

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テンプレート:Infobox 人物 島 桂次(しま けいじ、1927年8月30日 - 1996年6月23日)は、第15代NHK会長、元NHK記者。栃木県出身。

シマゲジのニックネームでも知られた。

来歴・人物

東北大学文学部卒業。1952年NHKに入局、初任地はNHK盛岡放送局。社内で酔っ払って夜勤のアナウンサーを殴って気絶させてしまい、ニュースの時間を島自らが音楽をかけ続けてやり過ごしたという話が残っている。政治部記者となり池田勇人田中角栄を始めとする政治家と親交を深め自由民主党と強いパイプを築き、「自民党の代理店」と呼ばれた[1]

NHK元会長の海老沢勝二は政治記者時代の部下であり、海老沢の出世は島による引き立てが大きかったと言われる。

1981年2月4日、『ニュースセンター9時』で放送を予定していた特集「ロッキード事件五年-田中角栄の光と影」で政治関連部分の一部が突如業務命令で放送中止になるといういわゆる「ロッキード・三木発言カット事件」が起きた。業務命令を発したのは当時報道局長だった島で、この事件を利用して自分に敵対的な人物に日本放送労働組合委員長だった上田哲の派閥というレッテルを貼ることで一掃したと言われている。この事件を機に島はNHKでの主導権を確立した。強いリーダーシップを発揮し、あさま山荘事件では長時間中断なしの放映を決断させたと言われる。坂本、池田体制での実権は島が掌握していたといわれる。 テンプレート:See also 1989年4月、NHK会長に就任。任期中は衛星放送の本放送を開始したり、NHKエンタープライズなどの関連団体を活用した商業化路線を進めたりした。

しかし、NHKの商業化路線は民放各社に強い警戒感を抱かせ、国際メディア・コーポレーション(MICO)の設立に民放各社が協力しなかったり、グローバルニュースネットワーク(GNN)構想が頓挫したりした。 テンプレート:See also

島によるNHK商業化路線は、NHKに民間の手法を導入することによって番組の質を向上させ、受信料に頼らない経営で国際的なメディア戦争に生き残ろうとしたとの評価がある一方、金儲け第一主義で公共放送のあり方を歪め、2004年から相次いだ不祥事の元凶をつくったとする批判もある(その後を継いだ川口幹夫は島の路線を否定した)。

1991年4月、放送衛星の打ち上げ失敗の問題を巡って、国会の逓信委員会で滞在場所について虚偽の答弁をしたことが問題となり(愛人と同席していたという報道もあった)、7月に会長職を引責辞任した。この問題を追及したのは当時逓信委員長だった野中広務であり、島の追い落としには海老沢と自民党経世会(竹下派)の動きがあったともされている。

会長辞任後はインターネットによる情報発信に関心を移し、島メディアネットワークを設立した。また、政治記者だった経験を生かして政治評論家としても活動していた。1996年6月23日、急性呼吸不全のため68歳で死去。

逸話

1960年、島はアメリカのルーズベルト大統領の例にならって党首の演説会をテレビでやろうと発案、その企画実現に奔走した。当時は立会い演説会が一般的であった。マスコミ嫌いで知られた池田勇人首相と懇意だった関係で「これからは政治家もマスコミに顔を出して、直接国民と話さなければ駄目ですよ」等と何とか説得。これにより民社党委員長・西尾末広日本社会党委員長・浅沼稲次郎も出ざるを得なくなり、三党による党首立会演説会が実現した。

これが同年10月12日、有名な浅沼稲次郎暗殺事件があった演説会である。当日の島は官邸記者クラブの招待で川崎球場日本シリーズを観戦していて事件をラジオで知り、慌てて首相官邸に着くと池田から「お前がよけいなことを企画するから、えらいことが起こったんだぞ」と怒鳴り散らされたという。NHKは浅沼刺殺の瞬間を直後のテレビニュースで放送した。これは一国の公党の党首が公衆の面前で暗殺され、その映像が全国に伝わるというテレビ報道にとってひとつのエポックとなった[2]

脚注

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著書

  • 『シマゲジ風雲録―放送と権力・40年』 文藝春秋、1995年2月。ISBN 9784163499406
  • 『電子の火 インターネットで世界はどう変わるか』 明日香新社 (出版社)、1995年8月。ISBN 978-4870312241

関連項目

参考文献

  • 高橋健二 『ハイビジョン NHKの陰謀―松下電器の思惑 ソニーの打算』 光文社、1992年。ISBN 9784334012632
  • 松田博 『NHK―問われる公共放送』 岩波書店、2005年、104-112頁。ISBN 4004309476
  • 小野善邦 『本気で巨大メディアを変えようとした男―異色NHK会長「シマゲジ」』現代書館、2009年。ISBN 4768456073

外部リンク

  • TOKYO KALEIDO SCOOP - 株式会社ウェブキャスター(旧・島メディアネットワーク)が運営しているサイト
  • 池田信夫blog - 島の描いたNHK民営化について

テンプレート:日本放送協会歴代会長

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  1. 特に池田以来の「宏池会」との関係は強力だった。同じく自民党有力者たちとのパイプで知られる読売新聞の渡邉恒雄は、宏池会だけは島の牙城で、うかつに手を出せなかったと語っている。『渡邉恒雄回顧録』(御厨貴・伊藤隆編、中央公論新社、2000年)を参照。
  2. 『シマゲジ風雲録―放送と権力・40年』 145-147頁