小中一貫教育

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小中一貫教育(しょうちゅういっかんきょういく)とは、初等教育(一般の小学校で行なわれている教育)と前期中等教育(一般の中学校で行なわれている教育)の課程を調整し、無駄をはぶいて一貫性を持たせた体系的な教育方式のことである。また、これを行なっている学校を小中一貫校(しょうちゅういっかんこう)という。

無試験で上級学校に進学する学校を俗に「エスカレーター式」「エレベーター式」と呼ぶこともあるため、小中一貫校もこのように呼ばれることがある。

上記記載されている事とは別に、過疎地などでは小学校と中学校で校舎・敷地を共用する小中併設校(小中併置校)が存在する。このような形態の学校では一部の行事などを小・中学校合同で実施することがある。校長も小学校・中学校で兼任の場合も多い。

設置形態

小中一貫教育には、次に掲げる3つの設置形態がある[1]

  • 施設一体型
    • 同一の校舎内に小学校及び中学校の全学年(9学年)があり、組織・運営ともに一体的に小中一貫教育を行う
    • 学校施設は、新規に施設を建設し、又は既存の施設を改築する必要がある
    • 組織運営は、小中学校の教育職員が一体となって教育活動を実施
  • 施設隣接型
    • 隣接する小学校及び中学校で、教育課程及び教育目標に一貫性をもたせる
    • 学校行事を小学校及び中学校で合同実施
    • 一体感のある教育活動を実施
  • 施設分離型
    • 離れた場所にある小学校及び中学校で、教育課程及び教育目標に一貫性をもたせる
    • 小中学校で互いに連携を図りながら教育活動を実施

小中連携

小中連携とは、小学校及び中学校が各々別個である「6・3制」を前提に、教育課程及び制度をそのままにして、教育課程及び教育目標の共通部分に関し、協同する取り組みを行い、小学校と中学校の教職員の交流や連携を密にしていくことをいう。具体的には以下の通りである[2]

小中一貫の教員免許資格取得方法

教育職員免許法 の規定により、小学校教諭一種免許状及び中学校教諭一種免許状の両方を併せ取得する方法は、次の通りである[3]

  • 教科に関する科目についての単位修得方法
  • 教職に関する科目についての単位修得方法は、小学校教諭一種免許状の41単位及び中学校教諭一種免許状の31単位であり、小学校教諭一種免許状と中学校教諭一種免許状との間での教職に関する専門科目の単位の修得方法の相違点は次の通りである。
    • 教育の理念並びに教育に関する歴史及び思想のうち教育原理については、幼稚園・小学校の教育を中心とする初等教育原理と、中学校・高等学校の教育を中心とする中等教育原理の両方の単位修得を必要とする。
    • 幼児・児童・生徒の発達及び学習の過程のうち発達心理学の単位修得については、幼稚園・小学校用の児童心理学と中学校・高等学校用の青年心理学については、小中間でダブルカウントできない。
    • 各教科の指導法(教科教育法)の単位修得方法は、小学校教諭一種免許状を取得する場合は小学校9教科の指導について各2単位以上、中学校教諭一種免許状を取得する場合は取得しようとする免許教科ごとに修得する。
    • 教育実習については、幼稚園又は小学校での教育実習と、中学校又は高等学校での教育実習両方が必要となる。
      • 教育に関する社会的、制度的又は経営的事項(教育法・教育行財政学・教育社会学・学校経営学)について6単位以上

教員養成を目的とする大学・学部の学生は小学校及び中学校の両方の教諭の一種免許状を取得できるが、年間履修単位数がはなはだしく膨れあがる一方、教員養成を目的としない一般大学では、中学校及び高等学校の両方の教諭の一種免許状、あるいは幼稚園及び小学校の両方の教諭の一種免許状のいずれかしか取得できない[4]。よって教育職員免許法での認定課程制度及び単位修得方法により、大学(特に一般大学)で小学校及び中学校の両方の教諭の普通免許状を同時に取得するのは、とても厳しいか、又は全くできない

小中一貫教育校無免許授業担当事件

2013年8月に、長野県松本市の私立小中一貫教育校才教学園小学校・中学校で、中学校教諭の普通免許状しか所持し、小学校教諭特別免許状を有しない者が小学校の学級を担任したり、小学校教諭の普通免許状しか所持しない者が中学校の授業を担任するなどの事件がおきた[5]

外国の小中一貫教育学校

ドイツの小中一貫教育学校

ドイツ連邦共和国では、4年制の基礎学校(グルンドシューレ)修了後、5年制の基幹学校(ハウプトシューレ、高等小学校相当)、6年制の実科学校(レアルシューレ、中学校相当)又は中高一貫のギムナジウム(中等教育学校相当)に進学する。そのうち基幹学校は、基礎学校とともに、かつてはフォルクスシューレ(国民学校)を構成し、1964年10月28日ハンブルク協定による校種名変更後[6]は、フォルクスシューレは基礎学校と基幹学校を併せた通称とされ、9年制小中一貫教育校である。

1919年ヴァイマル憲法Weimarer Verfassung)第145条では、義務教育履行のため8年制のフォルクスシューレ(小中一貫制)と、満18歳に達するまでの職業学校を設けることが明記された[7]

ドイツのフォルクスシューレの修業年限は、従前は8年間(Unterstufe(下級段階、現在の基礎学校)4年間、Oberstufe(上級段階、現在の基幹学校)4年間)であるが、現在は9年間である。この9年間のうち、前期4年間が基礎学校(小学校の第1学年から第4学年まで)に、後期5年間が基幹学校(小学校第5学年から中学校第3学年まで)に該当し、基幹学校の学年は「4・3・2制」の中期3年間及び後期2年間と一致する。この項目では、基幹学校について述べる。

ドイツの小中一貫教育校(フォルクスシューレ)後半段階の基幹学校は、基幹学校卒業後、職業学校(主に職業関連の理論に関する教育を実施、定時制就学義務)に通いながら、会社・企業で技術を身につけるデュアルシステムDuale Ausbildung、二元制職業教育)に基づく職業訓練を受けようとする者(職業訓練のうち最初の1年間は全日制の基礎的職業教育を行う職業基礎教育年で済ませることができる)及び職業専門学校(修業年限が1年以上の全日制職業教育学校)へ進学しようとする者が進学する学校である。なお、基幹学校には第10学年(高等学校第1学年)を置く6年制とすることができる。

基幹学校の教育課程は、週間授業時間数は27-32単位時間(1単位時間は45分)であり、ドイツ語(国語)、英語(第一外国語)、数学、物理、化学、生物、地理、歴史、政治、「宗教又は倫理」、音楽、美術、体育、労働科から構成され、労働科は技術、経済、家庭の基礎知識の習得と職業準備を行う教科である[8]。実科学校(中学校相当)やギムナジウム(中高一貫教育校)とは異なり、第二外国語の授業はない

このフォルクスシューレをモデルにして、1941年尋常高等小学校国民学校校種名を変更し、尋常小学校を国民学校初等科に、高等小学校を国民学校高等科にそれぞれ改めた。

関連項目

脚注及び参照

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外部リンク

  • この小項目においては小中一貫教育の展望と課題-小中学校の円滑な接続を目指して-のpp3-4に基づいて記載する。
  • 小中連携、一貫教育に関するこれまでの主な御意見についてのp.2による。
  • 教育職員免許法第5条第1項別表第1並びに教育職員免許法施行規則の第3条、第4条及び第6条による。
  • 現在、教員免許資格を取得することのできる大学等は?-文部科学省を介して教員免許資格を取得できる大学の一覧を閲覧できる。なお、教育職員免許法の認定課程規定により免許を取得できる大学・学部・学科は決まっている。
  • 免許なしで授業、常態化 長野の小中一貫校、開校時から-朝日新聞2013年8月20日による。
  • 西洋教育史による。このときに併せて中間学校(ミッテルシューレ)は実科学校に改称された。
  • 樋口陽一吉田善明編『解説世界憲法集 第3版』のp.232に条文が記載されている。
  • 文部科学省編『諸外国の初等中等教育』(2002年3月11日発行)の「ドイツ」のp.96による。