対症療法

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テンプレート:出典の明記 対症療法(たいしょうりょうほう)とは、表面的な症状の消失あるいは緩和を主目的とする治療法。姑息的療法とも呼ばれる[1]。転じて、医学以外の分野において「根本的な対策とは離れて、表面に表れた状況に対応して物事を処理すること[1]」という意味で用いられることがある。「対処療法」と表記するのは間違いである。対症療法に対して、症状の原因そのものを制御する治療法を原因療法という。

具体例と線引き

例えば、胃痛を訴える患者に対し、痛み止めだけを服用させるのは典型的な対症療法である。一般に、何らかの痛みを訴える患者に対し、薬物やレーザーなどで神経系を抑制したり遮断することで痛みを制御する治療法はすべて対症療法である。他にも、風邪をひいた時に、咽頭痛に対して鎮痛薬、発熱に対して解熱薬、咳に対して鎮咳薬を服用するのも対症療法の一例である。

以上は分類が簡単な例である。

だが、胃の痛みを訴える患者に対し、その直接の原因が胃潰瘍であり、さらにその胃潰瘍の原因が職場の人間関係の心労である場合に、その胃潰瘍を薬剤によって制御したり手術によって除去することが、果たして原因療法にあたるのか、それとも広い意味での対症療法と見なすのか、あるいは対症療法と原因療法の中間的な性質のものと見なすかは、人によって見解が異なる。

大半の通常医療の立場では、一般に潰瘍を薬剤や手術で制御することをもってして"原因療法"としてしまうことも多い。だが、現代の医療でも心療内科では、また伝統医学代替療法の立場では、そうは見なさず、それではむしろ「対症療法」に近い、とする見解も多々ある。

問題点

人体というのは、たとえひとつの疾患を対症療法で物理的に治療・抑制したとしても、根本原因を放置したままでは、他の臓器などに(例えば、当人にとって2番目に弱い臓器、3番目に弱い臓器といった順で)次から次へと他の疾患が現れてくることがよくあることは、たびたび指摘されているテンプレート:要出典

また、患者を医薬品に依存させてしまうという問題がある。例えば、家族関係が原因で心理的に悩み、それによって胃酸が大量に分泌され、その結果胃に不調が起きている時に、対症療法で胃酸の分泌を抑える薬物を処方したような場合、たとえ一時的には症状を抑えられたとしても、この薬物を飲むのを止めるととたんに元の不調な状態に戻る、ということになってしまう。根本原因を解決しない限り、この患者は長期に渡り(場合によっては数十年でも)その薬剤を服用しなければならなくなる。

また、医薬品は一般的に同一のものを飲み続けるとその効果が次第に弱まっていってしまう。もしも、効果が弱まったからといって、量を増やしていったり、より強い薬剤に切り替えたりすると、医薬品が必然的に持っている副作用のほうも大きくなってしまい、その影響で当初は不調ではなかった他の臓器に不調が発生することが多い。その不調を治療しようとして、また対症療法で新たな医薬品を服用すると、それに伴いまた新たな副作用が現れ、されにそれを抑えるために……と悪循環に陥ったりすることもある。

原因療法でなく対症療法が行われがちな背景

患者の中には、自身の内に起きている疾患発生のプロセスに眼を向けず、自分が感じている目先の不快な症状を消失させることばかりを望む人も多い。あるいは前項にあった「職場の人間関係の心労」のように、患者個人だけで取り除けるとは限らない原因というのもありうる。また、医療の技術的側面、物理的側面が進歩した現代においては、医療関係者によっても、せいぜい特定の疾患を治癒させることのみが医療の目的であると考えられがちである。

原因療法と対症療法の組み合わせ、使い分け

対症療法と原因療法は対となる概念であり、おおむね理念としては、原因療法を行うのが望ましい、とされている。ただし、実際の治療の現実を考慮した考察では、これらをバランスよく組み合わせて行い、目先の症状を制御しながらも、疾患の真の原因の解消を進めるのが望ましい、とされることが多い。

原因療法を行おうにも、症状の原因の深さや、疾患の進行程度や患者の全身状態によっては、時間をかけてじっくりと原因療法を行うことが叶わないこともあり、適切な対症療法も並行的に必要とされることが多いのである。

状況によっては、患者本人の意思により自覚的に対症療法が選択されることもある。また、風邪のように真の治癒のプロセスは薬剤では起こすことができず、それがいわゆる人体のもつ「自然治癒力」によってのみ起きており、あえて医療機関でできることと言えば、せいぜい患者が訴える表面的な症状に対する対症療法ぐらいしかない、という疾患も存在する。

他の用法

ホメオパシーの提唱者であるサミュエル・ハーネマンは、病気の反対の効果をもたらす治療を逆症療法(アロパシー)と呼んだ。対症療法という用語が、この逆症療法と同一なものとして用いられることもある。

脚注

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参考文献

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関連項目

外部リンク

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  1. 1.0 1.1 テンプレート:Kotobank