安藤三男

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テンプレート:ActorActress 安藤 三男あんどう みつお1928年8月26日 - 没年月日不詳)は、東映作品で主に悪役として活動した俳優東京都出身。

一般作では端役が多かったが、特撮作品では「悪の幹部」役で有名。重厚なメイクで怪奇性・残忍性溢れる悪のヒーローを演じ、天本英世潮健児と並ぶ同分野の第一人者であった。

潮健児とは遠縁の親戚にあたる(潮の叔父が養子に入った家の本家)。

来歴・人物

1947年、18歳で劇団文化座に入座。1953年まで在籍。1958年劇団文化座を経て東映と契約。『地獄の午前二時』で映画デビュー[1]。以後、1960年代にかけて、主に東映東京のギャング映画や第二東映(ニュー東映)製作のアクション映画などの現代劇作品に出演。

1959年、TVドラマ『七色仮面』(NET)で、後の敵役キャラクターのさきがけとなる「コブラ仮面」を演じる。

1962年時代劇映画『源九郎義経』(監督:松田定次)に出演。当時、助監督として松田監督に師事した平山亨は、端役だった安藤の「眼のぎらぎらした痩せこけた馬面」に強い印象を受け、後年の自身がプロデューサーを務めたTV作品に安藤を頻繁に起用したきっかけとなり、『人造人間キカイダー』におけるプロフェッサー・ギル役にも繋がったという。

1967年、『ジャイアントロボ』(NET)で宇宙人幹部「ドクトル・オーヴァ」を演じる。「ドクトル・オーヴァ」は禿頭のカツラをつけて顔全体を銀色に塗り、「宇宙人」らしさを強調したキャラクターだった。通常このようなメイクは役者の売り物である「顔」が隠れて嫌がられるものだが、安藤は進んでメイクを行った。後年、「僕は凝り性なので、あの銀色のメイクは自分からやろうと言い出したんですよ」とコメントしている[2]。ドクトル・オーヴァは宇宙人だが、台詞回しはなぜか「お釈迦様でもご存知あるめえ」など、ヤクザ映画に見られるヤクザの口調そのものだった。

1972年、『人造人間キカイダー』で敵役「プロフェッサー・ギル」を、1年間に渡り演じた。ギルが笛を吹くスローで髪が風になびく不気味なシーンは、安藤自身のアイディアによるもの[1]。スタッフに扇風機を持って来るよう頼み、宇宙を掌握するイメージで演じたという。同作と『イナズマンF』で共演した伴大介によれば、「ギルは日の当たらないところで機械に囲まれながら暮らしているのだから、放映回が重なるごとに顔色を蒼白に、痩せて見えるメイクをして欲しいとメイクスタッフに注文した」という[3]

1974年、『イナズマンF』(NET)で、これも白塗りの凝ったメイクが印象的な「ガイゼル総統」を演じる。激情家のギルとは正反対の寡黙なキャラクターだったが、「静」のイメージがもたらす独特の威圧感は、同作でメインライターを務めた上原正三をして「今観ても怖い」と言わしめるほどのものであった。

1975年、『秘密戦隊ゴレンジャー』(NET)に「黒十字総統」役で出演。当初、三角頭巾で顔を隠したままでの出演だった。そこで安藤はエキスプロダクション(当時、作品の美術演出全般を任されていた)の前沢範に「顔がまったく見えないのはやはり悲しい、なんとか顔を出せるようにしてほしい」と懇願。前沢は「安藤さんは潮健児さんと一緒で話し好きで、捕まったら最後だった」と語っており、直談判は延々8時間に及んだそうである。そこで徐々に顔を見せるように衣装を変えていく配慮がなされ、第43話にしてようやく顔出しでの出演となった。しかしその後体調を崩して降板。第56話以降は役を八名信夫に譲ることになった。安藤は当時すでに肺を患っており、この頃から片肺で死力を以て演技に臨んでいたと言われる。

1978年、『スパイダーマン』(東京12チャンネル)に「モンスター教授」役で出演。最終回では巨大化し、マーベラーと戦った。

1983年、『宇宙刑事シャリバン』(テレビ朝日)で死霊界の軍師「レイダー」を演じる。あまりに真に迫った不気味さにメインの視聴者である子供達が怯えてしまい、視聴率が低下する事態を招いてしまった[4]

没年は詳らかではないが、1980年代後半に発行された特撮関連書籍のインタビューに応じており[5][6]、この数年後とされる。晩年は東京俳優生活協同組合に所属していた。

主な出演作品

映画

  • 母と拳銃(1958年、東映) - 川合
  • 地獄の午前二時(1958年、東映) - 岩原良助
  • 月光仮面 幽霊党の逆襲(1959年、東映) - 杉山刑事
  • 月光仮面 悪魔の最後(1959年、東映) - 杉山刑事
  • 静かなる兇弾(1959年、東映) - 水越
  • 空港の魔女(1959年、東映) - 高津署刑事B
  • 多羅尾伴内 七つの顔の男だぜ(1960年、東映) - 小林
  • 海底の挑戦者(1960年、第二東映) - 健
  • 危うしGメン 暗黒街の野獣(1960年、第二東映) - 平田
  • 男の挑戦(1960年、第二東映) - 花村
  • 消えた密航船(1960年、東映) - 木村
  • 殺られてたまるか(1960年、第二東映) - 佐藤
  • 決斗の谷(1960年、第二東映) - 丹波
  • 不死身の男(1960年、第二東映) - 留
  • 東から来た流れ者(1960年、東映) - 金田
  • にっぽんGメン 摩天楼の狼(1960年、第二東映) - 笠根
  • 男の地平線(1961年、第二東映) - 市川
  • 赤い影の男(1961年、東映) - 黒眼鏡の男
  • 赤い影の男 高速三号線を張れ(1961年、東映) - 辰巳
  • アマゾン無宿 世紀の大魔王(1961年、ニュー東映) - 中京興業幹部
  • 地獄に真紅な花が咲く(1961年、ニュー東映) - 愚連隊羽田
  • ネオンの海の暴れん坊(1961年、東映) - 梅村
  • 風来坊探偵 赤い谷の惨劇(1961年、ニュー東映) - サウスポーの源
  • 飛ばせ特急便 魔の十八号線(1961年、ニュー東映) - 杉本
  • 台風息子 お化け退治(1961年、ニュー東映) - 用心棒A
  • 金も命もいらないぜ(1961年、ニュー東映) - 辰
  • 静かなるならず者(1961年、ニュー東映) - 安川新一
  • 白昼の無頼漢(1961年、ニュー東映) - 西川
  • 誇り高き挑戦(1962年、東映) - 島田
  • 源九郎義経(1962年、東映) - 糖部喜平次
  • 祇園の暗殺者(1962年、東映) - 久坂義助
  • よか稚児ざくら 馬上の若武者(1962年、東映) - 落合清介
  • 狙い射ち無頼漢(1962年、東映) - 多田四郎
  • 暗黒街最後の日(1962年、東映) - 若松
  • ギャング対Gメン(1962年、東映) - 谷本寅彦
  • 裏切者は地獄だぜ(1962年、東映) - 寺本
  • ギャング対Gメン 集団金庫破り(1963年、東映) - 坂部
  • 最後の顔役(1963年、東映) - 矢野秀晴
  • 陸軍残虐物語(1963年、東映) - 塩沢
  • 暗黒街最大の決闘(1963年、東映) - 別当
  • 暴力団(1963年、東映) - 佐川
  • やくざの歌(1963年、東映) - 山中
  • 鬼検事(1963年、東映) - 野島
  • 暗黒街大通り(1964年、東映) - 高本
  • 飢餓海峡(1965年、東映) - 木島忠吉
  • かも(1965年、東映) - 中西
  • 流れ者仁義(1965年、東映) - 竹本
  • 地獄の掟に明日はない(1966年、東映) - 竹井
  • 遊侠三代(1966年、東映) - 猪之助
  • 女囚さそり 第41雑居房(1972年、東映) - 鳥居
  • 狭山の黒い雨(1973年) - 刑事C
  • 飛び出す人造人間 キカイダー(1973年、東映) - プロフェッサー・ギル
  • 飛出す立体映画 イナズマン(1974年、東映) - ガイゼル総統
  • ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー(1978年、東映) - UFO船長
  • 劇場版スパイダーマン(1978年、東映) - モンスター教授

テレビドラマ

レギュラー出演

ゲスト・単発出演

  • ドキュメンタリードラマ 裁判 「恐怖の港」(1959年、KRテレビ
  • 特別機動捜査隊東映 / NET
    • 第10話「強奪の果て」(1961年) - 影山隆
    • 第60話「禁断の過去」(1962年)
    • 第123話「夜の女」(1964年) - 今井篤次
    • 第191話「やくざ」(1965年) - 浅野
    • 第206・207話「大都会(前・後編)」(1965年) - 高田康
    • 第230話「山刃の秘密」(1966年)
    • 第252話「雷雨」(1966年) - バーテン
    • 第262話「愛の証書」(1966年) - 小林
    • 第283話「嫉妬」(1967年)
    • 第296話「九年目の女」(1967年) - 中野
    • 第307話「海に生きる」(1967年) - 野村
    • 第340話「霧のような女」(1968年) - 藪下
    • 第369話「晩秋の女」(1968年) - 益村
    • 第436話「蟻の町」(1970年) - 米山
    • 第604話「金と毒薬と老嬢と」(1973年)
  • 0の眼(1963年、東映 / NET)
  • 近鉄金曜劇場 / 奴凧(1964年、TBS) - 松下大吉
  • 風来物語 第22話「魔手」(1965年、東映 / NET)
  • 乗っていたのは二十七人 第20話「けだもの」(1965年、東映 / NET)
  • 鉄道公安36号東映 / NET
    • 第124話「女のプラットホーム」(1965年)
    • 第164話「えびの高原の霧と星」(1966年)
    • 第188話「汽笛は呼んでいる」(1967年)
    • 第196話「白銀は呼ぶ」(1967年)
  • 氷点 第1話(1966年、東宝 / NET) - 佐石土雄
  • 土曜日の虎大映テレビ室 / TBS)
    • 第6・7話「黒いドック(前・後編)」(1966年) - 北
    • 第19話「黒の試走車(前編)」(1966年) - 宝井
  • 悪魔くん 第10話「シバの大魔神」(1966年、東映 / NET) - 呪術師ザンバ
  • ある勇気の記録 第21話「刑事が消えた」(1967年、東映 / NET / 中国放送)
  • いまに陽が昇る 第9話 (1967年、NET)
  • 春雷 第3話 (1967年、東宝 / NET)
  • 平四郎危機一発国際放映 / TBS)
    • 第7話「その窓はどれだ!」(1967年)
    • 第25話「俺を洗え!!」(1968年)
  • とぼけた奴ら 第21話「貴様も俺も大幹部」(1968年、東映 / NET)
  • お庭番 第9~12話「白い宝」(1968年、C.A.L / NTV
  • 東京バイパス指令 第15話「黄金に手を出すな」(1969年、東宝 / NTV)
  • 河童の三平 妖怪大作戦 第24話「怪異半獣仙人」(1969年、東映 / NET) - 半獣仙人
  • 日本任侠伝 第2話「笹川繁蔵」 (1969年、東映 / NET)
  • 妖術武芸帳 第11話「怪異かすみ駕籠」(1969年、東映 / TBS) - 霞道士
  • あゝ忠臣蔵 第13話「山科の別れ」(1969年、東映 / KTV) - 松木庄三郎
  • フラワーアクション009ノ1(東映 / CX
    • 第1話「日本爆破アンタッチャブル」(1969年)
    • 第12話「バカンスは危険がいっぱい」(1969年)
  • プレイガール(東映 / 12ch
    • 第25話「女殺し昭和元禄」(1969年)
    • 第33話「ギャング子守唄」(1969年)
    • 第62話「老人と女のポルカ」(1970年)
    • 第83話「ぼん太の田舎っぺ残侠伝」(1970年)
    • 第91話「酔いどれはだか仁義」(1970年)
    • 第115話「朝ぼらけの情事」(1971年)
    • 第160話「狂気の来訪者」(1972年)
  • 右門捕物帖 第6話「六番手柄 右門子守歌」(1969年、東宝 / NTV)
  • 剣豪 第1話「武蔵に勝った強い奴」(1970年、東映 / NET) - 破異恵那
  • 江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎(東映 / 12ch)
    • 第20話「恐怖の毒蜘蛛 芋虫より」(1970年) - 石島
    • 第25話「白昼夢 殺人金魚」(1970年) - 妻木
  • 素浪人 花山大吉 第68話「道は地獄へつづいていた」(1970年、東映 / NET) - 鉄砲マサ
  • 男は度胸(1970年、NHK)
  • 銭形平次 第266話「魔がさした祝言」(1971年、東映 / CX) - 赤鬼の鉄
  • 仮面ライダー 第49話「人喰い怪人イソギンチャック」(1972年、東映 / MBS) - 金尾為吉
  • 変身忍者 嵐 第3話「呪いの妖気! オニビマムシ!!」(1972年、東映 / MBS) - 大久保能登守
  • 荒野の素浪人 第17話「強奪 けもの谷の御用金」(1972年、三船プロ / NET) - 流れ星の陣内
  • 刑事くん(東映 / TBS)
    • 第1シリーズ(第2部) 第49話「南の海の白い花」・第50話「鬼島・なさけ島」(1972年)
    • 第2シリーズ(第3部) 第28話「明日を信じて」(1973年)
  • 国盗り物語(1973年、NHK) - 佐久間信盛
織田信長主役の大河ドラマでの織田家重臣・信盛役であれば重要な役に思えるが、追放を宣告されるシーンのみの出演であった。

参考文献

  • 宇宙刑事大全―ギャバン・シャリバン・シャイダーの世界(2000年、双葉社) ISBN 978-4575290806

関連項目

脚注

  1. 1.0 1.1 テンプレート:Cite book(初出:『宇宙船別冊 変身ヒーローアルバム』 1986年 朝日ソノラマ)
  2. 『ファンタスティック・コレクション24 ジャイアントロボ』1981年 朝日ソノラマ p54。
  3. 『スイッチオン!人造人間キカイダー ジロー、旅の途中で』2001年 伴大介 角川書店 p40-41。
  4. 『宇宙刑事大全』(2000年、双葉社)
  5. 『宇宙船別冊 変身ヒーローアルバム』 1986年 朝日ソノラマ。
  6. 『講談社X文庫 メーキング・オブ・東映ヒーロー3 メカニカルヒーローの世界』1987年 講談社。