太陽風

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太陽風(たいようふう)は、太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子(プラズマ)のことである。

概要

太陽の表面には、コロナと呼ばれる100万度以上の密度の低い薄い大気がある。このような超高温では、気体が電子とイオンに電離したプラズマ状態になっており、太陽の重力でも、このコロナガスを繋ぎ止めることができず、陽子や電子が放出される。電気を帯びた粒子(プラズマ)が放出されたものが太陽風[1]と呼ばれる。

毎秒100万トンもの質量が太陽から放射されている。この風が地球公転軌道に達するときの速さは約300~900 km/s、平均約450 km/sであり、温度は106 Kに達することもある。地球磁場に影響を与え、オーロラの発生の原因の一つとなっている。高速の太陽風は、コロナホール太陽フレアに伴って放出されていると考えられている。

同様の現象はほとんどの恒星に見られ、「恒星風」と呼ばれる。

なお、太陽系外からの銀河宇宙放射線の流入量は、太陽風を伴う太陽活動と相関があり、太陽活動極大期に銀河宇宙線量は最小になり、太陽活動極小期に銀河宇宙線量は最大になる。これは太陽風が、太陽系外から流入する銀河宇宙線をブロックするためと考えられている。銀河宇宙線のエネルギーは強大で、ほぼ真空の宇宙空間を飛翔する岩石結晶には、銀河宇宙線による細かい傷が見られる。銀河宇宙線が生物の細胞に直接当たれば、細胞はひとたまりもなく破壊されてしまう。一般にはあまり知られていないが、太陽風はこうした強大なエネルギーを持つ銀河宇宙線から、地球生命を守っている。米国のボイジャー探査機においては、太陽系を離れるにつれて次第に強い銀河宇宙線が検出されているという。

太陽に接近して尾ができた彗星において、尾が常に太陽と反対方向に延びるのも、彗星表面から蒸発した物質が太陽風によって吹き流されるのがその一因である。

太陽風には太陽内の水素ヘリウムおよびそれらの同位体が含まれており、などの大気のない天体表面にはそれらが堆積している。特に核融合燃料として有望なヘリウム3が月面に豊富に堆積している事が確認されており、その利用が月開発の目標の一つとなっている。

脚注

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関連項目

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  1. 「徹底図解 宇宙のしくみ」、新星出版社、2006年、p40