大阪市交通局70系電車

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ファイル:70 z.jpg
70系1次車(未更新車)
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70系3次車(未更新車)前面の腰部の色の違いと「7」のアクセントの大きさが1次車との相違
ファイル:Osaka subway 70 inside.jpg
70系の車内(未更新車)

70系電車(70けいでんしゃ)は、大阪市交通局の高速電気軌道(大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線用の通勤形電車リニアメトロ車両)。

概要

1990年平成2年)3月20日の鶴見緑地線京橋駅 - 鶴見緑地駅間開業にあわせ、営業運転を開始した。路線名が長堀鶴見緑地線に改称された1996年(平成8年)12月11日心斎橋駅 - 京橋駅間開業時と、1997年(平成9年)8月29日大正駅 - 心斎橋駅間、鶴見緑地駅 - 門真南駅間開業時にも増備され、2007年(平成19年)現在、4両編成25本(計100両)が在籍する。そのため、製造時期による仕様の相違がある。

当系列では日本初の営業用鉄輪式リニアモーターカーとして、リニアモーター駆動方式が採用された。鉄輪式とは、車両自体は浮上せず車輪で支持するものである。採用の理由は経済的と輸送的なもので、直線状の板状モーター使用による車両の低床化により、トンネルの断面を小さくしてトンネル工事費が削減できることと、急勾配や急曲線でも無理なく走行できるため建設場所が限定されないこと、将来の輸送需要が中量程度であることなどが挙げられる。主回路はGTOサイリスタ素子によるVVVFインバータ制御である。当時、日本ではリニアモーター駆動方式に関する実績が乏しかったため、1988年昭和63年)3月に南港の試験線(地下鉄協会)で試作車の走行試験を実施し、導入が決定した。

70系は以上のような理由から、1991年(平成3年)8月に鉄道友の会ローレル賞を受賞した。

なお、心斎橋駅 - 京橋駅間開業を控え、本系列は1996年(平成8年)4月からワンマン運転を実施した。

外観

車体はアルミ合金製で、フッ素樹脂(塗色はアイボリーホワイト)で塗装されている。第三軌条方式20系などよりも車体長が短いため、客用扉は1車両あたり3か所(側面)である。また、客用扉の間には車外スピーカーが、車端部の窓上には大阪市交通局で初めてLED式の行先表示器が設置された。全編成とも落成時から排障器(スカート)を装備している。客室側窓は下降式である。運転台は当初よりワンマン運転を考慮し進行方向右側に、非常扉は運転台と逆の左側に設置された。これは新20系とは正反対である。集電装置には日本の鉄道車両で初めてシングルアーム式のパンタグラフを採用した。

試作車・1次車

鶴見緑地線の開業に伴い用意されたグループ。第1 - 第13編成がこれにあたる。

先頭部分の塗装は白をベースに、「7」(長堀鶴見緑地線の正式名称・大阪市高速電気軌道第7号線にちなむ)を変形させたマークが入っている。側面行先表示器は赤1色で表示される(更新工事で順次、3色LEDに交換が進められている)。なお、1990年3月20日の開業から同年9月の花の万博終了までの期間は前面非常口部分の窓下に花の万博の公式シンボルマーク、側面ドア横に公式キャラクター「花ずきんちゃん」のステッカーが貼り付けられていた。

インテリアは、ベージュ系の化粧板に小さな白い花が配されている。貫通扉の部分は色が濃い。

ワンマン運転の実施に際して、車内に車椅子スペースが設置された。これにより定員が変更され、先頭車は90名(座席32名)から89名(同28名)、中間車は100名(座席40名)が101名(同38名)となった。車椅子スペース脇(2次車以降では、2人掛けの座席がある部分)に、座席はない。

南港の試験線で使用された4両の試作車は後に整備され、リニアモーター駆動方式の2両は7061(試験時7051)・7161(同7151)号車に、ロータリーモーター駆動方式の2両は7262(同7391)・7113(同7691)号車になった。この元試作車の4両は、連結面(妻面)上部に型(段差)があるので、量産車と区別は容易である。なお、試作車は落成当初から南港の試験線での試運転終了までは未塗装でラインカラーを貼り付けただけであったが、量産車に組み込む際に塗装された。また、試運転時には方向幕に第1期開業の駅である「京橋」「横堤」「鶴見緑地」、「回送」「臨時」「試運転」の他、「リニヤモーターカー[1]」「ロータリーモーターカー」[EXPO 90]との字幕も用意されていたが、これも営業運転開始までに字幕を交換したため、現在はこの字幕は入っていない。なお、方向幕は大阪市交通局の車両では初めて英文表記を追加した。

2次車

京橋駅 - 心斎橋駅間の延伸に際して製作されたグループ。第14 - 第17編成がこれにあたる。

外観・塗装が1次車とは大きく異なっており、先頭部分は長堀鶴見緑地線のラインカラーである黄緑をベースに「7」を変形させたマークが入っている。フロントガラスは1次車では角が丸みを持たせたものになっているが、このグループからは角が角ばったものに変更されている。側面行先表示器は3色LEDを採用した。なお、このグループから、非常扉の窓ガラス下部にリニアモーターを表す「LIM」のロゴマークが入っている[2]。インテリアも1次車とは大きく異なっており、やや明るい内装となったが、化粧板に花の模様は配されていない。

3次車

心斎橋駅 - 大正駅間と鶴見緑地駅 - 門真南駅間の延伸に際して製作されたグループ。第18 - 第25編成がこれにあたる。

2次車とはほぼ同一仕様であるが、客用扉のガラスは単板ガラスから複層ガラスに変更されている。車外から見ても、客用扉の窓周りに太い縁取りがあるため、判別は容易である。

車内

車内空間を最大限確保するため、扉は床上から1,400mmの位置でガラスとも内側に折れ曲がっている。

扉と扉の間の座席は6人掛けだが、6人座るにはやや窮屈である。

全車両の貫通扉の上部にLED式の車内案内表示器が設置されている。この案内表示は新20系や66系のものとは違って上下二段式となっており、並行して一度に二つの情報を表示することが可能である。また、表示器のスペース全体を使用して、各駅の発車直前に"Linear Motor Car 7000"が表示されるほか、一部の駅では到着前に沿線の名所をイメージしたイラストが表示される。かつては駅間でリニアモーターの構造の解説の表示も行われた。例としてドーム前千代崎駅では「京セラドーム大阪」、心斎橋駅では「心斎橋の欄干」、京橋駅では「高層ビル群とその下を走る電車」、鶴見緑地駅では「鶴見緑地いのちの塔」、門真南駅では「なみはやドーム」である。ただし、後述する更新工事施工車は新20系と同型の機器に交換されている。

また、各車両には車椅子スペースも設置されているが、インターホン車椅子の高さで利用することはできない。乗降扉は開閉の際、ドアブザーが鳴る。それは66系初期車と同じである。台車直上には台車点検蓋が設置されている。

  • 車内の高さ - 2.15m(車端部の冷房装置搭載部分は2.00m)
  • 客用ドアの寸法 - 1.83m(高さ)×1.30m(幅)

更新工事 (中間更新)

1次車の竣工から既に約20年が経過したため、更新工事(中間更新)が実施されることとなり、最初に施工された第13編成 (7113F) は2011年(平成23年)3月4日に営業運転を開始した[3]

更新内容は以下の通り。

  • 2次車以降に準じた車体配色とし、加えて屋根付近や客用ドア部分にもラインカラーの黄緑を配したほか、30000系に準じた号車番号表記も追加。
  • 側面行先表示器を赤色LEDから3色LEDに変更(1次車のみ)。
  • 一部のつり革の高さを身長の低い乗客でもつかめるように変更。また、優先座席付近のつり革はオレンジ色に変更されている。
  • 客用扉付近に黄色のラインを追加。
  • 客室案内表示器を2段式から1段式へ変更し、路線案内表示器が追設された。(これに伴い、沿線名所のイメージイラストや発車直前の"Linear Motor Car 7000"の表示は廃止されている)
  • VVVFインバータの制御素子をGTOサイリスタからIGBTに変更。

また7109Fの改造に関しては、客室照明のLED化、天井部へ手すりの追加設置、床材の変更が行われた[4][5]
なお、新20系中間更新施行車にある、スタンションポール、ドア開閉予告ランプは、本系列では、設置されていない。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

  • 石本隆一『大阪の地下鉄』、産調出版、1999年4月第1刷発行

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テンプレート:大阪市営地下鉄・ニュートラムの車両
  1. 誤植ではなく実際に「リニモーターカー」と表示されていた。
  2. 1次車にも後に付け加えられた
  3. 長堀鶴見緑地線 70系車両リフレッシュのご紹介 - 大阪市交通局 2011年2月28日
  4. 長堀鶴見緑地線70系車両の車内照明にLEDを導入します - 大阪市交通局 2013年2月26日
  5. 大阪市営地下鉄に初のLED照明搭載車」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2013年3月15日