夏商周年表プロジェクト

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夏商周年表プロジェクトは、中華人民共和国の第九次五カ年計画のプロジェクトの1つであり、具体的な年代が判明していなかった中国古代の三代について、具体的な年代を確定させた。中国語では、夏商周断代工程と呼称された。(工程とは、プロジェクトの意味。)

プロジェクト以前

このプロジェクトが始まる以前に、中国古代の年代は、文献資料でわかっている限りでは、の共和元年(紀元前841年に相当)までしかたどれなかった。

プロジェクトの経過

プロジェクトは、1995年の秋から準備がはじめられ、1996年5月16日に正式に開始した。このプロジェクトには、約200名の若手主体の学者が参加した。1999年9月に開かれた夏商周断代工程階段成果学術報告会(中国史学会、中国考古学会、中国科学技術史学会、「夏商周断代工程」項目弁公室主催)では、プロジェクトに参加していない学者も含めて、160人強が討論をした。これが、このプロジェクトに大きな作用をもたらしたという。 2000年9月15日夏商周断代工程項目験收会でその内容が政府によりチェックされ、2000年11月10日に、プロジェクトの首席科学者である李学勤・李伯謙・仇士華・席沢宗4人を中心として、公表された。

プロジェクトの手法

夏商周年表の作成には、様々な手法が用いられた。

天文学的な手法

発掘された甲骨文や文献資料において、日食月食が起きた記事を調べ、天文学的な計算によって、その日食月食の年月日を算定する。

考古学的手法

発掘された遺跡、特に王侯の墓地を調べる。C14年代測定法を利用して、埋葬されている者のおおよその死没年を算出する。

文献学的手法

文献資料の暦法の違いを精査し、相互の矛盾を発見し、どれが正確なのかを判定する。

プロジェクトの結果

備考

ただし、プロジェクトの結果に対して反論や批判が提示されている例がある。例えば、周が殷を滅ぼした年についてプロジェクトでは『竹書紀年』(古本)にある紀元前1027年を否定して、『国語』(周語)にある「歳在鶉火」(この年に歳星(木星)が「鶉火」の位置にあった)の記述を元にして紀元前1046年という数字が出された。これに関して、中国で歳星などの五星(すなわち惑星)の存在が認識されたのは戦国時代以後のことであり、殷末周初にかかる記録が存在しない(『国語』の記事は後代の創作である)として、紀元前1027年説を否定する根拠にはならないとする反論がある[1]

脚注

  1. 小沢賢二「『武王伐紂年』歳在鶉火説を批判する」(『中国天文学史研究』(汲古書院、2010年) ISBN 978-4-7629-2872-7 第7章)

関連項目

  • 夏商周年表 (プロジェクトの成果。中文版へのリンクあり)

外部リンク